■『わたしは真悟』楳図かずお著
「奇跡は誰にでも一度おきる だがおきたことには誰も気がつかない」
ウィキで楳図さんについて読んでいたら、ずっと気になってた今作について、
“推理小説作家の綾辻行人は楳図を「神」と称して尊敬し、『わたしは真悟』は1頁目から泣いて読むと言う。”
なんて書かれているから、これはなんとしてでも読むしかない!と思って、amazonで古本を買い集めた。
集め始めた時は、同じ小学館でもたくさんの再版があって、それぞれ全何巻かも把握するのに混乱したが、
だいぶあとになってから、自分が集めていたのは、初版で今や絶版のものだと分かった。
買い集めた経緯については別記あり→here
私の中では『漂流教室』がいちばんで、読後しばらくの期間、魂が抜けたようになったことを思い出す。
今作は、泣きはしなかったものの、文字通りひさびさ寝食忘れて、とりつかれたように読んだ。
楳図さん自身、子どものココロを持ち続けている人だと思うけれども、
自然、人類愛にもつながる「子どもたちへの愛」が溢れていて、
だからこそ、大人によって歪められることへの危機感、悲壮感がひしひしと伝わってくる。
楳図さんは、あらゆる作品を通して、永遠に子どもの自由なココロと、大人世界の歪みを描いてきたんだな。
最初は、悟とまりんの小学生の運命的な出会いや、ロボットに知能を与える過程、
大人によって引き裂かれてゆく様にドキドキハラハラさせられるが、
途中から、ふと、真悟が作っていた「毒のおもちゃ」とは一体何だったのか妙に気にかかってくる。
「奇跡は~」で始まる、各章の表紙絵も、一見関係がないように見えて、なにか気にかかるものがある。
▼あらまし(ネタバレ注意 ほんとは手にとって読んでほしいけど・・・
町工場の職人の父を持つ小学6年生の悟は、自由闊達な子ども。
ある日、父の工場にロボットがくると聞いて、異様な興奮を覚える。
そのロボットがある「豊工業」を見に行く社会科見学で、外交官の娘・山本真鈴(まりん)と運命的な出逢いをする。
1982年。クマタ機械工作で作られたロボットは、豊工業にリースされ、毎日、同じ部品を黙々と作り続ける。
2台のロボットをそれぞれ「モンロー」と「リー」(ヴィヴィアン・リーから)と名付けられた。
熟練工は全員クビになり、悟の父だけがロボットの操作担当として残ることになった。
ガンダムみたいな姿を想像していた悟はガッカリしたが、父が喫茶店でサボっている間に
まりんと一緒にモンローに文字や、2人のこと、顔を認識させたるなど、いろいろと教え込む。
2人のあまりの仲の良さが近所に広まり、まりんの母は「もう会ってはいけない」と禁止する。
そして、来月、父の仕事の関係でイギリスに発つことを知る悟。
同じアパートに住む少女・しずかは、悟のことが好きで嫉妬していたが、
まりんが悟に宛てた謎の数字を伝える。悟はそれをモンローに読み取らせると、
「ワタシトケッコンシナイ?」「コドモヲツクロウ」というメッセージが出る。
2人はモンローに「ドウスレバコドモガツクレルカ」と聞くと、「333ノテッペンカラトビウツレ」と出た。
東京タワーのことではないか?と思った2人は、決死の覚悟で夜のタワーに登り始める。
騒ぎが終わり、悟は最後にモンローにまりんへの最後のメッセージを打ち込む。
モンローは次第に意識を持ちはじめ、工場を離れる。
イギリスの日本大使館で歓迎パーティがあり、まりんを紹介されたロビンはひと目で愛してしまう。
急に迫られた恐怖のあまり、まりんは一時的な記憶喪失となり、すべて忘れてしまう。
しずかの隣りに越してきた夫婦には異形の娘がいて、モンローと会話ができる。
モンローは父・悟と、母まりんの名前を足して、自らに「真悟」と名付け、自分も「人間」だと思うようになる。
プログラマーの男性はプログラムミスを疑われ、回収し、処分するため追跡する。
しずかと友だちは、ロボットを追っ手から逃がそうとする。
中学生でコンピュータオタクの少年タケシのもとにシンゴからメッセージが送られてくる。
タケシと接触した途端、シンゴには少年の感情が流れ込み、少年はなぜかとてつもない幸福感で満たされる。
イギリスでは、日本人や日本企業へのデモが加速し、まりんの屋敷も危険な状況となる。
まりんは、周りの機械がなにか訴えていると叫び出す。
ロビンはまりんを自分の故郷キプロス島に連れて行くと提案し、シェルターに閉じ込める。
ロビンは、外は核戦争で全滅してしまったから、生き残ったのは2人だけだとまりんを騙す。
不良2人組は、ある男が吐き出した謎の機械を組み立てて、腕にハメてみる。
その日から謎の男たちに追われる。これは小型の核兵器なのか!?
シンゴは、輸送船を乗っ取り、地球のあらゆる歴史のすべて、生物のつながりを知り、地球そのものとなる。
ロビンはエルサレムで式を挙げようとする。
シンゴ「ロビンは毒だ」
「これは・・・子どもの終わる音よ 大人になんか、なりたくなかったのに」
悟を探して、元いたアパートにたどり着いたシンゴは、再び異形の娘と接触し、その娘は美しい少女の姿に戻る。
「破壊があとからやってくるって言ってるわ!! それは“日本人の意識”なの」
日本人データにマークがつけられた者が佐渡に集められていると知るが、犯人はまったく分からない。
どんどん部品が壊れて、意識も薄れていくシンゴを助けてくれたのは、イヌ、爬虫類、蟻など/驚
佐渡に連れて行かれた悟は、「ロシア兵が日本人を皆殺しにしようと攻めてきた!」と訴える。
******************************
『漂流教室』を読んだ時と同様に、なんとも言えない切なさと同時に、未来へのかすかな希望の余韻が残った。
考えてみれば、キカイも、ニンゲンの脳も、電気信号でできていると単純に考えれば、キカイも意識や感情を持ちうるかも?!
それにしても謎が多すぎて、『熱海の捜査官』みたいに、いっぺんに解き明かしてくれるサイトでもないかなって思わず探したくなる。
恐怖に歪む美しい少女の顔。これぞ楳図作品の真骨頂
そして、異様に書き込まれた線画が、私は小さい頃から好きだったんだな。
学校に上がる前のしずかちゃんですら、悟への気持ちは立派な恋愛で、
ちょっとした目の動きなどに、嫉妬や計算を感じる心理的駆け引きがあって凄い/驚
全作品読みたいなあ!
「奇跡は誰にでも一度おきる だがおきたことには誰も気がつかない」
ウィキで楳図さんについて読んでいたら、ずっと気になってた今作について、
“推理小説作家の綾辻行人は楳図を「神」と称して尊敬し、『わたしは真悟』は1頁目から泣いて読むと言う。”
なんて書かれているから、これはなんとしてでも読むしかない!と思って、amazonで古本を買い集めた。
集め始めた時は、同じ小学館でもたくさんの再版があって、それぞれ全何巻かも把握するのに混乱したが、
だいぶあとになってから、自分が集めていたのは、初版で今や絶版のものだと分かった。
買い集めた経緯については別記あり→here
私の中では『漂流教室』がいちばんで、読後しばらくの期間、魂が抜けたようになったことを思い出す。
今作は、泣きはしなかったものの、文字通りひさびさ寝食忘れて、とりつかれたように読んだ。
楳図さん自身、子どものココロを持ち続けている人だと思うけれども、
自然、人類愛にもつながる「子どもたちへの愛」が溢れていて、
だからこそ、大人によって歪められることへの危機感、悲壮感がひしひしと伝わってくる。
楳図さんは、あらゆる作品を通して、永遠に子どもの自由なココロと、大人世界の歪みを描いてきたんだな。
最初は、悟とまりんの小学生の運命的な出会いや、ロボットに知能を与える過程、
大人によって引き裂かれてゆく様にドキドキハラハラさせられるが、
途中から、ふと、真悟が作っていた「毒のおもちゃ」とは一体何だったのか妙に気にかかってくる。
「奇跡は~」で始まる、各章の表紙絵も、一見関係がないように見えて、なにか気にかかるものがある。
▼あらまし(ネタバレ注意 ほんとは手にとって読んでほしいけど・・・
町工場の職人の父を持つ小学6年生の悟は、自由闊達な子ども。
ある日、父の工場にロボットがくると聞いて、異様な興奮を覚える。
そのロボットがある「豊工業」を見に行く社会科見学で、外交官の娘・山本真鈴(まりん)と運命的な出逢いをする。
1982年。クマタ機械工作で作られたロボットは、豊工業にリースされ、毎日、同じ部品を黙々と作り続ける。
2台のロボットをそれぞれ「モンロー」と「リー」(ヴィヴィアン・リーから)と名付けられた。
熟練工は全員クビになり、悟の父だけがロボットの操作担当として残ることになった。
ガンダムみたいな姿を想像していた悟はガッカリしたが、父が喫茶店でサボっている間に
まりんと一緒にモンローに文字や、2人のこと、顔を認識させたるなど、いろいろと教え込む。
2人のあまりの仲の良さが近所に広まり、まりんの母は「もう会ってはいけない」と禁止する。
そして、来月、父の仕事の関係でイギリスに発つことを知る悟。
同じアパートに住む少女・しずかは、悟のことが好きで嫉妬していたが、
まりんが悟に宛てた謎の数字を伝える。悟はそれをモンローに読み取らせると、
「ワタシトケッコンシナイ?」「コドモヲツクロウ」というメッセージが出る。
2人はモンローに「ドウスレバコドモガツクレルカ」と聞くと、「333ノテッペンカラトビウツレ」と出た。
東京タワーのことではないか?と思った2人は、決死の覚悟で夜のタワーに登り始める。
騒ぎが終わり、悟は最後にモンローにまりんへの最後のメッセージを打ち込む。
モンローは次第に意識を持ちはじめ、工場を離れる。
イギリスの日本大使館で歓迎パーティがあり、まりんを紹介されたロビンはひと目で愛してしまう。
急に迫られた恐怖のあまり、まりんは一時的な記憶喪失となり、すべて忘れてしまう。
しずかの隣りに越してきた夫婦には異形の娘がいて、モンローと会話ができる。
モンローは父・悟と、母まりんの名前を足して、自らに「真悟」と名付け、自分も「人間」だと思うようになる。
プログラマーの男性はプログラムミスを疑われ、回収し、処分するため追跡する。
しずかと友だちは、ロボットを追っ手から逃がそうとする。
中学生でコンピュータオタクの少年タケシのもとにシンゴからメッセージが送られてくる。
タケシと接触した途端、シンゴには少年の感情が流れ込み、少年はなぜかとてつもない幸福感で満たされる。
イギリスでは、日本人や日本企業へのデモが加速し、まりんの屋敷も危険な状況となる。
まりんは、周りの機械がなにか訴えていると叫び出す。
ロビンはまりんを自分の故郷キプロス島に連れて行くと提案し、シェルターに閉じ込める。
ロビンは、外は核戦争で全滅してしまったから、生き残ったのは2人だけだとまりんを騙す。
不良2人組は、ある男が吐き出した謎の機械を組み立てて、腕にハメてみる。
その日から謎の男たちに追われる。これは小型の核兵器なのか!?
シンゴは、輸送船を乗っ取り、地球のあらゆる歴史のすべて、生物のつながりを知り、地球そのものとなる。
ロビンはエルサレムで式を挙げようとする。
シンゴ「ロビンは毒だ」
「これは・・・子どもの終わる音よ 大人になんか、なりたくなかったのに」
悟を探して、元いたアパートにたどり着いたシンゴは、再び異形の娘と接触し、その娘は美しい少女の姿に戻る。
「破壊があとからやってくるって言ってるわ!! それは“日本人の意識”なの」
日本人データにマークがつけられた者が佐渡に集められていると知るが、犯人はまったく分からない。
どんどん部品が壊れて、意識も薄れていくシンゴを助けてくれたのは、イヌ、爬虫類、蟻など/驚
佐渡に連れて行かれた悟は、「ロシア兵が日本人を皆殺しにしようと攻めてきた!」と訴える。
******************************
『漂流教室』を読んだ時と同様に、なんとも言えない切なさと同時に、未来へのかすかな希望の余韻が残った。
考えてみれば、キカイも、ニンゲンの脳も、電気信号でできていると単純に考えれば、キカイも意識や感情を持ちうるかも?!
それにしても謎が多すぎて、『熱海の捜査官』みたいに、いっぺんに解き明かしてくれるサイトでもないかなって思わず探したくなる。
恐怖に歪む美しい少女の顔。これぞ楳図作品の真骨頂
そして、異様に書き込まれた線画が、私は小さい頃から好きだったんだな。
学校に上がる前のしずかちゃんですら、悟への気持ちは立派な恋愛で、
ちょっとした目の動きなどに、嫉妬や計算を感じる心理的駆け引きがあって凄い/驚
全作品読みたいなあ!