メランコリア

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『きけ、わだつみの声 Last Friends』(1995)

2010-08-20 12:39:30 | 映画
『きけ、わだつみの声 Last Friends』(1995)
監督:出目昌伸 音楽:ギル・ゴールドスタイン
出演:織田裕二、風間トオル、的場浩司、緒方直人、仲村トオル、鶴田真由、河原崎建三、もたいまさこ、遠藤憲一、井川比佐志 ほか

「わたつみ(わだつみ)」は海神を意味する日本の古語である。現在「わだつみ」は戦没学生をあらわす普通名詞のように使われる。

trailer

同タイトルの原作は1950年に映画化され、本作はそのリメイクとなる。戦後50年記念作品。
現代のラグビー場から始まり、最後の授業には与謝野晶子の詩「君死にたまふことなかれ」が引用されている。
雨の中執り行われた学徒出陣ほか、実際の映像も所々交えている。

story
ラグビーの試合中、鶴谷勇介は50年前選手だったという3人の若者の幻を見る。
時をトリップして1943年10月21日雨の神宮外苑。今まさに学徒出陣の壮大な壮行会で行進していた。
陸軍少尉に任官された勝村はフィリピン戦線に赴き、負傷した選手仲間の相原と共に野戦病院で足止めとなる。
十字を掲げているにも関わらず病院も攻撃され、歩けない者たちは手榴弾による自爆を強いられる。
一般市民も殺されて食料を奪われ、女性は犯され、洞窟に逃げ込むと、そこには腿が切り取られた死体が転がっている。
「何のための戦いなんだ!誰が始めたんだ!」と叫ぶ勝村。

鶴谷は召集令状を破って逃げたため、家族は非国民として差別される。
町民と憲兵に追い詰められ、「逃げろ」「生きろ」と書いた紙を撒き、「この戦争は負けるんだ」と叫ぶ鶴谷。

航空隊に入隊した芥川は、特攻隊員に志願し、1日だけ休暇をもらい家族に会いに行く。
大声で「さようなら!」と叫ぶ様子を見て、母と妹はもう二度と会えないことを予感する。。



洗脳のごとく軍事教育を刷り込まれていた子どもたちと比べて、彼らは一個人としての考えを持っていたことで
「戦争とは何か」「何のために死ぬのか」ということを手記や手紙として、その心情の発露となって遺されたのだろう。

ある者は一等兵として、ある者は少佐として、ある者は衛生看護婦として、
ある者は赤紙を拒否し逃げることによって、ある者は従軍慰安婦として、
ある者は特攻隊員として、さまざまな形で否応なく狂気に巻き込まれ、
戦って死んでいった若者たち。

この間、町歩きで訪れた「わだつみのこえ記念館」にあった写真の兵士もほぼ20代の若さで戦死していて、
家族に宛てた手紙等の中で葛藤する生の声が綴られていた。


▼DVD特典
フォトギャラリー、劇場予告編


短大の英語ゼミの先生が夏のセミナーで、自分がかつて特攻隊の一員で、
出陣を待つ間に終戦を迎えたため、自分だけ生き残ったことで、
戦友に対して未だに申し訳なさで苦しんでいると同時に、
平和になった世の中に戦争の悲惨さを語り継いでゆく責任を負っているのだと語ってくれたことを思い出す。



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