SURGERY NOW note
がん治療と外科手術に関する新しい情報や日常診療を通じて感じたことなどを紹介します。
 



昨日、膵癌に関するインターネット講演会をしました。膵癌に対する化学療法と門脈合併切除を中心にお話ししました。講演時間は45分で、使用したスライドは約80枚でした。

この中で最も聞いていた人から「いいね」が多かったスライドは、東海大学での膵頭十二指腸切除206例を、門脈切除していない115例と、門脈合併切除・再建した91例に分けて生存率を比較したものでした。門脈切除(-)の5年生存率は23%、門脈切除(+)の5年生存率は9%で、やはり門脈切除した症例の方が進行癌であり生存率も不良でした。

さらに門脈切除例の中で組織学的に浸潤のなかった29例と、浸潤のあった62例で生存率を比較すると、浸潤(-)の5年生存率が15%で、浸潤(+)の5年生存率は7%でした。手術中に、がんと門脈が癒着して剥離できない場合は、がんが門脈に浸潤している(巻き込んでいる)可能性が高いので、門脈を合併切除します。しかし、実際に癌の浸潤がない確率は約1/3であり、これらは予後が良好だったのです。手術中に、門脈を実際に切除してみなければ組織学的な浸潤の有無はわかりませんので、やはり門脈への癌浸潤が疑わしい場合には、積極的に門脈を切除すべきです。

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