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焼津谷島屋 続き

前回の続き。

本部事務所を焼津谷島屋登呂田店の2階に移転する計画が浮上した際、ネックとなったのが防火区画だった。

防火区画とは火災が発生した際に火災の拡大被害を最小限に抑えるために、建築物の区画を制限したもの。

登呂田店の場合は、2階の床は1時間耐火構造ではないため、2階の床以外で区画する必要があった。

 

正直、設計段階で登呂田店に何度足を運んだか分からない。正直、目を閉じれば工事前の状態がはっきりと脳内でイメージできる。

苦労の末、防火区画はコミック売り場とその他エリアの境界で区画することにした。(詳細は省略)

ここが最も効率的に区画できるからだ。

吉野石膏のSウォールという1時間耐火認定の工法を採用。

この部分の施工は実績のある会社に一次下請けとして任せることにした。

 

既存への施工というのは、現場での判断が新築時より難しい場合が多い。

時には経験則による判断が過ちを招くこともある。防火については、建築基準法と消防法を混同し、消防法でOKなら基準法もOKとうっかり勘違いしてしまうこともあるらしい。

そもそも人は自分に都合の良い情報に流されがちである。

認定工法だから認定通りに施工すればよいわけだが、案外それが出来ない人も多いことを知った。

防火区画の監理については知り合いの建築士に費用を支払ってサポートをお願いした。私一人ではとてもチェックしきれないと思ったからだ。

これが功を奏したと言っても良い。

今回の登呂田店の工事は、あらゆることを出来るだけ想定していたが、この一手は我ながら神がかっていたように思う。

 

ようするに今回の防火区画工事は、紆余曲折あった。

他にも様々な難しい工事はあったが、これにくらべたら正直些細なものである。

 

吉野石膏の担当にも2度も現場に足を運んで頂き、協議や認定工法通り施工されているか要所要所をチェックして頂いた。

もちろん、市の担当に工事中に何度か相談や確認をしている。

納まり図を事務所に戻ってCADで作図する時間などないので、夜遅くに現場で原寸の納まり図を書き、それをLINEで関係者に送信して、意見を聞き、また手書きで修正の繰り返したこともある。

(流石に市の担当者に対しては、手がきの原寸図をコピーし、現場写真と一緒に持参して説明している。)

フリクションのボールペンがこれほどありがたく思ったのは一級建築士の製図試験以来だったと思う。

 

こういう当たり前のことをきちんとやるのは時間も手間もかかるが、おろそかにすると後々に取り返しがつかないことになることも多い。

今大変な思いをするのか、後々取り返しのつかないことで大変な思いをするのか、よく考えれば前者を選択するのは当然だろう。

 

Sウォールの施工指導書にも疑義が生じた場合は吉野石膏に相談という記載がある。

おそらく認定工法のマニュアルには、必ずこの手の文章が記載されているのではないかと思うが、この一文がいかに重要であるかを現場管理者は理解しなければならない。

とどのつまりは、疑義を感じる能力、これは特に現場管理者に必要な能力だと思っている。

 

検査時に担当者が合格とすれば、問題ないという考えは通用しない時代になっている。

何十年後に例えば防火区画で大変な偽装が発覚したら一斉に過去の工事についてチェックが入る可能性もある。

その際に胸を張って問題ないことを証明できる資料を残すことも重要である。

 

自分の中で抱え込まないで信頼できる方に相談することも重要であり、ぶれそうな自分の考えに活を入れてくれる存在も大切にしなければならない。

自分の能力を過大評価しないで、脇に信頼できる自分より知識や経験が豊富で誠実な人を置くということも必要だと痛感した。

 

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焼津谷島屋登呂田店

昨日は、焼津谷島屋登呂田店改修工事の完了検査。

焼津市の担当者2名が、提出した計画通りに工事が行われているかを確認した。

検査は無事合格。

先日は、消防署の検査もあったが、これも合格している。

 

今回の工事は非常に難しい工事で、過去にいくつかの建築士事務所が計画立案を担当したようだが頓挫し、手を引いている。

私が数えて4番目らしい。

 

今回は単なる改修工事ではない。

消防法や建築基準法の解釈についても消防署や焼津市と何度も協議しなければならなかったし、4番目の私が関わるまでに様々な経緯があったことも問題を複雑化させていたように思える。

 

焼津谷島屋が民事再生法により、大きな体制の変化があり、現在の代表取締役である斉藤社長の強いご意志がなければ、おそらくはいくら私が奮闘しても未解決のままであったと思う。

私自身も経営者ではあるが、経営者によって会社は大きく変わるということを痛感した。

斉藤社長の信頼を裏切らないように誠実に仕事をしなければということは常に心掛けていたように思う。

 

今回の工事で最も大変だったのは、防火区画の新設である。

既存建物へ防火区画を設けるのは正直かなり難しい。

 

今回は吉野石膏が国土交通省の認定を受けた一時間耐火構造の壁を設けることにしたのだが、認定通りに施工しているかどうかという確認が今回の工事においては要と言い切ってよい。

なので特に神経質に現場チェックを重ねた。

もちろん、施工中の写真や吉野石膏担当との議事録等もきちんと保管している。

昨日の検査が合格とはいえ、屋根裏まで職員がチェックしたわけではない。

私も事前に相当数の工事写真や資料等を提出しているが、国内のどこかで防火区画の不備が発覚し、大きくメディアで取り上げられれば、再度厳しいチェックが入らないとも限らない。

10年後、20年後に備えておくことも私の仕事だと思う。

 

鉄骨造でこれだけの規模、それも不特定多数が利用する建物でこれだけ大規模な改修工事を手がけられたことは、大きな自信につながったと思う。

正直、数多くの設計事務所が手を引いた気持ちも分からないでもない。

それぐらい難しい仕事ではあったが、私自身はこの仕事が今後のターニングポイントになるような気もしていた。

 

良い機会を頂けたと思うし、この経験は次に活かせるようにしたい。

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