メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『犬、最愛のパートナー』

2008-12-20 14:47:23 | 
今週読んだ本。

『さるの こしかけ』作:宮沢賢治 絵:さいとうよしみ
「小猿は緑の草の上を列(なら)んでだんだんゆるやかに、三べんばかり廻ってから、楢夫のそばへやって来ました。大将が鼻をちぢめて云いました。
「ああひどかった。あなたもお疲れでしょう。もう大丈夫です。これからはこんな切ないことはありません。」

欧米文学のほうが好きなので、日本人作家はほとんど読まなかったが、そんな中でも一番好きなのは宮沢賢治
『銀河鉄道の夜』が一番だけど、もちろんどれを読んでも素晴らしいものばかり。
何が好きかってこの独特な言葉の選び方。
昔の作家だから古い漢字の使い方もそうだし、地元の岩手県花巻の方言もあるし、なにより賢治によって創られた
まったく純粋で、篤い信仰からくる慈悲が伝わる言葉を一語一句噛みしめて読むと
ココロの芯からあったまって涙が出そうになる

少年・楢夫が庭の木に生えたキノコを見てたら小猿が現れて、木の中の世界に案内される
不思議の国のアリスのような、ガリバーのようなまるで夢を見ているようなストーリーだった。


『すいせん月の四日』宮沢賢治 作 堀川理万子 絵
吹雪をおこす雪ばんご(おばあさん)と雪童子がやって来て、さっきまで太陽が照っていた丘がみるみる大雪に包まれる。
カリメラ(カルメ焼き)のことを真剣に考えながら歩いていた子どもが足をとられて蹲って泣いている。
雪ばんごは「水仙月の四日なんだから、ひとりやふたり死んだって構わないんだよ」と言うが、
雪童子は優しくその子に「すぐ通り過ぎるからじっとしていれば大丈夫だよ」と囁くけれども、
子どもの耳にはただ冷たい風が鳴っているだけにしか聞こえない。
やがて吹雪は去り、雪童子と連れの狼たちも別の地へと向かい、子どもを探して親がやってくる。
子どもが過ごした吹雪の一夜の様子が鮮やかに切り取られた素晴らしい一遍。

雪童子がどうしてカシオペアがよく光ると吹雪になるのかと話すセリフもステキ。
「それはね、電気菓子(わたあめのこと)とおなじだよ。そら、ぐるぐるぐるまわっているだろう。ザラメがみんな、ふわふわのお菓子になるねえ、だから火がよく燃えればいいんだよ。」


『犬、最愛のパートナー』ジョーン・ワイナー・ブラウン/著 J・T・ウィリアムズ/絵 大西央士/訳
飼い主と犬本人の感覚との合間をいったりきたりして書かれている文体が新鮮だった。
ワイナー自身が飼っていたポインターをモデルにして書いたとのこと。
旦那さんも10年前にサイモンと同じ心臓病で亡くなっているらしい。
狩猟犬としての誇りを本能として持ちながらも、都会で暮らすサイモンは近所の鳩を追って片足を上げるのが精一杯。
それでも高い塀の上を歩いたりして近所の英雄になり、楽しい人生を謳歌していたが突然、心臓の病になった。。

「サイモンは自分が病気になったことで注目の的になっているのが恥ずかしかった。かといって、自分のことを考えていたわけではない。犬は決してそんなことはしない。彼らはどんなにひどい仕打ちでもがまんするだろう。いや、そう、がまんするのだ。犬は、たたかれても、悲しそうにこちらを見ながら、いやな思いをさせ、怒らせたことをわびるだろう。」
そう、犬って、いやほとんどの動物ってそんな風なんだ。シンプルで、純粋で。
ヒトの勝手な行動にも選択権はないし、与えつづけてくれるばかりの愛情。出し惜しみもない。

こないだ会社で読んだ記事に、医療の研究に使われてるマウスが何かの症状が現れるよう「作成」されて、
彼らの尾をちょっとばかり「切断」して、どれだけの時間出血したかという棒グラフが載っていた。
血が止まりずらい症状な為に、「交配」されて「妊娠」させられた雌マウスは、出産の際に出血多量で死んだ例も数件載っていた。
誰がネズミは実験に使って殺してもいいって決めたんだろう。
いま、わたしが便利に飲んでるクスリは全部、こんな動物実験が繰り返された結果なんだろうか。



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