ヒッキーはつむじ風!!

ヒッキーが観て気に入った映画を、ブログで紹介します。

「地獄の黙示録」ファイナル・カット

2021-05-06 19:58:44 | Weblog

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「地獄の黙示録」ファイナル・カット

 

1979(日本では1980)年に「地獄の黙示録」が劇場公開された後に、コッポラ監督が自ら編集し直して30分の追加部分を加えた2001年の「特別完全版」が公開されたが、1979年のオリジナル公開から40周年を記念して、「特別完全版」よりも20分短く編集し直して、新たなデジタル修復を施し、映像はオリジナル・ネガフィルムを初めて使うなど、コッポラ監督が長年望んでいた没入感や臨場感を実現した、本作「地獄の黙示録・ファイナル・カット」が2019(日本では2020)年に公開された(オフィシャル・サイトより抜粋)

 

私が最初の「地獄の黙示録」を田舎の映画館で観たのが、中学2年の終わり頃でした。

初めて観て、正直、なんだかよく解らないけど、スゴい、というのが、第一印象でした。

ベトナム戦争を題材にした映画を観るのが、たしか初めてだったと思います(「ディア・ハンター」は随分大人になってから観たので)。

ドアーズとかも知らなかったので、オープニングシーンの感覚も、いまひとつよく解らなかったですが。。。

まぁ、あのころ日本で中学校の社会科とか授業聞いてても、ベトナム戦争のように現代史的な部分は、何故かあまり出てこなかったという記憶があります。

画像 四度の飯より映画批評 FC2 blogさんより

なんというか、普段テレビで「太陽にほえろ」とか観て、ワクワクしてた(別に「太陽にほえろ」がよくないっつってんじゃないですよ)頃ですから、「地獄の黙示録」のような問題作を噛み砕いて理解するのは、ちょっと無理だったかもです(つっても今だによくわかってないっつー話もありますが(汗))

あの頃から、大人になって、この「ファイナル・カット」を観るまで、どのバージョンかは正確には思い出せませんが、5~6回くらい観たかなぁ。

観るたびごとに、何となくではあるんですが、ちょっとずつこの「地獄の黙示録」のフォーカスが、見えてきたかな、という感じです。。。

あらすじというか、物語の本流は、どのバージョンでもブレていないと思うので、このファイナル・カットをベースに、この映画について見てゆくと。。。

ネタバレしますので、ご注意を。

この作品はベトナム戦争後期の1969年を舞台にしています。

アメリカ陸軍空挺将校のウィラード大尉(マーティン・シーン)は、(たぶん1回本国へ戻っていたという設定だと思うのですが)ある指令によって、サイゴンへ呼び戻される。

その指令とは、かつては優秀な軍人だったカーツ大佐という男(マーロン・ブランド)が、カンボジアの川の上流で軍の指令を無視し、現地民などを従え独立王国をつくっているので、彼を秘密裏に抹殺せよというものだった。。。

ウィラードは四人の兵士と共に、哨戒艇に乗り、川をさかのぼってゆくのだが・・・。

 

というところから、ストーリーは始まって行きます。

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その川を上流へ遡上する過程で、ウィラードの目を通して、この戦争の狂気の姿を描いてゆく、という形になっています。

途中、キルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)が率いる空の騎兵隊であるヘリコプター軍団にヌン川までの護送を頼むシーンがありますが、川底がある程度の水深がないと、という哨戒艇のチーフ(アルバート・ホール)の発言に、キルゴアは、ヘリで哨戒艇を吊り上げて運ぶことを指示。実際にやることになるのですが、このシークエンスで「サーフィンをやるために、そこにあるベトコンの前哨基地が邪魔なので」ということで、夜が明ける頃を見計らって、ウィラードたちも同乗させたヘリの騎兵隊が襲いかかるシーンは、衝撃的です。

キルゴアの命令で「朝日をバックに、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を大音響で流しながら」突っ込みます。

画像 zilge blogspot.com 人生論的映画評論 さんより

このシークエンスは、この映画を観た方は、とても強い衝撃を受けたのではないかと。

サーフィンに向いている高波が立つポイント、という理由で、そこにある敵の基地や集落が邪魔だから、潰しちゃおうという。。。

この奇襲攻撃の一連の映像は、戦争の非人間性を強く感じさせます。実際は無かったエピソードかも知れませんが、コッポラ監督の表現したかったものが、何となく垣間見えたようなシークエンスです。

ベトコンが攻撃してくるヤシの林をナパームで焼き払ったあとで、キルゴアがヘリから降りて、部下たちに語りかける件で言う、「朝のナパームの匂いは格別だ・・」は、ベトナム戦争という物の“狂気”を感じさせるセリフとして、知られています。

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余談ですが、ここで流れた「ワルキューレの騎行」ですが、たしか作家の藤本義一さんだったと思うのですが、

「私はこの「地獄の黙示録」は映画としてすごく好きだ。だから敢えて言うのだが、あのシーンで流すのは「ワルキューレの騎行」じゃないだろう。ワルキューレ~では、あまりにも映像と合いすぎていると思う」と。

この藤本義一さんがそうおっしゃったのを聞いて、なるほど、と思ったのを憶えています。

確かに、ワルキューレ~だと、あのシーンと、無理なく合ってしまう、な、と、思っていたので。。。

別の(クラシック疎くてよくわからないのですが)曲、たとえば、メジャー、え、クラシックだと長調??の曲にしたほうが、あの“狂気”をより鮮明に浮かび上がらせるのかな・・・という気はします。。

まぁ、昔、二次大戦中のドイツで、兵士や民衆の士気を鼓舞するために戦場の映像に「ワルキューレの騎行」を付けて流したと、もれ聞いたことがあるので、それを敢えて流すことによって、ベトナム戦争の「狂気」を浮かび上がらせよう、とコッポラ監督は考えたのかも知れませんが。。。

時系列前後しますが、このカーツ大佐には、殺人罪が適用されています。ベトナム人4名を「二重スパイ」として処分した事に対して。

ウィラードの心の声で「戦場で殺人罪?・・レース場で速度違反を取り締まるか?・・欺瞞だ」という言葉が印象的です。

この言葉は、ストーリー終盤のカーツの「人殺しが人殺しを裁く?・・欺瞞だ」という言葉につながってゆきます。

ウィラードは船上でカーツ大佐に関する記録を確認します。

カーツという男は、陸軍士官学校を首席で卒業。様々な輝かしい経歴のあと、1964年に顧問団に随行してベトナムへ・・。そこが「つまずき」の始まり。大統領あてに送った文書は途中で握り潰される・・・内容に問題があったのだ・・。その後38才という年齢で空挺部隊を志願。

1966年特殊部隊に加わってベトナムへ復帰・・・。徐々に彼のとる作戦は、劇中の軍上層部の表現では「不健全」になってゆく。。。

この「地獄の黙示録」は5~6回観たのですが、オープニングのヘリが映ったあとにヤシの林がナパームで炎を上げるシーンは、観るたびにイメージが鮮烈になります。ドアーズの「The End」がこのシーンに使われた意味みたいなものも、だんだん理解できるような感じになって来ます。

この映画、原題は「Apocalypse Now」ですが、直訳すると「今、黙示する」か「今、黙示せよ」みたいな感じだと思うのですが、クリスチャンの友人に聞いたところでは、Apocalypseはもともとはギリシャ語で、黙示録は新約聖書の中で唯一の預言書で、キリストによる救いについて書かれたもの、とのこと。

当時のエピソードとしては、最初はハーヴェイ・カイテルがウィラード役だったらしいですが、撮影開始早々に降板。色々候補があがったらしいですが(ハリソン・フォードも候補に挙がっていたらしいですが、「スター・ウォーズ」撮影の兼ね合いもあって、実現しなかったのと、漏れ聞いた話ではロバート・レッドフォードにもオファーしたのですが「自分のイメージと違う」という事で断られた、という話もあったような・・)、結局、マーティン・シーンに決まったという話です。

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観た方は気付いたと思うのですが、ウィラードがこのミッションを告げられるシーンで、ハリソン・フォードが上官の一人として出てますね。なんでも、撮影の見学に来た際に、出演となったらしいです。

wikipediaによると、撮影はフィリピンで行われたのですが、台風でセットが全て壊れたり、登場するヘリコプターはフィリピン軍のものを借りたんですが、フィリピン内の内戦で使われるので、借りるスケジュールが変更になったりで、撮影予定期間が120日程度を予定していたのが、倍以上の540日ほどかかったとのこと。当時のマスコミはなかなか終わらない撮影を揶揄して「Apocalypse When?」なんてタイトルで記事を書かれたりしていたらしいです。

制作費も、撮影の期間が延長されるに伴って、当初約35億円くらいを見込んでいたのが、結果的に約90億ほどかかったとのこと。

これに出演者のトラブル(カーツ役のマーロン・ブランドが、約束違反で「筋肉質」という設定なのに、大幅に太ってやって来たこと。戦場カメラマン役のデニス・ホッパーがドラッグやってて、なかなかセリフを覚えない。マーティン・シーンは撮影途中で心臓麻痺になって、倒れた、etc・・・。)に見舞われて、コッポラ監督も心労で一時倒れたらしいです。。。

ストーリー半ばで、プレイメイトたちの慰問ショーのシークエンスがあります。これは最初に公開されたバージョンにもあったのですが、その後のプレイメイトたちにウィラードたちが遭遇するシーンは、「特別完全版」のみに使われていて、この「ファイナル・カット」では出てきません。

ウィラードたちの船が、ベトナム人の乗ったジャンク船に遭遇する一連のシーンは、戦争の狂気を強く感じます。撃ち終わってから自分でその結果に驚く17才の兵士クリーン(ローレンス・フィッシュバーン)の表情が印象的です。ウィラード曰く「機銃を浴びせておいて、それを治療する・・・それが我々のやり方・・欺瞞だ」。凄いシーンだと思います。

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ストーリーでは、川を遡る道中で、一人、一人と命を落としてゆくのですが、前述の17才の兵士ミスター・クリーンの最期の横で流れ続けるカセットテープの母親の声が、堪らなく切ないものがあります。

そのあとで、ウィラード達は、フランス人の入植者たちに遭遇するのですが、これは最初に公開されたバージョンには入っていないシークエンスです。

ここで交わされる会話は、正直のところ私はよく解らないのですが、フランスの入植者たちの、この戦争への思いや捉え方を描き出しているエピソードだと思われます。

ミスター・クリーンは、ここで埋葬されます。あの母親の声を聞いたカセットレコーダーと共に。。。

そしてウィラードと、コックになる予定だった“シェフ”(フレデリック・フォレスト)とサーファーのランス(サム・ボトムズ)を乗せたこの船が、カーツの“王国”に到着するのですが・・・。

ここから後に描かれるシーンや、カーツとウィラードそしてデニス・ホッパー演ずる戦場カメラマンのあいだで交わされるセリフは、哲学的で、何度観ても、理解が難しいんですが、前述の「人殺しが人殺しを裁く・・・欺瞞だ」というのがまずあるのかな、と。

あと、とても強く印象に残るのは、カーツ大佐がかつて、ベトナムの子供たちに、ポリオ(小児麻痺)の予防接種をしてあげたときのエピソードです。とても強いインパクトを残す回想エピソードです。

この回想のセリフに、この映画のフォーカスがあるのかな、という感じです。

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余談ですが、マーロン・ブランドが約束違反で太って撮影に現れたので、コッポラ監督が苦肉の策で、カーツの姿を、光と影を使って全身が見えないようにしたのが、逆に神秘的な結果になったのかも知れません。

カーツは「恐怖だ・・・恐怖には顔がある・・・」と、何回観てもよく解らないんですが(汗)。。。

ウィラードのような人間が来ることをカーツは待っていたような。。。

この「地獄の黙示録」は「ディア・ハンター」よりも早く撮影に入ったのですが、前述のように出来上がるまでとても日数がかかったので、公開は「ディア・ハンター」よりも後になったとのこと。確かに公開時期はそうだった記憶があります。

この映画は、カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルム・ドールを受賞しております。

評論家たちのこの作品に対する評価は、様々だった記憶があります(前半は満点、後半は0点、とか・・・。)

コッポラ監督のコメントで憶えてるのは、「この『地獄の黙示録』はカンヌをもらったりして、世界的にヒットして、我々を助けたが、次の『ワン・フロム・ザ・ハート』では痛手を受けた」というものでした。

フランシス・コッポラほどの監督でも、苦労があるんだな、と、思ったのを憶えています。

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コッポラ監督は、この映画の、テーマは何ですかという問いに「撮ってるうちに、解らなくなった」と答えたとか。。。

それにしても、色々な意味で、スゴい映画だなと、思います。。。

 

 

 

ヒッキー的満足度★★★★☆

 

 

 

 

 



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (鉄)
2021-05-06 20:22:50
なんやかやと曰く付きの作品だね。機会があったらまた観てみたい作品だね。
鉄さん こんばんは♪ (ヒッキー)
2021-05-06 21:22:49
コメント、有難うございます(^0_0^)

いまだに難解な、問題作ですね。

アメリカ軍の協力を得られなかったので、ヘリの撮影は、大変苦労したそうです。
ある日はフィリピン軍が使ったのを、塗装を急いでアメリカ軍に塗り替えて、撮影が終わるとまたすぐフィリピン軍に塗り直して、返したり、大変だったらしいです。

ベトコンの基地へアメリカのヘリが降り立ったシーンで、ベトナムの女性が手榴弾を投げ込んでヘリが爆破されるシーンなんか、どうやって撮ったのでしょうね??

ベトナム人のジャンク船に勢い余ってクリーンが機銃を浴びせてしまうシーンも、衝撃的です。

「機銃を浴びせて、終わったら軍規に則って、今度は治療する」という矛盾が描かれていました。

まあ、何にしろ、スゴい作品ですね。。。
Unknown (snowdrop)
2021-05-07 21:13:34
ヒッキーさん

こんにちは😃


読んでて思い出してきました😄🌸


>余談ですが、マーロン・ブランドが約束違反で太って撮影に現れたので、コッポラ監督が苦肉の策で、カーツの姿を、光と影を使って全身が見えないようにしたのが、逆に神秘的な結果になったのかも知れません。


そんな裏話が(゚д゚)!

全身、見えないようにした!面白いですね😆


背景が暗かったのは
光と影のトリックだったのですねΣ(゚Д゚)



>カーツは「恐怖だ・・・恐怖には顔がある・・・」と、何回観てもよく解らないんですが(汗)。。。



私にも分からないなー🤔

惜しいところでしょうね😅


>ウィラードのような人間が来ることをカーツは待っていたような。。。


それは、あり得ますね😊
いつかは来るだろうと🎵

そこに留まって王国築いていたら
そりゃ〜国から
何やってるの?って
戦争してるのに、どうなってるの?
なってしまいますよね😅
見切られて暗殺でしたけど😓


ほんと色んな意味で凄い映画でしたね😊🌸
Unknown (snowdrop)
2021-05-07 21:15:57
追伸、
こんばんは と書いたつもりが、
あれ?こんにちは
になってました(笑)(^o^;💦

すいません🙇
snowdropさん こんにちは♪ (ヒッキー)
2021-05-08 06:48:22
コメント、有難うございます(^^♪

>マーロン・ブランドが約束違反で太って撮影に現れたので、コッポラ監督が苦肉の策で、カーツの姿を、光と影を使って全身が見えないようにした

そうなんですよ!
渡してあった台本には「筋肉質の」って書いてあったらしいですが、蓋を開けたら、ブヨブヨに太って撮影に現れたらしくて、コッポラ監督は困ったらしいです(^0_0^)

>カーツは「恐怖だ・・・恐怖には顔がある・・・」と

何回観ても難解な(?)セリフですね~!

snowdropさんの観たバージョンにはいっていたかどうか判らないのですが、カーツがベトナムの子供たちに小児麻痺の予防接種をしてあげた、あとの「戻ってみると、注射をしてあげたほうの子供の腕が、切り落とされて、山積みになっていた。。。私は・・・年老いた女のように、声を上げて、泣いた・・・あのことは、絶対、忘れない・・・」
という述懐が、忘れられません。
たぶんそのエピソードが、カーツのその後の生き方に、大きな影響を与えたのだと思われます。

>ウィラードのような人間が来ることをカーツは待っていたような。。。

待っていたんでしょうね、「脱走兵」としてでなく「軍人」として死にたかったのだろう、とウィラードのセリフがありました。

>大統領あてに送った文書は途中で握り潰される・・・内容に問題があったのだ・・。

おそらく、この戦争に対する、批判の内容だったのでは、と推測されます。
狂っているのは、本当にカーツなのか??違うんじゃないのか??という思いが、映画を観ている我々にそんな疑問が湧いてきます。

キルゴアは12時間ぶっ通しでひとつの丘を攻撃したときのことを話していましたね。「丘にはただガソリンの匂いだけが・・・その匂いを嗅いだ時・・・・・”Victory”(勝利)を感じたよ・・」

スゴいセリフだと思いました(+o+)

余談ですが、ハリソン・フォード、若くて、カッコよかったですね~(^0_0^)。。。
追伸 (ヒッキー)
2021-05-12 09:59:34
>スゴいセリフだと思いました(+o+)
の「スゴい」は、あくまでもマイナスの意味で、です。

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