ウクライナ事情通の方からいただいた情報をもとに修正しました
ウクライナの新型インフルエンザ報道、その背景に”政治的要素”があるとはあちこちに書いてあります。大統領と首相が仲悪いぐらいは、サラリと書いてあります。
でも、具体的に、誰と誰がどう戦っていて、誰それが噛んでいて、結果どれそれの情報が誰それに流れて、結局どれぐらいの影響があって・・・という肝心なところは、(ロシア語で検索する能力がなければ)なかなかわかりませんでした。だから、ウクライナ発新型インフルエンザ情報に政治的バイアスがかかっているとは聞いても、「どれほどのもんじゃい!」とわかりませんでした。
今回、米Newsweek誌が、その”政治的要素”の部分を特集しています。日本語版で読めます。
Newsweek日本語版↓
http://newsweekjapan.jp/stories/world/2009/12/post-772.php?page=1
新型インフル危機は選挙向け演出(2頁あります)
Ukraine's Phantom Flu
登場人物は(この部分、いただいた情報をもとに貼りかえ)
ティモシェンコ=現首相
2004年のオレンジ革命で現大統領のユーシェンコと同盟を結び、
首相に就任したが、翌年ユーシェンコから解任された。
その後、議会選挙に勝利し2007年末から再度首相に就任している。
現在ではユーシェンコを見くびり、自分が大統領候補に名乗りをあげている。
ベンゾレツ=ティモシェンコ首相の選挙参謀。
ヤヌコビッチ=2004年の大統領選挙で一旦当選となったがオレンジ革命で、野党に転じる。
一時首相も務めたが、現在は最大野党の党首。
これまでの世論調査では次期大統領の最有力候補。
ユーシェンコ=現大統領。2004年のオレンジ革命で大統領に就任。
経済的失策やロシアとの関係悪化などで国民の支持を失っており
次期選挙での再選は絶望的。
どうやら、ティモシェンコvsヤヌコビッチvsユーシェンコという方々が三つ巴の戦いをしている最中に、ベンゾレツという懐刀が演出したという構図に読めます(しかしそれにしても舌を噛みそうだ・・・)
(以下、かいつまんだ部分のみ引用。できれば上記クリックして全文読んでください)
大統領選に出馬しているユリア・ティモシェンコ首相の選挙アドバイザーのタラス・ベレゾベツによれば、ティモシェンコは選挙戦を有利に進めるため、流行中の新型インフルエンザへの恐怖を意図的にあおったという。
首都キエフのレストランで取材に応じたベレゾベツは、「(恐怖の)幻影をつくりだしたうえで、土壇場で白馬の騎士にピンチを救わせた」と発言。ウクライナのメディアに広がる「パフォーマンス疑惑」を認めた格好だ。
ウクライナは10月以降、新型インフルエンザの大流行によるパニックに支配されている。検疫所が設置され、学校が閉鎖され、薬局に人々が殺到。もともと脆弱だった医療体制はこの事態になすすべもなく、3週間で400人近くが亡くなった。
ティモシェンコはすぐに行動を起こした。治療薬タミフルを配布する手配をし、11月2日朝にはキエフ空港で記者会見を行った。彼女は国内の9つの地域を隔離し、すべての学校や大学を閉鎖し、「21世紀のペスト」と呼ばれるウイルスと戦うため1億2500万ドルの緊急支援を大統領に要請。さらに、あらゆる大規模な会合や政治集会を禁止した(偶然にも、自身の政治集会を終えた後だった)。
新型インフルエンザの流行は、ティモシェンコにとっては願ってもないタイミングでやってきた。ティモシェンコは民主化を求めた2004年のオレンジ革命のヒロインを自認しているが、大統領選ではオレンジ革命の敗者であるビクトル・ヤヌコビッチに敗れそうな気配だった。
オレンジ革命の同志だったビクトル・ユーシェンコ大統領との中傷合戦、ガス供給をめぐってロシアと「密約」を交わした疑惑、そしてウクライナ経済を破綻から救う手腕がないという評価。これらが重なって、ティモシェンコの首相2期目はさんざんだった。今年第3四半期にGDPが15%縮小し、ティモシェンコとユーシェンコ大統領の小競り合いが続くなか、5年前には47%あったティモシェンコの支持率は今年10月には14%に低下した(それでも夏よりは持ち直している)。
一方、ユーシェンコに毒をもった疑惑をかけられたことのあるヤヌコビッチは、国民から信頼されているとは言いがたい。それでも、彼の支持率はティモシェンコの2倍に達した。
だが、自身がでっちあげた新型インフルエンザ騒動への精力的な対応のおかげで、ティモシェンコの支持率は着実に回復し、今ではヤヌコビッチとの差はほとんどなくなった。出し抜かれたヤヌコビッチはマスクの増産を指示して反撃を試みたが、ダメージは否めない。