気風がいい

2016年10月17日 12時13分22秒 | 創作欄
競輪で借金を負った以上、競輪で取り返す以外ない。
サラ金を借りる人間の安易な行動パターンである。
年率48%もの高利で借りたのだから、短期で返済しなければならない。
宮田虎之助は焦っていた。
そこに助け舟を出した利根輪太郎は、同じような体験をしてきた。
過去にサラ金で200万円借金をした時は、最終的に母親に泣きついたのだ。
「バカだね。私に借りれば、そんな高い金利払わずにすんだんだよ」
幼いころから一人息子に甘かった母親が、怒りもせず200万のサラ金の穴埋めをしてくれたのだ。
「お父さんには内緒だよ。30歳にもなって独身なんて、私は肩身が狭いよ」
母親は近隣に住む知人や友人の息子たちが20代で結婚し、子どもを既に育て家庭を大切にしていることを愚痴のように告げて溜息をついた。
「お前の職場には、いい子居ないのかね」
輪太郎は苦笑し、いつものとり曖昧にしていた。
「輪ちゃんは気風がいいね。俺が女なら惚れていたよ」虎之助は真面目な顔で言う。
「気風がいいとはどんなことなのだろう?」輪太郎は宮田虎之助の娘の芳子に惚れられることがあるだろうかと想ってみた。
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