思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『水底の女』 村上版フィナーレ!

2024-03-26 10:32:32 | 日記
『水底の女』
レイモンド・チャンドラー
訳:村上春樹

村上春樹訳のチャンドラー最終作(出版順では4作目)。
これにて村上版チャンドラーも終わりかあ、と思うと
読むのがもったいない!!
と、大事に取っておいたのですが
もう、良い加減、読もうか笑
(村上翻訳版の出版が2017年)

1943年初版。
原題『The lady in the Lake』、旧訳は『湖中の女』、
そして新訳『水底(みなそこ)の女』
どれもタイトルが素敵だな。
声に出して読みたいタイトル!
リアルに想像すると、なかなか正視に耐えない描写ですが…。

この作品は、マーロウシリーズとしては評価が低いらしいけれど、
まあ、他の平均値が高いというか、ちゃんと面白いんですよ。
チャンドラーの文章も、マーロウのマーロウ節も、
ウィットに富みつつ流麗な文章で読みやすいし。
ミステリ好きには冒頭でオチが見えますが、
だからといって途中でダレるとかなく400ページ弱を
読み切らせるストーリーテリングも良い。

何かとタフなアメリカの警官、
なぜか偉そうな金持ちと身持ちの悪い美人、
マッチョなふりして気弱な地元住民。
いつものマーロウワールド!
これが最後かと思うと寂しい!!

訳者あとがきも良いですね。
ネタバレ含む内容ではあるのだけど、
1943年の戦争に向かう空気感みたいなものは
村上さんの補足がないとわからないかも。
(歩道のゴムブロックが剥がされていたり、絹の下着の描写など)
繰り返し読めば良いってことだ!

村上版2周目行くかなあ。
清水版も数十年ぶりに読みたいんだよなあ。
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『ブルボン朝 -フランス王朝史3』 駆け抜けた先はフランス革命だったぜ!

2024-03-25 18:52:48 | 日記
『ブルボン朝 -フランス王朝史3』佐藤賢一

カペー朝の「個人商店の奮闘日記」、
ヴァロワ朝は「中小企業の苦闘実録」と続きまして
絶対王政の代名詞でもあるブルボン朝は
「大企業の華麗なるブランド展開」期!

大企業の社長はイメージリーダー!
神と同等もしくはそれ以上に崇められる存在!
同時に神を演じる義務も発生じゃあ!
(大変だな…)

まあ、ほとんど太陽王ルイ14世のイメージですが。

ブルボン朝はアンリとアンリとアンリが戦う
3アンリの戦い」の末に、ベアルン(辺境の地)出身、
ブルボン家のアンリ4世が勝利して始まります。

この頃のフランスは、底なしの宗教戦争沼である。
しんどいわ〜。
アンリ4世はユグノー(新教)育ちだけど
国家中枢を占める上位貴族はカソリック。
めっちゃ戦って、改宗して、ナントの勅令出して、
なんとか宗教戦争を終わらせた人。
えらい人なのである。

最初の奥さんはヴァロワ朝最後の王アンリ3世の妹で
あばずれで有名な王妃マルゴ。
再婚相手は自分大好きで有名なマリー・ド・メディシス。
結婚運がない人である。
(そのかわりと言っては何だけど、愛人は生涯で73人だそうです。豪快)

続いてルイ13世。
宰相リシュリューと、デュマ『三銃士』の時代。
あとは母であるマリー・ド・メディシスと母子喧嘩した後、
ハプスブルク家が苦戦しているドイツ30年戦争(1618年)に参戦。
そういう人。

で、太陽王ルイ14世です。
在位1643年〜1715年。長い!
ヴェルサイユを通じて「フランス文化」という魅力を発信。
佐藤氏曰く、これこそが絶対王政の源だそうです。
みんなが憧れるフランス。フランス人で良かった、と誇れるフランス。
なるほどなあ。
あとは1701年スペイン継承戦争に参戦。
血が濃くなりすぎて断絶してしまったスペイン系ハプスブルク家。

ルイ14世が長生きしすぎて、次のルイ15世はひ孫。
政治に興味がないので寵姫ポンパドール夫人が活躍。
セーヴル焼きも、ヴォルテールやモンテスキューの庇護も、
ポンパドール夫人の功績だそうです。才女!

最後はおなじみルイ16世。
1776年アメリカ独立戦争。
1789年フランス革命。
どの本を読んでも、フランス革命後の「市民」の下衆感はひどい。
1793年にルイ16世処刑。

あとは共和制やったり王政戻ったりナポレオン台頭したり(1796年)
また王政になったりした後、共和制に落ち着く。
落ち着いた…のか…?

フランス王朝史3冊はすごく面白かったし、
駆け抜けたぜ!!という達成感は大きいのですが
駆け抜けた先がなにしろフランス革命なので
なんだろう、ちょっと、酒が進んでしまいました…。
歴史って、どこに向かっているのかな、とか。
未来から見ると「愚かでは?」と思ってしまうけど、
歴史の大きなうねりってこういうことかな、と思ったり。
それはそれで楽しかったけどね!
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『ヴァロワ朝 -フランス王朝史1』 フランスが中小企業になった!

2024-03-15 17:31:30 | 日記
『ヴァロワ朝 -フランス王朝史1』佐藤賢一

カペー朝』(11月読了)から5ヶ月空いたけど、
ヴァロワ朝も読了じゃあ!

というわけで王朝交代。
というほどでもない、交代をしたヴァロワ朝。

カペー朝はクレイジー美男王フィリップ4世の後、
3人の王が立て続けに早逝します。
テンプル騎士団の呪いと言われているのもさもありなん。

で、ヴァロワ朝の祖フィリップ6世は美男王の甥。
そんなに揉めるほど遠戚じゃないよね。
と思うものの、フィリップ4世の娘が英王と結婚していたため
その息子が「直系なのでフランス王に俺はなる!」と言って
戦争に。
いわゆる100年戦争が始まったため、
大きな節目っぽくなっている。

これに懲りた2代後の賢王シャルル5世が
古代の「サリカ法」を引っ張り出してきて
女性に相続権はないと法制化したそうです。
当時、王位継承法を制定していたのは
フランスと、神聖ローマ皇帝の金印勅書くらいだったそうで。
そんなにフワッと王位継承してたんか〜。

あと印象的なのは暴君と言われるルイ11世。
まだフランス国内が安定しておらず、
ブールゴーニュ公シャルル突進公に苦しめられます。
この人、ハプスブルク系神聖ローマ皇帝の祖でもある
マクシミリアン(大愚図の息子)を見初めて
娘と結婚させてフランドル以北を譲った人ですね。

佐藤氏に「優等生」と呼ばれるルイ12世と、
その息子で自己肯定感の塊フランソワ1世も良い味出てます。
フランソワ1世といえば神聖ローマ皇帝カール5世と
ず〜〜〜〜っと戦ってた人。
負けが多いのになんで喧嘩売るの?と思ってたけど、
これを読むとなんとなくわかる。
しかし自分の身代わりに王子2人を差し出した挙句、
条約破棄とか、どうなのよ。
そりゃ息子アンリ2世(佐藤氏曰く気弱な名君)も
ひねくれますよ笑

アンリ2世の妻がカトリーヌ・ド・メディシス
息子が3人立て続けに王位につき、
ヴァロワ朝の最後は、アンリ3世。
3アンリの戦いの末にブルボン朝アンリ4世(大王)へ。

カペー朝の「個人商店の奮闘日記」から、
ヴァロワ朝は「中小企業の苦闘実録」へと
事業規模が拡大したそうです笑
言い得て妙で笑ってしまった。
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『カペー朝 -フランス王朝史1』 フランス王朝史を駆け抜けろ!

2024-03-14 13:48:44 | 日記
『カペー朝 -フランス王朝史1』
佐藤賢一

『ヴァロワ朝』読了じゃあ!
と思ったら、前作である『カペー朝』の感想を書いていなかった…。

こちら、講談社現代新書から出ている佐藤賢一氏の
<フランス王朝史>三部作です。
著者は直木賞受賞作家。
とにかく読みやすい文章で
代々の王を描きながら歴史を辿るので、
親近感も湧いちゃいます。

フランス王は全員嫌いだったんですが、
気づいたら「その気持ちわかるよ…」と思ってしまいました。
わたしの思考がちょろすぎるのもあるけれど、
とにかく、文章がうまいんですよ。
「わかる〜」と相槌打っちゃうんですよ!!

美男王フィリップ4世は許さないけどな!
とはいえ、気持ち悪いなこの人笑。
知れば知るほど怖い人だとわかります。

著者は歴史の捉え方もおもしろくて、
フランス(カペー朝)を、フランク王国の末っ子に例えているの、
わかりみが深いし、理解がはかどります。

長男の東フランク(神聖ローマ帝国)も
次男の中央フランク(減りに減ってイタリア、というかローマ教皇領)
も世界の覇者として振る舞わなければならず(実態が無いのにね!)
どんどん疲弊していく横で、
王国として身の丈にあった「内実」をなんとか備えるに至った
ちゃっかりしっかりな末っ子が、フランス王国。
なるほどなあ。

そんなフランスの諸侯でしかないノルマンディー公が
気づいたらノルマンコンクエストしちゃって
諸侯兼イギリス王になっちゃっているのもおもしろいですよね。
そもそもが、ねじれ構造だったという。

イギリス王家(プランタジニット王家)アンジュー伯と、
フランス王ルイ7世の戦いも熱いんですよ!
元妻に振り回されるフランス王!
(元妻はアキテーヌ公領を持って英王と再婚しちゃう)
応援するしかない笑

次のフランス王フィリップ2世は
強敵アンリ(英王ヘンリー2世)の息子リシャールを味方にしたり、
って、リシャールあんたリチャードか。獅子心王か〜!
弟のジャンは、欠地王ジョンやんけ〜!

と、フランス読みと英語読みの名前の違いがコネクトする。
楽しい。
紛らわしいけど笑

この調子でヴァロワ朝・ブルボン朝も駆け抜けよう!

(と熱い思いで読書メモを書いたのが5ヶ月前です。
 ちょっと寝かせてしまった)
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『喰いたい放題』 言いたい放題である笑

2024-03-13 12:53:34 | 日記
『喰いたい放題』
色川武大

兄がいたので少年漫画で育ったくちでして。
主にジャンプとサンデー。マガジン少々。
というわけで、マガジン連載の『哲也』という麻雀漫画は
読んだことないけどなんとなく知っている、という感じ。

『カイジ』が流行ったときには
『哲也』みたいな漫画かな?と思うくらいの世代です。

そんな哲也の元ネタ『麻雀放浪記』の阿佐田哲也が、
武田百合子さんの文庫あとがきに登場する
色川武大と同一人物だと知ったのは、つい最近。
「は?」「え?」「ん?」となりました。
だいぶ消化に時間がかかったな笑

そんな色川武大氏が雑誌「饗宴」「潮」で連載した
食にまつわるエッセイ。

と言いつつ、晩年の病気や肥満により
主治医に食事制限をめっちゃ指導されている状態。
米をしばらくガマンしたからふりかけごはんが美味い!とか
1日一食は豆かんだから「梅むら」の良いやつ食べるんだ!とか
あんた、なんでグルメエッセイの連載を引き受けたんだよ!と
こちらもツッコミを入れたくなる。

まあ、読んでいる感じ、
色川氏はそんなにグルメじゃなくて、
どちらかというと悪食側のワガママおじさんなんです。
言いたい放題である。
それを面白がるエッセイかな。

立ち食い蕎麦に並ぼうとしたら
「麻雀放浪記」ファンの若者に声をかけられて
恥ずかしくて店に入れなかったとか。
買い食いしようとしたら井上ひさし夫人に行き合ったとか。
ちょっとしたところに時代や当時の人間関係が垣間見えて、
そこらへんも良い感じです。
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