【浩介視点】
『溝部が帰ったらたくさんしような』
慶がせっかくそう言ってくれたのに………
溝部が帰ってくれないーー!
そして………
『大好きだよ』
数ヵ月ぶりに言ってくれて、その上こっそり、耳にチュッとキスまでしてくれて、こっちは嬉しすぎてその場でひっくり返ったっていうのに………
慶、なんで山崎をまたうちに連れてきたのーー?
この意味が分からない状況は、昨日の夜からはじまった。
バレンタイン前日の19時半少し前……
せっかく慶とひたすらイチャイチャして過ごそうと思っていたのに、突然、高校の同級生の溝部と山崎がやってきた。
「邪魔しに来たんだよ」
なんで来たの?というおれの質問に対し、溝部はあっさりと言い切った。
「オレらは寂しくバレンタインを乗り切ろうとしているのに、お前らだけ幸せに過ごすのは不公平だからな」
「…………」
滅茶苦茶だ……。
おれと慶が苦笑する中、山崎は「えええ!?」と叫んだ。
「溝部っ騙したなっ。オレは遠慮しようって言ったのに、二人が呼んでるって言うから……っ」
「えーオレそんなこと言ったっけー」
「言っただろ!」
山崎……あいかわらずだ。昔から山崎は控えめで、自分の意見を二の次にするところがあるので、強引な溝部に振り回されている………
「ま、いいじゃねえか」
慶が苦笑しながら山崎の腕を叩いた。
「せっかくだから、夕飯食ってけよ。浩介がやたら凝った料理作ってるから」
「お~~やったー」
「ごめんね、桜井……」
「…………」
そう言われてしまったら、反対できるわけない。四人で食卓を囲むことになり、翌日の昼にアレンジして出すつもりで多めに作ってあった食事は、すべて無くなってしまった……。(でも、前々からリサーチしてようやく見つけた、慶がきっと気に入ってくれるに違いないチョコレートケーキは、冷蔵庫の奥の方に隠してあるから無事だ)
「おれ、仕事あるから」
食後、そう言って、リビング続きの洋室に行ってしまった慶を除いて、飲み会がはじまった。
慶はお酒があまり強くなく、少し飲み過ぎると寝てしまうので、二人で酔い潰れるまで飲む……ということはしたことがない。
おれはまあ普通に飲める。でも、慶に会える時間を削ってまで飲みたいとは思わないので、必要最低限の飲み会以外に行くことはなかった。
でも、昨年の同窓会以降、こうして同級生達が来るようになってからは、飲みの楽しさを知ったというか……大好きな慶がそばにいる上で、気のおけない仲間たちと飲むお酒は楽しくて楽しくて………
「あのね~今回は記念すべき25回目のバレンタインなわけですよ~」
「おお!四半世紀!」
「ほんとスゴイよなー」
こうして慶とのことを正直に話せることも本当に嬉しい。
「オレ、一番長くて2年だなあ」
「なんで別れちゃったの?」
「んーなんでかなあ……」
溝部がうーんとうなっている。
「山崎は?」
「オレもそんな感じかな……。むしろ、こんな風に続いてる桜井達が奇跡だと思う」
「その秘訣はなんだー?」
「おお。教えてほしい!」
二人に詰め寄られ、コホンと咳をする。
「秘訣はですね……」
「変なこと言うなよ?」
いつの間に慶が隣にきて、ローテーブルの上のリンゴを一切れ口に入れると、キッチンに行ってしまった。
慶が戻る前に言わないと……
「秘訣は二つ」
ピースサインを、1に変える。
「いち。まずは、やっぱりお互いを思いやる心」
「まーそりゃーなー」
納得の二人に、指を再び2に変える。
「2つ目は」
「おお」
「か……、痛っ」
ゴンッと頭に衝撃がはしった。か、かかと落とし!?
頭を押さえながら振り仰ぐと、慶がコーヒーカップ片手に、冷たーい目でこちらを見下ろしていた。
「お前、今、何言おうとした?」
こ、こわい……
「あー、いえ、何も……」
「え、何だよ何だよ!?」
「いえいえ、何も……」
『体の相性』だなんて、今言ったら本当に怒られる……。
慶が洋室に戻ったのを見計らって、二人がコソコソとおれを小突いてきた。
「なんだよ? 渋谷に言えないことか?」
「余計に気になる!」
「ほら、渋谷が戻ってくる前に言えよ!」
「いや、その……、あ!」
2人に詰め寄られたところで、ローテーブルの端に置いてあった山崎の携帯に着信を示すランプがついていることに気が付いた。
「ほらほら。山崎、携帯!」
「おいおい、誰だよ? もう12時過ぎてるぞ?」
「誰だろ……」
山崎が無防備に画面をいじったので、ばっちり見えてしまった。
「うわ!」
「マジか!!」
思わず溝部と一緒に山崎の背中をバシバシ叩いてしまう。
『何なりとお申し付けください、はまだ有効ですか?』
『高級チョコレートがあります』
『もし、まだ有効でしたら、食べにきてください』
メッセージの相手は、山崎の合コン相手の戸田先生だった。
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お読みくださりありがとうございました!
か、書き終わりませんでした……
潔く諦めて、前後編→123に変更^^;
今回はいつか書きたかった、家飲みの様子。
間取り図とか書けたらいいんだけど書けないので文章で説明しますと、、、
3LDKです。
玄関入ると廊下が真っ直ぐあって、
つきあたりに12畳のリビングダイニング。
キッチンはダイニングの手前に長細く3畳くらい。
カウンターキッチンではありません。
キッチンの近くに、そんなに大きくない4人掛けのダイニングテーブルがあって、
リビングスペースには、ソファーとローテーブル。
ソファーは二人掛けなので、座れない人は地べたに座るか、ダイニングの椅子を使うか。
(今回、浩介は地べたに座っていたので、かかと落としをくらったわけです)
リビングの続きに6畳の洋間。ここにベッドと、共用のデスクを一つ置いてます。
玄関側に4畳半の部屋が2部屋。1部屋は慶と浩介の荷物部屋、
もう一部屋はここの部屋の持ち主である、あかねの荷物部屋になってます。
(『光彩』であかねが住んでいたのはこのマンションです)
……なんて、こんなこと書いてる暇があったら続き書けばいいのに……と自分にツッコんでみた。
えー、今回の話は、「たずさえて14-3」のおまけの話の寸前にあたります。
続きはまた明後日(たぶん)……今度こそ終わるはず^^;
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こんなオチもない小話に本当にありがとうございますー!!
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慶… 容赦無いなー (笑)
で、カラダの相性は 大切ですよね ♪♪
菜美子と山崎くん、その点は大丈夫そうで よかった (;´д`)=3
山崎くんは 溝部@ムロツヨシ に騙されて お邪魔虫に来たんですね ニヤ(・∀・)ニヤ
でも、来てなければ 戸田ちゃんとのチョメチョメ … いや、進展 は無かったハズだから
溝部 グッジョブ!! (`・ω・´)b ですね(笑)
>慶… 容赦無いなー (笑)
ほんとに暴力亭主ですわー^^;
ちなみにーどうでもいいことなので書きかけてやめたのですが、
この時、カップの中にはまだ何も入っていません。
注ぐ前に、嫌な予感がして、カップ片手に戻ってきた慶さんでございした。
>で、カラダの相性は 大切ですよね ♪♪
ですよねー!
こればっかりは、他のことに変えられないというか……
例えば、趣味が違うとかなら、それはそれでお互い勝手にすりゃいいじゃん?って感じで、お互いの友人とその趣味のことをしてもなんら問題ないですが、
こちらの相性ばかりは、他の人とするわけにはいかないので^^;
>菜美子と山崎くん、その点は大丈夫そうで よかった (;´д`)=3
(笑) (;´д`)=3←かわいい顔文字!!
菜美子と山崎くんも、きっと大丈夫~。ちゃんとやらせてあげたいなーと思う今日この頃です。
山崎って、自分のことより相手のこと優先させるタイプなので……って、だから流されやすいのか……。
>山崎くんは 溝部@ムロツヨシ に騙されて お邪魔虫に来たんですね ニヤ(・∀・)ニヤ
>でも、来てなければ 戸田ちゃんとのチョメチョメ … いや、進展 は無かったハズだから
チョメチョメ(爆)!!
そうそう、チョメチョメ(笑)(笑)(笑)!!
そうなんですよね!
考えてみたら、もしこの時、山崎が慶たちの家にいなかったら、戸田ちゃんの家には行ってないですよね。
まず行こうかどうしようか散々迷って踏み切れなかっただろうし…
もし、踏み切れたとしても、もう電車なくなってるし、
車で行ったとしたら高速使っても40分以上かかるし、着いてもパーキング探して……とかしてたらますます時間かかっただろうし……そんなことになったらもう待ちくたびれて寝てたでしょう^^;
本当に溝部、グッジョブ、でございました!!
いやーもー朝からチョメチョメに笑わせていただきましたー!
楽しいコメント本当にありがとうございました!!!