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ある平凡な主婦の、少しの追憶⑲

2007年06月16日 12時29分40秒 | ある平凡な主婦の、少しの追憶(一部R18)
『ありがとう。がんばる』

短く返信をして、皿洗いをはじめる。

そうだ。憂鬱になっている場合ではない。
今後どうするかを考えなくては・・・。

実は一年ほど前、騒音対策のために防音カーペットを全面に引き詰めた。
元はフローリングである廊下・リビングが全て絨毯となった。
それを過信して、子供達のジャンプをやめさせなかった、というところもある。
結構な値段を出して購入した防音カーペットだが、やはり限界はあるのだろう。

そうなると、マットレスの上で暴れさせる以外に考えられない。
もう少し外で遊べたらまた違うのだろうけど、やはり長女もいるので、2人いっぺんには目が行き届かないのだ。

・・・ん?
そこまで考えて、急にひらめいた。
そうか。長女を幼稚園に編入させたらどうだろう。
金銭的な理由と、長女が弟の面倒をよく見てくれることから、
来年の年中からの入園でいいだろう、と思っていたのだが、
こうなったら幼稚園に入った方がいいのかもしれない。
長女もそのほうがのびのびと遊べるだろう。
私も長男と一対一ならば外遊びをさせてやることもできる。

ちょうどお風呂上がりの夫が飲み物を取りにきたので、話してみた。

・・・が。

「そんな金どこにあるんだよ?」

と、眉を寄せられた。

「私の定期を崩せばいいかなと思って」

長女が三年通う金額くらいは入っている。
しかし夫は納得しなかった。

「それは何かあったときの為に取ってあるやつだろ。なんでうちがそこまでしなくちゃなんないんだよ」
「・・・・・・」

それじゃあ、このままなんの対策もなく、私がピリピリしながら過ごせばいいと?

「マットレスの上ででもあばれさせりゃいいだろ」
「今日、そうしたよ。でもすぐにはみ出して・・・」
「じゃあ、そこまでやってるんだから文句言われる筋合いないだろ。だいたい防音カーペットだってひいてるんだからさ」
「・・・・・・」

今度は私が眉を寄せてみせた。
すると夫は不機嫌そのものになり、

「何か文句言ってきたら、オレが謝ってやるよ。『ごめんなさい』って頭さげてやるよ。だからいいだろ」
「・・・・・・」

そういう問題じゃないと思う。
全然納得できない。

それなのに、夫はこの話はおしまい、とばかりに、持っていたコップを置き、
私のことを後ろから抱きしめてきた。
その手が胸をまさぐってきたので、イラッときた。

どうして、この会話の後で体を求める気になれるんだろう?
今日、私が神経の張りつめすぎで、どれだけ疲れてるか、想像できないんだろうか?

その感情をなるべく抑えながらも、言い方はどうしても冷たくなった。

「洗い物してるんだけど」

すると夫は舌打ちをして私から離れ、寝室に入っていった。
そのドアが、夫の苛立ちのままバタンッッと大きな音をだして閉められる。

何時だと思ってるのよ。
それこそ近所迷惑で苦情の電話がくるわよ。

イライラした。
何もかも嫌になった。

ふと、彼からのメールを見返す。
そして、よくよく読んで、文章を丸暗記してから、削除した。
夫は時々私の携帯をチェックするので、彼からのメールを残しておくことは危険だった。

こんなことでも、自由がない。自由がない・・・。
コメント
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