■『やさしさは愛じゃない』(幻冬舎)
荒木経惟/写真 谷川俊太郎/詩
前回読んだ『子どもたちの遺言』(佼成出版社)と真逆なものを選んでしまったようだ。
荒木さんはヌード写真が好きなのか? これもエログロってやつ?
表紙が表しているとおり、内容も、写真も暗く、恨み深いダーク一色。
でも、コレも女性の本性のひとつ。
常に見られる対象、その恐怖、異性とのすれ違い、自分とのすれ違い。
そんなドロドロした、普段では隠しているものを露わにして、
谷川さんは、今度は、微妙な年頃の女性になりきって詩を書いている。
変幻自在だな/驚
読んでいて、同性ながら、文字から目を背けたくなる。
けれども、写真の中の女性に同化しているかのような谷川さんは、
同時に、撮っている荒木さんに挑戦し、反抗しているようにも感じる。
そして最後には、「被写体」という受け身の存在から、
自立し、解放されたような言葉で終わり、若干ホッとしている。
'90年代、私もこんな反抗的な場所で迷いあぐねた詩ばかり書いて吐き出していたっけ。
それで、どうにかこうにか自分を守って生きていたんだ。
【内容抜粋メモ】
あいつは言葉で何か言えると思ってる、
言葉では、何も言えないと知っているから。
私は聞きとろうと耳をすます、
あいつがどこかに隠してるはずの、
静けさを。
************
お金なんて誰のものでもなかった、
知らない間にふえてたり
いつの間にかなくなってたり
落っことしたり拾ったりひらひらひら、
あんな薄っぺらなもののおかげで
生きてきたなんて思いたくない。
************
いちばん先に腐るのは
いちばん生き生きしてるもの、
いちばんあとまで残るのは
とっくの昔に死んでいるもの。
あなたは私を誉めたたえてばかりいた、
その眼鏡のひんやりしたふたつの目で、
男の、
欲望の、
きりのない、
みのりのない、
やさしさで。
************
私は出て行く、
あいつの写す真実から、
「写真」から。
あいつが写すのはあの世ばかり、
でも私はこの世に生きてる、
まだ。
私は出て行く、
あいつの夢見た幻から
私自身への真実へと。
荒木経惟/写真 谷川俊太郎/詩
前回読んだ『子どもたちの遺言』(佼成出版社)と真逆なものを選んでしまったようだ。
荒木さんはヌード写真が好きなのか? これもエログロってやつ?
表紙が表しているとおり、内容も、写真も暗く、恨み深いダーク一色。
でも、コレも女性の本性のひとつ。
常に見られる対象、その恐怖、異性とのすれ違い、自分とのすれ違い。
そんなドロドロした、普段では隠しているものを露わにして、
谷川さんは、今度は、微妙な年頃の女性になりきって詩を書いている。
変幻自在だな/驚
読んでいて、同性ながら、文字から目を背けたくなる。
けれども、写真の中の女性に同化しているかのような谷川さんは、
同時に、撮っている荒木さんに挑戦し、反抗しているようにも感じる。
そして最後には、「被写体」という受け身の存在から、
自立し、解放されたような言葉で終わり、若干ホッとしている。
'90年代、私もこんな反抗的な場所で迷いあぐねた詩ばかり書いて吐き出していたっけ。
それで、どうにかこうにか自分を守って生きていたんだ。
【内容抜粋メモ】
あいつは言葉で何か言えると思ってる、
言葉では、何も言えないと知っているから。
私は聞きとろうと耳をすます、
あいつがどこかに隠してるはずの、
静けさを。
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お金なんて誰のものでもなかった、
知らない間にふえてたり
いつの間にかなくなってたり
落っことしたり拾ったりひらひらひら、
あんな薄っぺらなもののおかげで
生きてきたなんて思いたくない。
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いちばん先に腐るのは
いちばん生き生きしてるもの、
いちばんあとまで残るのは
とっくの昔に死んでいるもの。
あなたは私を誉めたたえてばかりいた、
その眼鏡のひんやりしたふたつの目で、
男の、
欲望の、
きりのない、
みのりのない、
やさしさで。
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私は出て行く、
あいつの写す真実から、
「写真」から。
あいつが写すのはあの世ばかり、
でも私はこの世に生きてる、
まだ。
私は出て行く、
あいつの夢見た幻から
私自身への真実へと。