じょいフルデイズ

おいしいとか、いい匂いとか、手作りとか、覚悟とか

進々堂

2006-02-26 23:55:55 | じょいフルな日々
~(瀬崎祐のHPより抜粋)~
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百万遍の交差点から北白川へ。
 銀閣寺道へ続くゆるいのぼり坂の左手の進々堂という古い大きな喫茶店は、今もあった。クラブ活動を終えたあとに仲間とよく行った店だ。コーヒー一杯で何時間も粘ってはとりとめもない話で時間をつぶしていた。講義の合間に本を読みに行ったりしていた。でも、あのころはゆっくりと時間が流れていたためか、店内の客は皆そうだったのだ。
 通りに面した大きな窓からは昔と同じような店内の様子がうかがえた。ジョギングの最中は汗びっしょりになっているために、むやみに喫茶店などに入ることはできない。
 明日、コーヒーを飲みに来てみようかと考える。
~(中略)~

 翌日の昼食は、百万遍の近くのあの進々堂で食べた。
 パンの製造販売をしている店が喫茶店も併設したという店なので、食事のメニューもパンばかりである。自家製カレーパン・セットを注文した。
 昭和五年から営業しているという広い店内には無造作に大きなテーブルとベンチ のような椅子が並んでいる。通りと反対側にはガラス戸があり、小さな裏庭に出られるようになっている。客の大半は、今も学生風の若い人たちばかりであった。コ ーヒーを飲み終わった後も黙々と文庫本を読んでいる若い女性もいる。
 ゆっくりとした午後の時間が流れていく。
 ふと息子のことを思う。生まれて数年を下鴨の小さな借家で過ごし、二度目の京都では幼稚園から小学校の六年まで通った。そんな息子にとって京都はどんな街だったのだろう。私の転勤にともなって中国地方に転居して、息子はそのままそこで大学生活も送った。
 社会人となり、今は私と同じ会社で働いている。
 たまに会社の廊下で出会うと、おお、と軽く合図をしてすれ違う。社員食堂で一緒になったときにはお互いの部署の近況を語り合ったりする。そんな息子にとって懐かしい街はどこになるのだろうか。京都の借家の前の狭い通りで、糸をつけただけの折り紙を凧にみたてて走り廻ったり、十円硬貨を車のハンドルにみたてて運転の真似をしていた幼いころの息子を思い浮かべる。

 観光客に向けてであろうか、歴史を感じさせる天井の高い進々堂の店内は撮影禁止になっていた。他の客の迷惑になるからなのだろうな、と考える。
 写真で撮れるものなんて、所詮は通り過ぎる人にとってのものだけだ。その風景に住んでいる人にとっては、写真に写しきれないものがたくさんあるのだ。
 昔の風景を訪ねてジョギングで走りぬけた京都の街であったが、そこが懐かしいのは、そこに住んでいた私が待っていたからだった。
 そんな時間に出会った私には、かって暮らした下宿や借家の写真を撮る必要はもうどこにもなかった。

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今日はちょうど前期試験の日だったよう。
百万遍でバスを降りると
試験を終えたばかりと思われる高校生が大勢バス停に並んでいました。
黒い髪に規定の制服姿でゾロゾロと列になっている姿に
思わず「お疲れさま」と声を掛けたくなります。
瀬崎祐が「仲間とよく行った」という進々堂に入りました。
暗い落ちついた店内や使い込まれて柔らかい机やら、
今はもう子供や孫のいる人達が
その昔はここで何時間も友人や恋人と学生時代を過ごしたのかと思うと
こんなお店が思い出の場所となっている人達が
少し羨ましくなります。
進々堂を出て哲学の道から北白川へ歩いているうちに、
雨が上がってしっとり湿った夜になりました。
車の多い大通りを渡って登園していたと思っていたのに、
いま見るとそれはびっくりするほど小さな2車線の小道でした。
木の柵とか屋根の風見鶏とか、幼稚園の頃の自分の目に入っていたものが
22年経っても同じように目に飛び込んで来ます。
京都なんて観光のために訪れるよその土地のはずなのに、
そこに自分が懐かしいと感じる風景があるのがとても不思議な気がしました。

瀬崎祐が通っていた大学の、
学生紛争で集会場になっていたという時計台。
開校20年かそこらの田舎の大学に通っていたじょいフルは
歴史ある総合大学のキャンパスの迫力には
ただただ圧倒されるばかりです。
あの高校生達はみんな
この時計台に憧れながら今日の試験に臨んでいたのね。



瀬崎祐さま、
今は時計台記念館には間接照明と白い壁の
フレンチレストランが出来ているんですよ。
あなたの娘が観光客としてそこを訪れて、
京都旅行の最後に食事をして帰るような
お洒落なレストランです。





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