以下は前章の続きである。
この記事の根本のゆがみを最初に総括して述べるならば、アメリカの陰謀説のデマを日本での「反日」というような、朝日新聞自体への非難と狡猾に重ね合わせて同じだと断じる「すりかえ」である。
現実には、アメリカでのその種のデマと日本での朝日新聞非難とは、まったく異質の認識なのだ。
だが、「日曜に想う」コラムは朝日新聞への批判は陰謀説のデマと同じなのだ、と述べているのに等しい。
要するに、こざかしいすりかえ、ゆがめ、歪曲の言論なのである。
大野記者はまず東京都内の居酒屋で、日本人の若い男性がその友人に語った言葉として以下を引用する。
話題は2001年9月にアメリカで起きた9.11同時多発テロだった。 《「ニューヨークの世界貿易センタービルなどを標的にしたテロは、ほんとうは米国自身が仕組んだんだ。今やほかの国ではだれもが常識として知っている。知らないのは日本人だけだ」》
この言葉は大野記者が直接に耳にしたわけではない。
ライター・編集者の望月優大さんという人が最近、都内で目のあたりにした場面だという。
だが、その内容はアメリカでも日本でも、世界の他の諸国でも、もうさんざんに噂され、すでにデマとして葬られた陰謀説である。
「最近、実際に」聞いたというには、あまりに古く、あまりに手あかのついた根拠のないデタラメ言辞なのだ。
この稿続く。