人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

チョン・ミュンフン+東京フィルでチャイコフスキー「交響曲第4番」他を聴く~フェスタサマーミューザ

2016年07月28日 07時30分17秒 | 日記

28日(木).NHK交響楽団から年会費(9月以降の9公演)の請求書が届いたので,コンビニ経由で払い込みました それにしても請求に関しては迅速です.さすがはNHK(日本 振り込め早く 今日かい?)だと感嘆しました ということで,わが家に来てから669日目を迎え,缶酎ハイの味見をしようとしているモコタロです

 

          

             缶酎ハイもいろいろ種類があるから迷っちゃうよね おたくビール派?

 

 

  閑話休題  

 

昨夕,ミューザ川崎で東京フィルの「チョン・ミュンフンの情熱」公演を聴きました これは7月23日から8月11までミューザ川崎で開かれている「フェスタサマーミューザ」の一環として開かれたコンサートです プログラムは①チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」,②同「交響曲第4番ヘ短調」です.①のヴァイオリン独奏は韓国のクララ=ジュミ・カン,指揮は桂冠名誉指揮者のチョン・ミョンフンです

 

          

 

午後7時からの開演に先立って,3時半から同じ会場で公開リハーサルがありました 全自由席です.早めに並んで,2階センターに近い右ブロックの前方の席を押さえました リハーサルにも関わらず会場の半分近くが埋まっています.チョン・ミュンフン人気でしょう すでにオケのメンバーがTシャツにジーンズといったラフな格好で各自のパートの練習に勤しんでいます オケの態勢は左から第1ヴァイオリン,第2ヴァイオリン,チェロ,ヴィオラ,その後ろにコントラバスという並びです

白のポロシャツに黒のズボンといった普段着のチョン・ミュンフンが登場し,指揮台の上に設置された椅子に座ります そのままランニングにでも行けそうな上下黒のウェアを着たクララ=ジュミ・カンが共に登場します チョンの「おはようございます」という日本語でリハーサルが始まりました

プログラム通りチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」の第1楽章から仕上げをするようです.指揮者,オケ,ソリストともに本番よりはリラックスした様子で演奏しますが,ソリストのヴァイオリンが良く会場に響きます この楽章はヴァイオリン独奏によるカデンツァが長いので,かなり短縮しました.しかし,第2楽章以降は通しておさらいしフィナーレに持っていきました.所要時間は40分でした

10分の休憩の後,「交響曲第4番」のリハーサルに入ります.この曲は,第4楽章,第3楽章,第1楽章,第2楽章の順にリハーサルを行いました チョン・ミュンフンは座って指揮しているとはいえ,時に腰を浮かせてメリハリのある音楽作りに努めていました 各楽章とも途中で演奏を止め,簡単な注意を与え,次の楽章に移っていました.所要時間は32分でした

さて,指揮者のチョン・ミョンフンは1953年韓国ソウル生まれ.ジュリアード音楽院他でピアノと指揮法を学び,1974年のチャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で第2位に入賞しています その後,ロサンジェルス・フィルでジュリー二のアシスタント,副指揮者を務めました.これまでザールブリュッケン放送響,オペラ座バスティーユ,ローマ・サンタチェチーリア菅,フランス国立放送フィル,ソウル・フィルの音楽監督や首席指揮者を歴任し,現在はシュターツカペレ・ドレスデン首席客員指揮者を務めています

一方,韓国出身のヴァイオリニスト,クララ=ジュミ・カンは2009年ハノーファー国際ヴァイオリンコンクールで第2位を獲得,2010年インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールに優勝するなど,輝かしい経歴の持ち主です

          

          

 

さて本番です.あらためて会場を見渡すと9割以上は埋まっている感じです まさにチョン・ミュンフン効果です さらに,東京フィルがミューザで演奏するのはこのサマーミューザ位しかないからということもあるかも知れません

1曲目のヴァイオリン協奏曲は1878年(作曲者38歳)の初春にたったの1か月で書き上げた傑作です しかし,最初にこの作品を見たヴァイオリニストのレオポルド・アウアーは「演奏困難」と決めつけたため,チャイコフスキーは大いに傷つきました その後,モスクワ音楽院教授のブロツキーが曲に共感し1881年12月にウィーンで初演されました 全3楽章から成りますが,35分程の演奏時間の半分近くを第1楽章が占めます

クララ=ジュミ・カンが空色とこげ茶色を基調としたエレガントな衣装でチョン・ミュンフンとともに登場し,さっそく第1楽章「アレグロ・モデラート」に入ります この楽章の前半にヴァイオリンの長大なカデンツァがありますが,クララ=ジュミ・カンの独奏は集中力に満ちた”泣く子も黙る”素晴らしい演奏でした 第2楽章「カンツォネッタ(アンダンテ)」では,ヴァイオリン,オーケストラともに良く歌います 続けて演奏される第3楽章「フィナーレ(アレグロ・ヴィヴァーチェッシモ)」はヴァイオリンとオケとの息もつかせぬ”競争曲”で,熱狂的な演奏でフィナーレを迎えました 会場一杯のブラボーと拍手がソリストと指揮者+オケを取り囲みました

チョン・ミュンフンは,舞台袖に引き上げていくクララ=ジュミ・カンが指揮台の上に置いていった 顎に当てるハンカチを ひょいと摘み上げ,彼女に持っていってあげました.優しい人ですね 彼女はカン謝したことでしょう

鳴り止まない拍手にクララ=ジュミ・カンはバッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番BWV.1005」から「ラルゴ」をしみじみと演奏,再び大きな拍手を浴びました

 

          

 

休憩時間が終わるころ,自席でプログラムを読んでいると,右隣の高齢男性が「リハーサルは聴きましたか?」と声を掛けてきました いつも隣でムッツリしているので意外に思いましたが,「ええ,聴きました.2階のセンターに近い席で」と答えると,「そうですか.私は聴きませんでした ところで,このフェスタのN響のチケットは即日売り切れだったようですよ.何しろN響がミューザで演奏するのはこの時くらいですからね また日本フィルがやっている『コバケン・ワールド』のチケットなんか何度電話してもなかなか繋がらなくて,やっとのことで1枚買いましたよ」とおっしゃいます.私はそれほどコバケンにはこだわりがないので「日本フィルは渡邉暁雄時代からの歴史がありますからね」とだけ答えておきました.お互いにセット券を買っているようなのでまた次回同じ席になります.変なことは言えません コンサート会場で赤の他人のお客さんから声を掛けられることは滅多にありません.今回は10年に1度のレア・ケースでした

さて後半の開始です.チャイコフスキーの「交響曲第4番ヘ短調」.この曲のヴァイオリン協奏曲とほぼ同じ頃に作曲されました このころチャイコフスキーは,結婚したものの20日で別居し,自殺未遂騒ぎを起こすなど,精神的に不安定な時期にありました そんな彼を精神的・経済的両面で支えたのがナジェージダ・フォン・メック未亡人でした 曲は1878年1月初旬に完成しますが,チャイコフスキーはメック未亡人への手紙の中で,この曲を「私たちの交響曲」と呼んでいます 

チョン・ミュンフンのタクトで第1楽章がブラスのファンファーレで開始されます これは『運命のテーマ』です.この楽章では劇的な音楽が展開しますが,チョン・ミュンフンの指揮を見ていて頭に浮かぶのは「統率力」という言葉です 3.11の原発事故の際にどこかの国の首相が「アンダー・コントロール」という言葉を使いましたが,この演奏における東京フィルはチョン・ミュンフンの「アンダー・コントロール」にありました 例えば,2階席からヴァイオリン・セクションの動きを見ていると,弓の角度や動作が統一されていて”美しい”とさえ感じます

第2楽章はオーボエの悲しげなメロディ―から始まりますが,良い演奏でした この楽章では,チョン・ミュンフンはオケに十分歌わせます 第3楽章は弦楽器のピッツィカートと菅楽器との応酬が楽しく聴けました

そして第4楽章のフィナーレを迎えます.管弦楽総動員で「勝利宣言」が演奏されますが,中盤で第1楽章冒頭に現れた『運命のテーマ』が再度現れます リハーサルで何度かやり直していたフィナーレ部分の畳みかけは圧巻でした

チョン・ミュンフンのタクトが下りるや否や 会場のそこかしこからブラボーがかかり,大きな拍手が会場を満たしました

この日の入場者数は,ミューザをホーム・グランドとしている東京交響楽団の「オープニング・コンサート」を大きく上回っていました これは明らかに「チョン・ミュンフン効果」です 東京フィルはこのフェスタに桂冠名誉指揮者のチョン・ミュンフンを指揮者に立て,大衆受けするチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と交響曲第4番をプログラムに組むことにより,勝負を賭けてきたのだと思います これで,間違いなく東京フィルの株が上がりましたね

 

          

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