新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

免疫低下状態の感染者にはタミフル増量を

2009-12-04 12:44:43 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

ここ最近、タミフル耐性例の発生で有名になった2群ーUKのウェールズと米デューク大ーの教訓、免疫抑制状態の感染者では、タミフル耐性を獲得しやすいから、場合によっては投与量を増やさなければならないのではとCIDRAPの報道。

  • ウェールズの群では、タミフル耐性8例中、3例は院内感染。3例はまだ入院中で1例は重態。8例とも血液疾患罹患中。 ただし(インフルの)重症度はタミフル非耐性例と同じ。
  • デューク大の群では4例中3例死亡。死因特定に至らず。
  • 両群ともに、ケアにあたった医療スタッフには感染しておらず、健常者にどんどん感染拡大していく風ではない
  • 免疫抑制状態の患者は感染しやすく、治療難しく、かつ、耐性を獲得しやすい。その基礎疾患にインフル症状が隠れやすく、耐性獲得のことも考え合わせ、医師は特に注意深くあるべき。
  • 臨床的判断が重要であるが、免疫低下状態の患者がインフル症状を呈したとき、タミフル投与量を増量して中断せず投与継続する必要があるのではとWHO談。
  • いったんタミフル耐性例が免疫低下状態を扱う病棟で認められたら、ただちにリレンザにスイッチする必要がある
  • 季節性H1N1耐性例(ソ連型)が拡大したスピードを考えると、耐性発生させないように注意を払わねばならない。
  • 過去2週間で、タミフル耐性例は57例から96例に拡大した。うち3分の1は、悪性血液疾患(多くの場合白血病をさす)や移植後免疫低下状態であった。タミフル耐性例はすべてきちんと分析しなければならないが、現時点では公衆衛生上脅威には至っていない。

白血病じゃないけれど、管理人も非常勤先で免疫低下状態のおばあちゃんを抱えています。目の前の現実話としてしっかり刻みます。

ソースは12月2日付CIDRAP↓
http://www.cidrap.umn.edu/cidrap/content/influenza/swineflu/news/dec0209resistance.html
WHO: Resistant flu clusters warrant greater vigilance, treatment tweaks

 the medical news↓
http://www.news-medical.net/news/20091204/WHO-investigates-Tamiflu-resistance-updates-antiviral-recommendations-for-H1N1-patients-with-severely-compromised-immune-systems.aspx

 

 

 


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ベラルーシ医師の叫び(説明のつかない肺炎)

2009-12-04 11:58:22 | インフルエンザ:海外の動き/海外発生

ベラルーシ、ちょうどウクライナの真北に位置する国ですが、「まったく説明のつかない非定型肺炎で若年者の犠牲が相次いでいる。国際社会の協力を」とベラルーシ卒後教育アカデミー議長補がうったえ。
 過日のウクライナは、首相の選挙参謀がラウドスピーカーで叫んで回るという構図でしたが、こちらは、政府権力側は沈黙、現場民間が悲鳴という、事情が異なるようです。

  • Mikalai Shaulau氏。肩書きはan infectious disease specialist, assistant of Infectious diseases chair of the Belarusian Academy of postgraduate education
  • 公開書簡でうったえ。ベラルーシ非定型肺炎流行をうったえ、広範囲の反応を要請。
  • ”非定型肺炎”の意味するところは、これまで知られた微生物ではない、何らかのウイルスを含む未知の何らかで起こっているもの。市中肺炎の形で流行し、感染者は3~5日で致死的経過をたどる。犠牲者の多くは若年者。
  • 政府は”未確認”としているが、それはその通りで、何も検査が行われていないのだからわかりようがない。数字も明らかにしていない。
  • コンサルトで訪れた病院では、ICUにて一晩で4名亡くなった。うち1名は妊婦。症状は極めて重く進行し、人工呼吸器を用いて期待される効果をあげることが出来ない(Pneumonia has so grave development that artificial pulmonary ventilation does not give an expected result)。我々はまったく説明のつかない病気に直面している。何とか救命しえたケースもある。しかし残念ながら、人工呼吸器を使い助かった者もいる反面、多くは亡くなっている。
  • 世界の医学界、特にWHOに救助を要請。ロンドンにもモスクワにも、検体を調査能力のある検査研究機関がある。政府が援助を要請すれば、WHOは拒否することはないであろう。
  • 新型(豚)インフルエンザでは、良性~ほどほどに重症例までである。死亡率は高くない。でも、なぜ10月11月から人々が死にだしたのか?何が変わったのか?ウイルスか?人間か?私は、その答えを知りたい。保健当局のリーダーシップのもとに。

 私達はウクライナの件で振り回されつつ教訓を得ました。ですので、少々慎重に読んでみましょう。

  • まずは、とりあえず”選挙”だとか”政敵”だとかいう要素は出てきていないようです。
  • この公開書簡の著者Shaulau氏とは?an infectious disease specialist, assistant of Infectious diseases chair of the Belarusian Academy of postgraduate education という肩書きから推測されるのは、①感染症専門家である②アカデミー感染症部門でassistant of chairはトップのボスではない。権力側ではなくて、民間人という位置づけか。マスコミがきちんと取上げて英語で発信しているところから、(権力はなくとも)その世界の人間に実力を認められ、いろいろ病院をコンサルトして回っている・・・日本でもイメージわく人いますね。
  • 権力側は動く気配を見せていない(ウクライナ事件と違うところ)。事態の存在を認めていない。検査をおこなっていないので(当然)証拠はあがっていない。で、事態に危機感抱いた感染症専門家が、海外に向けて訴える・・・
  • この構図、管理人にはフラッシュバックするものがあります。2003年4月6日に起きた事件です。当時、北京にて大使館医務官を務めSARS流行禍対応に四苦八苦していた管理人にとって忘れられない日です。当局に隠蔽され、感染者数は10人だ20人だと公式発表されていたものが、「ある軍病院だけで100人超いるよ」と現場医師が米TIME誌に発表、ついに隠蔽しきれなくなり4月20日の「実は北京の感染者数339名」発表と北京市長&衛生部長(厚労大臣相当する人間)更迭発表につながっていったのでした。

今回、この情報が英語で世界中に流れ、これからどう動いてゆくのか注目されます。

ソースはcharter97↓
http://www.charter97.org/en/news/2009/12/1/24184/
Mikalai Shaulau: We have faced completely inexplicable illness. WHO’s aid is needed urgently

 


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