三日ほどかけて、ミステリの傑作と呼ばれる「ハサミ男」を昨夜読み終わりました。
以前、もう15年ほど前に映画版を観たことがあるのですが、その時の印象はまぁまぁ面白かったかな、という程度のものでした。
改めて原作を読んでみて、物語の重層性やミステリでありながら高い文学性を持った文章に深い感銘を受けました。
タイトルは陳腐と言ってもよいくらいですが、中身はまったく違います。
先日本屋を訪れた際、帯に、「古典にして大傑作! えっまだ読んだことが無い!?」という煽情的な言葉が並び、つい、買ってしまいました。
結果、大当たりだったというわけです。
女子高生を絞殺し、その後喉にハサミを突き立てる、という殺人が2件発生。
警察の捜査も虚しく3人目の犠牲者が出てしまいます。
警察は当然同一犯の犯行と見て捜査を始めますが、どこか奇妙です。
3人目の殺害現場には喉に突き立てたハサミと同じ物がもう一つ落ちていたり、ハサミの先を鋭角に研磨していたのが、荒かったり。
そして3人に共通しているのが、全く性的暴行の跡が見られないことです。
この物語は犯人と医師と呼ばれる二人の対話と捜査する警察との2つの視点からのエピソードが交互に語られるのですが、ラストに至って、読者は大いに騙されていたことに気付きます。
騙されていたことが快感に感じるほど見事なものです。
この作品は作者である殊能将之という人のデビュー作で1999年に発表されたとのことですので、少々古いことは古いですが、古典と呼ぶには新しいと思います。
しかし古典と呼ばれるほどの衝撃と高い文学性を併せ持っているということかと思います。
作家は2013年に49歳の若さで亡くなっているとのことで、もう新作は出ないのかと思うと寂しいかぎりですが、私がまだ読んでいない作品が10以上あります。
それらを読むのが今から楽しみです。
「ハサミ男」、是非ご一読ください。