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明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(158)滋賀県高島市で、0.4マイクロシーンベルトを検出?誤数値の可能性も

2011年06月17日 17時00分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110617 17:00 0619 15:30改訂)

この情報は、6月17日17:00に第一信を配信しましたが、その後、「0.4マイクロ
シーベルト」という、まだ確実になっていない情報が独り歩きしては
ならないと考えて、文章の構成を変えるなど大幅な改訂を施したものです。
その点を留めおいてお読み下さい。


あるメーリングリストを通じて、次のような情報が回ってきました。

「こんな情報が回ってきましたけど・・・。
ショックです。
http://matome.naver.jp/odai/2130819065065265501

守田さーーーん、
どう思われますか?????」

内容は「滋賀県高島市で0.4~0.5、名古屋市守山区で0.4マイクロシーベルト」
の放射線が計測されたというものです。

これは僕自身が裏を取った(確かめた)情報ではありません。
いつもなら自分で確からしいと判断できない情報発信はしないように
しているのですが、「守田さん、どう思われますか?」と投げられたので
これはお答えしておかなければならないなと思いました。

まず大前提として、計測器の誤作動等々、数値そのものが、まだ確実なものと
僕自身では判断できないなかでの推論であることをお断りしておきたいと
思います。

そこでこの点について、まずは高島市に尋ねてみようと考え、職員の方と電話で
話をしました。非常に丁寧に対応してくださいましたが、0.4マイクロシーベルトが
検出されたという情報があることにショックを受けていました。
ただこちらとしても機器の精度などを含め、確かな情報かどうか確信が持てていない
と断ってお話ししました。

高島市役所では、原発が近いこともあり、市議会での答弁に放射能問題が
頻繁に出て来て、市職員が対応に追われているそうです。そのためもあり、市内
各地にモニタリングカーを走らせているそうです。

その結果ですが、今のところ、いずれからも0・04マイクロシーベルトぐらいの
数値しか報告されておらず、0.4マイクロシーベルトという値は聞いたことがない
とのことでした。
高島市が公的に測って、この付近では0.04マイクロシーベルトという値の計測が
されていることをまずは明記しておきたいと思います。

これらから、今回の高島市での0.4マイクロシーベルトという計測値が、正しい
という根拠は僕には得られていません。高島市の職員の方、何人かとお話しま
したが、みなさん対応が丁寧で、何かを隠し持っている感じなどはまったく
しませんでした。

「今後も、市民の側からつかんだ情報をお届けします」とお話しすると、ぜひお願い
しますとのことでした。ただしどの担当部署で何を受け持つのか、まだ混乱している
のだそうです。健康課なのか、環境課なのかなどなど、線がなかなか引けないのだ
とか。それで情報は市役所全体を統括する、
0740-25-8000
にかけてくださいとのことでした。


その上で、一般論になりますが、数値が高くなりうる可能性を考えてみました。
一つは福島由来のものが、滋賀県にも飛散してきていることです。
まずはこの可能性が一つ。

もうひとつは、敦賀半島のもんじゅや敦賀原発、ないしは若狭湾の原発からの
放射能漏れの影響です。実際、5月初旬に敦賀原発が事故を起こし、放射能
漏れが起こっています。「ごく微量で、環境への影響は無い」と発表されましたが、
こうした発表に信ぴょう性が感じられないのはご存じの通りです。

これらの場合、他県の場合を考えてみると、やはり汚泥処理施設などで濃縮され
それが焼却されて、周辺環境を汚染しうることが考えられます。
高島市の場合は、高島市衛生センターが、汚泥浄化施設としてあります。
ただしここでは汚泥の脱水作業のみを行っており、焼却は、今津町にある
高島市環境センターで行っているそうです。ここまで衛生センターから汚泥を
運搬しているそうです。

いずれにせよ、大阪の汚泥から放射能が検出されたことにより、そうした値が
出ても、不思議には思えない面もあるのが、ある意味で現状の厳しさを物語って
いるように思えます。ただし、大阪の値を追跡調査したところ、少なくとも市の側は
非常に微量であることを強調しており、この点も継続的なウォッチが必要です。


とにもかくにも、「一家に一台、ガイガーカウンター」の時代が本当に来たのだと
思います。なかなか手に入りませんが、なんとかそれぞれで入手して、できるだけ
共同で、広範囲で使用し、計測を重ね、情報を交換しあっていくことが大事だと
思います。測ったら、行政にも積極的に伝えるといいと思います。

0.4マイクロシーンベルトは、1日では9.6マイクロシーンベルトに相当します。
放射線管理区域に近い値であり、かなり高いです。そうした地域には、放射性
物質の微粉末が浮遊している可能性があります。当該地域は、マスクを着用
した方がいいです。

またおそらくすべてこれまでの雨でいったんは地面に落ちたと思いますが、雨の
あとに晴れて乾きだしたときに、また多少は飛ぶので、雨のときの水たまりと、雨が
あがって晴れ間が出て、水分が蒸発するときにより気を付けた方がよいです。

また空間線量が高い場合は、周辺により高濃度のホットスポットがあると思った
方がよいです。その場合は、福島での放射能除染・回復プロジェクトがやっている
ような除染を行った方が良いです。

高島市の場合は、まだモニタリングカーによる計測で、0.04マイクロシーベルトしか
観測されていないので、今のところ、その可能性を裏付けるに足るデータはない
段階だと思います。だからこそ、積極的な計測を行って、よりはっきりとした値を
つかむこと大事だと思います。これは他の地域でも言えることです。何せどこも
かしこも、原発の近くなのですから。

みなさんも、自分の地域で高い放射線量の報告があったときは、ガイガーカウンター
を持っている人をみつけて、まずは測るとともに、地域の汚泥浄化センター、焼却
場所の場所を調べ、その上で行政に積極的に尋ねてみると良いと思います。

みんなで放射能への積極的なウォッチを行っていきましょう!


(追記)
その後、守山市の方からもコメントをいただきましたので、ここに貼り付けて
おきます。

eggplant
私も昨日、この情報を知りビックリしました。
が、やはり機械の誤作動の可能性が高いんじゃないかと感じます。
私は名古屋市の北隣のエリアに住んでいまして、高い数値が観測されたという
守山区は、さほど遠くはありません。
守山区には汚泥消却施設などは無い筈ですし、(守山区の隣の)北区にある放射性
物質観測点(地上三十数メートル)は連日コンスタントに、0.04マイクロ前後の
推移、恐らく地上でも、0.1マイクロ以下でしょう。
紋白蝶を始め、蝶々もよく見かけますし、私自身、体調も特に問題無いと思います。

勿論、可能性がゼロで無い事は確かではありますが‥
コメント (4)
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明日に向けて(157) 「シビアアクシデント対策」という名の安全思想の切り捨て

2011年06月17日 12時41分15秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110617 13:00)

このところ、新聞記事をみていて「それは違うだろう」と思わず口に出してしまう
ような発表が続々と行われました。
「それは違うだろう」というのは、事実の認識と、そこから引き出した結論が
全くずれていることへの僕の憤慨です。
以下、「それは違うだろう」と思わざるを得ない点を幾つか指摘します。


まず一つは「原発の安全・耐震・防災指針見直し決定 原子力安全委」という
記事です。「地震で想定外の事態が相次ぎ、総崩れになった安全確保の指針は
抜本的な見直しが迫られている」。だから来年3月をめどに報告書を作り、
今後、2,3年かけて抜本的な規制見直しに取り組むというのです。

しかしこれは現状の安全・耐震・防災指針がまったく間違っていることを
意味しており、当然にも現状の運転の「安全・耐震・防災指針」が全く間違っている
ことになります。だからどう考えても、ここからは全ての原発の即時停止をすべきだ
という結論しか導きようがない。

ところが記事には平然と?「今後、2~3年をかけて規制の抜本的見直しを
行う」ことが紹介されています。ならばせめても2~3年先まで運転をしてはならない
のではないか。それまでの運転の安全、耐震性等々は何も保障されていないことに
なるのだからです。

政府・電力会社の考えはこの点でひどく間違っているし、それを何ら指摘せずに
報道する朝日新聞は、政府・電力会社の公報の役割しか果たしていません。


これに続く次の記事、事実もまったく同様のことが言えます。
「電力各社、過酷事故へ対策 保安院15日から調査」と題したものです。
核心的な内容は次の点です。

「経済産業省原子力安全・保安院は14日、電力会社など原発を所有する11事業
者から過酷事故(シビアアクシデント)対策の報告書を受け取ったと発表した。15、
16日に全原発に立ち入り調査して対策の実施状況を確認し、月内にも評価結果
をまとめる。」

これまでシビアアクシデントを想定してこなかった経産省と電力会社が、今回の
事故を受けて、これに対する対応をし始めたと報道されている。
しかし前提として、この記事では、シビアアクシデントとは何かということが明確に
なっていません。

そもそもシビアアクシデントとは、次のように規定されてきたものなのです。
「シビアアクシデント(日本語では過酷事故)とは、設計基準事象を大幅に超える
事象であって、設計上考えられている設備や操作によって炉心の冷却や制御が
できなくなり、その結果炉心の重大な損傷(溶融など)に至る事象であり、複数の
シナリオが考えられるが、そのいずれも発生する確率はきわめて小さい。
シビアアクシデントは、規制上は想定あるいは評価を求められていない事象で
あるが、事業者毎に「確率論的安全評価」を行うことで、各プラントの発生確率
(頻度)を評価している。」

要するに「設計基準事象を大幅に超える事象」なのです。想定された安全装置
が全く役に立たなくなってしまうことを意味している。だから日本では「発生する
確率はきわめて小さい」とされ、「規制上は想定あるいは評価を求められていない
事象」、ようはありえない事象だとされてきたのです。

頻度の評価も1000万年に1回だとか、要するに絶対にありえないとされて
きた事故です。それが福島第一原発では3回(3基の原発)も起こってしまった。
いや4号機の極めて不安定な状況を考えると、4回と言うべきでしょうか。

設計基準事象を大幅に超える事象に対応するならば、設計基準を変えるしかない。
なぜって、設計のときに想定しないで作っているのですから。かりに100キロのスピード
になると止まらない車があるとする。設計基準では80キロしか出ないことになって
いた。ところが100キロ出てしまうことが分かった。そうしたらどうするか。
エンジンを作りなおして、80キロしかでないようにするしかない。あるいは100キロでも
止まれるようにブレーキを作りなおすしかない。

しかるに今回の対応では、100キロでは止まれないのに、そこまでスピードが出て
しまうことを放置したままで何かの対応をするのだというのです。しかも実際には
今回の事故と同じケースをシビアアクシデントがたどることだけを想定し、水素爆発に
いたらない工夫を加えるているだけです。

これは大変な問題です。なぜなら保安院と電力会社が、他のプラントでも福島
第一原発と同じ事故が起こることを想定しながら、その事故をなくすのではなく
事故が起こった時の対策を練り始めたと言っているのだからです。つまり放射能が
格納容器から漏れ出すことを前提にした対策です。放射能が漏れないようにする
対策、今回のような事故が起こらないための対策なのではない。


なぜそうなのか。今回のような事故が起こらないための対策をとるとなると、
まだそれがとれてない他の全ての原発を一たび止めなければいけないことになるから
です。いやまさに止めなければいけないのです。しかしそうならないために、放射能
漏れ事故が起こった時の対策を講じることで、運転を継続させようとしている。
これははじめから運転ありきの対策で、安全対策とはまったく言えません。

そもそもそのような対策をするのならば、住民にこのことを問うべきです。
「これまで深刻な放射能漏れは起こらないと考えていました。しかし今回で起こる
ことが分かりました。そのため起こった時の対応を考えますが、そのように
深刻な放射能漏れがあることを想定して運転を続けて良いですか?」と。

今回の対応は事実上、そのようなメッセージです。何とも歯がゆいことに
このことをまたもやマスコミが伝えていない。単なる事実ではなく、保安院と電力
会社の価値判断が介在しているのに、その評価をしようとしない。本当に困った
ものです。


その次の記事など、本当に唖然としてしまいます。
「水素爆発防止へ建屋にドリルで穴 浜岡原発炉心損傷対策」というものです。
浜岡原発で、シビアアクシデントになり、深刻な放射能漏れが起こりだして
水素爆発が懸念されるときに、建屋にドリルで穴をあけておくようにするというの
です。

ここでも水素爆発が前提されてしまっていて、しかも対策は建屋に穴をあけようと
いうことだけ。これに対応して言うならば、それなら2号機で起こった圧力
抑制室の損傷事故にはどう対応しようというのか。また4号機をはじめ燃料プールで
起こっている深刻な事態にはどう対応しようとしているのか。それらの対策などたて
ようもないままに、最も単純で簡単な「対策」を加えたに過ぎない。

実際には「シビアアクシデント」は、想定外の事故なのだから、どのように起こる
のか分からないものなのです。核心的なこととして、今回についても何がどのように
起こったのかまだ分かっていないのです。とくに昨日紹介したように、地震による
揺れが要因と考えられる圧力抑制室の損壊について、保安院も東電も何の説明も
できていません。

そのどう起こるか分からないこと、今回もまだ分かっていないことに、対応できる
という発想自身がおかしい。設計思想的には、どう起こるか、どう起こったかを
解明し、そうならないための処置を考え、一から設計をやり直す以外に、安全を
確保する道はない。シビアアクシデントを起こさない設計に変える以外にないのです。

それを水素漏れが起こった時に、穴をあけて水素を逃がすという本当に「小手先」の
対応でかわそうとしている。しかも水素漏れ=深刻な放射能漏れを前提にして
しまっている。しかしそんな深刻な放射能漏れが起こるというのなら、そんな
発電を誰が認めると言うのでしょうか。


以下の記事では、九州電力や、中国電力もまたシビアアクシデント対策をとり、
保安院に報告したことが紹介されています。はじめにあるようにこれは全国の
電力会社で行われていることです。

しかも同じような水素爆発対策のみが並べられている。つまり明らかに、それぞれ
の電力会社が、本当におこるべき事態を解析し、真剣に対応を検討しているの
ではなく、保安院に命令されて、横並びの回答をしていることがあけすけに
見えてくる。要するに、シビアアクシデント対応はしたという「アリバイ」作りである
ことがあまりに露骨です。悲しくなる行為です。


最後に紹介する記事も同じような構造で書かれている。
「原発災害マニュアル、全然使えず 政府、全面改訂へ」という記事です。ここでも
明らかになっているのは、私たちの国には、現実に対応できる「原発災害
マニュアル」がないということです。

だとするならば、最低でもマニュアルが作りなおされるまで、原発の運転を止める
べきです。シビアアクシデントはありうると言いだしているのに、災害対策マニュアル
すらないのですから。


まとめます。
政府と電力会社は、「シビアアクシデントはありうる」「現在の災害対策マニュアル
は全く通用しない」というあまりに隠しようのない事実を認めながら、そこから
導かざるを得ない結論・・・一たび原発を全て止めて、シビアアクシデントを
起こさないように設計を見直す、災害対策マニュアルを更新するという順当な
考えを回避し、「水素爆発対策をする」「災害マニュアルを更新する」という、
今、実際に動かしている原発への安全対策を全く無視した対応をとろうとして
います。全く間違った判断で、すべては原発の継続運転ありきを前提にするが
ゆえに導きだされたゆがんだ結論です。

ここに明らかなことは、今回の・・・まだ要因も完全解明されていない・・・事故の
教訓を生かそうとする意思がまったくみられないことです。
このような、安全思想を完全に欠落させた政府や事業者に、これほどに危険な
プラントを扱う資格はまったくないと言わざるを得ません。

私たちはいよいよもって、全ての原発の即時停止を求めていく必要があります。
他の原発でもシビアアクシデントがありうることが、認められながら、設計上の
対応もしようとしないことが明らかになったからです。


このように考える時に、彷彿とするのは、あの無謀な第二次世界大戦にいたる
日本の暴走です。あのとき、日本には国力が何十倍も違うアメリカに勝てる見込み
など全くなかった。それなのに日本政府と軍部は戦争に突き進んでいきました。

その上、戦時中も、あまりに無茶な作戦ばかりが行われた。アメリカの潜水艦が
うようよといるなかに、兵員輸送船をどんどん送り込んで、次々と撃沈されたり、
部隊への補給も考えずに兵士を送り込んだ結果、部隊が略奪集団化し、アジア
の人々の怒りに油を注いだりした。要するに戦争指揮がめちゃくちゃだった。

もちろん、もっと合理的でスマートに戦争をやるべきだったと言いたいのでは
ありません。しかしそこに顕著に示された戦略的展望のなさと、それを補完する
現場の責任感のなさが、今回のこのような対応の在り方と非常によくダブって
くるのです。挙句に日本は大破産を迎えた。今、政府と電力会社は同じような
道を歩いているのではないでしょうか。国の未来など誰もまともに考えていない
のです。

こんな人々に私たちの将来を託しておいたら本当に大変なことになってしまう。
いやすでに大変なことになっているのです。残念なことに大手マスコミも同じです。
あの戦争を鼓舞し続けたことの反省など、もうどこかに消し飛んでしまっている。
誰も身を挺して、この大危機を止めようとしない。

ならば、私たちこそが、何かをしなければなりません。
Power to the people!
http://www.youtube.com/watch?v=ppCt-ZwEN1s
起ちあがるのは今です。

****************************

原発の安全・耐震・防災指針見直し決定 原子力安全委

朝日新聞 2011年6月16日22時24分
 内閣府の原子力安全委員会は16日、東京電力福島第一原子力発電所の事故
の教訓をふまえ、安全設計審査指針や耐震設計審査指針、防災指針などを
見直すことを正式に決めた。専門家でつくる部会に検討を指示、来年3月をめどに
報告を求める。

 さらに班目(まだらめ)春樹委員長は、炉心損傷をともなう過酷事故(シビア
アクシデント)対策を規制の枠組みに入れるかなど、2~3年かけて抜本的な規制
見直しに並行してとりくむ方針も打ち出した。

 地震で想定外の事態が相次ぎ、総崩れになった安全確保の指針は抜本的な
見直しが迫られている。班目委員長は抜本的な規制見直しについて「必ずしも
原子力安全委員会だけの仕事になるかさえわからない」と話した。
http://www.asahi.com/national/update/0616/TKY201106160595.html

***

電力各社、過酷事故へ対策 保安院15日から調査
中日新聞 2011年6月15日 02時04分

 経済産業省原子力安全・保安院は14日、電力会社など原発を所有する11事業
者から過酷事故(シビアアクシデント)対策の報告書を受け取ったと発表した。15、
16日に全原発に立ち入り調査して対策の実施状況を確認し、月内にも評価結果
をまとめる。

 保安院は7日付の文書で各社に対策を指示。中央制御室での被ばく防止▽緊急
時の通信手段の確保▽水素爆発の防止-など5項目で早急に措置を取ることを
求めていた。いずれも福島第1原発では未実施だった。

 中部電力は、非常時に浜岡原発(静岡県御前崎市、全面停止中)の原子炉建屋
屋上に穴を開けるための電気ドリルなどを1セット配備した。原子炉を冷やすための
電源がすべて使えなくなった場合には、60センチ四方の穴を2カ所に開けて水素を
放出し、建屋全体の崩壊を防ぐ。

 中央制御室での運転員の被ばくを防ぐため、非常用の換気空調設備を動かす
ための発電機を2号機以外の4基にそれぞれ設置。津波などによるがれきを撤去
するための重機も4台配備した。

 福島第1と同じ沸騰水型の敦賀1号機(福井県敦賀市、定期検査中)を運用する
日本原子力発電は、水素爆発を防ぐため、来年2月までに原子炉建屋の天井に
水素を抜くための開閉式の装置を付ける。加圧水型の敦賀2号機は、2013年
6月までに原子炉格納容器内に水素濃度低減装置を設置する。

 関西電力も加圧水型の美浜原発(同県美浜町)、高浜原発(同県高浜町)などの
9基の原子炉格納容器内に、13年度までに水素濃度低減装置を付けるとした。

 原子力安全委員会や東京電力はこれまで、原発の設計指針や事故対策を改定
する際も「日本国内で過酷事故は起こりえない」として、対策を取ってこなかった。
福島第1原発の事故で国際原子力機関(IAEA)へ提出する政府報告書では、
水素爆発などの事態を「想定していなかった」と認めている。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011061590002129.html

***

水素爆発防止へ建屋にドリルで穴 浜岡原発炉心損傷対策

朝日新聞 2011年6月15日0時52分
 中部電力は14日、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)で炉心が損傷する
「過酷事故」が起きた場合の対策を新たにまとめ、経済産業省の原子力安全・保安
院に提出した。東京電力福島第一原発の事故を受けた緊急安全対策の一環で、
水素爆発対策などを盛り込んだ。

 福島第一原発の事故では、津波ですべての電源が失われて炉心を冷やせなくなり、
大量の水素が原子炉建屋内にたまって爆発につながった。

 このため、浜岡原発の新たな対策では、水素の漏れ出しに備えて、建屋の屋上に
60センチ四方の穴を2カ所開け、漏れ出した水素を外部に放出することにした。
水素には放射性物質が混じっているが、爆発によって広い範囲に飛び散るよりは、
影響が抑えられるという。
http://www.asahi.com/national/update/0615/NGY201106140030.html

***

玄海原発の過酷事故対策を国に報告 水素爆発防止策も

佐賀新聞 2011年06月15日更新
 九州電力は14日、玄海原発(東松浦郡玄海町)で炉心溶融など設計基準を
超える「過酷事故」が起きた場合の対策を国に報告した。経産省原子力安全・
保安院が15日に立ち入り検査し、新たに配備した防護服など資機材や手順書を
確認する。
 
 国際原子力機関(IAEA)への報告書で究明された福島第1原発の事故原因と
課題を踏まえ、保安院が電力各社に5項目の対策を指示していた。
 
 対策では、全電源喪失時も中央制御室で作業できるように高圧電源車で空調
設備を動かし、室内の空気を浄化。発電所内の通信設備も電源車をつないで
維持する。
 
 作業員の被ばく防止では、高い放射線量に対応した防護服を今月末までに
20着追加して34着にする。個人線量計は既に2300個を配備。万が一、
足りない場合は他の事業者から借りる協定を結んでいることを報告した。
 
 原子炉建屋の水素爆発防止策は、原子炉格納容器から漏れた水素を容器の
横にあるコンクリート製の空間にため、電源車で排気設備を動かして外部に
放出する。今後3年をめどに、水素を再結合して水にする装置も取り付ける。
がれきを撤去するホイールローダーも新たに1台配備した。
 
 九電は「既に実施した緊急安全対策で国は安全と判断しており、今回の対策の
評価が運転停止中の2、3号機の再稼働の条件になるとは考えていない」
としている。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.1948233.article.html

***

過酷事故時の対策報告 中国電力島根原発

山陰中央新報 2011年6月14日
 中国電力(中電)は14日、島根原発(松江市鹿島町)で原子炉の炉心が損傷する
などの過酷事故(シビアアクシデント)が発生した場合の対策について、経済産業省
原子力安全・保安院に報告したと発表した。福島第1原発事故を踏まえ、水素爆発
の防止策や、津波などで生じたがれきを撤去する重機配備などが報告の柱。
7日に保安院が報告を指示していた。
【詳しくは本紙紙面をご覧ください】
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=526361004

***

原発災害マニュアル、全然使えず 政府、全面改訂へ

朝日新聞 2011年6月9日3時5分
原発事故が起きた場合に中央省庁と自治体、電力会社が現地で対応を調整する
仕組みを定めた政府の「原子力災害対策マニュアル」が東京電力福島第一原発の
事故では想定外の事態が重なり、ほとんど活用されなかったことが分かった。
政府は全面改訂に着手した。

朝日新聞が入手したマニュアルは1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界
事故後、経済産業省を中心に策定したもので、A4で123ページにわたり関係機関
の対策を細かく規定している。原発近くの指揮所に対策本部を設けて省庁や自治
体、電力会社などが情報を共有。首相官邸に事故処理や避難指示について現場
に即した対策を提言する狙いがあった。

ところが、今回は指揮所が被災してマニュアルの根底が崩れ、関係機関は初動
段階からマニュアルに頼らず対応するしかなかった。

菅直人首相が3月11日に緊急事態を宣言した直後から、現地対策本部長となる
経産省の池田元久副大臣をはじめ各省庁や東電の幹部らはマニュアル通り、福島
第一原発から約5キロ離れた大熊町にある指揮所「オフサイトセンター」に集合。
ところが指揮所は停電して非常用電源設備も故障し、原子炉の圧力や温度、
原発施設の放射線量などの基礎データを把握できなかった。電話も不通で、
官邸や福島県、市町村とのやりとりは困難を極めた。

機器の操作や広報対応を担う「原子力安全基盤機構」の職員や周辺市町村の
職員は、指揮所にたどり着けなかった。出席者が集まり次第開く「協議会」は
同日中に開催できなかった。

このため首相官邸は指揮所を通さず、東電本社から情報を直接収集し、冷却機能
回復やベント(排気)を巡って指揮。福島県は東電本社に直接問い合わせ、独自の
判断で半径2キロの住民に避難を指示したが、菅首相は33分後に半径3キロ
圏内の避難を指示した。

翌12日以降、指揮所の機能は徐々に回復したが、放射線量が14日時点で
1時間あたり12マイクロシーベルトと極めて高いことが判明。15日に閉鎖し、
現地対策本部を福島県庁に移した。マニュアルは事故が1週間程度で収束すると
想定していたが、長期化で人員確保はままならず、現地対策本部長は池田氏ら
経産副大臣・政務官4人が交互に務めた。

政府はマニュアル内容の不備が指揮命令系統の乱れを生み、初動の遅れを
招いたと判断。事故調査・検証委員会が来夏に出す検証結果を待たずにマ
ニュアルの改訂を急ぐ。(鈴木拓也、山岸一生)
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201106080687.html
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