建築士伊藤の防災教育・耐震診断・耐震補強実績ブログ
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寺院や設計のこと
最近よく指摘されているようですが、寺院を取り巻く環境も大きく変化しています。
その変化については、静岡県仏教会のHPで詳しく書かれているため、ご関心がある方はぜひご一読下さい。
私は有難いことに何件か寺院建築の仕事に携わることができ、様々なご住職様から多くを学ぶことができました。
そんな私にとって寺院とは特定多数が利用する建築物であり、住宅の延長線というよりは、商業施設に属するというか類するものと考えています。
寺院は一級建築士なら基礎的な知識として理解している「管理ゾーン、共用部ゾーン、利用者ゾーン」を分離しなければならない建物です。
加えて、葬祭場ではなく、お寺で葬儀や法要を行う場合、管理者ゾーンの検討は利用者ゾーン同様に重要となります。
他寺からの応援や食事等の搬入路なども配慮する必要があるからです。
(これはあくまで個人的な意見ですが、今後は、葬祭場ではなく、お寺で葬儀や法要を行う方が増えるような気がしています。その方がメリットが多いように思えるからです。ただ、理由については別の機会に書きたいと思っています。)
さらに重要な予算内でどこまでの工事が可能なのかどうかという点や現状の建物規模や敷地条件にも気をつける必要があります。
建築基準法や消防法等といった法適合についてもきちんと守らなければなりません。
そして、寺院建築の文化を継承・尊重するという点も忘れてはならないでしょう。これは技術継承も含まれます。
このままの流れでは、おそらく寺院建築は特殊技能というカテゴリーになり、ごく一部の設計事務所や工務店しか対応できず、知識も配慮もない工務店による改悪工事が横行する可能性があります。
お寺を管理するご住職にも建築も知識がなければ好き勝手に工事されてしまう危険性は将来ありえるのです。
寺院建築の場合、1~2年ではなく、10年から20年ぐらいの長期計画で進めなければならないことが多いです。
檀家様への理解や許可も当然必要です
どうしてこの工事が必要なのか、分かりやすく説明し、利点を理解してもらい、賛同して頂く。
これが一番難しいかもしれません。
これまでの経験で、その際に住職をサポートする存在が必要なのだなと思うようになりました。
以上の点から建築士という立場が役立つことが多いのではないかという風に手ごたえを感じることもありますし、まずは建築士に相談すると良いと思っていただけるご住職様や檀家様が増えるような仕事をしてきたいと思うのです。
寺院建築で建築士を関わらせることにより、ご住職の代理として、工事が契約通りに適切に行われているかどうかを第三者がチェックできます。
透明性や品質が確保され、工事後の報告書も用意できるため、檀家様への対応もより誠実に行うことができると思います。
もちろん、高い技術を持つ職人の存在が必要不可欠です。そういった職人が仕事するうえで参考になる図面を用意できなければ、結局のところ大きな負担を現場に強いることになります。
職人に認められてこそ本物の建築士ではないのかなと思いますし、あの人は職人ではないが職人のことを考えて資料を整えてくれるという風に思ってもらえるように丁寧に一本一本図面に線を引くようにしたいですね。
だから寺院建築に長けた職人さんとの出会いは、今後も心がけていきたいと思っています。
ご住職から何か建築のことで困ったら伊藤さんに連絡すると言ってもらったり、職人から一緒にまた仕事したいと言ってもらえるのが、私にとっては理想です。