人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

シューマン「ピアノ協奏曲」,千住明「オペラ”万葉集”」を聴く~Kissポートクラシックコンサート

2015年08月01日 07時03分04秒 | 日記

8月1日(土)。とうとう今日から8月に突入しました.暑さはまだまだ続きそうです 昼間は家に人間がいないので,モコタロのゲージがある子供部屋はクーラーを点けっぱなしにしています VIP並みの厚遇だとは思いますが,ウサギが熱中症で虎の門病院に運ばれた,なんてシャレになりませんからね 

ところで2日前のテレビや新聞の報道によると,東京メトロ千代田線「北千住駅」のホーム壁面にある駅名表示板が「北干住駅」になっていたとのことです 「千」と「干」は良く似ていますが,表示板の完成までは多くの人の目に触れているはずなのに,どこにも引っかからなかったというのは不思議です 千に一つの誤りでしょうが,制作者が干されなければ良いなと思います 報道された日に干住明氏の,もとい,千住明氏のオペラを聴いたので,なおさら気になりました ということで,わが家に来てから295日目を迎え,あまりの暑さにスーパー・ドライを1本空けたモコタロです 

 

          

            あまりの暑さでノドがスーパー・ドライになっちゃってさ

 

  閑話休題  

 

30日(木)は午後3時から読売日響のコンサートを、午後7時から第24回Kissポートクラシックコンサートを聴きました 昨日、読売日響のコンサートについて書いたので、今日は午後7時からサントリーホールで開かれたKissポートクラシックコンサートについて書きます

プログラムは①シューマン「ピアノ協奏曲イ短調」,②千住明「オペラ”万葉集”~二上山挽歌編」で,①のピアノ独奏は石田啓明,②のソプラノ=小林沙羅,メゾ・ソプラノ=谷口睦美,テノール=吉田浩之,バリトン=福島明也.演奏は大友直人指揮東京交響楽団,合唱はミナトシティコーラスです

「Kissポートクラシックコンサート」は,「公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団」が主催するコンサートで,毎年今頃,低料金で開いている有り難いコンサートです 毎年のプログラムを見ると,必ずコーラス曲が入っており,ひょっとするとこの公演はミナトシティコーラスの日頃の成果の発表会という位置づけにあるコンサートかも知れません

 

          

 

自席は1階C14列16番,センターブロック左通路側席です.プログラム後半に合唱団が入るため,ステージ後方のP席は空いていますが,それ以外はほぼ満席です

コンマスの水谷晃をはじめオケのメンバーが入場します.ソリストの石田啓明が指揮者・大友直人とともに入場し,ピアノに向かいます 石田啓明は1994年生まれといいますから弱冠21歳です.2014年・第83回日本音楽コンクールピアノ部門第1位で,現在,桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマ・コースに特待生として在学中です

大友の指揮で第1楽章が,力強いオケとピアノにより開始されます 石田はかなり落ち着いている様子が窺えます.ある意味,演奏慣れしているのかも知れません.どちらかと言うと小柄な体格ですが,技術的には極めて安定した力を持っており,スケールの大きな演奏をします 気持ちの良いスカッとするシューマンでした

私はピアノ協奏曲の中ではこの曲が一番好きだと言っても良いかも知れません とくに第3楽章が大好きで,昨日のブログでモコタロが押さえていたマルタ・アルゲリッチのピアノ,チョン・ミュンフン指揮フランス国立放送フィルによるライブ演奏CDで予習してきました

 

          

 

休憩後は千住明のオペラ「万葉集」から「二上挽歌編」です.私はこの曲を東京交響楽団の定期演奏会(2013年1月19日)で聴いているので,今回が2度目です.指揮者とソリストはその時と同じです.コーラスは東響コーラスでした

このオペラ「万葉集」は2009年と2011年に作曲された「明日香風編」と「二上山挽歌編」から構成されていますが,今回上演されたのは686年の天武天皇崩御後の物語です 台本は俳人・黛まどかです.黛氏の解説によると「二上山挽歌編」は次のような内容です

「天武天皇には何人かの皇子があり,天武天皇の皇后であった持統天皇との間には草壁皇子,大田皇女との間には大津皇子があった 持統天皇としては草壁皇子を後を継がせたかったが,大津皇子は文武両道に優れた才覚を顕わす これは危ういとみた草壁側は,大津側に謀反の疑いがあるとして失脚させ,大津皇子は24歳の若さで自害する この大津皇子には大伯皇女(おおくのひめみこ)という姉があったが,母の大田皇女は幼い二人を残して他界した.残された二人は仲良く成長していった.二人が残した歌を詠むと二人は愛し合っていたのではないかとさえ思われる.そうした二人の微妙な関係に焦点をあてるとともに,普遍的な愛を表現したかった

 

          

 

P席にミナトシティコーラスの面々が入場します.男声を中央に配置し,両サイドを女声が占めるといった態勢で,総勢約200名といった陣容です 見かけた感じ,平均年齢が相当高いように思われます とくに男声陣は平均70歳は軽くクリアしているのでは・・・・女声陣も負けず劣らず・・・いや,そんなことはありません.男声陣よりずっと若いです

オケを見渡すと,チェロ・セクションの最前線に樋口泰代さんが控えています.いよいよ前面に出てきましたね

ソリストの4人が登場します.ソプラノの小林沙羅は純白のドレスが眩しいほど.まさに真っ沙羅 メゾ・ソプラノの谷口睦美はワインレッドの大きなリボンをあしらった豪華な衣装です 男性陣は省略します

「二上山挽歌編」は,Ⅰ-1「イントロダクション」,Ⅰ-2「プロローグ」,Ⅱ「飛鳥浄御原宮」,Ⅲ-1「伊勢」,Ⅲ-2「飛鳥浄御原宮」,Ⅳ,Ⅴ「磐余の池」,Ⅵ「大津皇子処刑後,帰京途上で大伯皇女が詠んだ歌」,Ⅶ「フィナーレ」から成ります

草壁皇子をテノールの吉田浩之が,持統天皇をメゾ・ソプラノの谷口睦美が,大津皇子をバリトンの福島明也が,大伯皇女をソプラノの小林沙羅が歌いますが,4人とも「日本人が作曲したオペラはやっぱり日本人が歌うのが一番だな」と思わせる素晴らしい歌唱力で,聴衆を魅了しましたが,今回ダントツだったのが小林沙羅の熱唱でした 歌っている時の感情移入は半端ではなく,他の歌手が歌っている時でも,自分の役に成りきって耳を傾けている真摯な姿が印象的です 2012年にはソフィア国立歌劇場「ジャンニ・スキッキ」ラウレッタ役で欧州デビューしていますが,その張りのある歌声は恵まれた容姿(日本のオペラ界で一番の美人かも知れない)とも相まって,ますます人気が上昇するのではないかと思います

ところで,合唱団はもちろん立って歌うわけですが,Ⅲ-1に差し掛かった辺りで,「大友くん,そろそろコーラスを座らせた方がいいんでないかい.立たせっぱなしで何かあったら労災問題になるぜ」と言いたくなりましたが,次のⅢ-2「飛鳥浄御原宮」を歌い終わったところで着席の合図が出たので,見ている方も安心しました コーラス陣は少し休んだ後,また立ち上がって歌い始めました

最後のフィナーレは圧巻でした.ソリスト4人とコーラス全員で「燃え尽きるまで 輝き続けよ ひたすらに 輝き続けよ 頂(いただき)に・・・」と歌い上げます

千住明氏は,この曲を作曲中に3.11東日本大震災を経験したとのことで,このフィナーレは,すべての日本人の心に届くようにという思いで曲を作ったと語っています.まさに感動のフィナーレでした

大きな拍手の中,大友は会場後方に待機していた千住明氏と黛まどかさんをステージに呼び,カーテンコールに応えました ステージと客席とが一体となって拍手とブラボーで盛り上がり,会場は興奮の坩堝と化しました そうした中,私は男声コーラスの面々の表情を見ていましたが,満足感に浸る人々の中,「拍手はもういいから早く座らせてくれよ」という表情の人も見かけました 分かります,その気持ち

ミナトシティコーラスの皆さんは,暑い中,熱中症にもめげずにコーラスに熱中して練習を積み重ねてこられたのだと思います 大変お疲れ様でした.さぞかし打ち上げのビールが美味しかったことでしょう.感動をありがとうございました

 

          

コメント
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