■シリーズ格差を考える『教育格差』(ほるぷ出版)
稲葉茂勝/著(児童書の編集プロダクション「こどもくらぶ」編集長)
“教育格差は経済格差を背景にする”
「学歴信仰」が深く結びついているということも知っておきたい。
【内容抜粋メモ】
現代社会には、さまざまな格差があります。
教育格差は、経済格差から生み出されたものだが、経済格差の背景にもなっている。
世界には富める国と、貧しい国の格差があり、それぞれの国には必ず教育格差がある。
貧しいヒトは良い教育を受けられない教育を受けられなければ貧しさから抜け出せない。
世界には、黒板、机、イスがない学校がいくらでもある。校舎がないところもある。
一方、コンピュータをうまく教育に取り入れている国もたくさんある。
コンピュータから得られる情報量はとても大きく、コンピュータが使えるかどうかで勉強に差がでる。
2006年、ユニセフ60周年記念に出版された『世界の子どもたちに今おきていること』も参照。
***********2004年現在、1億1700万人の子どもが学校に行っていない
5~6歳には家事をし、10歳くらいには1日何時間も仕事をしているのが発展途上国の現実
子どもが働かされる理由
・家の手伝いをしなければならない。
・収入を得るために働かなければならない。
・教科書、文房具を買うお金がない
・子どもには勉強は必要ないと考える親が多い。
開発途上国では、水汲みが子どもの仕事(昔の日本と同じだな
何キロも離れた学校に歩いて行き、教室にはぎゅうぎゅう詰めになり、先生は厳しい規則・体罰で接している。
学校では、各民族の言葉ではなく、国の公用語がつかわれ、授業内容が分からず楽しくない。
読み書きが出来ないと、仕事につけず、収入も得られない。
大きな子は、弟・妹の面倒をみたり、家族のために男子は志願兵となり、女子は売春することもある。
***********子ども兵士~武器を持って戦闘に参加する18歳未満の子どもたち
世界各国の子ども兵士
世界に約30万人。中には6歳の子もいるという
・誘拐、脅迫されて強制的に兵士にされる。
・家族を殺された子が志願する。
子ども兵士の利点
・知識や判断力の弱い子どもたちは、大人より敵に対する憎しみの感情を持ちやすい。
・紛争地域で暴力・殺人・銃が身近になり、人を殺しても罪の意識が育っていない。
・子どもでもカンタンに扱える軽量の武器が出回っている。
・従順に命令を聞いて、地雷探し、不発弾処理等、危険な仕事をさせるのに都合がいい。
・死んでも、またさらってくればいい少年兵は「消耗品」にされている。
【ブログ内関連記事】
・『児童労働 働かされる子どもたち』(リブリオ出版)
・『世界の子どもたちのために ユニセフ』(ほるぷ出版)
・『小型武器よさらば 戦いにかり出される児童兵士たち』(小学館)
***********経済大国アメリカも深刻な教育格差に悩んでいる
アメリカの公立学校では、どの民族の子にも「英語」が使われているため、授業についていけない。
英語以外の言葉を喋る子が多い「他民族地域」では、教育レベルが下がる。
親の経済力と子どもの学力格差
「API」
2006年度の公立学校統一テスト結果をもとに計算された、その学校の成績を表す数値。
同じ公立でも1位と21位で約150点差があるのはかなり大きい。
英語が話せないアメリカ人が増加~西海岸の都市、NYなど
1990年頃からスペイン語の広告やチラシが増えた。ヒスパニックが増えたため。
「チャイナタウン」にも英語が話せない人が多い。
母語なまりの強い英語を話す人も多い。
スーパーで買い物をする時も、カートに品物を入れて、レジに行き、黙ってお金を払う。
レジ係が英語を話せなくても不自由せず働ける。
だが、こうした地域は、アメリカの標準的な地域とは大きな経済格差があり、町から出て仕事を探しにくい
ここにも経済格差・教育格差の関係があらわれている。
***********インド~大都市と地方の教育格差が非常に大きい
2005年の人口は約11億300万人。
大勢がヒンディ語を話すが、方言を含めると1000以上の言葉がある/驚
大人で文字が読めない人は5億人以上と推定。
一方、ムンバイなど一部の大都市では教育熱が高く、コンピュータ技術者、医師を目指す場合など高額の教育費が必要。
***********カンボジア~植民地時代、「ポル・ポト政権」時代の影響
かつては仏教が教育に大きな役割を果たし、僧侶が読み書きを教えていた。
1884年、フランスの植民地となり、学校制度の教育がはじまった1953年に独立。
「ポル・ポト政権」下では「教育は小学校だけでよい」とされ、上級学校は全閉鎖となった。
およそ20年間内戦が続いたため、宗教、教育、芸術が徹底的に破壊され、政権が倒された後も、識字率が低い状態が続いている。
「ポル・ポト政権」時代、政治犯の収容所となっていた高校。現在は博物館
***********開発途上国の識字率~開発途上国では低く、とくに女性が低い
開発途上国における15歳以上の識字率。アフリカがとくに低い
文字は、文化を伝える重要な手段の1つ。
一体感を意識したり、祖先とのつながりを感じることができる。
また、国の運営を行うために非常に重要。
***********日本~私立中学のあるなしによってずいぶん違う
全国726校中、私立中学校数の多い都道府県
地方では、ほぼ全員が地元の公立中学に進学する。
私立中学があるところは、教育の場を選ぶ機会が多いということ。
私立中学を受験する子は、たいてい塾に行く回数も多く、行き始める時期も早い。
塾に高い授業料を使い、入学金、高額の授業料を支払う。
「就学援助」を受けているかどうかという経済格差が教育格差の要因の1つとなっている。
地方と都市部の子どもの教育費総額(年間)
教師1人に対して受け持つ1クラスの人数
1936年、大阪の小学校授業のようす/GDP(国内総生産)に対する教育費の比率(2003年
「GDP(国内総生産)」
一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額。
経済を総合的に把握する統計に使われる1つの指標。
GDPの伸び率が経済成長率として扱われる。
現在、都内の小学校の1クラスの人数は約27人。1936年、大阪の小学校は今の2倍だった。
今なお、日本は先進国の中では多い。
教育費の差の背景には、国が教育にお金を使わないことがあげられる。
***********読み書きができない人は、世界人口(15歳以上)の約18%(2006年
識字率と死亡率
識字率の低い上位10カ国における5歳未満の児童の死亡率
正しい知識が得られないため、HIV/エイズなど、多くの病気に感染する可能性が高い。
※ケニアでは人口の1割がエイズに感染
女子の若すぎる妊娠・出産で死亡する。
※15歳未満の女子が妊娠・出産時に死亡する可能性は、20代の5倍(ユニセフ調査
貧困の悪循環
識字率が低いと、人に騙されたり、危険な仕事をやらされたりする。
アジア、アフリカなどの開発途上国に多い。
開発途上国の中にも教育費の割合が高いところがある
GDPに占める国の教育費(公費)の割合
「教育予算」
世界にはGDPの10%以上を教育に使っている国がいくつもある。
1クラスの児童数
開発途上国の先生は大勢の子どもの面倒がみきれないため、「暗記」だけさせる授業が多い。
教育予算は、学校の数、設備、先生の人数にも影響する。
国全体のお金が少ないため、予算の教育費の割合が高くても十分な教育ができない。
一方、欧米は少人数クラス。
日本は、義務教育の公費は少なくないが、大学の公費が少ないため、全体として教育費の割合が低くなっている。
日本は、教育費の個人負担が大きい国。
***********世界の義務教育~はじまる年齢はほぼ6~7歳だが、内容がだいぶ違う
義務教育制度(2002年
アメリカ、カナダでは、家で教育を受けるシステムがある。
開発途上国では、義務教育があっても、学校に行けない子が多い。
期間はまちまち
短い国は4年、長い国は13年。3倍のひらきがある。
日本の義務教育期間は、中学までの9年間だが、実際は97.6%が高校に行っている(2005年
1年間の学校での勉強の総時間数は国ごとにかなり違う
タイの1160時間が最長、日本は709時間(2007)、韓国800時間以下。
しかし、これに塾、自宅での勉強が含めるとかなりの時間になると推定。
***********日本での教育格差
そもそも「教育格差」という言葉は、「格差社会」から作られた造語。
偏差値の高い、低い学校の差
公立と私立の入学金・授業料・教育内容の差
私立学校、塾がたくさんある都市と、ない地方の差
他国と比べ、はっきり見えてこないのが日本の特徴。
「ゆとり教育」
日本は1970年代まで、総時間数が800時間だったが「詰め込み教育」と批判された反省から、「ゆとり教育」がはじまった。
761時間に減らし、2006年には709時間まで減らした。
今度は「学力が下がった」と批判されて見直され、2007年には総時間数を増やした。
「学力低下」はIEA(国際教育到達度評価学会)の調査と、
OECD(経済協力開発機構)が行う「PISA(学習到達度に関する調査)」の順位が下がったことによる。
2000年に31か国中トップだった「数学の応用力」が、2003年には6位に、「読解力」が8位→14位になった。
IEA調査「自宅での過ごし方」で、2003年の日本の中学2年生の勉強時間が1時間と、46カ国中最下位だった。
「数学は楽しいか?」という質問に「そう思わない」「まったくそう思わない」が61%だった。
1998年「国連子どもの権利委員会」では、日本の学校教育について
「過度に競争的で、心身に否定的な影響を及ぼしている」と改善勧告を出したのも「ゆとり教育」の背景にある。
「順位低下」と「学力低下」の関係は根拠がないという指摘
・2003年の調査で日本より上位の国が参加していなかったから。
・日本の子どもが自宅で1時間しか勉強しないのは、塾などでかなり勉強しているから。など
新たな問題
「塾などで学力を補う必要がある」、「私立に行かせよう」と考える人が増えた。
「学歴信仰」
世界中でみられるが、とくに日本、韓国、中国、台湾、シンガポールは根強いといわれる。
国内の教育が不十分として、海外の学校を重視する「学歴信仰」もある。
大学進学率
韓国の89%を最高に、フィンランド87%、アメリカ82%(2004)。
だが、日本は約半分で、他の先進国に比べて低い。理由の1つは教育費の高さ。
世界には大学の授業料まで無料の国も多いことと、
いったん社会に出てお金を貯めてから大学に入って勉強する、仕事をしながら勉強する人も多い。
***********朝鮮半島の教育格差~南北の信じられない差
韓国
大学受験会場まで生徒を送る警察官
日本と同様6-3制。大学進学率は世界のトップ。
ただし、男子は「徴兵制度」により休学し、4年以上かけて卒業するのが一般的。
「学歴信仰」がとても強く、出身大学が就職・出世に影響する。
激しい受験戦争が有名
「大学を卒業しないと就職できない」「結婚にも影響する」といわれ、
塾・予備校は当たり前、朝早く~夜遅くまで図書館で勉強する。
子どもを応援する親や社会も必死
入試試験のためにお百度参りをしたり、入学試験は社会全体の行事となっている。
英語の聞き取りの間は、バスや列車が徐行運転したり、クラクションは絶対禁止、飛行機の離着陸時間まで調整される/驚
北朝鮮
幼稚園1年小学校4年中学校6年が義務教育。
教科書の紙質が悪く、1冊を何人も使いまわすためボロボロ(1回で捨てちゃうのもどうかと思うけどね
中学校を卒業すると、男子は17~30歳、女子は17~26歳まで軍隊に行く。
軍隊を出た後、就職先は国が決めるため、選択権はなく、大学進学も国が選んだごく一部。
***********カナダは世界で初めて「多文化主義」を取り入れた
「多文化主義」
さまざまな文化をもつ人々を、文化を保ったまま、社会の一員にしようという考え方(イイね
「イマージョン・プログラム」
公用語の英語、フランス語だけでなく、イタリア語、ドイツ語、日本語などの「第二言語授業」もある。
移民の母語の教育も地域ごとに行われている。
「遠隔地教育プログラム」
「テレコンファレンス」による授業では、教師と生徒の双方向のやりとりが可能。
IT技術が教育をバックアップし、ネットを使った通信教育も、高校・大学で盛ん
***********人口世界一の中国13億人は北京語を話す
56の民族(漢族98%、他55の少数民族8%)が暮らす中国。
ここ数十年間で、学校教育が大きく伸びたのは大変なこと
だが、いまだに8700万人が読み書きできない
「中国語」を母語としている人は12億人、第二言語としている人は2億人。
同じ「中国語」でも「北京語」「広東語」「上海語」では発音も語彙も違い、まったく通じない/驚
ただし、どこも共有の「漢字」を使う。
中国政府は、義務教育・公共放送で、徹底的に「普通話(北京語をもとにした公用語)」の普及に努めている。
沿岸部と内陸部、都市部と郊外の教育格差が広がっている
沿岸部は発展し、内陸部は大きく遅れている。
2006年「中国全民教育国家報告」で、貧しい西部地区では8%の自治体が9年制義務教育を導入していないと分かった。
授業料のとりすぎ問題
都市部でも、予算が平等に分配されないため、親に授業料の一部を払わせる学校がある。
全国で「学費抜き打ち調査」をしたら、4つの公立中学で取り過ぎていたことが判明し、怒りは高まる一方
その背景には、高いお金を払ってでもよい教育を受けさせたい人が大勢いることがある。
***********日本の教育格差をなくすために
夜10時を過ぎてもつづく塾の授業
文科省が2年に1度行う「子どもの学習費調査」によると、小学生1人にかかった経費は年平均9万6621円(2004)。
公立中学では、年23万4658円と増加している。
私立中学受験者数も増加。そもそも通うには都市部に住む必要が生じる。
塾の宣伝活動の増加
首都圏・関西圏では、小学校4年生頃から、大手学習塾からのダイレクトメールが送られてくる。
“今の「学習指導要領」では、小数点以下2位までは教えない、台形の面積のもとめ方を教えない”など
塾の宣伝活動は、大勢の親を驚かせ、焦りを感じて塾通いさせた親もいるという。
「教育格差是正」案
塾通いを止めさせるには、公立の教育の充実が必要。
・1クラスの人数を減らす。
・民間企業から募集した校長を採用する。などの試み。
だが、そもそも公立学校の改革を、私立学校と比較するのはおかしいという意見もある。
「奨学金制度」の充実
経済大国日本ですら、こうした状況だから、途上国には国際機関・先進国の国際援助が欠かせない。
その他、NGO団体にも期待されている。
「JHP」
カンボジアに学校をつくるため1993年に設立されたNGO。
校舎だけでなく、ブランコや鉄棒などの遊具もつくり、クレパスやオルガンなどを日本全国から寄付してもらい送っている。
※ドラマ「金八先生」の脚本家で知られる小山内美江子さんが創設/驚
***********自分たちができること
進学のためだけの勉強ではなく、自分が将来どういう仕事をして、どういう暮らしをしたいか考えながら、
あらゆることに興味をもって、自分に合ったものを見つけ、それについて学ぶことが大事。
「周りが塾に行っているから」「みんな私立を受験するから」ということにならないよう注意する。
(親のほうが一生懸命とか、いじめとか、複雑だよね・・・
1人だけで考えず、親、や大人と十分話し合うことも必要(その大人たちが・・・
住む場所、「世帯の所得金額で成績が決まる」というのは悲しいこと。
自分に合った仕事をして、それに見合った収入を得ることを第一に考えて勉強することができれば、
教育格差の問題を乗り越えていけるはず。
***********教育格差をしめす資料
支給される教育費の額
小・中学生1人あたりに支給される、国・地方自治体の教育費の額を比較すると、
1位の高知県と、47位の埼玉県では、110万円以上もひらきがある。
教師1人あたりの生徒数
世界の公共図書館の数
これは、身近に感じるなあ。都内は1駅に1つはある印象だけど、地方だと県立図書館だけとか
誰もが自由に本を借りれる公共図書館は、様々な物事を知る上で、とても大切な教育環境の1つ。
世界には、ロシア、イギリスなど、日本の何十倍もある国と、ミャンマー、エクアドルなどたった1つしかない国もある。
***********教育の機会均等
各国の「教育制度」を比較
「イギリス」
オックスフォード、ケンブリッジという歴史ある名門大学は、今でも階層が色濃く残っている。
「ドイツ」
4年間の基礎学校「基幹学校」「実科学校」「ギムナジウム」の3種類から選ぶ。
「基幹学校」手工業の職人の見習いなど
「実科学校」職業訓練など
「ギムナジウム」大学進学資格を取得する
「フランス」
18歳で受ける「バカロレア」で進学先が決まり、この試験で将来が決まるといわれる。
「アメリカ」
もっとも特徴的なのは、上級学校への進学・入学試験がないこと。一方、卒業するのが難しい。
「韓国」
高校受験がなく、公立・私立から抽選で進学先が決まる。
人気の大学に入れるかどうかが、初めての受験で決まってしまう。
「中国」
教育環境が整っている上海のような都市部では、ゆとりをもたせて5-4制を選ぶ場合もある。
教育環境が整っていない農村部では、小学校を普及するため5年制にして、中学の4年目は、職業訓練などにあてている。
稲葉茂勝/著(児童書の編集プロダクション「こどもくらぶ」編集長)
“教育格差は経済格差を背景にする”
「学歴信仰」が深く結びついているということも知っておきたい。
【内容抜粋メモ】
現代社会には、さまざまな格差があります。
教育格差は、経済格差から生み出されたものだが、経済格差の背景にもなっている。
世界には富める国と、貧しい国の格差があり、それぞれの国には必ず教育格差がある。
貧しいヒトは良い教育を受けられない教育を受けられなければ貧しさから抜け出せない。
世界には、黒板、机、イスがない学校がいくらでもある。校舎がないところもある。
一方、コンピュータをうまく教育に取り入れている国もたくさんある。
コンピュータから得られる情報量はとても大きく、コンピュータが使えるかどうかで勉強に差がでる。
2006年、ユニセフ60周年記念に出版された『世界の子どもたちに今おきていること』も参照。
***********2004年現在、1億1700万人の子どもが学校に行っていない
5~6歳には家事をし、10歳くらいには1日何時間も仕事をしているのが発展途上国の現実
子どもが働かされる理由
・家の手伝いをしなければならない。
・収入を得るために働かなければならない。
・教科書、文房具を買うお金がない
・子どもには勉強は必要ないと考える親が多い。
開発途上国では、水汲みが子どもの仕事(昔の日本と同じだな
何キロも離れた学校に歩いて行き、教室にはぎゅうぎゅう詰めになり、先生は厳しい規則・体罰で接している。
学校では、各民族の言葉ではなく、国の公用語がつかわれ、授業内容が分からず楽しくない。
読み書きが出来ないと、仕事につけず、収入も得られない。
大きな子は、弟・妹の面倒をみたり、家族のために男子は志願兵となり、女子は売春することもある。
***********子ども兵士~武器を持って戦闘に参加する18歳未満の子どもたち
世界各国の子ども兵士
世界に約30万人。中には6歳の子もいるという
・誘拐、脅迫されて強制的に兵士にされる。
・家族を殺された子が志願する。
子ども兵士の利点
・知識や判断力の弱い子どもたちは、大人より敵に対する憎しみの感情を持ちやすい。
・紛争地域で暴力・殺人・銃が身近になり、人を殺しても罪の意識が育っていない。
・子どもでもカンタンに扱える軽量の武器が出回っている。
・従順に命令を聞いて、地雷探し、不発弾処理等、危険な仕事をさせるのに都合がいい。
・死んでも、またさらってくればいい少年兵は「消耗品」にされている。
【ブログ内関連記事】
・『児童労働 働かされる子どもたち』(リブリオ出版)
・『世界の子どもたちのために ユニセフ』(ほるぷ出版)
・『小型武器よさらば 戦いにかり出される児童兵士たち』(小学館)
***********経済大国アメリカも深刻な教育格差に悩んでいる
アメリカの公立学校では、どの民族の子にも「英語」が使われているため、授業についていけない。
英語以外の言葉を喋る子が多い「他民族地域」では、教育レベルが下がる。
親の経済力と子どもの学力格差
「API」
2006年度の公立学校統一テスト結果をもとに計算された、その学校の成績を表す数値。
同じ公立でも1位と21位で約150点差があるのはかなり大きい。
英語が話せないアメリカ人が増加~西海岸の都市、NYなど
1990年頃からスペイン語の広告やチラシが増えた。ヒスパニックが増えたため。
「チャイナタウン」にも英語が話せない人が多い。
母語なまりの強い英語を話す人も多い。
スーパーで買い物をする時も、カートに品物を入れて、レジに行き、黙ってお金を払う。
レジ係が英語を話せなくても不自由せず働ける。
だが、こうした地域は、アメリカの標準的な地域とは大きな経済格差があり、町から出て仕事を探しにくい
ここにも経済格差・教育格差の関係があらわれている。
***********インド~大都市と地方の教育格差が非常に大きい
2005年の人口は約11億300万人。
大勢がヒンディ語を話すが、方言を含めると1000以上の言葉がある/驚
大人で文字が読めない人は5億人以上と推定。
一方、ムンバイなど一部の大都市では教育熱が高く、コンピュータ技術者、医師を目指す場合など高額の教育費が必要。
***********カンボジア~植民地時代、「ポル・ポト政権」時代の影響
かつては仏教が教育に大きな役割を果たし、僧侶が読み書きを教えていた。
1884年、フランスの植民地となり、学校制度の教育がはじまった1953年に独立。
「ポル・ポト政権」下では「教育は小学校だけでよい」とされ、上級学校は全閉鎖となった。
およそ20年間内戦が続いたため、宗教、教育、芸術が徹底的に破壊され、政権が倒された後も、識字率が低い状態が続いている。
「ポル・ポト政権」時代、政治犯の収容所となっていた高校。現在は博物館
***********開発途上国の識字率~開発途上国では低く、とくに女性が低い
開発途上国における15歳以上の識字率。アフリカがとくに低い
文字は、文化を伝える重要な手段の1つ。
一体感を意識したり、祖先とのつながりを感じることができる。
また、国の運営を行うために非常に重要。
***********日本~私立中学のあるなしによってずいぶん違う
全国726校中、私立中学校数の多い都道府県
地方では、ほぼ全員が地元の公立中学に進学する。
私立中学があるところは、教育の場を選ぶ機会が多いということ。
私立中学を受験する子は、たいてい塾に行く回数も多く、行き始める時期も早い。
塾に高い授業料を使い、入学金、高額の授業料を支払う。
「就学援助」を受けているかどうかという経済格差が教育格差の要因の1つとなっている。
地方と都市部の子どもの教育費総額(年間)
教師1人に対して受け持つ1クラスの人数
1936年、大阪の小学校授業のようす/GDP(国内総生産)に対する教育費の比率(2003年
「GDP(国内総生産)」
一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額。
経済を総合的に把握する統計に使われる1つの指標。
GDPの伸び率が経済成長率として扱われる。
現在、都内の小学校の1クラスの人数は約27人。1936年、大阪の小学校は今の2倍だった。
今なお、日本は先進国の中では多い。
教育費の差の背景には、国が教育にお金を使わないことがあげられる。
***********読み書きができない人は、世界人口(15歳以上)の約18%(2006年
識字率と死亡率
識字率の低い上位10カ国における5歳未満の児童の死亡率
正しい知識が得られないため、HIV/エイズなど、多くの病気に感染する可能性が高い。
※ケニアでは人口の1割がエイズに感染
女子の若すぎる妊娠・出産で死亡する。
※15歳未満の女子が妊娠・出産時に死亡する可能性は、20代の5倍(ユニセフ調査
貧困の悪循環
識字率が低いと、人に騙されたり、危険な仕事をやらされたりする。
アジア、アフリカなどの開発途上国に多い。
開発途上国の中にも教育費の割合が高いところがある
GDPに占める国の教育費(公費)の割合
「教育予算」
世界にはGDPの10%以上を教育に使っている国がいくつもある。
1クラスの児童数
開発途上国の先生は大勢の子どもの面倒がみきれないため、「暗記」だけさせる授業が多い。
教育予算は、学校の数、設備、先生の人数にも影響する。
国全体のお金が少ないため、予算の教育費の割合が高くても十分な教育ができない。
一方、欧米は少人数クラス。
日本は、義務教育の公費は少なくないが、大学の公費が少ないため、全体として教育費の割合が低くなっている。
日本は、教育費の個人負担が大きい国。
***********世界の義務教育~はじまる年齢はほぼ6~7歳だが、内容がだいぶ違う
義務教育制度(2002年
アメリカ、カナダでは、家で教育を受けるシステムがある。
開発途上国では、義務教育があっても、学校に行けない子が多い。
期間はまちまち
短い国は4年、長い国は13年。3倍のひらきがある。
日本の義務教育期間は、中学までの9年間だが、実際は97.6%が高校に行っている(2005年
1年間の学校での勉強の総時間数は国ごとにかなり違う
タイの1160時間が最長、日本は709時間(2007)、韓国800時間以下。
しかし、これに塾、自宅での勉強が含めるとかなりの時間になると推定。
***********日本での教育格差
そもそも「教育格差」という言葉は、「格差社会」から作られた造語。
偏差値の高い、低い学校の差
公立と私立の入学金・授業料・教育内容の差
私立学校、塾がたくさんある都市と、ない地方の差
他国と比べ、はっきり見えてこないのが日本の特徴。
「ゆとり教育」
日本は1970年代まで、総時間数が800時間だったが「詰め込み教育」と批判された反省から、「ゆとり教育」がはじまった。
761時間に減らし、2006年には709時間まで減らした。
今度は「学力が下がった」と批判されて見直され、2007年には総時間数を増やした。
「学力低下」はIEA(国際教育到達度評価学会)の調査と、
OECD(経済協力開発機構)が行う「PISA(学習到達度に関する調査)」の順位が下がったことによる。
2000年に31か国中トップだった「数学の応用力」が、2003年には6位に、「読解力」が8位→14位になった。
IEA調査「自宅での過ごし方」で、2003年の日本の中学2年生の勉強時間が1時間と、46カ国中最下位だった。
「数学は楽しいか?」という質問に「そう思わない」「まったくそう思わない」が61%だった。
1998年「国連子どもの権利委員会」では、日本の学校教育について
「過度に競争的で、心身に否定的な影響を及ぼしている」と改善勧告を出したのも「ゆとり教育」の背景にある。
「順位低下」と「学力低下」の関係は根拠がないという指摘
・2003年の調査で日本より上位の国が参加していなかったから。
・日本の子どもが自宅で1時間しか勉強しないのは、塾などでかなり勉強しているから。など
新たな問題
「塾などで学力を補う必要がある」、「私立に行かせよう」と考える人が増えた。
「学歴信仰」
世界中でみられるが、とくに日本、韓国、中国、台湾、シンガポールは根強いといわれる。
国内の教育が不十分として、海外の学校を重視する「学歴信仰」もある。
大学進学率
韓国の89%を最高に、フィンランド87%、アメリカ82%(2004)。
だが、日本は約半分で、他の先進国に比べて低い。理由の1つは教育費の高さ。
世界には大学の授業料まで無料の国も多いことと、
いったん社会に出てお金を貯めてから大学に入って勉強する、仕事をしながら勉強する人も多い。
***********朝鮮半島の教育格差~南北の信じられない差
韓国
大学受験会場まで生徒を送る警察官
日本と同様6-3制。大学進学率は世界のトップ。
ただし、男子は「徴兵制度」により休学し、4年以上かけて卒業するのが一般的。
「学歴信仰」がとても強く、出身大学が就職・出世に影響する。
激しい受験戦争が有名
「大学を卒業しないと就職できない」「結婚にも影響する」といわれ、
塾・予備校は当たり前、朝早く~夜遅くまで図書館で勉強する。
子どもを応援する親や社会も必死
入試試験のためにお百度参りをしたり、入学試験は社会全体の行事となっている。
英語の聞き取りの間は、バスや列車が徐行運転したり、クラクションは絶対禁止、飛行機の離着陸時間まで調整される/驚
北朝鮮
幼稚園1年小学校4年中学校6年が義務教育。
教科書の紙質が悪く、1冊を何人も使いまわすためボロボロ(1回で捨てちゃうのもどうかと思うけどね
中学校を卒業すると、男子は17~30歳、女子は17~26歳まで軍隊に行く。
軍隊を出た後、就職先は国が決めるため、選択権はなく、大学進学も国が選んだごく一部。
***********カナダは世界で初めて「多文化主義」を取り入れた
「多文化主義」
さまざまな文化をもつ人々を、文化を保ったまま、社会の一員にしようという考え方(イイね
「イマージョン・プログラム」
公用語の英語、フランス語だけでなく、イタリア語、ドイツ語、日本語などの「第二言語授業」もある。
移民の母語の教育も地域ごとに行われている。
「遠隔地教育プログラム」
「テレコンファレンス」による授業では、教師と生徒の双方向のやりとりが可能。
IT技術が教育をバックアップし、ネットを使った通信教育も、高校・大学で盛ん
***********人口世界一の中国13億人は北京語を話す
56の民族(漢族98%、他55の少数民族8%)が暮らす中国。
ここ数十年間で、学校教育が大きく伸びたのは大変なこと
だが、いまだに8700万人が読み書きできない
「中国語」を母語としている人は12億人、第二言語としている人は2億人。
同じ「中国語」でも「北京語」「広東語」「上海語」では発音も語彙も違い、まったく通じない/驚
ただし、どこも共有の「漢字」を使う。
中国政府は、義務教育・公共放送で、徹底的に「普通話(北京語をもとにした公用語)」の普及に努めている。
沿岸部と内陸部、都市部と郊外の教育格差が広がっている
沿岸部は発展し、内陸部は大きく遅れている。
2006年「中国全民教育国家報告」で、貧しい西部地区では8%の自治体が9年制義務教育を導入していないと分かった。
授業料のとりすぎ問題
都市部でも、予算が平等に分配されないため、親に授業料の一部を払わせる学校がある。
全国で「学費抜き打ち調査」をしたら、4つの公立中学で取り過ぎていたことが判明し、怒りは高まる一方
その背景には、高いお金を払ってでもよい教育を受けさせたい人が大勢いることがある。
***********日本の教育格差をなくすために
夜10時を過ぎてもつづく塾の授業
文科省が2年に1度行う「子どもの学習費調査」によると、小学生1人にかかった経費は年平均9万6621円(2004)。
公立中学では、年23万4658円と増加している。
私立中学受験者数も増加。そもそも通うには都市部に住む必要が生じる。
塾の宣伝活動の増加
首都圏・関西圏では、小学校4年生頃から、大手学習塾からのダイレクトメールが送られてくる。
“今の「学習指導要領」では、小数点以下2位までは教えない、台形の面積のもとめ方を教えない”など
塾の宣伝活動は、大勢の親を驚かせ、焦りを感じて塾通いさせた親もいるという。
「教育格差是正」案
塾通いを止めさせるには、公立の教育の充実が必要。
・1クラスの人数を減らす。
・民間企業から募集した校長を採用する。などの試み。
だが、そもそも公立学校の改革を、私立学校と比較するのはおかしいという意見もある。
「奨学金制度」の充実
経済大国日本ですら、こうした状況だから、途上国には国際機関・先進国の国際援助が欠かせない。
その他、NGO団体にも期待されている。
「JHP」
カンボジアに学校をつくるため1993年に設立されたNGO。
校舎だけでなく、ブランコや鉄棒などの遊具もつくり、クレパスやオルガンなどを日本全国から寄付してもらい送っている。
※ドラマ「金八先生」の脚本家で知られる小山内美江子さんが創設/驚
***********自分たちができること
進学のためだけの勉強ではなく、自分が将来どういう仕事をして、どういう暮らしをしたいか考えながら、
あらゆることに興味をもって、自分に合ったものを見つけ、それについて学ぶことが大事。
「周りが塾に行っているから」「みんな私立を受験するから」ということにならないよう注意する。
(親のほうが一生懸命とか、いじめとか、複雑だよね・・・
1人だけで考えず、親、や大人と十分話し合うことも必要(その大人たちが・・・
住む場所、「世帯の所得金額で成績が決まる」というのは悲しいこと。
自分に合った仕事をして、それに見合った収入を得ることを第一に考えて勉強することができれば、
教育格差の問題を乗り越えていけるはず。
***********教育格差をしめす資料
支給される教育費の額
小・中学生1人あたりに支給される、国・地方自治体の教育費の額を比較すると、
1位の高知県と、47位の埼玉県では、110万円以上もひらきがある。
教師1人あたりの生徒数
世界の公共図書館の数
これは、身近に感じるなあ。都内は1駅に1つはある印象だけど、地方だと県立図書館だけとか
誰もが自由に本を借りれる公共図書館は、様々な物事を知る上で、とても大切な教育環境の1つ。
世界には、ロシア、イギリスなど、日本の何十倍もある国と、ミャンマー、エクアドルなどたった1つしかない国もある。
***********教育の機会均等
各国の「教育制度」を比較
「イギリス」
オックスフォード、ケンブリッジという歴史ある名門大学は、今でも階層が色濃く残っている。
「ドイツ」
4年間の基礎学校「基幹学校」「実科学校」「ギムナジウム」の3種類から選ぶ。
「基幹学校」手工業の職人の見習いなど
「実科学校」職業訓練など
「ギムナジウム」大学進学資格を取得する
「フランス」
18歳で受ける「バカロレア」で進学先が決まり、この試験で将来が決まるといわれる。
「アメリカ」
もっとも特徴的なのは、上級学校への進学・入学試験がないこと。一方、卒業するのが難しい。
「韓国」
高校受験がなく、公立・私立から抽選で進学先が決まる。
人気の大学に入れるかどうかが、初めての受験で決まってしまう。
「中国」
教育環境が整っている上海のような都市部では、ゆとりをもたせて5-4制を選ぶ場合もある。
教育環境が整っていない農村部では、小学校を普及するため5年制にして、中学の4年目は、職業訓練などにあてている。