メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『大学生』アントンP.チェーホフ

2010-09-03 12:53:17 | 
『大学生』アントンP.チェーホフ/作 イリーナ・ザトゥロフスカヤ/絵 児島宏子/訳 未知谷

寒さに打ちひしがれた神学生のイワンは鴨猟の帰り道、焚き火に座る未亡人とその娘に会い、
福音書の十二使徒伝に出てくる使徒ペトロと重ね合わせる。
鞭うたれるイエスを前にして、ペトロは「あの人など知りません」と三度答えた時、
イエスの言った通りに雄鶏が鳴き、それを聞いた彼は後を追った。
未亡人が涙を流すのを見て、1900年前の出来事が現在と繋がっていることを目の当たりにして22歳の青年は喜びと期待に溢れる。

「この人生が魅力と、奇跡と、全き崇高な意義に充たされていると思われてきたのである」

長方形の本の最初と終わりの数ページが絵、真ん中の数ページが文章に分かれていているのが斬新。
しかも文章は1枚の下方に数行という贅沢な作り。紙は灰色の素朴でやや厚めな素材で、
墨と朱のみでラフに描かれたイリーナの独特な画法と一緒になって素晴らしい効果を出している。


和訳にはまたまた見慣れない難しい言葉がわんさか出てきた。下記はその一部。

黙(しじま)=静まりかえって、物音一つしないこと。静寂。口を閉じて黙りこくっていること。無言。
寂寞(せきばく)=ひっそりとして寂しいさま。
悉皆(しっかい)=残らず。すっかり。全部。
分限者(ぶげんしゃ)=金持ち。財産家。
囲繞(いにょう)=まわりを取り囲むこと。
涕泣(ていきゅう)=涙を流して泣くこと。
出来(しゅったい)=事件が起こること。

「いつも神様と在りますように。分限者になれますように!」ってゆうのはロシアの挨拶だろうか?


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