大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米税制改革、輸入に20%の課税: 事実上の国境調整税を導入

2017年11月04日 | 日記

 フィナンシャル・タイムズ(FT)は、先日発表された税制改革案にかつて批判をうけ放棄されたとみられていた国境調整税に似た仕組みが入っていることを明らかにした。

 税制改革法案では、企業が利益を海外に移すとき20%の課税がおこなわれることになっている。

 私は最初これを、海外に利益を送金するときだけ課税されるのかと思っていた。

 しかしFTによると、実際には企業がモノやサービスを海外子会社(あるいは海外本社)から輸入すると、利益をつかって輸入する、つまり利益のつけかえとみなされ輸入代金に20%の課税がおこなわれることになる。

 たとえばアメリカにある日本の自動車工場(日本企業の海外子会社)が日本やメキシコにある自社工場から100万円の自動車部品を輸入した場合、手元にある100万円の利益をつかって部品を購入する(つまり利益移転)とみなされ20万円の課税がおこなわれることになる。

 これは輸入業者などから批判をうけ放棄された国境調整税に似た仕組みで、FTは国境調整税ライトとする見方を紹介している。(ちがいは他社からの輸入には課税がないこと)

 これにより10年で1550憶ドル(17兆円:1ドル=110円)の税収増が見込まれている。

 これから日本の自動車メーカーなどが猛烈なロビー活動を開始すると思われるが、もしこの規定をなくすならかわりの財源をどこかで見つけなければならない。

 それほど簡単な話ではない。

 可能性は低いが、もしこれがこのまま法案に残れば、日本の自動車メーカーは生産を日本やメキシコからアメリカに移転・集中させるなど大きな政策転換を迫られることになるだろう。

 影響の大きさははかりしれない。

 今後の動きに注目である。

 参考: 税制改革法案の内容と問題点

2017/11/9 追記

 影響をうける企業から猛烈な批判をうけ、下院共和党はもともとの既定の95%を廃止した

 この結果、この規定にかかわって今後10年に予想される税収は、1550億ドル(17兆円:1ドル=110円)からわずか60億ドル(7000億円)程度に大幅に減少する見込み(ウォール・ストリート・ジャーナル)。