メランコリア

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『図書館のすべてがわかる本1 図書館のはじまり・うつりかわり』(岩崎書店)

2014-12-20 13:38:10 | 
『図書館のすべてがわかる本1 図書館のはじまり・うつりかわり』(岩崎書店)
秋田喜代美/監修

『本屋さんのすべてがわかる本』(ミネルヴァ書房)と同じシリーズかと思ったら違うのね。似てる

図書館のはじまりを知る前に、まず文字の起源から説明されていて、とても興味深い、勉強になる1冊。

ネットで自由に無料で本が読める時代になったら、本屋はなくなって、著作権もなくなるかも?

文化や教育と金儲けは別物。
自由に想像して、創造されたものが、自由に、等しく、みんなに開かれる時代が早くるといいな。
教育、文化が広がれば、戦争だってなくなるだろう


【内容抜粋メモ】

「図書館」の語源
英語ではlibrary。ラテン語のliber(リベル)からきている。リベル=木の樹皮、本の意。
古代ローマでは、木の樹皮の裏側に文字を書いていた。
ドイツ、フランス、イタリアの語源は、パピルスを意味するギリシャ語の「biblos」(ビブロス)。
日本の「図書館」は、奈良時代の「文庫」「書籍館(しょじゃくかん)」が元。

「ボドリアン図書館」@オックスフォード大学


図書館の歴史は、文字の歴史
地球の歴史は約46億年、人類の歴史は約3万年、文字の歴史は約5000年。
その前は口づてに語り伝える方法しかなかった。

文字でもっとも古いのは、紀元前3000年「メソポタミア文明」から使われていた「楔形文字」。
絵文字から生まれて、約3000年間使われた。


楔形文字

同時期、エジプト文明では「ヒエログリフ」が生まれ、約3500年間使われた(かっちょいいよねえ惚×5000
ヒエロ=神聖、グリフ=彫刻の意。


中国文明では、紀元前1600年頃からの殷王朝時代に「甲骨文字」が使われ、「漢字」に変化した。

甲骨文字


文字で考えを記録する方法
エジプトでパピルス紙の技術が生まれ、各国に広まり、野生のパピルスは不足し、人工栽培が必要になった/驚
代わりに登場したのは「羊皮紙」。小アジア(現トルコ)で生まれ、18C頃まで使われた。

 
パピルス、羊皮紙(羊皮紙は丈夫で柔らかく、両面に文字が書けたが高価だった


紙の発明は中国
蔡倫が105年に発明。それまでは「竹簡」「木簡」が使われていた。
製紙技術は、約700年間、秘密にされ、ヨーロッパに伝わったのは千年後の12C半ば。


竹簡


世界の古代文明と文字
大きな河の流域に古代文明が生まれた。
農業が行われ、人が集まって「都市」となり、王、神官、市民、奴隷などの階級が作られ、「国家」となった→「古代」

「ウル遺跡」@イラク


文字を書いたものを保管する場所が図書館の始まり
古代メソポタミア、古代エジプトに、粘土板やパピルス紙の記録の貯蔵庫があった=世界最初の図書館
建造者が分かっている最古の図書館は、アッシリア(現イラク)、紀元前650年、「アッシュールバニパル王の図書館」。
蔵書約2万点は、現在、大英博物館に保存されている。


アッシュールバニパル王の浮き彫り

「エブラ遺跡」


「アレクサンドリア図書館」は古代最大の図書館
エジプトの支配者らが世界各地から集めた「巻子本(かんすぼん)」を所蔵。
共通語のギリシャ語への翻訳も盛んに行われた。
蔵書を分類する目録もつくった。「西洋の学術図書館の原型」といわれる。
ここで研究した学者らは、さまざまな学問を進展させた。


パピルス紙の巻子本


「ペルガモン図書館」は、「アレクサンドリア図書館」に対抗して造られた
ペルガモン王国で紀元前3C半ば~2C。最大の特徴は、パピルス紙の巻子本から羊皮紙の本にかえていったこと。
パピルス紙はページを何回もめくると破れてしまうが、羊皮紙は2つ折、4つ折にして、「製本」する技術が生まれた。


羊皮紙の本


古代に生まれた公共図書館
当時、本は書き写してしか入手できなかったため、原本がある古代メソポタミア、古代エジプトが学問の中心地だった。
古代ローマ帝国時代は、将軍が戦利品で持ち帰った本を市民に公開するようになった。
暗殺されたカエサルの遺志を継いだ部下が、紀元前39年に公共の利用のための図書館を設立。
学術書のほか、古典文学などもたくさんあった。本が増えると、管理する「司書」「翻訳員」も誕生した。

「ケルスス図書館」は、「アレクサンドリア図書館」「ペルガモン図書館」とともに3大図書館といわれた。


「ケルスス図書館」のある「エフェソス遺跡」には、ほかに神殿、広場、劇場、公衆浴場跡もある。


ピンク色部分は、2C頃のローマ帝国最大領土


中世では、図書館はキリスト教の布教とともに発展した
教会、修道院に図書館ができ、聖書などが「写字生」たちによって書き写された。「写本づくり」
プラトンやアリストテレスらの本が残っているのも「写字生」たちの努力のおかげ。


写字生


『ケルズの書』は、アイルランドの国宝で、世界でもっとも美しい本といわれる「彩色写本」

「ザンクト・ガレン修道院図書館」
約16万冊を所蔵。今もひらかれている/驚


大学図書館、貴族図書館の誕生
12~13C、修道院図書館は衰退し、ヨーロッパ各地に「大学図書館」が設立された。
学生らは教授から本を借りて勉強していたが、大学の規模が拡大したため。


高価なため、1冊ずつ鎖でつながれていた/驚

パリ大学、オックスフォード大学には大図書館、小図書館があった。
小図書館には、比較的価値の低い本、写しがたくさんある本が並べられた。

13~14C、王侯貴族や大領主らが競って豪華な本を集めて個人図書館をつくったのが「貴族図書館」。
フランスの「王立図書館」は、今の「フランス国立図書館」の前身。


グーテンベルクが活版印刷術を発明!
金属に字形を刻んだ活字を並べて、インクをつけた機械にかけ、一度に大量の本が印刷できるようになった。
これは「羅針盤」「火薬」とともに「ルネサンス三大発明」の1つと言われる。


活字

→人々に本の貸し出しが可能になり、各地に図書館がつくられた。


「会員制図書館」が広まる
16~18C、一般市民への貸し出しがはじまる。
「会員制図書館」をはじめたのは、アメリカのベンジャミン・フランクリン。
討論クラブで、もちよった本を共有しはじめ、「フィラデルフィア図書館会社」を設立→今日の「公共図書館」に発展


「フィラデルフィア図書館会社」


「コーヒーハウス」@イギリス

17半ば~18Cに流行した「コーヒーハウス」では、有料で本を借りる「会員制図書館」の先がけとなる。
女性は立ち入り禁止


「公共図書館法」の成立
アメリカ(1848)、イギリス(1850)に成立した法律が「公共図書館」の誕生のきっかけ。「ボストン公共図書館」
19C終わりには「児童室」もつくられたv


「ピッツバーグ・カーネギー図書館」の「児童室」

「カーネギー図書館」(1919開館)は、今は博物館となっている
カーネギーは、誰もが無料で利用できる図書館こそ「自学自習」の場で、機会均等を保障する場と考え、
多額の資金を寄付し、「公共図書館」の発展に大きく貢献した。
「カーネギー図書館」は、2500以上もあり、今も運営されている。


司書を育てる
19C半ばまで、図書館職員は1人で管理していたが、人手不足となり、本の知識、古い本の修理をする人が必要になった。
1887年、コロンビア大学に「図書館学校」を創設。世界初、図書館員を育成した。
つくったのは、「十進分類法」で知られるメルヴィル・デューイ
「デューイ十進分類法(DDC)」をもとに、「日本十進分類法(NDC)」がつくられた。
学校には、若い女性も大勢入学した。図書館は女性が働ける場の代表となった。


開架式と閉架式
「開架式」19~20C、利用者は自由に本を探せるようになった。
「閉架式」以前は、本は書庫に保管され、図書館員がもってくる。
今は、本や資料に応じて使い分けられている。


現在、蔵書数、職員数で世界最大の「アメリカ議会図書館」


よみがえった古代図書館「新アレクサンドリア図書館」(2002年開館)
 
古代アレクサンドリア図書館は、戦火で失われた

4つの目標
・世界がエジプトを知る窓になること
・エジプトが世界を知る窓になること
・デジタル時代をリードする研究機関になること
・教育、寛容、対話、相互理解の中心になること

ほかにも、プラネタリウム、美術館、博物館なども併設されている。


電子図書館「ワールド・デジタル・ライブラリー」
「新アレクサンドリア図書館」も積極的に参加している。日本でも「国立国会図書館」が参加。

「ワールド・デジタル・ライブラリー」サイト
ネットを通して、いつでもどこでも貴重な本や資料が閲覧できる/驚×5000


*****************************日本の図書館のあゆみ

日本の図書館の原型は奈良時代に生まれた。
8Cはじめ、国の蔵書を管理する「図書寮」がつくられたが非公開。
8C半ば、有力貴族の石上宅嗣は、自分の屋敷に「芸亭(うんてい)」という文庫をつくった=日本最初の公開図書館


「芸亭(うんてい)」跡地


鎌倉時代の武士の文庫「金沢文庫」(現・横浜市)
鎌倉幕府滅亡後は、隣接する「称名寺」に管理された。

1602年、徳川家康が、江戸城内に「富士見亭文庫」を開設。当時は武士、役人に利用が限られていた。


江戸時代の「貸本屋」
読み書き、そろばんを教える「寺子屋」が急速に広まったことから、
本などを有料で貸し出す商売が人気となり、貸本は庶民の娯楽となった。


「書籍館(しょじゃくかん)」から「図書館」へ
西洋式の近代図書館を日本に紹介したのは、福沢諭吉。明治5年。湯島聖堂(!)に設立して公開された。
明治30年。「帝国図書館」が開設→戦後、昭和22年「国立図書館」と改名→「国立国会図書館」→「国立国会図書館支部上野図書館」

「通俗図書館」が明治半ば、各地に開設された。
明治後半、「図書館令」が公布され、たくさんの公共図書館が設立された。(有料)


戦後の図書館はアメリカの影響を受けた
第二次世界大戦後、GHQが民主化政策を進めた。
教育制度改革を担当したのは「民間情報教育局(CIE)」。
昭和20年「CIE図書館」が東京に開設。その後、全国23館になった。


大阪「CIE図書館」のストーリーアワー(おはなし会)


昭和25年「図書館法」公布
今日の図書館制度の基盤がつくられた。1.「開架式」2.無料で利用可能


公共図書館の数の増加


「移動図書館」
日本初の「移動図書館」は、昭和23年、高知県立図書館の「自動車文庫」といわれる。


日野市立図書館「ひまわり号」では、児童書もたくさんあった(懐かしいなあ!


「学校図書館」の歴史
「学校図書館」の先進国アメリカでも20Cに入ってから重要視された。
日本中につくられたのは、昭和28年に「学校図書館法」が定められてから。
2003年からは、「司書教諭の設置」も決められた。


昭和28年に開館した芳林小学校の図書館

つくられた経緯にはGHQの報告書があった。
「1人の教師が1冊の教科書で教えると、思想教育が起きる可能性がある。
 子どもたちが多様な意見や主張を学べるようにするには、多くの本から学べる環境を整えなければならない」

戦前のような思想統一の予防、民主主義を育てるために重要と考えられるようになった。


日本の「児童図書館」の歴史
公共図書館の「児童室」「児童コーナー」も含まれる。
日本で初めて設けたのは、明治36年の「山口県立山口図書館」。その後増えた。
しかし、満州事変から戦争が長引き、図書館は経費削減・人手不足となり、最初に「児童室」が閉鎖された


「家庭文庫」
戦後、ふたたび「児童室」「児童コーナー」が増えて、1960年頃から一般人が自宅に児童書を集めて、地域に開放する活動が各地で広まった。

「東京子ども図書館」発足(1974)
日本初の児童書専門の私立図書館。

1980年代には、「児童室」「児童コーナー」の設置率は8割を超える。

「国際子ども図書館」一部開館(2000)(意外に最近だったんだ/驚 ここに住みたい!
日本だけでなく、世界中の児童書を集め、展示会なども行っている。
「第二資料室」は「帝国図書館」の建物を模している。

【ブログ内関連記事】
町歩き@上野(国際子ども図書館)


「子どもの読書活動の推進に関する法律」(2001公布)
4/23は「子ども読書の日」と定められた。


児童文学者・石井桃子の「かつら文庫」
「家庭文庫」が増えたきっかけは、石井桃子著『子どもの図書館』。「ポストの数ほど図書館を」と唱えた。
今は「東京子ども図書館」が活動をひきつぎ、毎週土曜に開室している。
石井桃子の翻訳書には、『熊のプーさん』、『ちいさなうさこちゃん』(ミッフィー)、『ピーターラビットのおはなし』などがある/驚

 
「かつら文庫」

村岡花子さんに続き児童文学の礎を築いた、石井桃子さんのことばと生涯に感動の1冊


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