宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

MT日本語版30周年企画:ガシカン帝政とイレアン人

2021-06-06 | MegaTraveller
 人類のヴァルグルに対する対応で、アシミキギル連合(ジュリアン保護領)の対極に位置するのがガシカン第三帝政(Third Empire of Gashikan)のイレアン人(Yileans)です。彼らは人類の闇の部分であり、ある意味で勝利の姿でもあります。
 イレアン人は〈帝国〉の銀河核方向(コアワード)国境外のにあるガシカン星系を母星とする、群小人類の中では最も広い勢力を持つ種族です。彼らは「ガシカン帝政」を築き、ガシカンやトレンチャンなどの宙域を制しています。そして彼らは、ヴァルグルに対する強い憎悪で知られています。


(※現在の設定では「Trenchans」宙域になったようですが、今回は旧設定の「Trenchan」を採用します)

■歴史
 惑星ガシカンは、いくつかの孤島を除けば陸地全体が一つの超大陸にまとまっています。太古種族によってこの星に持ち込まれたイレアン人がTL2手前に到達した頃には、早くもガシカンという名の統一国家を築いていました。この国は反乱や自然災害で崩壊しかけた時もありましたし、時代の流れで世襲君主やカリスマ独裁者や財閥評議会など政権が移り変わりもしましたが、常に統一国家として再建され続けました。その結果、イレアン人は複数の政府が林立することをまるで無政府状態のように恐ろしく思うようになりました。
 -4400年頃、TL2だったガシカン星系にヴィラニ人商人がやって来てイレアン人と初接触し、ヴィラニの政治体制への統合は急速に進みました(※第一帝国はガシカン宙域を正式領土化していなかったはずなので、属領と思われます)。自治権が失われることを危惧した者もいましたが、多くのイレアン人はより大きな恒星間「統一国家」の一部となることを歓迎したのです。その後200年でガシカンは、ヴィラニ人の統治下でTL9の産業世界へと変貌しました。

 第一帝国(ジル・シルカ)の崩壊はイレアン人に大きな落胆と恐怖を与えましたが、代わってやって来たソロマニ人とも彼らはうまくやっていきました。そのソロマニ人の統一国家も混乱の中で呆気なく消え去り、暗黒時代の荒廃の中でガシカンの人々は失われた帝国を一部でも再建し、自分たちの世界を破局から守ろうとしました。
 人類国家の圧力が失われたことで、無防備となったアムドゥカンやガシカンの各宙域にはヴァルグル海賊が侵出してきました。この驚異に対抗するためにイレアン人は-1784年に「ガシカン帝政」を建国しました。彼らは軍艦の建造数を増やし、海賊対策の哨戒を欠かさず、数々の掃討作戦も行いました。初めのうちは成功していましたが、最終的には海賊らは徒党を組んでガシカンの中央へと反撃を加えてきました。-1658年には首星ガシカンが核攻撃を受けて約4億人のイレアン人が犠牲となり、地表は略奪し尽され、ガシカン帝政は滅亡しました。
 ヴァルグルによるこの「ガシカン略奪(Sack of Gashikan)」以来、イレアン人の大半は全てのヴァルグルに対して深い憎悪を抱いています。イレアン人にとってヴァルグルとは、(彼らの信念に反する)混沌と混乱と無秩序の象徴なのです。

 -1646年、イレアン人は「ガシカン第二帝政(Second Empire of Gashikan)」を再建しましたが、この国の指導者たちはヴァルグルを疫病同然の、どんな手段を使ってでも滅ぼすべき存在と考えていました。第二帝政は生物兵器を多用し、ヴァルグルに特化した伝染病をも創り出して、-1000年頃にはガシカンの勢力圏内の全てのヴァルグルを根絶してしまいました。この時の記憶は今でもヴァルグルの中に残っており、いくつかのヴァルグル世界ではこの「種族間戦争(Race Wars)」で亡くなった数多の同胞を慰霊するための祝日が設けられています。
 種族間戦争が終わると、イレアン人のヴァルグルに対する憎悪は薄れていきました。目に見える範囲にはヴァルグルはもう居らず、国境外の大多数のヴァルグルがガシカンとの関わりを一切断ったために、イレアン人は憎むべき「敵」を失ってしまったのです。
 そんなガシカン第二帝政は、隣国のジュリアン保護領(Julian Protectorate)があろうことかヴァルグルと融和したことで急速に勢力を拡大していったため、その影に落ち込んで停滞期に入りました。傘下星系は徐々にまとまりを失い、ついには第二帝政は財政破綻と大規模内戦で1070年に崩壊しました。
 8年後、トレンチャン宙域に本拠を置く国家が内戦に勝利して「ガシカン第三帝政」の成立を宣言しました。この経緯から「トレンチャン帝国」とも揶揄されますが、首都は旧都ガシカンに戻されました。
 しかし内戦はガシカンに大きな傷を残しました。国境付近の、特にメンダン宙域の星系は第三帝政への合流を拒み、中にはより先進的で繁栄しているジュリアン保護領に加盟した星もありました。第三帝政は当然この状況を容認しておらず、国境紛争は頻繁に起こっています。

■イレアン人の特徴
 「純血の」イレアン人は比較的背が高く、体が細いです。成人男性の身長は約180センチメートル、体重は約50キログラムで、女性はそれよりやや小さくなります。興味深い点としては、肥満体にはなかなかならないことが挙げられます。これは、惑星ガシカンの蛋白質に適応したことで脂肪蓄積の仕組みが変化し、他の人類と比べて体脂肪率が著しく低くなったことが医学的研究で明らかになっています。
 変光星の主星(ソロマニ名:カイ・オフィウキ)からの周期的な紫外線から身を守るために、イレアン人は青黒い肌を持ち、頭髪は黒くて直毛(もしくは軽い波状毛)になりました。男女共に体毛や髭はほとんど生えていません。

 あえて「純血の」と但し書きをした通り、現在「純血の」イレアン人は母星であるはずのガシカン星系にはほぼ居らず、ガシカン国内でも5%程度のみとされています。ヴィラニ人の統治下にあった数千年の間に多くのイレアン人がヴィラニ人入植者と結ばれましたし、その後にやって来たソロマニ人とも同様だったからです。それでも国内のほとんどの人類はイレアンの血を引いています。青黒い肌と黒い直毛はこの宙域ではよく見られ、非常に好ましいものとされていますが、そういった容姿の人はたいてい上流階級に属しています。
 今やイレアン人というのは種族ではなく文化であり、ガシカン第三帝政の市民を指す言葉となっています。ガシカン国外にはイレアン人を先祖に持つ人が1億人以上いると言われていますが、自分をイレアン人だと考える人はほとんどいません。近隣諸国の人々には、それほどガシカン帝政の排外主義政策とイレアンの血筋は切っても切れない関係に見えるのです。

 イレアン人は平等主義で社会性を重視する傾向があります。彼らは集団で働くことを好み、社会的流行に流されやすいのですが、これは平均的な人類と大差はありません。
 ただ、イレアン人の心理の特異なことの一つに、ヴァルグルへの不寛容があります。これは文化的なものではありますが、何世紀にも渡って強化されてきたためにしっかりと根付いています。
 ガシカン帝政には400以上の星系があり、それぞれが独自の歴史と文化を持っています。反ヴァルグル感情はほとんど全ての星で共通していますが、その性質は3つの区分けのどれかに分類されます。

●中央
 首都ガシカン付近を含む中央地域では、ヴァルグルはほとんど知られていません。広範囲に及ぶ検閲によって、ヴァルグルに関する情報は一般市民には届かないのです。国外の情勢を知ることが必要な極一部の人々だけが、ヴァルグルに関する情報に接することができます。
 また、ヴァルグルに関する事は口の端に上るのも不適切だという風潮があります。ヴァルグルの映像や情報を見ることは異常者が行う不法行為と考えられていて、中央地域の住民のほとんどは歴史の教科書でヴァルグルに関する一文を見たことがある程度です。そんな人々が本物のヴァルグルに遭遇した場合、彼らは憎しみよりも不安や当惑を感じます。

●国境近辺
 ガシカンの国境付近では、中央とは全く状況が変わってきます。国内全ての星系でヴァルグルに永住権を与えることは有り得ませんが、国境付近の星系には最貧層のヴァルグルが低賃金の契約労働者として多くやって来ています。これらの労働者は二級市民扱いで、5年間の契約期間中は全員自分の位置を継続的に知らせる特殊な無線追跡装置を埋め込まなくてはなりません。
 この慣行は内戦による労働力不足に対処するために1079年頃から始まりました。やがてそれは解消したものの、多くの世界で「出稼ぎヴァルグル(Visit Vargr)」が安価で調整しやすい労働者であることに気が付きました。今ではこの地域のほとんどのガシカン市民は、重い荷物を運んだり、下働きをしているヴァルグルを日常の光景の一部として見ています。
 出稼ぎヴァルグルが人類の仕事を奪うとして嫌がらせを受けることはありますが、意外にも暴力を振るわれることは稀です(ただし時には過剰反応で暴行や殺害にまで至ることもありえます)。しかし政治的活動を行うヴァルグルは例外で、自分たちの社会的地位を向上させようと立ち上がれば、しばしば暴力と法律が襲いかかってきます。国境星系のほとんどには数多くの古い反ヴァルグル法が今もあり、社会的・政治的に問題を起こそうとするヴァルグルに粛々と執行されます。それが嫌なら、社会的差別と不愉快な暴言に耐えながら淡々と契約期間を終えて、蓄えた僅かな貯金を持ってさっさと故郷に帰ればいいだけなのです。

●危険地域
 中央と国境の間は、ヴァルグルに出会うことはほとんどないにも関わらず、彼らに対して最も偏見の深い地域です。ここの星系では公共の場でヴァルグルについて話すことを禁じる法律がありながら、多くの市民がヴァルグルの脅威について日常的に話し合っていますし、ヴァルグルを醜い悪役(出稼ぎヴァルグルがスパイやテロリストになるのは定番です)として描いたホロビデオも人気があります。仮にヴァルグルが地表に降り立てば、集団暴行や誘拐・拷問の対象となるかもしれません。
 この危険地域における一部の人々の言動は、ガシカン帝政やイレアン人全体への「排外主義者」との悪評をより助長しています。


■社会と政府
 多くのイレアン人にとって、地方自治や分権という概念は全く不可解なものとして考えられています。ほとんどの人々は中央集権の統一国家こそが唯一の道で、それ以外は完全な無秩序と捉えています。その結果、イレアン人の政府は何千年もの間、一枚岩で権威主義的でした。ヴァルグル政界の柔軟で混沌とした様相は、イレアン人が彼らを危険な蛮族と見続けている理由の一つです。
 秩序・統制・安定を尊ぶイレアン人の考え方は、政治の枠を越えて浸透しています。全てのイレアン人には社会の役に立つ人材となることが期待されていて、若者は定期的に行われる適性検査によって教育や職業の進路が定まります。進路選択の自由はありますが、身体的・経済的事情の変化によって人生設計が狂った時でもなければ、わざわざそこからはみ出すようなことは普通はしません。

 ガシカン帝政は3宙域の400以上の星々を統治していますが、その政府は極めて中央集権的です。一応国内の各世界はそれぞれ独自の政治形態を持ってはいますが、星系政府は純粋に地元の課題にしか責任を負いません。
 加盟星系にはそれぞれヴェリャ(Velja)と呼ばれる中央からの勅使が配属されています。ヴェリャは星間交易や防衛など、他星系との交流に関わる星系政府のあらゆる政治判断に対して拒否権を持っています。杓子定規過ぎるヴェリャは外交政策を全て自分で制御しようとしますが、ほとんどの場合は穏便に済ませます。ヴェリャの権力を抑えるために、各星系政府は2年に1度、ヴェリャの交代を中央に陳情することができます。また、ヴェリャの勧告を無視した星系政府は経済制裁を受け、最終的には国軍による軍事介入の対象となります。
 実際のところガシカン政府は〈帝国〉よりもかなり厳格なのですが、市民はヴァルグルの侵略から国を守るためにはこうするしかないと考え、統制を受け入れています。
 内戦が終結した今、ガシカン第三帝政はその関心の大半を国境に向けています。中央の星系が厳しく言われることはほとんどありませんが、国境世界には軍事訓練を受けたヴェリャが置かれ、国を危険に晒すような政策は一切許されません。そしてそれへの反発を抑えるために、第三帝政は国境世界の住民が受け取る報道などを厳しく管理しています。近隣のヴァルグル国家を恐れるように住民を扇動することで、政府への反発を減らしているのです。高い税金や厳しい法律に抗議する者は売国奴の烙印を押されるか、もっと悪ければ「愛犬家」という最低の汚名を着せられるのです。
 伝統的にガシカン帝政は養子王制で統治されていて、現在の統治者が予め貴族の中から後継者を定めておくのです。そしてこれは、今の統治者が死ぬか退位するまで秘密にされるのが習わしです。現在のガシカン第三帝政は先の内戦を制した女帝アイシリン(Empress Aithilin)が治めていますが、彼女も伝統に倣い、30歳の誕生日に後継者を定めています。


■情報安全省
 第二帝政の初期から存在する情報安全省は、法律上は政府の一機関ですが、多くの分野で独立して行動しています。省の表向きの使命は有害なヴァルグルの宣伝情報の拡散を防ぎ、国家全体の平和と統一を守ることにあります。
 この目標を達成するために、省職員は全ての報道や情報を慎重に管理しています。ヴァルグルに関する全ての情報は検閲されていて、ヴァルグルを英雄的・肯定的に表現しているものは抹消されるか、逆に悪役的・否定的になるよう編集されます。情安省は国内全星系の電子通信網を注意深く監視し、他国政府やヴァルグルに関する全ての情報を収集しています。
 外国人(※に限らないでしょう)が未検閲情報を国内で流布することは重罪で、監獄惑星での数年間の重労働刑となります。情報を通信網に流そうとすると、それはまず地元の情安省に転送され、職員はその内容次第で検閲を行うか、発信者を捜索します。
 2500年以上の歴史を持つ情安省は、ガシカン社会のあらゆる側面を形成してきました。今ではガシカン市民に提供される歴史・報道・娯楽作品の全てが、全くぶれのない一貫性を持って構成されています。しかしこれらの情報は、〈帝国〉やジュリアン保護領の市民が知っているものと微妙に異なります。例えば、国外に赴いたイレアン人は、ジル・シルカ崩壊の原因がヴァルグルではなかったことや、第五次辺境戦争でゾダーン軍をヴァルグルが大々的に支援していなかったことを知って衝撃を受けるのです。
 情安省は国内のあらゆる情報を統御することで、大きな権力を持っています。情安省職員以外では帝政の支配階級のみが無修正の情報に接触することができます。また、法律上禁止はされていますが、政治家や財界人が情報操作を行うこともあります。
 情安省本庁はガシカン星系の首都カスラ市(Khasla)にあります。現在の情安省長官は、内戦の際に多大な功績を残したヤーロブ・ミリーガル(Jarob Milligar)で、歴代長官と同じく彼もヴァルグルを嫌っていますが、ガシカンの脅威ではないと現状を分析しています。しかし国家の統一を維持するために、彼はヴァルグルへの恐怖心を利用して市民に帝政へ強い支持が向くように操っています(例えば、反出稼ぎデモを裏で支援していたり…)。ミリーガルはある意味で国内最強の権力者で、その強さの実態を市民はおろか女帝本人すら知りません。


■対外関係
 ガシカン帝政は、周辺の全てのヴァルグル国家とヴァルグルに友好的な国を程々に敵視していますが、人類のみのいくつかの小国とは緩やかな関係を維持しています。一方で、ガシカンが冷戦状態にある隣国のジュリアン保護領より経済力・技術力・軍事力の全てでも劣っているのは事実で、あまり刺激したくないと考えている節はあります(※保護領も内戦後のガシカンを脅威とは見ていません)。しかしガシカン第三帝政の存在自体が、過去の亡霊のように周辺宙域全てに微妙に影響を及ぼしているのです。
 〈帝国〉に対しては公式には中立です。両国の間には開かれた交易こそありますが、正式な国交や同盟関係はありません。しかし〈帝国〉内の人類至上主義過激派の中には、ガシカンとの関係を持つものが少なくありません。
 また、距離が離れ過ぎているために意義ある関係を結べてはいませんが、ガシカン帝政はソロマニ連合内の急進的な反異星人派閥と連絡を取り合っています。


■技術と貿易
 ガシカン国内では、首都ガシカンをはじめとするTL12が最高水準の技術で、ヴァルグル諸国との貿易が推奨されていないためにTL13以上の製品が利用できる世界はほとんどありません。
 実は情安省は特権でTL13の宇宙船や装備品を導入しています。特にTL13の200トン武装急使船(armed courier ships)はジャンプ-4が可能で、国内のどんな船よりも早く情報を得られて、反体制派の陰謀が広がる前に行動を起こせるのです。
 ガシカン国内の星系同士では定期便による貿易が行われていますが、国外の星との貿易は厳しく規制されているので珍しいです。国境を出入りする全ての船は、厳重な検査を受けます。
 ヴァルグルは国境星系への渡航が認められていますが、ガシカン国内の多くの世界ではヴァルグルの上陸を許可しません。そのためヴァルグル商人の多くは、人類や他種族を代理人に立てています。また、ヴァルグルがガシカン市民を雇うのは違法ですが、商人の中にはそうした「変り身」を用意して商売する者もいます。


【ライブラリ・データ】
ガシカン Gashikan 2732 A8679AD-C M 高技・高人・緑地 G 3G
 衛星を持たない惑星ガシカンには、古の戦争の傷跡が今もあります。最後のヴァルグルの襲撃から3500年以上が経ちましたが、かつての偉大な都市ニソリス(Nitholis)の放射能汚染は消えておらず、ヴァルグルの強欲さの象徴として廃墟が保存されています。ここで亡くなった人々を悼むため、今でも国内全土から観光客が訪れています。
 このような史跡を除いて、惑星はずっと前に核爆撃から回復して緑豊かな星に戻されました。その美しさを守るために、政府は移住と建築に厳しい制限を課しています。重要な仕事に雇われない限り、来訪者は60日以上滞在することはできません。ただし短期滞在者向けの査証は無料であり、観光業はガシカンの主な収入源となっています。
 ガシカンの土地の35%以上が、公的に保護された自然区域です。保護区域に仮設でない建造物を建てると重い罰金を科されます。誰もがこの広大な公園で自由に野営を楽しむことができますが、軌道上から監視されているので規則違反者は速やかに退去させられます。
 歴史的重要性と自然の美しさに加えて、ガシカンは帝政の伝統的な首都でもあります。1078年から1098年までは内戦の結末でその座を失っていましたが、1099年にガシカンに戻されています。
 女帝や高位貴族を守るために、ガシカンの法律はとても厳しくなっています。武装警察を除いて、誰も小さな刃物以上の武器を所有することはできません。狩猟自体が禁止されているので、来訪客も言い訳は不可能です。一方で、全ての公共の道路や建物内部に監視カメラ網が張り巡らされており、民家の内側を除いて惑星の全ては常時監視下にあります。監視網は武器の使用や暴力行為を自動的に検知し、警察は犯人を素早く特定することができます(ただし監視網は非暴力犯罪の自動検知はできません)。地元警察以外に、全ての監視網の記録は情報安全省からも閲覧できます。ちなみに情安省は、国内の人口5億人以上の全星系で同様の監視網を持っています。

ガントレット級武装急使船 TL13 Gauntlet-class armed courier
 200トンのガントレット級武装急使船は、ガシカン第三帝政情報安全省の特殊精鋭艦です。実はこの船は〈帝国〉製で、ベオウルフ級自由貿易商船を改装したものです。貨物空間の大部分と船室の一部が追加の機関部と燃料タンクに置き換えられたため、一見ただの低速商船のようですが、実際はジャンプ-4が可能です。
 情安省はこの船で、ガシカン国内のどの民間船や軍艦よりも早く星系間の情報や人員のやり取りを可能としています。この船の存在によって、情安省は国内の全ての報道や情報を効率的に管理することができるのです。現在、情安省には約300隻の急使船が配備されています。
 武装急使船の運用には、船長兼操舵士1名、航法士兼索敵士兼通信士1名、砲手2名、機関士2名、医師1名が必要です。また通常は、少なくとも1名の情安省職員(工作員)と2名のコンピュータ技術者が同乗しています。

ブレスカイン騎士軍団 Legion of Breskain
 ヴァルグルと戦うために、-612年に設立されたガシカンの騎士団です。同様の騎士団は先に存在していましたが、後々これに吸収されました。現在では公的機関ではなくなったものの、目的はそのままにいくつかの傭兵部隊を所有・運営しており、ヴァルグルと対立する人類の政府や企業に売り込みをしています。

狼滅計画 Project Wolvesbane
 ガシカン第二帝政は遺伝子操作によってイヌ科動物にのみ致命的なウイルスを創り出し、-1427年にヴァルグルの絶滅を狙って放ちました。それは検出が困難な上に感染力が強く、潜伏期間も長いため、ヴァルグルの交易網を通じて広がっていきました。
 ヴァルグルは無私の、時に英雄的な努力によってこのウイルスの拡散を阻止しましたが、結果的にガシカン国内からヴァルグルはほぼ一掃されてしまいました。


【参考文献】
・Challenge #49 (Game Designers' Workshop)
・Vilani & Vargr (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Humaniti (Steve Jackson Games)
・Julian Protectorate (Angus McDonald)
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