新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

照会・お便りetcはこちらへどうぞ
opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

「新型インフルエンザの心理社会的影響」シンポジウム(日本トラウマティックストレス学会)報告

2010-03-08 09:33:06 | 論文/学会発表/著作

日本トラウマティックストレス学会 「新型インフルエンザの心理社会的影響」シンポジウム無事終了。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/cooperation/201003/514349.html

概略です。

<新型インフルエンザと集団パニック>
防衛医大 重村先生
テロ・大規模災害のトラウマティックストレスの第一人者。
集団反応発生に関連する主要因子として脅威の「信憑性」「度合い」「性質」があげられる。
リスクコミュニケーションの重要性指摘。
まずいリスクコミュニケーションの二例。前首相の(根拠示さず、ただ15秒のCMで)「冷静に行動してください」、古館氏の「風評被害が心配されますねぇ」(と風評被害が前提のような言い方)

<新型インフルエンザへの危機対応の中で>
兵庫高校 江本校長先生。新型インフル渦中の対策。

16日は明らかにメディアスクラムの状態。生徒をマスコミから充分守りきれなかった「悔しさ」バネに翌日から猛烈なフル回転。

役割分担 生徒対応、資料作成、文書作成、警備、総務、事務、教頭、校長。

学校の工夫。学校HPの充実。毎日決められた時間に更新し、生徒へのメッセージ発信。学校全体だけじゃなくて担任メッセージの発信。また、生徒の声をメールで聞くということも併行。今何してるか?ストレスは?と。

 誹謗・中傷をめぐって。近隣住民から、「生徒がトレーニングした公園を消毒せよ」通勤電車の利用者から「電車に乗せるな」と。警備班をつくり、住民の中にはいり対話してゆくと解決。

 マスコミ対応話しあい、しっかり依頼ということを重ね、対応も変わってきたと。 生徒アンケート生徒が気にしていたのは、学習面>部活動>インフルエンザ。発生初期の大混乱状態のさ中においてさえ、インフルエンザよりも生活の方が関心高かった。
これを受けて、2週目からはHPの内容も学習面にシフトしていった。宿題や復習のことなど。
一日2回の職員会議で情報の共有。1日2回の記者会見の前には職員会議を開き、情報を共有した状態で会見にのぞんだ。

学校は校長・教頭が管理職であとは同格のなべふた構造の組織だから、それぞれ工夫して動けた。ヒエラルヒー型の組織だと厳しいのではないかと(厚労省と木村氏・・の経緯見てたら同意!)。 

これだけの短時間にこれだけの手を次々繰り出せた手腕にはただただ感嘆。

 生徒のいない2週間だったが、かえって生徒を近く感じた2週間だったと。感動。

<新型インフルエンザ流行による社会不安と対策>
当管理人担当。

2003年SARS流行による心理社会的影響
 社会不安の推移と、その経験から学んだ社会への情報の伝え方。
心理社会的影響のメカニズム
 「不安」に対処する4パターン、「否認」の心理機制、オルポートとポストマンの法則(”あいまいさ”を減らすことが流言対策のカギ!)。噂流布の力学、流言対策否定戦略と対抗戦略。
対策のこころみ
当ブログの紹介と、何を目指し何を意図してブログやっているのかなど。
マスコミとの協働。実例。

質疑も活発にいただき、身も心も充実のひとときでした。
皆さまありがとうございました。


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「新型インフルエンザの影」が日本人社会に及ぼす影響(学会発表)

2009-03-26 23:42:01 | 論文/学会発表/著作

今日は上京、霞が関を3か所ばかしアポ→国立医療センターのセミナーとバタバタと。
国立医療センターのインドネシア&ベトナムネタは、H5N1の現場を踏んでる人がモノをしゃべっているのがヒシヒシ伝わるもので、また後日、内容紹介したいと思います。早期診断、早期介入の必要性がくどく念押されていました(当然ですが)。

明日は朝から学会発表、多文化間精神医学会、海外在留邦人や在日外国人のメンタル扱う学会で、年初来の北京鳥フル騒動やパナ問題などメンタル側面から発表予定。以下、抄録原稿のコピーです(抄録提出時点ではパナ問題明るみに出る前にて入っていませんが・・・)

というわけで、明日は発表、夜は懇親会→(多分)二次会で当ブログ運休パターンに入りそうな予感、更新なければご容赦を。

以下ペースト↓
****************************************************

「新型インフルエンザの影」の中国邦人社会への心理的影響<o:p></o:p>

       近畿医療福祉大学  勝田 吉彰<o:p></o:p>

<o:p> </o:p>

1.概要<o:p></o:p>

 本年1月、北京市において鳥インフルエンザに罹患した19歳女性が亡くなる事例が発生したのをきっかけに、現地日本人社会に社会不安が拡大し、「事実ではない噂」の流布や、外国人向け医療機関への照会殺到、タミフルを求めて声を荒げる邦人・・等の光景が展開した。本事例を考察するとともに、社会不安に向けて演者がおこなった試みを紹介する。<o:p></o:p>

2.事実関係<o:p></o:p>

 新型インフルエンザパンデミックの発生が2005年よりWHOから警告され、北京でも大使館主催の説明会が日本人会・企業関係者・日本人学校とこまめに実施され、現地日本人社会に知識が浸透していた。<o:p></o:p>

 2009年1月5日、病鳥をさばいて調理した19歳女性が鳥インフルエンザ(H5N1)に罹患し亡くなる事例が発生し、直後より、外国人向け医療機関には「マスクは入手出来るか」「タミフルは入手出来るか」「一時帰国中だが北京に戻るのは控えるべきか」等の照会が殺到した。同時に、「鳥/新型インフルエンザの人間に感染するやつが北京で発生したらしい」「タミフルが無いと死んでしまう」「倍量のまないと効かない」「日本人には食糧を売ってもらえなくなる」等の“事実ではない噂”が流布し、日本の危機管理会社まで照会が殺到する騒ぎとなった。110日には新華社通信が感染拡大していないことを発表、12日の濃厚接触者医療観察解除発表を経て徐々に鎮静化していった。<o:p></o:p>

 この間、演者は現地医療関係者と情報交換を重ねながら、ブログ(「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」http://blog.goo.ne.jp/tabibito12)での情報提供、“事実ではない噂”の否定など行った。<o:p></o:p>

3.考察<o:p></o:p>

 北京在留邦人は、様々な中国側要因・日本側要因から慢性的にストレス負荷状態におかれている。また、近年の食の安全問題、鳥インフルエンザの散発、経済危機等より不安要因も増加している。このような中、何かのきっかけで社会不安が燃え上がる素地が存在するものと思われる。また、新型インフルエンザは未だ現存しない架空の感染症であり、その被害想定も様々であり、情報不足の中で様々な悲観的認知を生み出しがちである。これら、「慢性的ストレス負荷状態」「最近の社会問題」「悲観的認知」が併さり、強い社会不安からパニック状況に至ったものと思われる。<o:p></o:p>

対策として、こまめな情報提供、“事実ではない噂”の拾い上げと否定が有効と思われる。また、駐在員派遣企業は、これらの要素に配慮し、食糧備蓄・タミフル事前処方・情報提供等強力なサポートを展開すべきであろう。<o:p></o:p>

 

コメント (2)
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新型インフルエンザで予想される心理的反応と備え

2008-08-28 09:41:36 | 論文/学会発表/著作

あるご縁から、隣県、岡山の産業保健推進センターにて相談員をつとめさせていただいているのですが、ここのメルマガに拙文を頼まれ、新型インフルエンザの心理的反応の話を書いています。なにぶんにも1200字制限ではほんの”さわり”しか紹介できませんが、ご笑覧ください。

岡山産業保健推進センターメルマガ8月号↓
http://www.okayama-sanpo.jp/H20.8merumaga.pdf

同センターHP
http://www.okayama-sanpo.jp/


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精神科領域における新型インフルエンザ対策(その1)

2008-08-03 09:54:59 | 論文/学会発表/著作

今回、「精神科治療学」誌に拙文発表しました。

「精神科領域における新型インフルエンザ対策」
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0102/index.html
精神科治療学 23(7)908-911,2008

医療系図書館orその手の書店にアクセスのある方は立ち読みでもいただければ幸いです。
当ブログでも5つに分割して紹介します。こちらは、ワード(投稿原稿)からペーストしたものです。

まず(その1)は前文的なもの、当ブログの常連さんには先刻ご承知の内容かもしれません。「そんなん、とっくにわかってまんがな!」という方は(その2)へどうぞ。

Ⅰ.はじめに
現在、H5N1型鳥インフルエンザウイルスのヒト感染事例が世界中で相次ぎ報道されている。このウイルスが遺伝子変化しヒトーヒト感染能力を獲得すると新型インフルエンザパンデミック(大流行)を発生させることがWHO等保健当局から警告され12)、我が国の厚生労働省も日本国内で最大64万人の犠牲者発生3)を予想している。新型インフルエンザの概略を一般向けに解説し、備えを呼びかける書籍の出版も相次ぎ9)10)14)、社会一般の関心も盛り上がりつつある。 しかしながら、精神科医療の場における検討が十分なされているとはいえず、厚生労働省による「新型インフルエンザ対策行動計画3)」「新型インフルエンザ対策ガイドライン4)」ともに、精神科医療現場の特殊性に配慮した記述は皆無というのが現状である。 筆者は2003年にSARSの大流行に見舞われた北京において、当時、在中国日本国大使館医務官として在勤し、その間の観察を発表してきたが1)2)、その経験を交えながら、われわれ精神科医療者が新型インフルエンザパンデミックに向けて準備すべき事を検討することとした。

Ⅱ.新型インフルエンザの概略 現在、世界各地で鳥インフルエンザとして感染が報告されているのはA型インフルエンザウイルスのH5N1型亜型とよばれるものである。執筆時点では、このウイルスのヒト感染は限定的で,患者と密接に接した場合や病気の鳥類に直接触れた場合が主となっている。 WHOは、この流行をフェーズⅠ~Ⅵに分類しており、現在はフェーズⅢ、ヒトからヒトへの感染は極めて限定的な段階にある。しかし、何らかの遺伝子変化が起こり(インフルエンザはRNAウイルスなので遺伝子複製の際の「遺伝子校正機能」を欠いており遺伝子変化が起こりやすい)本格的なヒトーヒト感染能力を獲得すると、人類がH5N1に対する抗体を誰も持たない以上、極めて広範な流行をもたらすとされ、これをパンデミックという。インフルエンザウイルスは直径100nmと小さく、飛沫感染のみならず飛沫核感染(いわゆる空気感染)も起すためSARSよりも大規模な感染が予想され、全世界で6200万人の犠牲者発生の試算もある8)。 従来のヒトインフルエンザ(H3N2、H1N1、B型)がいずれも弱毒型であるのに対し、H5N1は強毒型である。強毒型とは、呼吸器系にとどまらず、消化器系・泌尿器系・脳神経系まで含めた全身感染を起すことをいい、したがって、多臓器不全から高い致死率に至ることになり、現在の鳥インフルエンザのヒト感染例で61%の致死率を示している13)。


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精神科領域における新型インフルエンザ対策(その2ー現場で要る対応)

2008-08-03 09:54:24 | 論文/学会発表/著作

「精神科領域における新型インフルエンザ対策」
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0102/index.html
精神科治療学 23(7)908-911,2008  公開しています。

(その2)は精神科医療であらかじめ検討されねばならないことです。

Ⅲ.精神科医療の現場で検討すべきこと<o:p></o:p>

1.外来診療・デイケア<o:p></o:p>

 新型インフルエンザの流行下、「病院の外来患者アクセスを1ヶ所にし、可能な限り早い段階で、呼吸器症状を呈するか発熱している患者とそうでない患者を分離する。新型インフルエンザが疑われる患者はそれ専用の場所へ誘導し、それ以外の患者は通常の外来領域へ誘導する」ことが厚労省ガイドラインに明記されている4)SARS流行時の北京では病院入口に体温計を手にしたガードマンが立ち、発熱者は強制的に「発熱外来」の受診を指示された。新型インフルエンザ流行が始まると同様の処置になるものと思われるが、たとえば単科精神科病院の玄関に発熱・呼吸器症状を有する受診者・利用者が現れたとして、自院でケアするのか、別の医療機関に行ってもらうのかあらかじめの検討が必要である。前者であれば、ハード面・ソフト面含め新型インフルエンザのケア体制を確立しておかねばならないし、後者であれば、精神症状を伴う新型インフルエンザ患者を受け入れてもらえる専門医療機関の確保が必要になる。<o:p></o:p>

2.措置入院・医療観察法による入院<o:p></o:p>

 「自傷他害のおそれ」があり、あるいは「心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行い」かつ「発熱/呼吸器症状があり新型インフルエンザ感染が疑われる」ケースの入院はどこへどのような態様でなされるのか。仮に閉鎖病棟に受け入れざるを得なくなるとして、既に入院中の患者やスタッフを空気感染するウイルスから防ぐ手立てはあるのか、陰圧室の設置可否はと課題は多い。<o:p></o:p>

3.開放的処遇との関連<o:p></o:p>

 任意入院・医療保護入院では開放的処遇に努めねばならないのは平時において言うまでもないところである。しかし、パンデミック発生時には、感染拡大を極力回避するための外出の差し控えが呼びかけられる4)。また、やむをえず外出する場合には人込みや密閉空間など感染のリスクの高い場所を避ける必要が出てくるが、これらの理解が困難なケースへの対応法も検討しなければならない。実際、外泊中に感染し潜伏期間中に帰院する場合には、特に症状が現れる一日前ぐらいからウイルスの排出が始まる14)ことを考えると、病棟内に感染が持ち込まれる大きなリスク要因となる。また、状況の理解が困難で繰り返しの説得によってもあくまでも外出を主張する場合、「新型インフルエンザパンデミック」「政府による外出差し控え要請」を理由として行動制限が可能になるのか、場合によっては法令の見直しまで必要となってこよう。<o:p></o:p>

4.訪問指導・自立支援施設<o:p></o:p>

 訪問看護、あるいは自立支援施設など医療スタッフが手薄な状況下で、新型インフルエンザ感染の有無への注意が必要となる。無為自閉傾向や新型インフルエンザの理解困難例など、症状発現に際してその内科的治療にアプローチするタイミングが遅れ予後不良に結びつく可能性も考えられ、予防法の指導、新型インフルエンザ感染の見極めと医療機関への誘導が必要であり、それが可能な様にスタッフ教育を計画しなければならない。<o:p></o:p>

5.スタッフ不足への対応<o:p></o:p>

 現在、鳥インフルエンザ(H5N1)のヒト感染例で見る限り、年齢の中央値は18歳で90%は40歳以下となっている13)。すなわち、特に青年層に対するダメージが大きく、これは医療・看護・介護の担い手の減少に直結する。SARS流行時の北京においても医療従事者のSARS感染が数多く報道されたが、新型インフルエンザではより強いダメージが予想される。スタッフが減少した体制でどう現場を運営してゆくかシュミレーションが求められ、他職種によるカバーなども想定した訓練があらかじめ必要となろう。<o:p></o:p>


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精神科領域における新型インフルエンザ対策(その3ー”その時”起こりうること)

2008-08-03 09:53:30 | 論文/学会発表/著作

「精神科領域における新型インフルエンザ対策」
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0102/index.html
精神科治療学 23(7)908-911,2008 公開しています。

(その3)
Ⅳ.精神疾患関連で起こりうること<o:p></o:p>

1.SARS流行下の北京で見られたこと<o:p></o:p>

 SARS流行当時、北京の精神科医と懇談した際に語られた中で、不安症状・強迫症状が目立つというものがあった。飛沫感染を主体とするSARSにあって、鼻汁や喀痰の形で手すり等に付着したウイルスに触れると手指から口腔・結膜を通じて感染するため、手洗いの励行が社会的に広範かつ頻繁に呼びかけられた。これが強迫性障害の症状を促進してしまうのは想像に難くない。<o:p></o:p>

 また、躁状態を中心とする、調子の高いケースが惹起する問題もあった。SARS患者を収容するため、約1週間という突貫工事でSARS専門の小湯山病院が北京北郊に急造され、SARS医療の象徴的存在となった。その正門に自作のエプロンとマスクを手に「SARSと戦うぞ!」と押しかけ、警備の警察官ともみ合いになる例がしばしば発生した2)。開放的処遇との関連でも前述したが、その精神症状から、新型インフルエンザへの感染リスクが高い行動に出てしまう可能性は中国での経験からも真剣に想定する必要があると考えられる。<o:p></o:p>

2.グリーフケア・トラウマケアの激増<o:p></o:p>

 厚生労働省から日本国内で64万人の犠牲者が出る可能性が指摘されているが、これは弱毒性ウイルスを前提とした数字で、強毒性前提ならば210万人の犠牲者を予測する報告もあり11)、単純計算で日本国民の60200人に1人が犠牲になることになる。これはすなわち、グリーフケアやトラウマケアの莫大な需要が発生することを意味する。本来のグリーフケア・トラウマケア専門家だけでは到底足りず、日本中の一般精神科医がこれらをある程度マスターしてゆく必要があろう。そのための教育体制の確立が望まれる。前田は近年の精神科医不足、なかんずく専門精神科医不足から、ある程度の専門能力を身につけた精神科generalistの養成を提言しており、これは新型インフルエンザパンデミックによるグリーフケアやトラウマケア需要の激増を見据えた時、特に切望される。<o:p></o:p>

3.医療関係者のケア<o:p></o:p>

 激増する受診者数という現実を前に、医療関係者のバーンアウトやうつ状態は容易に想像できるところである。SARS流行下の北京でも、一ヶ月以上帰宅できなくなった医療従事者の家庭ストレス、自身のSARS感染への不安、また、家族に医療従事者がいることによる社会的偏見などの問題が指摘されており6)、医療関係者の心理的ケアも大規模に必要になってくると思われる。 <o:p></o:p>

<o:p> </o:p>


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精神科領域における新型インフルエンザ対策(その4ー検討・準備すべきこと)

2008-08-03 09:52:53 | 論文/学会発表/著作

「精神科領域における新型インフルエンザ対策」
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo01/bo0102/index.html
精神科治療学 23(7)908-911,2008 公開しています

(その4)
Ⅴ.今後検討・準備すべきこと<o:p></o:p>

1.スタッフ教育<o:p></o:p>

 新型インフルエンザパンデミックに備えて、その基本的知識、各施設にて患者発生時の訓練等の準備を行っておく必要がある。また、前述の如く、新型インフルエンザ感染により稼働可能なスタッフが減少する事態も想定せねばならず、職種を越えて代行が可能になるよう互いの職務内容にある程度精通しておく必要があると考えられる。<o:p></o:p>

2.装備<o:p></o:p>

 新型インフルエンザの発生に備えて、予め医療機関に常備すべき物品のリストアップがなされている4)。これらの装備類は通常の精神科臨床でなじみに少ないものも含まれるので、あらかじめ習熟が必要となる。<o:p></o:p>

3.食糧備蓄<o:p></o:p>

 一般家庭に対しても、流通がストップした場合も想定し、2週間分の食糧備蓄が呼びかけられている4)。精神科病院はもとより、居住型自立支援施設なども運営主体の責任において必要となってこよう。<o:p></o:p>

4.プレパンデミックワクチン<o:p></o:p>

 プレパンデミックワクチンは医療従事者などライフライン従事者に優先して接種されると明記されている4)。しかしながら、医療従事者内の優先順位など詳細まで記載されてはいない。直接、内科疾患を扱うわけではない等の理由により精神科医療関係者の優先順位が下位になる様なことが万が一にもあってはならず、前述のように、行動制御が難しく事態の理解が困難なケースを数多く抱える精神科医療現場はリスクが高いという事が正しく理解されるよう早期から大きな声で訴えてゆく必要があると考えられる。<o:p></o:p>

5.抗インフルエンザ薬備蓄<o:p></o:p>

 需給逼迫状況下、プレパンデミックワクチン同様、万が一にも精神科病院への供給優先順位が下がることはなることはあってはならないが、タミフル備蓄についても院内在庫の積み増しなどに早期から取り組んでゆく必要があると考えられる。また、欧米諸国を中心にタミフル耐性の報告も相次いでおり5)、リレンザ等も含めバランス良く備蓄してゆく必要がある。<o:p></o:p>

Ⅵ.さいごに<o:p></o:p>

 新型インフルエンザパンデミックにあたり、精神科医療現場はハイリスクな場になることが予想される一方で、それが世間一般から見えにくいというネックがある。われわれ精神科医療者が大きな声をあげ認識を求めてゆくと同時に、自助努力で出来る備えは速やかにすすめてゆく必要性を強調して筆をおきたい。<o:p></o:p>


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精神科領域における新型インフルエンザ対策(参考文献)

2008-08-03 09:52:15 | 論文/学会発表/著作
 

文献<o:p></o:p>

1)勝田 吉彰:大規模感染症流行が及ぼす心理的影響と対策―SARSの経験から新型インフルエンザパンデミックへー. 臨床精神医学,35:1719-1722,2006<o:p></o:p>

2)勝田 吉彰:ドクトル外交官奮闘記(29).こころの臨床アラカルト,22:395-396,2003<o:p></o:p>

3)厚生労働省:新型インフルエンザ行動計画<o:p></o:p>

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/13.html<o:p></o:p>

4)厚生労働省:新型インフルエンザ対策ガイドライン<o:p></o:p>

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/09.html<o:p></o:p>

5)Lackenby A,Hungnes O et al:Emergence of resistance to oseltamivir among influenza A(H1N1) viruses in <st1:place w:st="on">Europe</st1:place>. Euro Surveill 13.2008<o:p></o:p>

(http://www.eurosurveillance.org/edition/v13n05/080131_2.asp)<o:p></o:p>

6)李 萍:SARS士的心理影向及疏异.中日友好医院防治SARS論文集,194-1952003<o:p></o:p>

7)前田 潔:精神科医不足と精神科診療所.精神神経学雑誌,109:901-901,2007<o:p></o:p>

8Murray DL,Lopez AD,Chin B et al:Estimation of potential global pandemic influenza mortality on the basis of vital registry data from the 1918-20 pandemic:a quantative analysis. The Lancet 368:2211-2218, 2006<o:p></o:p>

9)岡田 晴恵:パンデミックフルー.講談社,東京,2006<o:p></o:p>

10)岡田 晴恵:H5N1 強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ.ダイヤモンド社,東京,2007.<o:p></o:p>

11)岡田 晴恵:H5N1型ウイルス襲来.40-41,角川SSC新書,東京,2007<o:p></o:p>

12WHO HP  http://www.who.int/csr/disease/avian_influenza/en/index.html<o:p></o:p>

13)Writing Committee of the Second World Health Organization Consultation on Clinical Aspects of Human Infection with Avian Influenza A (H5N1) VirusUpdate on Avian Influenza A (H5N1) Virus Infection in Humans. New England Journal of Medicine  358:261-273,2007<o:p></o:p>

14)山本 太郎:新型インフルエンザ 世界がふるえる日.110-112,岩波新書,東京,2006<o:p></o:p>

 


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日本渡航医学会(当ブログを発表)

2008-07-19 23:12:31 | 論文/学会発表/著作

昨日今日と、日本渡航医学会に参加してきました。

日本←→海外の渡航に関する諸問題を扱う学会ですが、新型インフルエンザ関連の話題も多数。

管理人も、このブログの運営経験を発表してきました。
演題はズバリ「ブログによる新型インフルエンザ海外情報発信の試み」
http://www.travelmed.gr.jp/kako_kiroku/12kai/12kai.html
SARS@北京勤務時代の経験から、「ちぎっては投げ式の情報提供」「事実ではない噂の拾い上げと否定」も視野に試みてみたこと。双方向性のやりとりが可能なこと。○○省や○○研といったオフィシャルな立場では出しにくい(北京時代の経験まじえ)情報も出すことができる、すなわち、公式サイトのニッチを埋めるものとして存在意義。 そして最後に、みんなでどんどんブログ開設しよう! とメッセージ出して締めくくってきました。

図は当ブログアクセス数(pv/週)。 来ていただいた皆さんに心から感謝いたします。


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出版しました(海外医療現場の本)

2008-07-09 15:38:23 | 論文/学会発表/著作

今日はちょっとだけPR・・

前職で海外医療を飛び回っていた頃のエッセイ集を出版しました。

「ドクトル外交官世界を診る」 
         (星和書店刊)

http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo05/bn624.html
「こころの臨床アラカルト」という雑誌に連載していたものを単行本化したものです。フランス→セネガル→中国と転勤生活送っていた間に撮りだめた写真を多数載せています。

中国在勤時代の2004年時点「中国ではヒト感染例は公式には報告されず、ヒトーヒト感染例も「ベトナムの姉妹例」が例外的に報道されるのみでヒトーヒト感染が容易におこるような遺伝子突然変異も見つかっていない、というのが執筆時点の状況であるが、活字になる頃にはどうなっているのであろうか」(p182)と書いているのですが、執筆時点から、雑誌発表時点はもとより単行本化された今日までパンデミック突入せずもっているのは幸いなことと、当時を振り返りながら実感しています。

気が向かれたら書店で手にとってみていただけると嬉しいです
(出版社の星和書店は、心理学・精神医学関係の専門出版社なので、書店ではその類のコーナーに並んでいるのではと想像します)。


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