3年前から始めた醤油作り。今年も絞りの季節がやってきた。
早春に仲間で集まって塩切りした醤油麹、みんなそれぞれに持ち帰って
夏・秋を越す。そして冬になるとまた仲間がそれぞれに集まって、樽を
持ち込み、絞りをする。
そんなリズムが暮らしの中に定着してきた。
味噌は作れても、醤油までは、と思う人が大半で、みんな1度作るとその
楽しさに目覚めていくのが面白い。そして、我が家もそんなうちの1人。
近所のおじさんに「村のものだけれど、もう使う人もほとんどいないから
君たちが預かるという形で持っていてくれないか」
そう声をかけてもらって、今年我が家に大鍋がやって来た。醤油絞りや味噌
作りなどの仕込みにはこの大鍋が欠かせない。
なかなかない、本当にありがたい話だ。
(我が家の一員になった大鍋。上に出る蒸気で色々蒸せるんだ、と岩崎さんに
教えてもらった。便利だ!!)
そんな訳で、去年までは友人宅に樽を持ちこんで絞っていた醤油絞りを
今年は我が家でやることになった。
朝から夫が鍋で湯を沸かしてくれる。
湯がぐらぐらと煮立つ頃、友人が醤油のもろみを持って集まって来た。
去年はみぞれが時折降る、寒い寒い日だったけれど、今年は晴天。醤油
絞り日和だ。
(みんなのもろみの具合を確認)
みんなでお茶を飲んで話に一花咲かせた後に、絞り師の岩崎さんがいらっしゃる。
来ないなあ、と思っていたら、私の家までの道案内の説明がひどかったらしい・・・。
早速絞りのふねを設置して絞りが始まる。
岩崎さんはなんでも科学的に物事をきちんと把握していて、感覚でこんな感じ、
というのがない。感覚をきちんと分析しているのがすごくて、その話を聞くだけ
でも価値のある1日。
丸大豆の醤油のもろみは仕込んで3年寝かせる、といったような、醤油作りに
聞かれる話も、醤油作りの現場の環境がその程度だ、ということでしょう、と
おっしゃる。
私たちの醤油作りで行う「天地返し」も出来ない、「太陽に当てる」ことも
できない、しかも大樽で作る、そのような環境が3年寝かせる、ということに
つながっているのだ、と。
醤油屋が作っているから1番いいんだ、という頭からの思い込みでそれを自分で
検証していない、私たちのような考えはいつも釘をさされる。
面白い、と思う。
そんな話も織り込みながら、着々と絞られていく。
最初のぽた、っと醤油が垂れる瞬間の喜び。それをなめる時の嬉しさ。
ああ、今年もできたなあ!
10tもの圧をかけながら絞られる醤油。火入れする時に移す、その時の
色はまさに「ムラサキ」。みんな、自分の樽の醤油が1番おいしい気がして
いるのがおかしい。
(美しい美しい醤油)
そうそう、今回は時間もなくて絞らなかったけれど、今年は麹屋さんの醤油麹以外に、
自家製の丸大豆と麦で、自分で仕込んだ醤油のもろみも少々。
岩崎さんに見て頂いたところ、麦の状態がいい、でも香りはちょっと弱いかな、
ということだった。少量なので、納豆菌にも侵されず、絞ってみれば醤油になるよ、
とのこと。これは自分なりに絞ってみよう。
そして、こどもたちは、というと毎年高血圧になるでは、と心配になるくらい、醤油を
なめに来る。おいしい、そのことにこどもは素直で敏感だ。
夫が大鍋の蒸気でさつまいもやらじゃがいもを蒸してくれ、いつの間にか七輪で
火を起こして、餅を焼いている。絞りたての醤油をつけた、その餅のおいしかった
こと!
持ち寄りの昼食をはさんで、また絞り、片づけが終わった頃はとっぷり日も
暮れていた。
丸々1日の醤油絞りDay。くたびれたけれど心底面白かった幸せな1日。
また来年、絞ろうね!!