新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

MERSの知見(劣悪な外国人寮でクラスタ発生/直接ケアしなくても院内感染)

2019-08-21 17:47:26 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

MERSのクラスタを起した、サウジアラビアの出稼ぎ労働者女子寮の分析。

  • 主としてフィリピン人が居住する女子寮。
  • 環境はご多聞にもれず劣悪。828人密集。換気悪く、食堂キッチンは共有。映画を見るため画面の密集(Packed Dormと表現)
  • MERSの確定例19例発生。
  • 最初のケースは病院で掃除人として勤務。直接感染者のケアには携わっていない。その接触者調査で18例判明。
  • 寮は24棟から成るが、attack rateはさまざま。全部を通しては2.3%で家庭と変わらないが、棟によっては35%のところも。

つまり、

1.密集した劣悪な環境ではMERSはどんどん感染する

2.直接の感染者ケアにあたっていなくとも、(掃除など)目に見えない経路でもMERSは院内感染する

というのが知見です。MERS-CoVじゃなくても、こういう事はいくらでも起こりそうなわけですが、管理人的には、「改正入管法でこれからどんどん増える外国人労働者」と、「技能実習生問題で、明らかになりつつある悪徳ブラック企業」の組み合わせが(MERSに限らず)感染症拡大を促しそうな気がしております。

先日、なにかのTVで、日本で虐げられるベトナム人実習生の特集がありましたが、その中で、漁船がひっくり返って亡くなってしまったベトナム人、その居住場所がちらりと映りました。まさに、Packed Dormそのものでした。そういう環境の放置は、ひいては日本国内全体の感染制御に響いてくるはずです。マスメディアのみなさんには、ぜひとも、悪徳ブラックをもっともっと、どんどん晒しあげていただきたいところですが、その際に「居住環境」や「感染症」の視点を入れていただければと思う次第です。

http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2019/08/packed-dorm-may-have-spurred-mers-spread-study-says

Packed dorm may have spurred MERS spread, study says


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MERSのアップデート

2019-08-09 12:52:05 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

MERSのアップデート 2018年6月~

  • 219例発生。サウジ・韓国・UK・オマーン。大部分がサウジ。
  • 注目は院内感染の多さ。2次感染97例中、52 例が院内感染。23例が医療従事者。
  • これら既存の感染発生国とは別に、新たに動物から(人間界に)入ってくるのを警戒。この点で、WHOが注目しているのが、アルジェリア・エジプト・エチオピア・パキスタン・ソマリア・スーダン

ウイルス自体に新たな変化が見られないものの、院内感染を中心にしぶとく膠着状態のMERS。管理人的に注目は、これまでまったく発生していない新天地である日いきなり・・のパターン。

らくだの交易は一時話題になりましたが(実はサウジのらくだは結構、ソマリアから来ているなど)、サハラ砂漠を含む国々が顔を並べている一方で、パキスタンが注目されます。この国、ここ数日インドとカシミールをめぐり新たに火薬のにおいがただよってきたり(8月14日がこの国の独立記念日ですから、インドからちょっかい出されているまさに今、民族意識が盛り上がるこの日にドカンと一発やらかさないか懸念しています)。令和の注目国ですね。

http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2019/08/mers-analysis-highlights-concerns-over-healthcare-spread

MERS analysis highlights concerns over healthcare spread

 


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コンゴのエボラだけじゃない、MERSも暴れている2019年

2019-02-13 09:10:16 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

MERSも今年に入り、なかなかの暴れっぷりです。

  • サウジのMERS。今年にはいってすでに50例超。
    ホットスポットはWadi ad-Dawasir。29例がここ。新たな症例のうち2例はラクダ曝露、2例は院内感染。サウジの首都リヤドでも2例。ラクダ曝露。
  • オマーンのMERS。クラスタ報告。5例中4例がヒトーヒト感染。最初の感染源はまだ特定されず。

この疾患はマスギャザリングで拡散のリスク高いですので要注意。ある意味、コンゴのエボラ以上の心理的パニック引き起こす可能性もあります。

http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2019/02/saudi-mers-total-grows-who-details-oman-cluster?fbclid=IwAR2fjfbl15lY9oJqLap6riaS4kHLo9i4GeqY1mWm-dsnCcvTsvPUgQToWxk

Saudi MERS total grows; WHO details Oman cluster

 


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MERSぽつぽつと(香港の疑い例、サウジの家庭内感染)

2018-10-06 12:30:20 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

先般のMERS持込み@MERSは、それ以上の騒動にならずに終了できた模様ですが、今回は香港で疑い例の当局発表。

  • 33歳女性。
  • カタール・ドーハ発。
  • North district病院入院中。

香港ですから首尾よく対処していただけるものと信じます。https://www.info.gov.hk/gia/general/201810/05/P2018100500750.htm

火元のサウジ、22歳男性例。
ラクダ接触歴なく、家庭内(ヒトーヒト)感染。
http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2018/10/new-saudi-mers-illness-who-profiles-recent-cases

2018年6月~9月中までの状況WHO総括。

MERSは直近も依然活発。
感染は、「ラクダ接触」と「クラスタ(要はヒトーヒト感染)」にほぼ整理される
国外に飛び火もあり(そこがしっかりした処なら粛々と対策)

  


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MERSの反攻?「〇年ぶりのMERS」続々、今度は韓国

2018-09-10 10:20:49 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

国のMERS案件。クウェートから戻った61歳男性例、2015年の大騒動から3年ぶりです。

WHO公式発表@9月9日は:

  • 61歳男性。8月16日から9月6日までクウエート出張。帰国後、発熱・下痢・呼吸器症状で、現在入院加療中。
  • WHOには8日時点で報告あり、医療施設における感染防止措置・接触者調査・リスコミなど速やかな対応により、拡散可能性は低いとWHOは見積もっている。韓国CDCとWHOとすでに連携。
  • MERSが中東以外の場所であらわれることは想定内である(it is not unexpected that MERS will occasionally appear outside of the Middle East)

WHO
http://www.wpro.who.int/mediacentre/releases/2018/20180909/en/
outbreaknews
http://outbreaknewstoday.com/south-korea-mers-unusual-not-unexpected-52760/

興味深いのは当サイトへのアクセス。「MERS」カテゴリーへのアクセスが、昨日急に跳ね上がりました。その多くのアクセス元はgoogle。つまり、当サイトの常連さん以外の方がググっておいていただいた件数が昨日急に増えたということで、韓国でMERSが発生すると(本場中東よりも)常連さん以外に世間一般の関心がぐっと盛り上がるという事実です。

そこでぜひ認識いただきたのが、このMERSという疾患、今年に入って、世界あちこちで不気味に盛り上がりつつある反攻状態にあるという大きな流れで理解いただきたいということです。本場サウジアラビアでは、病院内感染や家族内感染でヒトからヒトに感染したことが示唆されること(クラスタといいます)が何件も起こっています。イギリスでは実に5年ぶりに報告され、リバプールで入院中です。そして韓国も3年ぶり。つまり、昨年も一昨年も起こらなかった国で報告されているということで、今後も可能性否定できません(←これはWHOもnot unexpected と表現)。2012年の初発以来27カ国にわたり2200例以上確定しているこの疾患、次には、豪雨・震災・台風と災害づいているこの国に・・・ということにならないことを願っております。

 


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MERSがまたぞろ中東を出てきた(英リバプール)

2018-08-26 22:26:55 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

ここのところサウジで院内クラスタ多発が話題となっていたMERS,久しぶりに(5年ぶりに)UKに入ってきて話題に。

  • 中東に渡航歴。UKには8月16日にサウジアラビア航空SV123便で入国。現在はリバプールで入院中(Leeds Teaching Hospitals NHS Trust⇒ Royal Liverpool Hospital)。
  • UKでは5例目のMERS感染者。2012-13年以来の5年ぶり。前回は中東渡航歴の2例と、その濃厚接触者。
  • 巡礼関連で中東への渡航者の多い折、医療従事者に対して中東渡航歴のある呼吸器症状に対する注意喚起。

UKへの輸入例は、MERS-CoVが表沙汰になってからかなり初期に発生してちょっとした騒動になっていました。家族内感染例であったこともありすわヒトヒト感染かと。その後、フィリピンやインドネシアを含めてたアジア数カ国に飛び火、2015年の韓国MERSで日本社会も本格的騒動になるも、喉元すぎた状況。一方で発祥の地サウジでは今年にはいり院内クラスタや家族内クラスタがいくつも報告され、なんとなく不気味な状況での今回。今年のハッジ巡礼は8/19-24、その後の危険な時点ですいま。日本の医療者も”おさらいシュミレーション”が必要な局面でしょう。

 http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2018/08/traveler-mideast-diagnosed-mers-uk

Traveler from Mideast diagnosed with MERS in UK


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MERSの院内感染がとまらず、重ねてWHO警告

2018-08-10 12:59:20 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

昨年後半から今年にかけてMERS感染189例、なかでも院内感染がとまらないことに危惧とWHO

  • 内訳はサウジ182例、オマーン3例、UAE3例、マレーシア1例。
  • サウジでは6件のクラスタ発生、うち3件は院内感染。院内感染が危惧されるのは、MERSの症状がしばしば非特異的であり、不慣れな医療者は最初の症状に気が付かず見逃す可能性、院内でどうやって感染するのかまだ解明されていないことがあり。

  • MERS-CoVは依然として世界的脅威で公衆衛生上・セキュリティ上・経済上の被害もたらす可能性。

  • 二次感染は45例でうち17例が院内、12例が医療従事者。院内感染が起こったのはAl Jawf, Hafr Al Batin, and Riyadh 。

この疾患の問題は、最初の一例が見つかる前から感染拡大が始まってしまうこと、本当のところどうしてヒトヒト感染するのかわからないところにあります。

そういえば、先般の渡航医学会、マスギャザリングのセッション(ランチョンだったかな、記憶曖昧)では、これから五輪やラグビーW杯で国内でマスギャザリング対策せにゃんばらんとき、考えるべきは麻疹風疹が筆頭として、侵襲性髄膜炎とともに、このMERSも挙げられていました。繰り返し世間にリマインドしなければならないものですね。 

http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2018/08/who-highlights-ongoing-hospital-mers-outbreak-threat

WHO highlights ongoing hospital MERS outbreak threat

 


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今年のMERSはクラスタ集団起こりまくり(家庭内、病院内・・)

2018-06-20 11:23:08 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

ここ最近、MERSの動きがちょっと不穏です。家庭内でも院内でもクラスタが発生しまくり。

  • Najranの家庭内クラスタ。8例。全例男性、19~52歳。5月17日から
    家で飼ってたラクダが原因、最初のインデックスケースは45歳男性。
  • ジェッダの家庭内クラスタ。3例。56歳男性、41歳と67歳女性。3月から
  •  Hafr Albatin の院内クラスタ。4例。2月
  • ジェッダの院内クラスタ。6例。3月。

う~ん。隣国で発生したら大騒動するけど中東では関心もたれないMERS、でも不気味です。管理人が北京在勤時にキリキリ舞させられた、おなじコロナウイルスのSARSなら、2006年に大騒動して翌07年に研究施設漏れだし等で小騒動してそれ以降ピタリとおさまっているのに、なぜMERSは延々と続くのか。ひとつの原因は政権が強大な力をもつ中国と、政府のいうことなんか聞かん砂漠の民ということはありましょうが(ラクダと人間の接触を切るのは困難。接触するなと政府が言ったら、わざわざラクダとキスしてyoutubeにアップする輩がいるのが中東。そんなの見たらたちまち公安が踏み込むのが中国、なんにも起こらないのが中東)こちらに飛び火しないことを願うばかりです。そういう事は国民の関心が別のところに向かっているときに起こりがちですから・・・

ソースはCIDRAP
http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2018/06/mers-saudi-arabia-year-includes-hospital-household-clusters

MERS in Saudi Arabia this year includes hospital, household clusters


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SARS騒動再来の足音。SARS類似ウイルスで子豚2万5千匹犠牲(広東省)

2018-04-14 15:50:12 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

2002年から、主として2003年に世界的大騒動を引き起こしたSARSコロナウイルス、この類縁が再来しているらしいと報告。中国広東省。コウモリ→子豚。

  • 中国広東省で子豚2500匹(頭)が死亡する案件があり、調査したところコロナウイルス が原因と判明。現場は、SARSアウトブレイクのインデックスケースが発生した場所からわずか62マイルしか離れていない。
  • 今回、ブタに引き起こした症状は、他の豚腸管感染性コロナウイルスと類似しているが、それらはいずれも検出されておらず、まったく新種と考えられる。
  • 初発の農場から計4か所に拡がり24693匹が死亡。
  • コロナウイルスのうち、ヒト感染するのは6種類しかない。さらにそのうち、これまでアウトブレイクを引き起こしたのはSARS-CoVとMERS-CoVの2種類のみ。
  • ウイルスは遺伝子解析でコウモリのCoV HKU2と一致し、2007年から広東省や香港のコウモリから分離されている。今回のウイルスをswine acute diarrhea syndrome coronavirus (SADS-CoV)と呼んでいる。
  • 著者コメント:今回の知見はまったく想定外のものだった。SARSのときと同種のコウモリが新種のコロナウイルスを持っていることがわかり、今回は豚のあいだで大規模アウトブレイクを起した。ウイルスは罹患した豚から分離されたが、回復した豚や健康豚からは検出されなかった。メス豚よりも子豚の方がより増殖が激しかった。
  • 農場労働者35名についても調査したが、いずれも感染は認められなかった。

  • SADS-CoV と HKU2 CoV の遺伝子解析では95%一致したが、S遺伝子は86%の一致にとどまり、これは2つのウイルスが直接移行したものではないが、祖先を同じくすることを示している。また、2013年から2016年のあいだにコウモリから分離された591検体のうち58検体(9.8%)がSADS-CoVと密接に関連し、すべてはhorshshoe bat(SARSのレザボア)であった。

SARS騒動はどこから来たのか。あの頃、マスメディアも熱いうちにハクビシンまでは特定され、一時は中国の市場から姿を消す状況になりました。しかしハクビシンのさらに源流、コウモリhorshshoe batまで同定できたときには一般世間の関心は冷めていてあまり知られていません。その同じコウモリのなかに、SARSと類似したウイルスが隠然と存在していて子25000匹を感染死させるということを起していました。こちらも鳥インフルエンザと同様、中国南部の火薬庫ぶりを痛感させられます。なりゆきが注目されます。

クリックすると新しいウィンドウで開きます

New SARS-like virus from bats implicated in China pig die-off


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MERSのペースがまたぞろ立ってきた

2017-05-23 07:31:41 | MERS/マーズコロナウイルス/SARS

MERS。累積の数字をグラフであらわすと・・・

韓国MERSでピンと立ち上がり、引き続くリヤドのでピンと立ち上がり、その後穏やかになっていたのですが・・・

またぞろ急こう配になってきています。現状。

https://pbs.twimg.com/media/DAbc1AzXgAEMTMH.jpg


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