東京里山農業日誌

東京郊外で仕事のかたわら稲作畑作などをしていましたが、2012年4月に故郷の山口県に拠点を移して同活動をしています。

古い松下製トランジスタラジオ T-45の修理(1/4)

2013年05月17日 | 古ラジオ修理工房

松下製トランジスタラジオ T-45の修理履歴です。それぞれをクリックしてください。

修理(1/4) 修理(2/4)  修理(3/4) 修理(4/4)

 手元に古い松下製トランジスタラジオ T-45があります。静岡県の方から修理を依頼されたラジオで、音がとても小さい故障とのことです。デザインがなんとなくSONY TR-714に似ているラジオです。
 修理に入る前にいつものことですが、トランジスタラジオの状況を確認することにしました。ざっと見て、割れや汚れが少ないことから、これまで丁寧に扱われてきたことが分かります。丁寧かどうかよく分かるのは、ラジオの裏蓋をこじ開ける部分です。乱暴に扱われたラジオは、この部分が醜く傷んでいます。ただ、1つ気がかりなのはこのラジオを軽く振ると、カラカラと小さな音が出ることです。ネジか何かがラジオ内に落ちているようです。

  比較的きれいな松下製ラジオT-45           傷みが少ない裏蓋こじ開け部分
 

 このラジオの裏蓋を開けて回路基板を見ました。使われているトランジスタは当時はゲルマニウムトランジスタです。このラジオが製造された昭和35年頃、松下はようやく自前でトランジスタを製造できるようになりました。そして、SONYを追うようにラジオを本格的に売り出した時期でもあります。その後、ラジオ製造の双璧はSONYと松下でした。私の主観ですが、「スカイセンサーシリーズ」に見られるように、ラジオのデザインは常にSONYがリードしていたように思います。
 話は変わりますが、テレビ製造では松下が常にトップシェアで、その後を東芝,日立,SONYが追っていました。私は日立のテレビ部門にいたのですが、常に松下を追いかけていたような記憶があります。当時、松下のシェアは30%、日立のシェアは15%で松下の圧勝でした。そのテレビ製造、今その松下とSONYはテレビ製造の赤字で苦しんでいます。テレビを諦めた東芝と日立は黒字です。昔日の感があります。
 さて、回路基板を固定しているネジが一か所ありませんでした。このラジオは、修理か何かで一度回路基板に手が入っているようです。残り二か所のネジを緩めると、回路基板を外して取り出すことができました。

          回路基板を止めている三か所のネジのうち、一か所のネジが無し


 回路基板を取り出していると、中から黒いプラスチックの塊が出てきました。カラカラ音を立てていたのはこの塊でした。さらに、回路基板を外して内部を調査すると、回路基板を止めるネジのメス部分が一か所破損していることが分かりました。黒い塊はこの破損した部分の一部でした。破損の形状を調査すると、ほかにも破損した塊があるはずなのですが、ラジオ内の何処を探しても見当たりませんでした。
 ネジを回し過ぎたのか、何かの強い力がかかって破損したようです。破損以降、ここにネジで固定されるはずの回路基板が浮いている状態だったことが分かりました。

   ラジオ内に落ちていた黒い破損塊       回路基板を止めるメス部分が破損
 

 残りの破損塊とネジが見つからないため、これ以上は直せません。少なくとも回路基板が当たるように、黒い破損塊をメス部分に接着しておきました。ネジで止めることはできませんが、回路基板を支えることはできます。

       黒い破損塊に接着剤塗布          破損したメス部分に元通り接着
 

 さて、回路基板をネジで止めるメス部分を応急処置して直すと、次に回路基板に使われているトランジスタを調査しました。すると、混合発信段には、2SA103が、中間周波段には2個の2SA103が使われていました。これ以前のラジオ(例えばT-40)は、中間周波段に2SA102が使われていることか多いのですが、この頃松下では比較的性能が良い2SA103を大量に製造できるようになったのでしょう。
 なお、バリコンに製造番号が刻印されていました。このラジオ T-45は、50547番目に出荷されたのでしょうか。また、バリコン下のトリマーコンデンサが、とても調整しやすい構造になっています。昭和30年初期のトランジスタラジオは、配線構造が複雑で寄生発信止めと思われるコンデンサがあちこちに付いていたりします。しかし、昭和35年頃になると部品の品質も良くなるなど、だんだん洗練されてきたのではないかと思います。

               上丸は混合発信段、下丸は中間周波段


 低周波増幅段に使われているトランジスタは、2SB171が2個、そしてP.P増幅に2SB172が2個使われています。さらに、温度補償用としてバリスタMA23が使われています。高周波関連と低周波関連出会わせて7個のトランジスタ構成です。なお、電源として単三乾電池が2個の3Vです。ラジオを小型にするために単二ではなく単三です。裏蓋に規格が貼ってありました。MW,SW共に標準的ですが、波長が書いてあるのが当時らしくて面白いです。
 なお、音声が小さい原因はおそらく低周波増幅段のどこかの部品が故障していると思われます。特に電界コンデンサの容量抜けが一番考えられます。今後、じっくり調査して修理しようと思います。

   低周波増幅段、このどこかが故障       裏蓋に貼られたラジオの規格表
 

コメント
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