会津八一 香薬師の歌
奈良に最初に建立された八一の歌碑(新薬師寺)は香薬師の歌である。この像を詠んだ歌は11首ある。香薬師像は盗まれて今はない。新薬師寺や早稲田大学、その他にレプリカはある。過日、早大文学部を訪れ、レプリカの撮影を許可してもらい、素空(SURUME)の手で木彫りの像を作って自宅に置いてある。
11首の解説を順次アップする。
1 高畑にて(第1首)
たびびと の め に いたき まで みどり なる
ついぢ の ひま の なばたけ の いろ
2 高畑にて(第2首)
かうやくし わが をろがむ と のき ひくき
ひる の ちまた を なづさひ ゆく も
3 香薬師を拝して(第1首)
みほとけ の うつらまなこ に いにしへ の
やまとくにばら かすみて ある らし
4 香薬師を拝して(第2首)
ちかづきて あふぎ みれども みほとけ の
みそなはす とも あらぬ さびしさ
5 奈良の新薬師寺を思ひいでて(第1首)
すめろぎ の おほき めやみ を かしこみ と
とほき きさき の たてましし てら
6 奈良の新薬師寺を思ひいでて(第2首)
みほとけ は いまも いまさば わがため に
まなこ すがしく まもらせ たまへ
7 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第1首)
をろがみて きのふ の ごとく かへり こし
みほとけ すで に なしと いはず やも
8 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第2首)
みほとけ は いかなる しこ の をのこら が
やど にか たたす ゆめ の ごとく に
9 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第3首)
みほとけ は いまさず なりて ふる あめ に
わが いしぶみ の ぬれ つつ か あらむ
10 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第4首)
いでまして ふたたび かへり いませり し
みてら の かど に われ たちまたむ
11 三月二十八日報ありちか頃その寺に詣でて拝観するに香薬師像のたちまち
何者にか盗み去られて今はすでにおはしまさずといふを聞きて詠める(第5首)
かどのへ の たかまどやま を かれやま と
そう は なげかむ こゑ の かぎり を