■イラスト版 健康ライブラリー『認知行動療法のすべてがわかる本』(講談社)
清水栄司/監修
図書館巡りで見つけた。ネット検索だけだと本のボリュームや中身が分からないから、
本屋と同じで、実際手にとって、内容をザっと見てから借りるほうが間違いない。
本書は「イラスト版」て銘打ってるだけあって、イラストが多くて、これまでで一番分かりやすくまとまってておススメの1冊
日本ではまだまだこれからっていう「認知行動療法」について初めて触れる人が読んでも、すっきり分かると思う。
治療の具体的な経過も、まずどこに行けば詳しく分かるかも載っているのが嬉しい。
本書にも書いてある通り、こうして病気についての本をいろいろ読むだけでも治療の下支えになるし、
治療の大切な一部なんだなって改めて実感した。
また長くなること必須だが、忘れないように以下にメモした
もっともっと認知度が高まり、理解が深まって、身近な専門医・専門機関が増えていくことを願うばかり。
【内容メモ】
日本では、自殺者が年間3万人超えが10年以上も続き、休職・失職する人が増加し、心の医療費の抑制政策が続いている。
うつや不安障害の人は、なんでもゼロか100%か両極端に考えてしまう。
そのような人に「考え方を変えて」と助言するのは「地球は平らだと思って」と言うのと同じくらい難しい。
精神科の面接の3つの特徴は「受容・共感・傾聴」
・支持的精神療法
・精神分析:無意識に押さえつけている欲求を分析して気づかせ、そのために生じる症状を改善する
・認知行動療法は、上記の2つプラス、理性的に解決策を探していく側面がある。
認知行動療法とは
認知と行動は密接に関係している。療法も表裏一体。
認知(考え方)の見直し。極端に悲観的・否定的になっている場合の修正。「認知再構成法」「コラム法」など
行動の見直し。生活には不要な不合理な行動が癖のようになって支障となっている時、その習慣を変える。「行動活性化」(やりたいことをやる)
薬物療法と同等の効果がある。効果の持続時間はより長いと認められている。
医学界はパニック障害の治療について、薬物療法と認知行動療法は効果の優劣が付け難いとしている。
(表を見ると、パニ障への効果は一番低いなあ・・・
薬物療法と併用でも使い分けでもよい。
日本では薬物療法から始めて激しい症状を抑えてから認知行動療法に入る場合が多い。
併用した人は、薬物療法単独の人より、再発率が低い。
●歴史の流れ
・行動療法:1950年に体系化された。(例:「パブロフの犬」)
・認知療法:1970年に体系化された。(アメリカのベックが創始者)
・認知行動療法:1990年に体系化された。日本は普及が始まったばかり。
・マインドフルネス、アクセプタンス:ありのままを受け入れる東洋的な考え方が再評価されている。
認知行動療法の基本型は、認知と行動と感情による三角形
理性+感情が両方とも正常に機能している状態が人間らしい姿。
現代日本社会は、成果主義で理性だけを重視し、感情を封じている不自然な状態。
認知と行動と感情のうち、一部だけに注目しても、その原因や背景には気づけない。
認知行動療法では「感じること」と「考えること」を明確に区別する。
自動思考
根拠なく思い浮かぶ心の声。瞬間的に働いている認知を自覚することを目指す。
「どうせ嫌われているんだろう」など
➡自動思考が運悪く現実になると、ますます確信してしまう悪循環になる
考えている通りにことが運ばず、どうも生活がうまくいかない場合は、“自動思考をとらえてみる”。
紙に書いたり、人と話したりして「言語化」すること。
スキーマ(考え方の癖)を知る
コア・ビリーフ(中核信念)とも呼ばれる。自動思考よりさらに奥深くにある考え方のパターン。
「完璧でないと無意味だ」など
➡いろんな考え方があると意識する。
行動と感情を変えると、その影響で認知も変わるという相関関係にある。
イギリスではセラピストを1万人養成中
イギリスでは、6人に1人が抑うつや不安に苦しみ、就労不能手当て受給者が100万人いると言われている。
セラピストの増員をはかり、その半数を職場復帰できる見込み(やっぱ国家利益のためってのもあるのかな?
「心理療法をもっと身近に」この心理療法は認知行動療法をさす。
***************************************
強弱さまざまなセラピーがある。
専門医に受診して、治療者と2人でじっくり取り組むのが本来の形。
【セラピーの種類】
1.セルフ・ヘルプCBT(認知行動療法):自分で自分をたすける
2.アシストつきセルフ・ヘルプCBT
3.CBTアプローチ:講座形式で情報提供を受ける
4.集団CBT:全12回程度の集まりに参加
5.個人CBT:熟練した治療者と1対1で取り組む標準的な方法(強度の高いセラピー)←わたしはコレか?
イギリスでは、認知行動療法関連のコンピュータソフトプログラムが100種ほどあり、一部は現場で実用化されている
本書でも参考文献に大野さんの『こころが晴れるノート』が載ってる。
セルフ・ヘルプCBT
「読書療法」がもっとも手軽
注意:読書の元気がない人、自分の状況を書き出すことが苦手な人などは挫折する場合もある。
アシストつきセルフ・ヘルプCBT
医療機関・関連機関などが主催する会に参加する。療法より教育に近い(こないだのセミナーみたいなものかな?
集団CBT
他の患者さんが克服する過程を見て、自分にもできると思えてくる。
集団療法では個人の問題にあわせることに限界がある。
個人CBT
・1週間に1回程度、全12回程度、3ヶ月~半年ほどかける(もう半年になるなぁ・・・
・治療者が患者の悪循環を見つけ、一緒に解決の出口を探す。日本では専門科が少ないが、医療保険適用が実現したため(ほんと驚)今後に期待。
自分の考え方、感情、行動をコントロールする力をつけることが目標。
***************************************
最初の面接は「アセスメント」
患者の情報収集、整理、病気の状態の見立てをして、おおまかな治療プランを立てる。
個人CBTの流れ(50分)
10分:導入部:前回を振り返り、今回のテーマを決める。宿題の確認。
30分:本題(治療のボディ)。話したいこと、取り組みたいことを話して悪循環を見つける。
10分:まとめ。次回の宿題などを確認。
(うん、大体わたしもこの流れだ
進行は治療者に任せて、患者は、気持ちを話すことが大事。繰り返すうちに流れが見える。
1.まず、なにが辛いか話してみる
「無理解が辛い」:うつや不安障害の患者は周りに理解してもらえない辛さがある
2.話を聞いてもらう(傾聴・共感)
人が意欲的に活動するには、周りからの基本的な信頼が必要。愛され、認められることが人間関係の基本。
3.受け止めてくれる(受容)
人は、受容されなければ変われない。自分の全部が問題ではないと感じれば意欲が出る。
4.緊張感がとける
5.変わる準備ができる
***************************************
1.話したいテーマ(アジェンダ)を決める
「家族とうまくいかないこと」など治療者の思い+患者の思いを話し合いテーマを決める。
話したいことが多すぎたり、なにもなかったりしても、治療者がテーマを決めて手伝ってくれる。
患者も治療者も治療の主役。自分をよく知る患者治療をよく知る治療者が力をあわせる。
まとめでお互いの意見や感想をフィードバックする。
「ソクラテスの問答」ガイデッド・ディスカバリー
問答を重ねることで、話し相手を自発的な気づきへと導く対話法。
「その時、なにが悲しかったのですか?」など改めて問いかける➡悲しみを引き起こした原因を探り、感情と原因の関係に気づく。「導かれた気づき」と呼ぶ。
治療者は、オープン・クエスチョン(開かれた質問)でなく、患者が考えやすいきっかけをまじえる。
患者がどんな気づきにたどりついても、それを尊重する。
うまく言葉に出来ない、モヤモヤとした問題をとらえて欲しいという思いがある。
認知と感情を分けてとらえる
出来事➡認知、感情➡行動
問題が起きる時、どう考えているか感情と認知ががっちりくっついていて、分けるのが難しい。
区別するコツは、感情を表す言葉をたくさん用意すること。快・不快に分け、不快の感情について掘り下げる。
例:イライラ、混乱、恥ずかしいなど
●ホットな認知
強い感情をともなう認知のこと。治療のカギとなる。ホットな認知をとらえるのが目標。
●ケース・フォーミュレーション
事例の定式化。対話から情報を集め➡式と照らして仮説をたてる➡仮説を検証し、その式で他の問題も解決できる
●ABC理論(アルバート・エリス)
A:きっかけの出来事
B:信念。認知、考え方
C:結果。感情、行動
●問題を特定する
1.フォーミュレーションした3つの要素のうち、中核信念に気づき悪循環を発見する。
例:子どもの頃口下手だと言われた。
2.悪循環や対策をパターンとして理解する。
例:人と話すのが辛い。嫌われるのが怖くて1人で作業する。失敗が不安で昇進を辞退する。
3.よりよい対策を練る。
例:「口下手でも嫌われるとはかぎらない」と考える練習をして、雑談ができるようになる。
●いろんなテクニックから1つ試してみる
対策は、明らかになった問題と関連したことでなければならない。
患者が身につけ、いずれは一人で認知の歪みに対処していけるのが最終目標。
・アサーション・トレーニング:攻撃的でも、非主張的でもない、適度な自己表現を練習する(これいいな
・イメージ法
・ロールプレイ
・よい点・悪い点の比較
・不安階層表
・日記
・認知の修正
・呼吸法
・コラム法:2つ、7つの枠などある。
●宿題は治療に欠かせないプロセス
患者はできる・できないにこだわらず、毎日チャレンジし、気づいたことを率直に報告する。継続が大事。
***************************************
個人認知行動療法3ヶ月の流れ
1.認知行動療法が必要と判断されてから治療がスタート
2.感情、認知をつかむ
3.別(逆)の考え方をする(これもやってる
4.フォーミュレーション:もっと時間がかかる人もいる
5.悪循環への対策を練る
6.対策を身につくまで実践
7.ひとりでできるようになり、自信がつけばセッション終結
注意:病気ごとに定められているが人によって微調整がある。
うつ(12回)、パニック障害(10回)、パーソナリティ障害(20回)
●セッション終結後も続けることで再発防止に
基本スキルが身につけば、治療開始から数ヶ月で考え方や行動が変わり、応用して柔軟に対応できるようになる。
1.問題が見える
2.対策が分かる
3.かかりつけ医の助言を適宜もらう
4.宿題で復習
5.関連本を読む
6.新しい問題が起きても自分で改善策を考えられるようになる
患者の「重要な人」に注目する
「対人関係療法」も認知行動療法と同様エビデンスのある精神療法。
患者にとって「重要な人」を特定し、現在の関係性を改善する。期間限定の短期的な治療法。
1.患者と治療者がよい関係を作る
2.悲哀・対人関係の不和・役割の変化・対人関係の欠如」の中から問題をしぼる。
3.成果の確認、今後必要なことを考えて終了
***************************************
●認知行動療法の3種類の技法
病態によって技法が変わる。メインターゲットは、うつ、不安障害、その他。
1.うつ:認知は否定的、行動は消極的なため「行動活性化」手法(アーロン・ベック)
2.不安障害:エクスポージャーなど
3.その他(パーソナリティ障害等)
「介入技法」
認知の歪みに介入して、修正するための方法。
この病気にはこの技法という具合に行われる。
合併した病気、個別の問題も把握し、複数の技法を組み合わせたり、希望にあわせて細部をアレンジする。
うつ病の3つの否定の特徴
自分、他人、将来も信じられない。
抑うつ気分は、否定的・悲観的な認知から生ずる。例:なにも信じられない。対人関係を難しく考える。
「ダメ」から「そうダメでもない」へと考えの幅を広げる。
●全般性不安障害の「メタ認知」
「メタ認知」:うつや不安障害患者は、「悩んでいること自体をさらに悩む」という二重構造に陥っている。
「メタ認知」のやりすぎ:悩む自分それを外から眺めて悩むもう1人の自分のほうが「メタ認知」。
例:くよくよする➡くよくよすることを、くよくよする
「悩みは悩むことで完璧にコントロールできる」という歪んだ考え方。
➡頭を使うのをやめ、注意を外の刺激に向ける。軽い体操、呼吸法等
反省などの利点より、時間の無駄、不安が強まるなどの欠点が多いことに気づく。
心配は放っておくのが正解(名言だ
抑うつや不安を消し去ろうとして、同じことをくよくよ繰り返し考えることで、逆に不安を大きくしてしまう。
自然に浮かんでくる考えを頭でコントロールするのは不可能だと理解すること。
不安障害(パニック障害)
体の変化への過大評価。自身の体の感覚に対して怖いものだと強い誤解を抱いている。
(うーーん・・・実際に死にそうな感覚になるんだけどなぁ・・・涙
1.引き金を特定
2.客観的にみる
3.回避をやめる、エクスポージャー
エクスポージャー
曝露療法。あえて辛い刺激に身をさらすことで、慣れる。行動療法のメインの手法の1つ。
「想像エクスポージャー」と、「現実エクスポージャー」がある。
不安は放っておくことで徐々に弱くなる様子がグラフで理解、実感できる。
不安障害(社交不安障害)
他人にぶざまな人間だと思われないよう過剰に努力する。
実際はそんなに酷くないのに、客観的な視点が持てず、自意識過剰になり、現実の自分が見えない。
大勢が集まる場での自己集中➡赤面したり、手がふるえる身体反応➡人への恐怖・不安が強まる➡人と関わらないようにする、注目を避ける
➡ビデオで確かめ、思っているほど惨めに見えないと確認する
➡注意を他人の外見などに向ける、安全行動した時としない時との状況を比べ、安全行動は逆効果だと知る。
不安障害(強迫性障害)
「侵入思考」:不安に対してなんとか反応しなければという誤解➡行動したら安心した➡認知の歪みが増す➡しないと後悔、罪悪感を抱く
例:何十回も手を洗うなどの「儀式行動」
➡責任感をとらえる➡暴露療法+反応妨害法
不安障害(PTSD)
震災等のトラウマをありありと思い出す「再体験」、不安が消えず常に緊張する「過覚醒」、
怖い場面を過剰に避ける「回避」の3つの症状。
➡ホットスポットを探す。断片化した記憶のアップデート+持続エクスポージャー、回避行動をやめる
その他(摂食障害、不眠症、依存症等)
1.認知の修正
2.行動計画をたてる
3.感情をとらえる練習
その他(統合失調症、パーソナリティ障害)
・統合失調症の例:「仲間に悪口を言われている」と疑念を抱き、警戒したりして孤立、怒り等を抱く(Oさんてこれだったんじゃ・・・?
・パーソナリティ障害:幼少期のトラウマから基本的な信頼感の欠如。見捨てられないよう過度の努力をする。
例:面接中に泣きどおしだったり、発言できず、治療者との関係を築くのに時間がかかる。「スキーマ療法」「弁証法的行動療法」
うつや不安障害は、大人になってから発症するため、数年以内の出来事を探れば、認知の歪みやその背景を特定できる。
一方、パーソナリティ障害は、十数年間の生育歴をさかのぼり、幼少期からの認知の歪みを確認して、
ようやく全貌が見える場合が多く時間がかかる。
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治療はどこで受けられるのか?
興味のある治療法や医療機関のことを相談すれば、的確なアドバイスがもらえます(もらえませんでしたが?
1.かかりつけ医:精神科、精神神経科、メンタルクリニック等。何度か通院するから近隣がよい。
2.認知行動療法が必要だと判断したら、専門家への紹介状を書いてもらえる(「知らない」って失笑されたよ
3.専門機関で面接。改めて認知行動療法が必要か判断する。
4.治療スタート。
注意:待機リストに入って順番待ち、セッションの開始期日を待ったりする場合が多い
2010年3月に、気分障害に対する認知行動療法への医療保険の適用が決定(ほんとに
医療費4200円のうち、3割負担なら1回あたり1260円に。
医療機関を探す注意点
専門家にも個々の特徴があり、経験も異なるため、多少の違いがあるが、細部を心配せず、不明点はそのつど聞く。
治療者も専門家のスーパーバイズ(指導)を受けている場合が多い。
1.医療機関:かかりつけ医に相談:自分にあった確かな技術がある
2.精神保健福祉センター:個人的な事情は考慮できないが、情報網の中から確かな機関に行ける
3.インターネット:手軽に見つかるが質の保証はない。受診してみないと分からない(ほんとだよ
医療機関の広がり
・日本認知療法学会
・東京認知行動療法アカデミー
・NPO法人ザフト(患者さんの会)
世界行動療法認知療法会議、イギリスの行動認知療法学会、アメリカの行動療法認知療法学会等
千葉大学が2010年4月から専門家の養成を開始
「千葉認知行動療法トレーニングコース」が毎年開催され、年間20名ほどの医療スタッフが養成・認定される見込み。
精神科医、心理職、精神保健福祉士、作業療法士、看護師、保健師などのスタッフが参加。
1.参加者の募集
2.専門家による書類・面接選考
3.週1回×2年間で治療法を体得
4.最低8名の患者を完治させるため、200時間以上のセラピーを行い、規定のレベルに達すれば療法士として認定される(こないだの講師の人も関係者かなあ???
日本には、心理職の国家資格がない。いずれも民間の資格で、認知行動療法を学んだ人はとても少ない。
1.臨床心理士
2.カウンセラー:日本では臨床心理士との厳密な区別がない
3.認知行動療法士:「臨床家は科学者でもある」という理念のもと指導を受ける。
最新情報・関連情報のHP
・日本認知療法学会
・東京認知行動療法アカデミー
・千葉認知行動療法プロジェクト
・厚生労働省 障害者福祉 心の健康
・うつ・不安ネット
・「ここれん」
その他の「イラスト版 健康ライブラリー」も読んでみたい。
清水栄司/監修
図書館巡りで見つけた。ネット検索だけだと本のボリュームや中身が分からないから、
本屋と同じで、実際手にとって、内容をザっと見てから借りるほうが間違いない。
本書は「イラスト版」て銘打ってるだけあって、イラストが多くて、これまでで一番分かりやすくまとまってておススメの1冊
日本ではまだまだこれからっていう「認知行動療法」について初めて触れる人が読んでも、すっきり分かると思う。
治療の具体的な経過も、まずどこに行けば詳しく分かるかも載っているのが嬉しい。
本書にも書いてある通り、こうして病気についての本をいろいろ読むだけでも治療の下支えになるし、
治療の大切な一部なんだなって改めて実感した。
また長くなること必須だが、忘れないように以下にメモした
もっともっと認知度が高まり、理解が深まって、身近な専門医・専門機関が増えていくことを願うばかり。
【内容メモ】
日本では、自殺者が年間3万人超えが10年以上も続き、休職・失職する人が増加し、心の医療費の抑制政策が続いている。
うつや不安障害の人は、なんでもゼロか100%か両極端に考えてしまう。
そのような人に「考え方を変えて」と助言するのは「地球は平らだと思って」と言うのと同じくらい難しい。
精神科の面接の3つの特徴は「受容・共感・傾聴」
・支持的精神療法
・精神分析:無意識に押さえつけている欲求を分析して気づかせ、そのために生じる症状を改善する
・認知行動療法は、上記の2つプラス、理性的に解決策を探していく側面がある。
認知行動療法とは
認知と行動は密接に関係している。療法も表裏一体。
認知(考え方)の見直し。極端に悲観的・否定的になっている場合の修正。「認知再構成法」「コラム法」など
行動の見直し。生活には不要な不合理な行動が癖のようになって支障となっている時、その習慣を変える。「行動活性化」(やりたいことをやる)
薬物療法と同等の効果がある。効果の持続時間はより長いと認められている。
医学界はパニック障害の治療について、薬物療法と認知行動療法は効果の優劣が付け難いとしている。
(表を見ると、パニ障への効果は一番低いなあ・・・
薬物療法と併用でも使い分けでもよい。
日本では薬物療法から始めて激しい症状を抑えてから認知行動療法に入る場合が多い。
併用した人は、薬物療法単独の人より、再発率が低い。
●歴史の流れ
・行動療法:1950年に体系化された。(例:「パブロフの犬」)
・認知療法:1970年に体系化された。(アメリカのベックが創始者)
・認知行動療法:1990年に体系化された。日本は普及が始まったばかり。
・マインドフルネス、アクセプタンス:ありのままを受け入れる東洋的な考え方が再評価されている。
認知行動療法の基本型は、認知と行動と感情による三角形
理性+感情が両方とも正常に機能している状態が人間らしい姿。
現代日本社会は、成果主義で理性だけを重視し、感情を封じている不自然な状態。
認知と行動と感情のうち、一部だけに注目しても、その原因や背景には気づけない。
認知行動療法では「感じること」と「考えること」を明確に区別する。
自動思考
根拠なく思い浮かぶ心の声。瞬間的に働いている認知を自覚することを目指す。
「どうせ嫌われているんだろう」など
➡自動思考が運悪く現実になると、ますます確信してしまう悪循環になる
考えている通りにことが運ばず、どうも生活がうまくいかない場合は、“自動思考をとらえてみる”。
紙に書いたり、人と話したりして「言語化」すること。
スキーマ(考え方の癖)を知る
コア・ビリーフ(中核信念)とも呼ばれる。自動思考よりさらに奥深くにある考え方のパターン。
「完璧でないと無意味だ」など
➡いろんな考え方があると意識する。
行動と感情を変えると、その影響で認知も変わるという相関関係にある。
イギリスではセラピストを1万人養成中
イギリスでは、6人に1人が抑うつや不安に苦しみ、就労不能手当て受給者が100万人いると言われている。
セラピストの増員をはかり、その半数を職場復帰できる見込み(やっぱ国家利益のためってのもあるのかな?
「心理療法をもっと身近に」この心理療法は認知行動療法をさす。
***************************************
強弱さまざまなセラピーがある。
専門医に受診して、治療者と2人でじっくり取り組むのが本来の形。
【セラピーの種類】
1.セルフ・ヘルプCBT(認知行動療法):自分で自分をたすける
2.アシストつきセルフ・ヘルプCBT
3.CBTアプローチ:講座形式で情報提供を受ける
4.集団CBT:全12回程度の集まりに参加
5.個人CBT:熟練した治療者と1対1で取り組む標準的な方法(強度の高いセラピー)←わたしはコレか?
イギリスでは、認知行動療法関連のコンピュータソフトプログラムが100種ほどあり、一部は現場で実用化されている
本書でも参考文献に大野さんの『こころが晴れるノート』が載ってる。
セルフ・ヘルプCBT
「読書療法」がもっとも手軽
注意:読書の元気がない人、自分の状況を書き出すことが苦手な人などは挫折する場合もある。
アシストつきセルフ・ヘルプCBT
医療機関・関連機関などが主催する会に参加する。療法より教育に近い(こないだのセミナーみたいなものかな?
集団CBT
他の患者さんが克服する過程を見て、自分にもできると思えてくる。
集団療法では個人の問題にあわせることに限界がある。
個人CBT
・1週間に1回程度、全12回程度、3ヶ月~半年ほどかける(もう半年になるなぁ・・・
・治療者が患者の悪循環を見つけ、一緒に解決の出口を探す。日本では専門科が少ないが、医療保険適用が実現したため(ほんと驚)今後に期待。
自分の考え方、感情、行動をコントロールする力をつけることが目標。
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最初の面接は「アセスメント」
患者の情報収集、整理、病気の状態の見立てをして、おおまかな治療プランを立てる。
個人CBTの流れ(50分)
10分:導入部:前回を振り返り、今回のテーマを決める。宿題の確認。
30分:本題(治療のボディ)。話したいこと、取り組みたいことを話して悪循環を見つける。
10分:まとめ。次回の宿題などを確認。
(うん、大体わたしもこの流れだ
進行は治療者に任せて、患者は、気持ちを話すことが大事。繰り返すうちに流れが見える。
1.まず、なにが辛いか話してみる
「無理解が辛い」:うつや不安障害の患者は周りに理解してもらえない辛さがある
2.話を聞いてもらう(傾聴・共感)
人が意欲的に活動するには、周りからの基本的な信頼が必要。愛され、認められることが人間関係の基本。
3.受け止めてくれる(受容)
人は、受容されなければ変われない。自分の全部が問題ではないと感じれば意欲が出る。
4.緊張感がとける
5.変わる準備ができる
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1.話したいテーマ(アジェンダ)を決める
「家族とうまくいかないこと」など治療者の思い+患者の思いを話し合いテーマを決める。
話したいことが多すぎたり、なにもなかったりしても、治療者がテーマを決めて手伝ってくれる。
患者も治療者も治療の主役。自分をよく知る患者治療をよく知る治療者が力をあわせる。
まとめでお互いの意見や感想をフィードバックする。
「ソクラテスの問答」ガイデッド・ディスカバリー
問答を重ねることで、話し相手を自発的な気づきへと導く対話法。
「その時、なにが悲しかったのですか?」など改めて問いかける➡悲しみを引き起こした原因を探り、感情と原因の関係に気づく。「導かれた気づき」と呼ぶ。
治療者は、オープン・クエスチョン(開かれた質問)でなく、患者が考えやすいきっかけをまじえる。
患者がどんな気づきにたどりついても、それを尊重する。
うまく言葉に出来ない、モヤモヤとした問題をとらえて欲しいという思いがある。
認知と感情を分けてとらえる
出来事➡認知、感情➡行動
問題が起きる時、どう考えているか感情と認知ががっちりくっついていて、分けるのが難しい。
区別するコツは、感情を表す言葉をたくさん用意すること。快・不快に分け、不快の感情について掘り下げる。
例:イライラ、混乱、恥ずかしいなど
●ホットな認知
強い感情をともなう認知のこと。治療のカギとなる。ホットな認知をとらえるのが目標。
●ケース・フォーミュレーション
事例の定式化。対話から情報を集め➡式と照らして仮説をたてる➡仮説を検証し、その式で他の問題も解決できる
●ABC理論(アルバート・エリス)
A:きっかけの出来事
B:信念。認知、考え方
C:結果。感情、行動
●問題を特定する
1.フォーミュレーションした3つの要素のうち、中核信念に気づき悪循環を発見する。
例:子どもの頃口下手だと言われた。
2.悪循環や対策をパターンとして理解する。
例:人と話すのが辛い。嫌われるのが怖くて1人で作業する。失敗が不安で昇進を辞退する。
3.よりよい対策を練る。
例:「口下手でも嫌われるとはかぎらない」と考える練習をして、雑談ができるようになる。
●いろんなテクニックから1つ試してみる
対策は、明らかになった問題と関連したことでなければならない。
患者が身につけ、いずれは一人で認知の歪みに対処していけるのが最終目標。
・アサーション・トレーニング:攻撃的でも、非主張的でもない、適度な自己表現を練習する(これいいな
・イメージ法
・ロールプレイ
・よい点・悪い点の比較
・不安階層表
・日記
・認知の修正
・呼吸法
・コラム法:2つ、7つの枠などある。
●宿題は治療に欠かせないプロセス
患者はできる・できないにこだわらず、毎日チャレンジし、気づいたことを率直に報告する。継続が大事。
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個人認知行動療法3ヶ月の流れ
1.認知行動療法が必要と判断されてから治療がスタート
2.感情、認知をつかむ
3.別(逆)の考え方をする(これもやってる
4.フォーミュレーション:もっと時間がかかる人もいる
5.悪循環への対策を練る
6.対策を身につくまで実践
7.ひとりでできるようになり、自信がつけばセッション終結
注意:病気ごとに定められているが人によって微調整がある。
うつ(12回)、パニック障害(10回)、パーソナリティ障害(20回)
●セッション終結後も続けることで再発防止に
基本スキルが身につけば、治療開始から数ヶ月で考え方や行動が変わり、応用して柔軟に対応できるようになる。
1.問題が見える
2.対策が分かる
3.かかりつけ医の助言を適宜もらう
4.宿題で復習
5.関連本を読む
6.新しい問題が起きても自分で改善策を考えられるようになる
患者の「重要な人」に注目する
「対人関係療法」も認知行動療法と同様エビデンスのある精神療法。
患者にとって「重要な人」を特定し、現在の関係性を改善する。期間限定の短期的な治療法。
1.患者と治療者がよい関係を作る
2.悲哀・対人関係の不和・役割の変化・対人関係の欠如」の中から問題をしぼる。
3.成果の確認、今後必要なことを考えて終了
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●認知行動療法の3種類の技法
病態によって技法が変わる。メインターゲットは、うつ、不安障害、その他。
1.うつ:認知は否定的、行動は消極的なため「行動活性化」手法(アーロン・ベック)
2.不安障害:エクスポージャーなど
3.その他(パーソナリティ障害等)
「介入技法」
認知の歪みに介入して、修正するための方法。
この病気にはこの技法という具合に行われる。
合併した病気、個別の問題も把握し、複数の技法を組み合わせたり、希望にあわせて細部をアレンジする。
うつ病の3つの否定の特徴
自分、他人、将来も信じられない。
抑うつ気分は、否定的・悲観的な認知から生ずる。例:なにも信じられない。対人関係を難しく考える。
「ダメ」から「そうダメでもない」へと考えの幅を広げる。
●全般性不安障害の「メタ認知」
「メタ認知」:うつや不安障害患者は、「悩んでいること自体をさらに悩む」という二重構造に陥っている。
「メタ認知」のやりすぎ:悩む自分それを外から眺めて悩むもう1人の自分のほうが「メタ認知」。
例:くよくよする➡くよくよすることを、くよくよする
「悩みは悩むことで完璧にコントロールできる」という歪んだ考え方。
➡頭を使うのをやめ、注意を外の刺激に向ける。軽い体操、呼吸法等
反省などの利点より、時間の無駄、不安が強まるなどの欠点が多いことに気づく。
心配は放っておくのが正解(名言だ
抑うつや不安を消し去ろうとして、同じことをくよくよ繰り返し考えることで、逆に不安を大きくしてしまう。
自然に浮かんでくる考えを頭でコントロールするのは不可能だと理解すること。
不安障害(パニック障害)
体の変化への過大評価。自身の体の感覚に対して怖いものだと強い誤解を抱いている。
(うーーん・・・実際に死にそうな感覚になるんだけどなぁ・・・涙
1.引き金を特定
2.客観的にみる
3.回避をやめる、エクスポージャー
エクスポージャー
曝露療法。あえて辛い刺激に身をさらすことで、慣れる。行動療法のメインの手法の1つ。
「想像エクスポージャー」と、「現実エクスポージャー」がある。
不安は放っておくことで徐々に弱くなる様子がグラフで理解、実感できる。
不安障害(社交不安障害)
他人にぶざまな人間だと思われないよう過剰に努力する。
実際はそんなに酷くないのに、客観的な視点が持てず、自意識過剰になり、現実の自分が見えない。
大勢が集まる場での自己集中➡赤面したり、手がふるえる身体反応➡人への恐怖・不安が強まる➡人と関わらないようにする、注目を避ける
➡ビデオで確かめ、思っているほど惨めに見えないと確認する
➡注意を他人の外見などに向ける、安全行動した時としない時との状況を比べ、安全行動は逆効果だと知る。
不安障害(強迫性障害)
「侵入思考」:不安に対してなんとか反応しなければという誤解➡行動したら安心した➡認知の歪みが増す➡しないと後悔、罪悪感を抱く
例:何十回も手を洗うなどの「儀式行動」
➡責任感をとらえる➡暴露療法+反応妨害法
不安障害(PTSD)
震災等のトラウマをありありと思い出す「再体験」、不安が消えず常に緊張する「過覚醒」、
怖い場面を過剰に避ける「回避」の3つの症状。
➡ホットスポットを探す。断片化した記憶のアップデート+持続エクスポージャー、回避行動をやめる
その他(摂食障害、不眠症、依存症等)
1.認知の修正
2.行動計画をたてる
3.感情をとらえる練習
その他(統合失調症、パーソナリティ障害)
・統合失調症の例:「仲間に悪口を言われている」と疑念を抱き、警戒したりして孤立、怒り等を抱く(Oさんてこれだったんじゃ・・・?
・パーソナリティ障害:幼少期のトラウマから基本的な信頼感の欠如。見捨てられないよう過度の努力をする。
例:面接中に泣きどおしだったり、発言できず、治療者との関係を築くのに時間がかかる。「スキーマ療法」「弁証法的行動療法」
うつや不安障害は、大人になってから発症するため、数年以内の出来事を探れば、認知の歪みやその背景を特定できる。
一方、パーソナリティ障害は、十数年間の生育歴をさかのぼり、幼少期からの認知の歪みを確認して、
ようやく全貌が見える場合が多く時間がかかる。
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治療はどこで受けられるのか?
興味のある治療法や医療機関のことを相談すれば、的確なアドバイスがもらえます(もらえませんでしたが?
1.かかりつけ医:精神科、精神神経科、メンタルクリニック等。何度か通院するから近隣がよい。
2.認知行動療法が必要だと判断したら、専門家への紹介状を書いてもらえる(「知らない」って失笑されたよ
3.専門機関で面接。改めて認知行動療法が必要か判断する。
4.治療スタート。
注意:待機リストに入って順番待ち、セッションの開始期日を待ったりする場合が多い
2010年3月に、気分障害に対する認知行動療法への医療保険の適用が決定(ほんとに
医療費4200円のうち、3割負担なら1回あたり1260円に。
医療機関を探す注意点
専門家にも個々の特徴があり、経験も異なるため、多少の違いがあるが、細部を心配せず、不明点はそのつど聞く。
治療者も専門家のスーパーバイズ(指導)を受けている場合が多い。
1.医療機関:かかりつけ医に相談:自分にあった確かな技術がある
2.精神保健福祉センター:個人的な事情は考慮できないが、情報網の中から確かな機関に行ける
3.インターネット:手軽に見つかるが質の保証はない。受診してみないと分からない(ほんとだよ
医療機関の広がり
・日本認知療法学会
・東京認知行動療法アカデミー
・NPO法人ザフト(患者さんの会)
世界行動療法認知療法会議、イギリスの行動認知療法学会、アメリカの行動療法認知療法学会等
千葉大学が2010年4月から専門家の養成を開始
「千葉認知行動療法トレーニングコース」が毎年開催され、年間20名ほどの医療スタッフが養成・認定される見込み。
精神科医、心理職、精神保健福祉士、作業療法士、看護師、保健師などのスタッフが参加。
1.参加者の募集
2.専門家による書類・面接選考
3.週1回×2年間で治療法を体得
4.最低8名の患者を完治させるため、200時間以上のセラピーを行い、規定のレベルに達すれば療法士として認定される(こないだの講師の人も関係者かなあ???
日本には、心理職の国家資格がない。いずれも民間の資格で、認知行動療法を学んだ人はとても少ない。
1.臨床心理士
2.カウンセラー:日本では臨床心理士との厳密な区別がない
3.認知行動療法士:「臨床家は科学者でもある」という理念のもと指導を受ける。
最新情報・関連情報のHP
・日本認知療法学会
・東京認知行動療法アカデミー
・千葉認知行動療法プロジェクト
・厚生労働省 障害者福祉 心の健康
・うつ・不安ネット
・「ここれん」
その他の「イラスト版 健康ライブラリー」も読んでみたい。