東京里山農業日誌

東京郊外で仕事のかたわら稲作畑作などをしていましたが、2012年4月に故郷の山口県に拠点を移して同活動をしています。

楽しかった、小学生の稲刈り・脱穀体験

2010年10月26日 | 稲:稲刈り,脱穀,精白



 10月25日、今年も賑やかな小学生に囲まれて稲刈りと脱穀体験を実施しました。別所小学校5年生の2クラス約70人,その保護者12人位,担任の先生2名,応援の大学生2名,さらに私を含めて4名の地域住民の参加です。2時間ほどのあっという間の稲刈り・脱穀体験でした。小学生達のお米作りに関わる体験は年間に4回(①田植え,②草取り,③稲刈り,④お米調理)です。今回は、田植え田の草取りに続く3回目の体験です。

       前日雨のため、田んぼはぬかるんでおり長靴を履いて稲刈り開始


 私がすべての小学生を直接教えるのは不可能です。このため、稲刈りを始めるにあたって保護者の方に稲刈りの方法、刈り取った稲の結束方法、カマの使い方や注意などを説明しました。そして、子供達より前に保護者に稲の刈り取りをして実習してもらいました。保護者が覚えた頃に子供達を呼んで稲刈りを開始しました。

      最初はカマの使い方が不慣れ       使っているうちに刈り取りに慣れる
 

 脱穀も稲刈りと同様に最初に保護者に使い方を覚えてもらいました。とても古い足踏み脱穀機のため、稲を脱穀しながら同時に足を踏んで脱穀ドラムを回さなければなりません。稲の脱穀時は脱穀ドラムへの抵抗が強くなるため回転がどうしても遅くなります。そんな時、回転数をキープするためより強く足踏みしなければなりません。そして、脱穀が終わると脱穀ドラムへの抵抗がなくなるため、反対に軽い力で足踏みしなけばなりません。慣れないと大人でも難しい操作です。

   保護者に見守られながら刈り取り            だいぶ稲刈りが進みました
 

 小学生に難しいのは、刈り取った稲を適度な太さに束ねることです。ワラでしっかりと稲束を縛らなければなりませんが、力が弱いためどうしても緩く縛ってしまいます。稲束は干されて乾燥すると縮むため、ゆるく縛っているとスルスルと稲束の一本一本が抜けてしまいます。結び方も特殊であるため、子供達は保護者や大学生などに教わりながら稲束を結束していました。

             保護者や大学生などに稲束の縛り方を教わる


 去年は稲刈りの終盤になると、男の子はカマで刈り取ることばかりになり、一方女の子は稲束を縛ることばかりにと、だんだん別れてしまいました。このようになると、結束する前に山のように刈り取った稲が積まれる事態になりました。この反省を元に、今年は自分で刈り取った稲は必ず自分で縛ることにしました。

   稲を地面に置いてじっくり結束          マンツーマンで結束方法を教わる
 

 今回の稲刈りに、東京薬科大学ASIATOのメンバーである大学生二人に応援にかけつけてもらいました。彼らはつい先日稲刈りをして脱穀も済ませたばかりです。子供達とも年齢が近いので、ちょっと年上のお兄さんと言ったところでしょうか。子供達に親切丁寧にに教えていました。

    親切丁寧にに教えている大学生        慣れた子は自分で刈り取り・結束
 

 最初は私や保護者などが刈り取り方法や結束方法を子供達に教えていましたが、子供達も5年生にもなると覚えるのも早いです。慣れた子供は自分でさっさと稲刈りしていました。また、子供同士で教えあい確認しあうなどの姿も見られました。

             楽しそうな保護者と子供、楽しそうに確かめあう子供と子供


 今回のような稲刈り体験は、保護者にとっては子供達の学校生活を生き生きと見ることができるよいチャンスだと思います。また、子供達と一緒に活動できるまたとないチャンスではないかと思いました。どの保護者も生き生きと楽しそうに子供達と稲刈りをしたり脱穀をしていました。

                 稲束を結束すると、稲を竹竿に架けて干す


 稲刈りが終わって稲束をワラで縛ると、その稲束を竹竿に架けて干します。通常この作業を「はさ架け」と言いますが、地方によって方法が違います。特に東北地方は竹竿の組み方に特徴があるように思います。しかし、コンバインによる稲刈りが進んだ今、稲刈りは日本中どこでも同じような光景になってしまいました。そもそも稲刈りから脱穀までが一つの機械で済んでしまい、稲束を干す光景を見ることがまれになってしまいました。

    竹竿の端から次々に稲束を架ける         稲束の架け方にも要領が
 

 生まれて初めての稲刈り体験のためか、最初はなかなかはかどりませんでした。しかし、回数を重ねるにつれて刈り取りの要領、結束の要領、竹竿に架ける要領がだんだん身についてきたようです。思いのほか稲刈りが早くすすむようになりました。最初と最後を比べると、ざっと2倍は早くなったような気がしました。

         刈り取りが早くできるようになったため、急遽竹竿を追加組み立て


 全員が稲刈りを済ませてから、次に脱穀をしていたのでは時間がかかります。また、全員が一度に稲刈りするほど田んぼは広くありません。そもそも稲刈りしたばかりの稲は乾燥していないので脱穀できません。最初2組が稲刈りを開始すると同時に、一週間ほど前に今回のために先行して稲刈りして干した稲を1組が脱穀体験をしました。稲刈りと脱穀の同時進行です。

               足踏み脱穀機を中心に脱穀体験のコーナー


 脱穀体験したのは足踏み脱穀機による脱穀です。去年までは、足踏み脱穀機に加えて、千歯こぎ、唐箕、足踏み縄ない機なども体験しました。しかし、今回は前日雨でしたので足踏み脱穀機だけの体験としました。

     足踏み脱穀機の周りに並ぶ             幌を被せた足踏み脱穀機
 

 足踏み脱穀機はペダルを足で踏むと脱穀ドラムが回転します。そのドラムに稲穂を当てると籾だけがはじき出されます。そのはじき出された籾を集めます。籾はけっこう広範囲に弾き飛ばされるので、脱穀機の周りに籾があまり飛ばないように幌(ゴザを利用)を被せています。幌をかぶせていると、飛ばされた籾が幌に当たって一箇所に集まるように落下します。

  回転する脱穀ドラムに稲穂を当てる      みんな稲穂を持って並び、脱穀を待つ
 

 足踏み脱穀機のドラムに当たって稲穂から脱落した籾はほぼ一箇所に落下します。その籾を回収する作業は最初保護者の方にお願いしました。落下した籾にはワラゴミが混じっているため、網でふるってから米袋に入れます。

             最初は保護者の方に、落下した籾を集めてもらう


 脱穀体験を済ませた子供達から順に、今度は脱穀後に落下した籾を集めてもらいました。手でかき集めた籾を箕に入れてから網でふるい籾を選別します。籾を触ったのも初めて、箕を使ったのも初めて、網でふるったのも初めての子供達でした。保護者も初めての方が少なくありませんでした。

     箕を持つ子供と選別する子供達         網を使って籾とワラゴミを選別
 

 子供達が集めて選別した籾は、後日籾摺りしてから精米して最終的に白米にします。普通に炊飯するお米が白米です。今回、子供達が稲刈り・脱穀したお米の品種は炊飯後に冷めてもぼそぼそしない「ミルキークイーン」と呼ばれる品種です。コンビニのおにぎりはこの品種が多く使われているそうです。

              手でかき集めた籾を箕に入れてご満悦


 今回の稲刈り・脱穀体験は保護者,大学生などの連携が良かったのか、参加者全員に笑顔があったように思います。早朝は小雨で寒空だったにも関わらず、楽しく体験できて予想した以上に稲刈りが進みました。毎年のことですが、子供達は次年2月頃に稲刈りしたお米を使って料理をします。数年前は体育館でもちつきその他はおにぎりなどを作って食べました。

   稲刈り楽しかったかな、笑顔の4人組      熟した橙色のカラスウリを見つけて
 

 今回、稲刈り・脱穀体験を実施するにあたって悩んだことがあります。それは、当日の深夜に雨が降ったためにせっかく脱穀用に干してあった稲がずぶぬれになりました。このため、当日脱穀できないかも知れない事態になりました。さらに濡れた稲で子供達が濡れないか心配でした。

         楽しく稲刈り・脱穀体験をした5年1組の生徒達と保護者,先生


 早朝小学校に電話して先生と今回の稲刈りを実施するか延期するどうか話をしました。私は、脱穀できない事態や濡れることを恐れて延期の考え、先生は今後の行事などを考えて実施する考えでした。子供達は長靴など雨対策をしているとのことで、実施する決断を下しました。結果的に大正解でほっとしました。事前に雨の場合の準備をメールで小学校に伝えておいて良かったです。天気が不安定だと実施するか中止するかいつも悩みます。

          みんな笑顔で稲刈り、明るい5年2組の生徒達と保護者,先生


 子供達が帰ると、山に囲まれたこの田んぼは急に寂しいほど静かになりました。大学生も授業があるとのことで、小学生が帰る直前に大学に戻りました。これで、秋の一大イベントが終わりました。私を含む残った稲刈り応援者は、賑やかな稲刈りの余韻を楽しむように田んぼを見下ろしながら腰掛けて談笑しました。

      架けた稲束にビニールを被覆          田んぼを見下ろしながら談笑
 

 このような稲刈り・脱穀体験はあと何回できるでしょうか。何年か前以前は、作った苗を小学校に渡すだけでした。しかし、ある時私が「校庭の狭いビニール池で稲を作るよりも、本当の田んぼで田植えや稲刈りなどを子供達に体験させた方がいいのでは。」と先生に声をかけたのが今回の体験に延々とつながっています。しかしながら、子供達のためとは言いながら、田んぼの管理は大変です。心身ともに疲れます。今後このような体験を続行できるか心配です。

             子供達が去ると急に静かになった、山のふもとの田んぼ

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