取手通信・医学情報社 山本 嗣信 (やまもと つぐのぶ)

医学情報社編集顧問
フリージャーナリスト

祖父のような道楽者

2016年10月17日 14時49分04秒 | 創作欄
利根輪太郎は懲りない男であった。
200万円のサラ金の借金を母親に穴埋めしてもらって、1年後、再び競馬に負け続け、今度は300万円の借金をしていた。
困り果てて、母親に再び泣きついたのである。
今度も母親は怒らなかった。
「本当に、これだけかい。もっと借金あるんじゃないの。あったら直ぐに払うんだよ」サラ金からの督促状を見て言う。
「競馬なんか、もうよしなよ。いいね」
優しい母親の言葉に、「申し訳ない」と輪太郎は涙ぐんだ。
それにしても、息子に甘い母親であった。
箪笥から郵便貯金通帳と印鑑を出して、居間のテーブルに乗せた。
「お前のために、母さんが積んで置いたんだ。いいね。大事に遣うだよ」
1700万円の金額に利根輪太郎は目を見張った。
「これで、救われた」利根輪太郎は小躍りしたくなってきた。
道楽ものであった母の父は芸者遊びをしてしばしば家を空けていた。
4人姉妹の末である信恵が迎えに行くと父親は信恵の手を引いて家へ戻ってきた。
祖母は目を細めて「道楽親父も、信恵には弱いだね」と相好を崩した。
信恵の母親は心が優しく夫の道楽を大目にみていた。
利根輪太郎は祖父のような道楽者であった。
昭和56年の暮れを輪太郎は何とか無事乗り切ったのだ。
300万円もの借金で眠れぬ夜を過ごしてきたのだ。
サラリーマンにとって、サラ金の300万円の鉛のような重い借金。
会社にかかる電話や督促状は脅迫観念になり、生き地獄のような日々であった。
サラ金3社の借金であったのだ。
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