メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1993.11~ part3)

2012-12-22 13:58:17 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづきで、これが赤いノートのラスト。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『田園交響楽』(1946)
監督:ジャン・ドラノワ 出演:ピエール・ブランシャール、ミシェル・モルガン ほか
作品を通して雪の積った静かで小さな村の映像がなんとも美しい。
山間の道ならぬ道を一頭の馬が鈴をシャンシャンと鳴らして、橇を滑らせてゆくシーン。
モノクロだけれどもとても叙情的で、思わず魅せられる。
昔の作品だけあって、貞節や清純さが生きていた時代で、
ヒロインが「ジャックとキスしたの」って言うだけで牧師が大ショックを受けるシーンなど、
やっぱり時代を感じさせるなあ!
現代の過激なラブシーンばかりの中で、モルガンの高貴で清らかな美しさも貴重。


『賭けはなされた』(1947)
監督:ジャン・ドラノワ 出演:ミシュリーヌ・プレール ほか
'40年代にしてはなかなかSFチックで、現代のハリウッド映画にしてもウケそうな面白い設定。
ジャン・ポール・サルトルがシナリオを書いたとのこと。仏映らしいアンハッピーエンディング。
「愛」というなんとも不確かなものを、会ったばかりの、身分も生活環境も全く違った男女が
信じあう賭けなんて、死の役人たちの暇つぶしにしかならないような叶わぬ夢なのか。
人生経験を積んだ男女だからこそ、大人の愛情物語りとしてのセンス、渋み、重みがある。


『傷ついた男』(1983)

監督:パトリス・シェロー 出演:ジャン・ユーグ・アングラード ほか
さすがエルヴェ・ギベール脚本だけあって男が男と出会い惹きつけられてゆく、
緊張感に満ちた瞬間、同性を愛してしまうことへの不安、危険、周囲の目などじっくりリアルに描かれてゆく。
ディテイルは捉えにくいが、ジャンの初主演作で、これだけハードゲイ映画に
のめりこんで演じ切ってる、その熱演が光る。
'90年代の美形は受け身の静かな美しさ。思わずハッとさせられる当時28歳の彼は、
後の作品でもよくヌードを見せるけど、整ったルックスに自分でも自信があるんだろうな。
なんとも痛々しいまでに初々しい少年を演じて、後に大物として人気を集める才能が表れている。


『赤死病の仮面』(1989)
監督:アラン・バーキンショウ 出演:フランク・スタローン、ブレンダ・ヴァッカロ ほか
図書館でとんでもないビデオを借りたもんだ
偉大なエドガー・アラン・ポーが自らの命をすり減らして書いた1839年、30歳の時の作品を
見事にチープなB級映画に仕上げてくれた。
『デッドゾーン』での医師役を演じたハーバード・ロムをはじめとするキャストが悪くないからかえって惜しい。
観ている間も観た後も、安っぽいロックの使い方に、ラストのオチまで丁寧に付け加えて
後味の悪さはジェイソンシリーズ以上。
なんでも狂気のせいにするのは、ホラーとしてあまりに安易だよね。
それに女一人でパーティに楽しげに参加しながら、殺人やチャンバラまでしちゃうなんて、
ちょっと考えても設定が厳しすぎる。こうゆう不自然さがB級の悪いレッテルになるんだ。
また、主人公が生き残るしぶとさ、逃げ足が妙にとろくて最後は単に女同士の取っ組み合い。
ああ、こんなに並べたてても意味がないけど、セットや美術、衣装はなかなか斬新。
アラン・ポーの名前なんか背負わないで、ポップなホラーだって最初から開き直れば、
観るほうもそれなりに観て、これほど失望はしなかったろうに。

(またまた酷評


『ヴァージン・スピリット』(1988)
監督:カトリーン・ブレイヤ 出演:デルフィーヌ・ザントゥ、エチエンヌ・シコ ほか
若くてマセた10代の女の子と、中年男のロマンスものも、なぜか昔から映画やドラマの格好の対象。
でも、お国柄や撮る監督によって見方がそれぞれ違ってくるんだなあ。
これがイタリア映画なら、よりセクシーで軽快さが前面に出るだろうけど、
仏映はより精神的苦悩に重きを置いている。テーマは“ロストヴァージン”てだけで、その他の何ものでもないけど。
「日本との貿易関係の仕事をしてる」「儲かりそうね」て、日本はクドキ文句に効果があるのか?

毎日、酒と女でブラブラしてる男で、バーの常連で、ちょっとステキなホテルやデートコースも知ってて、
なにやら暗い影まで背負っちゃってて、いつでもかったるそうな物腰等々、
いわゆる“魅力的な中年男”を体現している俳優は、なかなかダンディでキザさもさほど鼻につかない。
そのプレイボーイがてこずるヒロインは、ワガママし放題。地球は自分のために回っていると思っている。
「若さが彼女を救っている」ってそのとおり。
「20歳になるくらいなら死んだほうがマシ」そんなに若さにこだわる理由が理解出来ない。
ジャン・ピエール・レオがちょい役で出演してたのが驚き。
10年前の彼がこの伊達男役を演じたらどうなるだろう?なんて想像するともっと興味が湧いてくる。


『仕立て屋の恋』(1989)
監督:パトリス・ルコント 出演:ミシェル・ブラン ほか
『髪結いの亭主』に続いてルコント監督作品を観るのは2作目。
前作のほのかな淡い感触とは逆に、静かで精神的な愛は同じでも、
ミシェルの青白い表情、葬儀屋のような真っ黒づくめのイメージが残る。
座った場所のにおいを嗅いだり、覗きで知った事実をネタに迫ったりじゃあんまり陰湿でかなり変態的
相手役の女優サンドリー・ボネールはなかなか愛嬌のある美女。
ルコントの描く中年男と若く美しい女性の大人の愛憎物語り。次回作も期待大。


『キッス・オブ・ザ・タイガー』(1988)
監督:ペトラ・ハフター 出演:ステファーヌ・フェラーラ、ベアーテ・ジョンセン ほか
この手の作品は当たり外れの差が大きいけど、まんざら面白くなくもなかった。
舞台はパリなのにドイツ語だろうか?
男優はハンサムでガッシリしたセクシーボディ。女優は対照的に短いブロンドに華奢な体、
何を考えてるのか分からないフシギな感じ。
生と死がいつも隣り合わせている一見似合いのフツーのカップル。
「人は生きていたいのよ」「まるで関係がないね」
彼女はきっと最後まで彼の言ったことを全部本当だとは信じていなかったんだ。
けど、2人の愛は本物っぽくて美しい。
「僕が他の女と寝たら、どうする?」
「嫉妬するわ。寝たことじゃなく、その前後の2人が優しく寄り添っていることに」


『ラスト・ワルツ』(1978)
 
監督:マーティン・スコセッシ 出演:ザ・バンド ほか
1976年11月25日に開かれたザ・バンドの16年間にわたる活動の最後であるライブと、
その後のメンバたちのインタビューで構成された感動の1本。
サンフランシスコのウィンターランドにて、まずアンコール映像から始まり、
ロニー・ホーキンスからディランまでルーツを担うミュージシャンの顔ぶれが揃っている
その合間に入るオフロードの打ち明け話、ゲストミュージシャンとの出会い等々。
音楽とは、突然生まれて、機械から流れてくるものじゃなく、
そのメロディを生み出し、歌い続ける人間たちの日々の暮らしがあるんだってやっと知った気がする。

こんなに人間臭いバンドを今まで見たことがなかった。
'70とは一体どんな時代だったのか。その時代に青春を送った者にしか分からないだろう。
アメリカ文化の真髄も、日本人には本当に理解することができないのもとても残念に思う。

先ごろ行われたディランの何十周年記念ライブで、ザ・バンドの面々が皆元気にプレイしていたのを覚えている。
ロビーいわく「音楽界で素晴らしい連中がこの世を去っていった。そんな人生は不可能だ」
あんなに根っこまで音楽家な人間の集まりも珍しい。
個性のぶつかり合いで16年間、同じメンバでやってきたこと自体すごいと思うが
始まったことはいつか必ず終わらせる時が来る。

メンバ全員が楽器が弾けて、ヴォーカルスタイルをもって歌えるバンド。
人間味あふれ、心に染み渡る音を聴いて、その素晴らしさを再発見した。
彼らのつくり上げた音やスタイルは、現在も私たちの心をとらえて離さない。
1シーンごと、全体の流れなどに、スコセッシがいかに工夫を凝らして気合いを入れ、
バンドの締めくくりを完璧に飾ろうとしたかひしひしと伝わってくる。珠玉の1本

(これは、ライヴビデオの最高峰。これを観て、V.モリソンも、ドクターも知った。
 ロビーがセクシーなことったら



【読書感想メモ】
「ピーター・パンの冒険」ジェイムズ・バリ
「車輪の下」ヘルマン・ヘッセ(これは今でも大好きな1作
「ピノッキオ」コローディ
「にんじん」ジュール・ルナール
「トム・ソーヤーの冒険」マーク・トウェイン


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