宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(6) 『Pirates of Drinax』特集2 アウトリム・ヴォイド

2012-05-30 | Traveller

  アウトリム・ヴォイド(Outrim Void)とは、トロージャン・リーチ宙域の、主にメノリアル星域(A)からボーダーランド星域(L)にかけて広がる、星の密度が薄い中立地域を指す言葉です。また、この地域は帝国とアスラン領の緩衝地帯でもあります。
 ジル・シルカ(第一帝国)期にはこの宙域にはわずかにしか入植活動は行われませんでしたが(※記録上では-2300年頃からです)、人類の支配(第二帝国)期にはソロマニ人入植者たちが各地に植民地を築きました。今でも「純粋な」ソロマニ文化が色濃く残っている星系もあります。
 しかし、中央から遠く離れていた植民地は十分な支援を受けられず、やがて植民地は周辺星系から略奪をして自活するようになりました。農業世界は農機具とその補修部品のために工業世界を襲い、採掘世界はその資源ゆえに周囲から狙われました。どんなに小さな宇宙港でも使える機材は取り外され、ジャンプ能力を持つ宇宙船の保守のために分解されました。
 こうして、この宙域特有の「略奪文化」が生まれました。この文化は宙域が暗黒時代(Long Night)から回復することを妨げ、外部から援助を受ける可能性も失わせました。トロージャン・リーチ宙域には、危険な荒野、人間の屑と裏切り者の隠れ家、野蛮で混沌とした地域、という印象が定着しました(そしてそれは、第三帝国が拡大期にこの宙域を無視した理由ともなりました)。
 最盛期には、一つが100隻からなる海賊団(ただし総計は5万トンを越えない)が、イナゴの群れのように守りの薄い世界を襲い、貨物室に詰めることが出来た全てを奪い去っていたのです。
 こうした脅威に、いくつかの星系は団結して立ち向かいました。相互防衛協定から始まったこの試みは、やがて「シンダル帝国(Sindalian Empire)」となり、いつしか宙域内の9星域を傘下に収めるほどの大帝国となりました。
 しかし帝国は科学や文化の発展よりも軍事力と拡大を重んじたため、拡大が終了するとその力は内部に向けられるようになりました。中央政府は独裁的で残忍になり、過大な税金の取り立てを拒否した星系は、軌道上から爆撃されました。敵から星々を守るために興された帝国は、皮肉にも帝国自体が星々の最大の敵となったのです。
 やがて反乱の嵐が帝国全体を包み、シンダル帝国は「黄金時代の記憶」とともに歴史の中に消えていきました。帝国を支えた星々は、再び野蛮性を取り戻してしまいました。
 一方、-1100年頃には大裂溝(Great Rift)を越えてアスランが土地を求めて宙域にやってきていました。さらに、長年続いたアスラン国境戦争(-1118年~380年)の結果、帝国との「フトホルの和約(Peace of Ftahalr)」でダークネビュラ宙域やリーヴァーズ・ディープ宙域方面へ拡大ができなくなったことにより、植民の第二波がトロージャン・リーチに押し寄せました。現在ではほぼ6星域がアスラン化していますが、フトホルの和約により、帝国とアスラン氏族は緩衝地帯を挟んでお互いに接触しないようにしています。しかしアスランの中には、「和約は"人類のリーヴァーズ・ディープ氏族"と結んだものであり、遠く離れたここフラオイルロアハウル(Hlaoirloahaurl, アスラン語でトロージャン・リーチ宙域のこと)では関係ない」と考える者もいます。

 現在でもアウトリム・ヴォイドでは海賊行為が横行し、危険な地域であることは変わりません。帝国は宙域で活動している海賊団の数を50~100と推計していて、その多くがシーヴ(トロージャン・リーチ宙域 2116)を本拠地としています。また、そういった「プロの」海賊団以外にも「季節性の」海賊(農閑期に昔から伝わる自由貿易商船で隣接星系に襲撃を行います)すら存在していますが、帝国~アスランや帝国~フローリア間の通商ルート上にある世界では、貿易を行えば略奪に頼らなくともやっていける、ということがようやく理解され始めています。
 海賊から身を守るため、通商路を行く商船団には帝国やアスラン氏族から護衛艦が付けられます(大企業は自前で護衛艦を運用します)。もちろん護衛料は必要ですので、支払能力のない貿易商人は、己の才覚と運に賭けてヴォイドを渡ることになります。
(※ただし帝国~フローリア間航路では帝国艦船の護衛があるのはアルニシイル(2621)までで、フローリア連盟(Florian League)は護衛艦を派遣しないため、そこから先へは自力で行くこととなります。またアスラン方面航路でも、ジャンプ-2迂回路はコルダン(2821)までしか護衛してくれない場合が多く、護衛が付かないその先の2星系は海賊にとって絶好の襲撃ポイントとなっています。ちなみにジャンプ-3航路では、アクリッド(2722)まで帝国艦の護衛がついた後、テックワールド(2624)からアスラン氏族の護衛下に入るようです。また場合によっては、相手の国境ぎりぎり(アスランならウィルデマン(2819)、帝国ならパール(2425))まで護衛が付くこともあります)

 このように危険なアウトリム・ヴォイドでも、様々な企業が活動しています。中でも有名なのが、帝国の大企業であるジェデコ社(GeDeCo, General Development Company)です。デネブ(デネブ宙域 1925)とヴォリート(トロージャン・リーチ宙域 2329)に拠点を持ち、デネブ、レフト(のスピンワード側)、トロージャン・リーチ、ビヨンドの各宙域を商圏とするジェデコは、単なる商社だけではない活動も行っています。
 ジェデコは、開発と商取引を通じてレフト宙域からトロージャン・リーチ宙域にかけての後進世界を文明化することを主目的として、帝国暦700年にデネブの貴族によって設立されました。彼らは原料と引き換えに先進技術を世界に売り、同時に色々な習慣(例えば、旅行者のための安全な交通網整備、帝国戦争規則の尊守など)も商品代金に加えて持ち込んでいます。
 またジェデコは、宙域内の、特にフローリア方面への通商路に沿って、またそこから辺境世界へ商船を送るために、宇宙港を建設して維持する役割も担っています。そして世界を銀河の商業網に組み込んでいこうとしています。
 一方でジェデコは、過去の非倫理的活動やいくつかの疑惑で追求も受けています。アスランの有力氏族アハロアイフ(Ahroay'if)は、ジェデコをスパイ活動、海賊行為、反アスランのプロパガンダを広めたと非難し、現在同社との取引を拒否しています。

 それ以外にも、アスランの貿易会社ティエヨ・フテアフラオ・ヨール(Tyeyo Fteahrao Yolr)は、ダストスパイス(と帝国産のあらゆる貿易商品)の輸入のために、ヴォイドを越えてスピンワード・マーチ宙域まで交易船を派遣しています。


【シンダル星域】 Sindal subsector
 かつて星々を支配したシンダル帝国はここで誕生し、その名前と遺物といくつかの習慣を残して、ここで滅亡しました。現在のシンダル星域は、海賊と略奪が横行する危険地帯です。

シーバス Thebus 1919 B534320-6 低人・非工 G Na
 シンダル帝国の内戦によって一度滅亡したシーバスは、今では数千人の入植者(多くは探鉱者や狩人)が住む程度で、大部分は荒野となっています。
 ここではかつて、シンダル帝国の『星龍の紋章』を掲げた二大艦隊が激突しました。両艦隊の残骸は入り混じって主星から7億キロメートル離れた軌道を周回し、真空により完全な状態で保存された遺体のための浮かぶ墓地となっています。
 シーバスは宙域内で往来の多いダストベルト・メイン(※シンダル・メインの蔑称)上に位置し、近隣のティル(1518)やエイシス(1619)から低TL略奪者が、残骸の中から精製金属やハイテク物品をもぎ取りにジャンプ-1で訪れました。古の艦隊はほぼ裸にされてしまいましたが、まだ軌道の外れにはいくつか残されています。フローリア連盟方面に向かう旅客船からは時折、無傷の大きな難破艦が目撃されていて、長旅に飽きた帝国の旅行者から称賛されています。
 また旅行者の中にはここで途中下船して、「シーバスライオン(Thebun Lion)」の狩猟を楽しむ人もいます。シーバスライオンはシンダル内戦で使用された生物兵器の影響による変異体で、その毛皮はトロージャン・リーチ旅行での定番の土産品です(※この狩猟人気の裏には、反アスラン感情の高まりも影響しているようです)。

ノリクム Noricum 2018 D8867BB-1 低技・農業・肥沃 G Na
 現在の惑星ノリクムには、一見かつての帝国首都としての栄華は全く無いように見えます。しかし手がかりはあります。壁が石の代わりにフェロセラミックで出来ていたり、女性の首飾りがメモリークリスタルの小片で作られていたりしているのです。
 ノリクムの30%以上は生物が生きられない土地となっています。そこでは宇宙服なしではあっという間にウイルス感染し、やがて数日間の痛みと苦しみの後に死に至ります。これは旧帝国が滅亡した際に放たれた細菌兵器の名残りです。
 シンダル帝国時代の素晴らしい建築物は、戦争で全て破壊されました。皇居と司法省がかつてあった場所には、放射能で汚れたクレーターだけが残されています。帝国の宝物が滅亡の直前に首都の地下墓地のどこかに移された、という噂がありますが、墓荒したちは誰も戻って来ませんでした。廃墟のウイルス以外にも、突然変異した動物や、シンダル人が遺した保安装置といった危険があるからです。
 ノリクムの人々は、荒廃した世界で生き残るすべを自ら会得しました。毒素を含んでいるかもしれないので、彼らは肉を食べません。飲料水を得るためには、とある苦い薬草を大量に投入してから水を沸騰させます。男性は40歳を過ぎると、農地と廃墟の間にある荒野に派遣され、死の灰を防ぐ障壁を保守します。男たちはこの「儀式」に10日間程度耐えて、そして死んでいきます。
 ノリクムの現在の皇帝ドナス(Donus)は、小さな小屋に住んで、菜園を管理しています。彼の先祖は鉄拳で100の世界を支配し、広大な庭にあった高さ100メートルの像には、一族の特徴である無慈悲な冷笑が刻まれていました。しかし野菜の手入れをしている今の皇帝の顔には、純粋な微笑みが浮かんでいます。

オグマ Oghma 2020 B214754-9 氷結 G Na
 オグマは氷の世界で、住民は野蛮で排外的ですが、ジャンプ能力がある宇宙船を建造できるだけの産業力を持っています。オグマ「部族」の統治者である戦士王は、ダストベルト沿いの近隣世界の工業力や技術基盤を、略奪によって弱体化させ(相対的にオグマを強化す)ることを目論み、科学者や教師、エンジニアや職人を奴隷として連れ去っています。オグマの略奪者は、シンダル星域の人々の脅威であり、全ての文明世界に軽蔑されています。
 一方でジェデコに運営される宇宙港は、比較的安全です。略奪者たちは恒星間貨物船を襲うほど愚かではなく、その代わりに弱い後進世界を襲うからです。
(※ちなみに、宇宙港にはシンダル帝国の龍の紋章がいまだに掲げられています)

シーヴ Theev 2116 A434500-F C 高技・非工 A G Na
 盗賊たちの港、海賊の隠れ家、帝国警察ですら手が出せない星……この星についての様々な噂話が周辺宙域に広まっています。シーヴは本当に、それらの話と同じくらい無法で、危険な星です。
 シーヴは埃まみれの(※火星のような)惑星です。惑星唯一の都市である、砂漠の中から蜃気楼のように立ちのぼるブラックサンド・シティ(Blacksand City)は、密閉された歩道で連絡しあっている数々の台地の上に建設されています。船は台地の間の裂け目に着陸し、バーや娯楽施設はこれらの裂け目付近に作られています。
 ブラックサンド上空の静止軌道には、外観のくぼみが眼窩のように見えることからスカルと呼ばれる軌道宇宙港が浮かんでいます。そのくぼみの部分には何百ものミサイル砲台や銃座が隠されていて、許可なくブラックサンドに近づこうとするどんな船にも攻撃を行います。またスカルには造船所があり、2000トンまでの最先端仕様の海賊船を建造したり、船に最新の軍用兵装を搭載できることで悪名高いです。
 シーヴには「合法的な」政府も産業もありません。泥棒と海賊によって運営される港は、泥棒と海賊のためにあるのです。ここの市場では何でも売りに出されています。宙域中から集められた盗品(特にアスランやフローリア連盟に向かう商船から奪った貨物)、非合法の武器、薬物、密輸品、奴隷……。
 ただし、シーヴを訪れる誰もが海賊というわけではありません。もしかすると違法な快楽を得るべくやって来た帝国貴族かもしれませんし、仕事を求める傭兵かもしれませんし、安く盗品を買おうする商人かもしれませんし、スパイかもしれません。しかし彼らは皆抜け目がなく、ブラックサンドの薄汚い空気に染まっています。ここを訪れて、特有の雰囲気に毒されないことは不可能なのです。
 都市は無法状態ですが、海賊王たちは過剰に暴力を使う者を罰します。仮にあなたが誰かを殺して死体を裂け目に捨てることが出来たとしても、気がつけばあなた自身の喉が海賊王が差し向けた暗殺者に掻き切られているかもしれないのです。
 シーヴには大きな謎があります。周辺に無法を働く星系が存続できること自体が、それもわずか3パーセク先には帝国海軍基地があり、多くのアスラン戦士がシーヴへの報復を叫び、実際にヴォイドを渡って攻撃することができるにも関わらず、です。さらにシーヴの起源も、どのようにしてTL15の最新の武器や船の部品を仕入れてくるかも謎となっています。
 トロージャン・リーチの文明と平和の敵であるシーヴの背後には、おそらく何かがいます。
(※シーヴ星系の秘密については『Alien Module 1: Aslan』と『Pirates of Drinax』には答えが書いてありますので、レフリーだけ参照するようにしてください)

マルドゥク Marduk 2120 C377436-3 低技・非工 G Na
 この小さな世界の文明はオグマ(2020)や他の世界からの度重なる襲撃で崩壊し、スラム街と宇宙港以外に生き残った都市がありません。惑星の住民は数十の部族に分断され、互いに部外者を恐れます。部族はそれぞれ独自の言語と、大きく異なる文化を持っています。
 ジェデコによって運営される宇宙港は、地元住民が住む島々のどれからも遠く離れた人工島にあります。

パリンドローム Palindrome 2216 B433334-B 低人・非工・貧困 G Na
 パリンドローム唯一の入植地は、アストロゴ(Astrogo)のドーム都市で、住民の全てがレディ・イェマー(Lady Yemar)のために働いています。
 彼女は不正に得た利益でこの小さな入植地を築いた元海賊です。パリンドロームは盗品の交易所であり、旅行者のための経由港です。
 レディ・イェマーは驚くほど高価な生命維持の代価を払うために、利益をつぎ込んでいます。彼女はかつて戦闘の際に重傷を負い、試験段階の生物兵器にさらされました。彼女は脳以外の臓器全てを複数回交換し、さらに脳も恒常的な保守を必要としています。
 彼女は治療のためにシーヴを年に数回訪れています。

ボライト Borite 2219 E655796-4 低技・農業・肥沃 G Na
 この星系名は、惑星表面の高濃度のホウ素重化合物から名付けられました。軌道上からは、それが惑星の黄褐色のシミのように見えます。
 ホウ酸を採掘や採取してどうにか暮らしていこうとしている数百万人の不運な入植者が、惑星には住んでいます。彼らは、腐敗した旧ドリナックス官僚の名残であるBCA(Borite Continuity Authority, ボライト存続局)によって支配されています。BCAは全ての商取引と旅行を管理しており、外世界の人々は普通はここを訪れません。
 星系のEクラス宇宙港には、毎年わずかな船だけが訪れます。その大部分が、フローリア方面航路への海賊の攻撃を避けようとした商船です。
 マルドゥク星系のように、しばしばボライトはオグマ部族に科学者や学者を対象とした略奪を受けます。そのため、厳重に警護されたBCAの限られた構成員を除いて、文字を書くことは禁止されています。


【トライオワハ星域】 Tlaiowaha subsector
 旧ドリナックス王国の崩壊後は、アスランのアハロアイフ氏族がこの星域の最大勢力となりました。ドリナックス王は、アスランに対抗する同盟を周辺星系に呼びかけていますが…。

アシム Asim 2123 B867564-6 農業・肥沃・非工 G Na ドリナックスが統治
ドリナックス Drinax 2223 A33645C-F 高技・非工 G Na
 ドリナックス王国の回を参照してください。

パーネ Pourne 2324 A9B2887-A 非水 G Na
 この世界は、誇大妄想的に全ての外世界人をまるで破壊活動家のように見做す、化石のような官僚階層に統治されています。パーネの税関職員は攻撃的かつ重装備で悪名高く、惑星は無数の防御用人工衛星に守られています。
 それでもこの星系は、星域内で最も重要な通商拠点です。

トーポル Torpol 2221 B55A77A-8 海洋 G Na
 海洋世界であるトーポルには、陸地はありません。住民は、両極の氷冠の上で、または浅瀬に建設された巨大なプラットホーム上で暮らしています。
 惑星の第一次産業は当然のように漁業で、加えて、入港する商船団のための水素燃料を精製しています。
 トーポルは、乗組員の休暇時間のための「熱帯の歓楽港」という名声を得ています。高い治安水準は、そんな評判を保つためのトーポル人の熟慮の産物です。「愉快な港(pleasure port)」は野蛮で、扇情的で、荒々しいと感じられるかもしれませんが、ここは惑星で最も安全な場所なのです。

クラーク Clarke 2322 B899753-8 Na
 かつては美しい惑星であったクラークは、ドリナックス王国が崩壊する少し前にスター・ガードによって爆撃されました。旧首都ハイワッド(Hiewad)が破壊された時、何十万人もが死にました。塵の雲が数年間も夏を訪れさせなかったので、やがて数百万人が餓死しました。
 当時TL14だったクラークの技術基盤が失われたため、残された全ての先端技術の施設とサービスはハイワッドに集約されました。いつしか彼らは、失われたハイテク医療設備が将来再建されれば、死者すら癒せるのではないかと考えるようになりました。
 遺体を速やかに冷凍保存する習慣は、死者を崇拝する宗教に発展しました。現在、クラークで死亡した者は誰でもカーボン製のモノリスにすぐに入れられ、いつか来るであろう復活の日まで保存されます。
 その冷凍保存技術を制御する聖職者たちが、惑星を支配しています。聖職者は、モノリスの中の人々が蘇るような技術が再建されれば自分たちがクラーク社会での権力を失うであろう、ということをわかっています。それゆえに、クラークの技術開発は停滞させられています。
 現在、クラークの凍った死者は、生者よりも大幅に多くなっています。死体だらけの重苦しい雰囲気の街は、まるで黒いモノリスで建設されているかのようです。

ブルー Blue 2421 B443487-C 高技・非工・貧困 G Na
 ブルーはかつては豊かな世界で、「旧帝国の宝石」の一つと言われていました。しかし数世紀を経て、惑星上の全ての採掘可能な資源は掘り尽くされてしまいました。現在では、静かで過疎化した世界となっています。
 ブルーの人々は偏狭的で、めったに旅をしません。そして宗教と芸術について熟考することを好みます。
 噂では、秘密の超能力研究所がブルーのどこかにあるのではないかと言われています。

ヒルファー Hilfer 2424 BA5077A-6 砂漠・貧困 Na
 熱い砂漠世界であるヒルファーは、かつてはドリナックス王国の一部でした。反乱の代償でヒルファーは水資源開発技術を維持できなくなり、砂に苦しめられています。
(※氷の小惑星を宇宙船で牽引してくれば、随分と助かることでしょう)

パール Paal 2425 B564679-6 農業・肥沃・非工・富裕 G Na
 パールとドリナックス(2223)の提携は古くからのもので、この豊かな世界はかつてはドリナックスに生産物を供給していました。パールの王や貴族たちの多くは、今でもドリナックスの先進技術による産物(乗り物、贅沢品、医薬品など)を欲しています。


【ボーダーランド星域】 The Borderland subsector
 シンダル帝国時代を含め、第三帝国初期までほぼ手付かずだったこの星域は、帝国~アスラン間の通商ルート上という立地から、現在では帝国企業を中心とした開発が進んでいます。
 この星域には昔から、ミスジャンプの確率が高いという奇妙な噂がありますが…?


アルニシイル Arunisiir 2621 B776530-6 農業・肥沃・非工 G Na
 アルニシイルはイハテイ(※土地の継承権がないアスラン男性の集団)の襲撃を809年に受けました。首都を攻撃したアスランは、簡単に装備の不十分な軍隊を打ち破り、星系の支配権を握りました。しかし、他の街の制圧の際に、抵抗者の流れ弾がイハテイのリーダーを殺したのです。
 リーダー不在となった侵略軍は多数の派閥に分裂し、それぞれの集団は自らの勢力を維持するために人類と手を結ばざるを得ませんでした。アスラン戦士が兵士や側近として人類を雇い入れた結果、数世代の後にはアスランは指導者や技術者に「追いやられ」、側近が領地を効果的に運営していました。
 現在、アルニシイルには数家のアスラン一族が残っていて、象徴上の指導者としてちやほやされています。なお、アスランが自身の技術力を保持できたため、アルニシイルは限定的ですがTL12の装備を生産することができます。
 一方、アルニシイルでは革命勢力として人民連盟(People's League)が活発に活動を行っています。侵入者を外世界に追い出そうとする人民連盟は、アスランよりもむしろ執政者である人類と対立しています。

テックワールド Tech-World 2624 A455154-F 高技・低人・非工 Cs
 初期のソロマニ人入植地であったこの星系は、シンダル帝国の懲罰艦隊によって破壊されました。以後、ボーダーランド星域経由での帝国~アスラン領間の交易を促すためにジェデコがここの宇宙港建設に投資するまで、世界は何百年もの間無人でした。
 建設費用を下げるため、ジェデコは先進技術星系であるノイマン(トロージャン・リーチ宙域 3105)の背教者と契約を結びました。当時ノイマンは宇宙最高水準の技術力を持っていましたが、その使用は地元政府である庇護教会(Shield Church)によって厳しく制限されていました。背教者たちは己の技術力を自由に使える新世界と資金を欲していて、ジェデコの依頼を引き受けたのです。
 テックワールドの「人間の」人口は30人の科学者・技術者だけですが、彼ら以外に、分散型コンピュータによって制御されるロボットが100万台あり、さらに増え続けています。
 ナノテクノロジーやクローニング分野の帝国内では合法性が疑われるような実験も進んでいて、こういった種類の研究を行いたい科学者を惹きつけています。テックワールドは帝国属領ですが、こうした実験に制限がかからないよう、ジェデコは宇宙港の契約を盾に宙域政府に圧力をかけています。
 テックワールドの巨大な黒い卵型をした宇宙港は星域の中でも驚きの建築物です。宇宙港内部の壁はバイオプラスチックで出来ていて、交通量に応じて実際に稼働して、着陸床や格納庫を大きく小さく再構築することができます。あらゆる訪問客には案内ロボットが割り当てられ、セキュリティは遺伝子コードとの照合で確認されています。

エルゴ Ergo 2625 X767500-0 低技・農業・肥沃・非工 R G Na
 ここエルゴにて、ジェデコは大きな失敗をしました。
 800年頃のエルゴは、比較的繁栄したTL7の世界でした。原始的で偏狭的で封建的でしたが、この宙域の他の世界よりは安定していました。男爵会議(Council of Barons)は、初歩的な核兵器でシンダル星域からの海賊団をうまく追い払い、ジャンプ技術の開発実験さえ行っていました。
 ジェデコは802年に世界と接触し、宇宙港の建設に資金を提供すると申し出ました。男爵会議は提案に同意し、新しいAクラス宇宙港の建設に着手しました。しかし完成が近づくと、男爵たちは交易による税収のことでいさかいを始めました。論争は拡大し、会議は分裂して戦争に発展しました。最初の攻撃で宇宙港が破壊され、ジェデコは経由港を他の星(結果的に近隣のテックワールドに建設されました)に求めるしかなくなりました。
 エルゴの戦争は1世紀続き、住民の9割が核の冬による飢餓で死亡することで終わりました。
 現在のエルゴの文化的な地域は、宇宙港の廃墟を囲んでいる小さな集落だけです。そして、どうにか宇宙港を再建して星間交易で莫大な富を得ようと、いまだ夢想している無能な男爵会議によって統治されています。惑星の残りの部分には、放射能汚染された荒地と、人食い部族と、海賊基地が入り交じっています。

タニス Tanith 2721 A589342-B 低人・非工 G Na
 タニスは、人類には過ごしやすい密林世界です。この星には最近、アイルダム(トロージャン・リーチ宙域 3013)から長距離移民船で人々が移住してきました。
 惑星政府は、帝国に従属の申請を行っています。
(※アイルダムはドロイン世界ですが、移住してきたのはそこに住んでいた人類だと思われます)

アクリッド Acrid 2722 AAC1388-D 高技・低人・非工・非水 G Na
 アクリッドは、赤色巨星ブリテン(Briten)を周回するガス惑星ティック(Thick)の衛星です。惑星の平均気温は摂氏80度にもなり、人が居住できる所は限られています。現在主星から向きが逸れている北極圏だけが、快適な30度程度に落ち着いています。なお、ティックの公転周期は1845年にも及ぶため、この状態はあと300年間続きます。
 アクリッドはティックの周囲を124標準日で周回しています。そして1ヶ月間だけティックはブリテンからの光と熱を遮ります。その間、平均気温は10度まで下がり、塩酸が大気中から結露し始めます。この時期は惑星表面の7%が、点在する塩酸の湖となります。また冬は、アクリッドの生命体にとって繁殖の時期でもあります。彼らは塩酸を飲むために湖の周りに集まり、結ばれ、次の3ヶ月に備えます。
 人類は1037年に、塩化水素、銀、ランサナムなどの資源を求めて、アクリッドに入植しました。アスランとの通商路上にある軌道宇宙港には500人が、惑星唯一の都市である地上港周辺には300人が住んでいます(そのほとんどが独立鉱夫です)。そして、PRQ(Pax Rulin Quartermasters)社の子会社であるマインテック(Minetech)社の鉱山施設に400人がいます。
 一方でアクリッドは、ブロッチ(Blotches)という塩化炭化水素を基とした群小種族の故郷でもあります。以前から鉱夫が地下坑道で時折ブロッチと遭遇はしていましたが、知的生命だと判ったのは1073年になってからです。
 ブロッチは体重35kgほどの、自在に形を変えられる半透明の軟体生物で(最小で直径1mほどの球体になれます)、体内の電気信号の明滅で会話を行います(この電気は身を守るためにも使います)。また、非常事態やグループ討論の際には「集団溶融」と呼ばれる行為で文字通り一つの生命体となり、知識や技能の共有を行って決定を下します(また集団溶融は繁殖の際にも行われます)。このため、穏やかで好奇心旺盛なブロッチの知的水準は非常に高く、TL15の科学技術も理解可能です。ただし彼らは本当に必要な物しか作らないので、製品のほとんどはTL7程度です。
 ブロッチの総人口は35000人ほどで、赤道地帯のトンネルと地下ドームの複合体に、50~100人程度の集団で住んでいます。集団同士の間には「大使」が絶えず旅をしていて、集団の知識を溶融で得て、他の集団に広めて回っています。そのため、ブロッチ社会には専門家という概念がありません。さらに個々のブロッチには名前すらありません(集団には名称があるようです)。
 人類とブロッチは、科学研究の時以外はお互いにほとんど接触がありません(翻訳機はありますがまだ不完全です)。しかしマインテックの活動が環境に有害であると判明したため、同社の施設周辺では摩擦が起きています。
 PRQ社は、その名の通り本社をパクス・ルーリン(トロージャン・リーチ宙域 2204)に置く宙域規模企業です。パクス・ルーリン海軍基地の一部門から内戦後に独立したPRQ社は、今でも帝国海軍と密接な関係があります。
 現在PRQ社は、パクス・ルーリン星域だけでなく、アスランやフローリア方面通商路でも交易を行っています。同社の大部分の乗組員は海軍出身であり、船は常に重装備であるので、海賊行為が横行する宙域では高い評価を得ています。

イヌリン Inurin 2724 E668776-5 低技・農業・肥沃・富裕 G Na
 イヌリンは、豊富な鉱物の鉱脈と肥沃な農地を持つ、恵まれた地球型世界です。(シンダル時代に入植した)住民は、ジャンプ旅行が人の魂を盗むと主張する奇妙な宗教に従っていて、「悪魔に取り憑かれた」来訪者を相手にしたがりません。
 彼らの信仰のもう一つの拠り所は、サルナ(Sarna)と呼ばれる幻覚を引き起こすキノコの使用です。サルナの生産は、外世界人嫌いの聖職者によって厳しく管理されています。

ファルコン Falcon 2725 A158448-D 高技・非工 G Na
 採掘された小惑星であるファルコンの歴史は、ソロマニ人の拡大期(つまり第二帝国時代)まで遡ります。ファルコンの住民は、自らが住む小天体の収容力への負荷を考慮して厳しい人口抑制を実践しています。
 幾多の世代を経て、ファルコンの人々は土着の細菌や病原菌に依存するようになったため、外世界に旅行する際には対面用スーツ(encounter suits)を着用しなくてはなりません。逆に外世界からの訪問客はファルコンの環境に直接触れることは許されないので、小惑星に小さな専用区画が用意されています。

コルダン Cordan 2821 A895347-9 低人・肥沃・非工 G Na
 コルダンは豊かな生態系と肥沃な農地を持つ、原始のままの緑豊かな惑星です。ここはアルニシイル(2621)の従属世界でしたが、本星がアスランに征服されて以降、現在は領主たちが独自に治めています。そして帝国との取り決めにより、宇宙港を稼働させ続ける限り帝国の潜在的な支援を受けられることになっています。
 コルダンは帝国の通商路上にある、ジェデコの中継拠点でもあります。惑星上で唯一の入植地は宇宙港周辺にあります。コルダンはかつては非常に多くの人口を抱えていましたが、(※おそらくアスランの)侵略以降は人口が激減しています。

エグゼ Exe 2823 B300101-A 真空・低人・非工 G Na
 ジェデコが所有しているエグゼ・ステーションは、ボーダーランドにぽつんと浮かぶ小さな燃料補給基地です。ステーションのほとんどは自動化されていて、従業員は地元のガスジャイアントから補給用の燃料を補充する以外することがありません。そしてそれすら自動化が進んでいて、彼らは非常に退屈しています。
 そんな彼らに数千クレジットでも渡せば、皆から様々な便宜を図ってもらえることでしょう(※全員を買収するのに数千クレジットしかかからない、ということです)。

スペルレ Sperle 2824 BA8A76A-7 海洋・富裕 Na
 この星は「スペルレクジラ(Sperle Whales)」と名付けられた巨大なアメーバ群体で知られています。そしてそれは、価値ある生化学物質に加工されます。
 ジェデコはスペルレクジラの加工工場に投資し、同時に地元政府への影響力も行使しています。

ウメミイ Umemii 2921 C521877-6 非農・貧困 G Na
 帝国の貿易商人の迂回航路上にあるウメミイは、乾き切った世界です。街は南極近辺の茶色い塩湖周辺に集まっています。
 ウメミイ社会には、年齢を基準としたとても厳格な身分制が布かれています(※50歳以上の者は誰でも社会身分度が2に低下します)。


(※今回の通商路図、および文章の一部は、公式の設定を基に推測などを加えて記述を行いました)

 文中に再三出てくる「フローリア連盟」についてはこちらを参照してください。


【参考文献】
・Adventure 4: Leviathan (Game Designers' Workshop)
・Pirates of Drinax (Mongoose Publishing)
・Alien Module 1: Aslan (Mongoose Publishing)
・Third Imperium Fanzine #1,#2,#4 (Mike Jackson)
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宙域散歩(5) 『Pirates of Drinax』特集1 ドリナックス王国

2012-05-21 | Traveller
 先日半年ぶりに第2話が公開された、マングース社が現在展開しているキャンペーンシナリオ『Pirates of Drinax』。リメイク版『Secrets of the Ancients』と同じく無料で公開されるという太っ腹ぶりなのですが、それ以上に、このシナリオは前代未聞の海賊キャンペーンシナリオだということです。
 過去のトラベラーのシナリオにおける海賊といえば、『トラベラー・アドベンチャー』のヴァルグル海賊団クフォルゼンや、『ハードタイムズ』キャンペーンの暗黒のインドロ、あとDGPの未訳シナリオ『The Flaming Eye』(ちなみにヴィラニ語で「燃える瞳」というのは、ソロマニ風に言えば「ドクロのマーク」、つまり海賊の代名詞です)でもそうですが、プレイヤーの敵役として出てくるものであって、自ら海賊になるというのはかなりの異色作です。その異色さゆえか、人気も上々のようです。

 そこで今回と次回は、スピンワード・マーチ宙域を飛び出して、『Pirates of Drinax』の舞台となるアウトリム・ヴォイド(Outrim Void)の解説を行おうと思います。アウトリム・ヴォイドについては次回に回して、今回は物語の起点とプレイヤーたちの母港となるドリナックス星系について語ります。


 ドリナックス王国(Kingdom of Drinax)は、トロージャン・リーチ宙域のトライオワハ星域(Tlaiowaha subsector)にある、小さな国家です。
 トライオワハはもちろんアスランの付けた名前ですが、古い星図にはこの地域は「ドリナックス星域」と記されています。かつてのドリナックス王国は、人類の支配(第二帝国)時代のソロマニ人移民によって偉大な作家たちの名を付けられた星々、バンクス(現在のアスラン領クサイ)、ストロス(同じくクテイロア)、アシム、パーネ、ヒルファー、パール、トーポル、クラーク、ブルー、を中心として、星域を越えて30もの星系を治めていました。

 そして彼らは自らをこうとも称しています。『シンダル星龍帝国の継承者(Star Dragon Empire of Sindal in Exile)』、と。

 そのシンダル帝国は帝国暦-2074年に建国され、600年間に渡ってこの宙域を支配しました。しかし最後の200年は、内部の不和、反乱、そして家臣への残忍な懲罰的攻撃によって領土は引き裂かれていきました。そして現在のノリクム星系にあった玉座が爆撃を受けた-1441年、シンダル帝国は滅亡しました。
 旧帝国の諸侯たちは、自分こそが皇帝または王だと名乗りを上げました。ドリナックス王国はこれらの僭称者の中で最も長く続いている国です。-1400年代から902年まで、ドリナックス王国は自分の領土を治め、隷属した世界を侵入者や海賊から守りました。
 長い支配の間、王は賢く、人々からよく愛されました。ドリナックス星系は富み栄え、危険で野蛮な宙域の中で文化とテクノロジーのオアシスとなりました。ドリナックスの『浮遊宮殿(Floating Palace)』は美と芸術の砦であり、銀河の中でも驚きの建造物でした。
 しかし700年頃、"執念深き"グラコ9世(Glaco IX)が恐怖政治を行い、古のシンダルの戦術に倣って反乱星系を爆撃した頃から衰退が始まります。支配下の星系は次々と王の下から離反していきました。さらに王国は、宙域に進出してきたアスランの脅威を甘く見ていました。
 やがて問題は884年に頂点に達しました。この頃、王国は第三帝国とアスラン領の間の通商ルート上に位置していました。そこで時の国王オレブ14世(Oleb XIV)は強欲になり、通行料に関税、さらに賄賂まで要求しました。
 激怒したアスランの報復は素早いものでした。ドリナックスもシンダルの後継者として、同じ道を辿ったのです。
 アスランは、軌道上からドリナックスを爆撃しました。

 惑星ドリナックスは死の世界となりました。かつての肥沃な大草原は砂漠になり、歴代の王が狩りを楽しんだ森は消え、生命が死に絶えるほど沸騰させられた海は赤い藻を繁殖させました。
 ドリナックスの大地から人々の暮らしが消え去りました。

 しかし、大地の「上」には暮らしています。

 アスランの攻撃は都市と田園地帯を吹き飛ばしましたが、有名な『浮遊宮殿』 ―― 金色の反重力プラットフォーム、美麗な宮殿、優雅な塔 ―― を傷付けませんでした。彼らは何百万人もの民衆を皆殺しにはしましたが、浮遊宮殿の貴族、家臣、使用人、太鼓持ちには被害が及びませんでした。
 侵略を生き延びたわずかな人々は、新たな環境に適応しなくてはなりませんでした。宙域の中でも最も美しいとうたわれた空中庭園は、100の世界から集められた花々を抜き取って、水耕栽培ハウスに変わりました。今まで働くことを知らなかった貴族の手には、工具が持たれました。
 浮遊宮殿の人々はなんとか生き残りました。侵略の直前に、王は学者たちに最高の科学者と機材を「学究者の塔(Scholar's Tower)」に移すよう(たまたま)命令していたので、彼らはTL15の科学知識を保持することができました(しかしそれを利用するための鉱物資源が不足しています)。

 現在の国王、オレブ16世は精力的な人物です。年齢は110歳となりましたが、抗老化剤の効果で50代半ばの外見と、それ以上に青春時代さながらの活力を保っています。もっとも、自ら「ガスジャイアントだ」と言う腹回りによって、彼は大空を舞う際には反重力ベルトを3本も必要としますが。
 王は世が世ならスター・ガード(※シンダル帝国の宇宙海軍)を率いて星々の彼方へ戦いに赴いたでしょう。しかし実際には、彼は廃れた世界とぼろぼろの宮殿を支配しています。
 王は、度の強いワインと、ワインと同じ色をした赤髪の女と、栄誉ある戦いを愛します。周囲に怒鳴り散らす面もありますが、彼は明敏で賢い統治者でもあります。
 王はずっと、王国をかつての繁栄の時代に戻すという望みを抱き続けていました。
 それに必要なのは、一隻の高性能な船です。


◆浮遊宮殿 Floating Palace
 浮遊宮殿には、かつてドリナックスの下にあった30の星々の、50世代に及ぶ、彫刻絵画から分子生物学や天文学に至るまで、あらゆる天才たちが作り上げた様々な2万作品もの傑作が詰め込まれています。もっともその名の上に、シンダル帝国やジル・シルカ(第一帝国)の星々から略奪した、と付く物もありますが。
 オニキスの床には人工ダイヤモンドで星域図が形作られ、それを隠されたレーザー光線が実際の星の色と同じように輝かせ、既知宙域の向こうから多額の費用で輸入された12体のハイヴ調の彫刻が並び、遺伝子工場製の琥珀植物で作られた本棚からはシンダル時代の女流詩人シン・ザ・ゾハの初版詩集がこぼれ落ち、アーチ状の天井には7つの栄えある功徳と9つの神々しい徳目、そして8つのドリナックスの季節を表したホログラムが動いています。
 浮遊宮殿は滑稽なほどに過密です。あらゆる舞踏場と宴会場には住民が住み着き、子供たちは芸術作品と技術工芸品の間で遊びます。民衆は星域で最も素晴らしい収蔵品の中で、金色の像の間に物干し糸を這わせ、毛布代わりに古代のタペストリーを使うなどして「間に合わせ」ています。
 アスランがドリナックスを破壊し、生存者が浮遊宮殿に押し寄せた時、貴族と民衆の断絶は一晩で消えました。そして当時2万人いた避難民には、均一に「肩書き」が分配されました。200年後の今では4万人にまで増えた「雑種」の住民は、それぞれ少なくとも一つの肩書きを受け継いでいます。これらの肩書きは日常では使われませんが、ドリナックス社会は形式と儀式にきつく執着する傾向があるので、浮遊宮殿内のあらゆる配管工と水耕栽培農民をすぐさま選出することは可能です。

 都市並みの大きさである浮遊宮殿では、果てしない迷路の廊下、途方もなく大きい部屋、螺旋状の塔などにより、道に迷うことは容易です。
 宮殿はあらゆる面で素晴らしい物と不合理な物が混ざり合っています。よくある例としては、浴室は全てシマリング・シルバーで出来ていて、壁には微重力発生器で彫刻された妖精(ニンフ)とイルカの形をした精巧な噴水孔が取り付けられ、溺れるのに十分な大きさの浴槽があり、入浴の際に歌が流れだす……にもかかわらず、浮遊宮殿には惑星から水が流れ込まないので、住民は貯水槽と(飾り物の)湖を満たすために雨水を集めなければなりません。同様に、浮遊宮殿の住民は皆、夜会服や糊の利いた軍服や華やかな宝石は持っているのに、宇宙服や作業用のツナギ(engineering overalls)は持っていないのです。

 浮遊宮殿には、主に以下のような施設があります。

龍の玉座 Dragon Throne
 滅亡前のシンダル帝国主星のノリクムから略奪された(と伝説は記している)龍の玉座は、帝国のイリディウム玉座よりも古いものです。龍の玉座は、スター・ガードがこの3000年の間に撃破し、捕らえた宇宙船の船殻の断片から作られます。様々な船が金属のスクラップとして玉座に組み込まれていくうちに、玉座はドラゴンの骸骨のような醜い化け物になりました。
 もっとも、オレブ王は正式な儀礼の際に引きずり出してくるだけで、普段はより座り心地のいい反重力カウチを好みます。

謁見の間 Throne Room
 古い謁見の間は納屋に変わってしまったので、現在のオレブ王の謁見の間は非常に小さなものです。プラチナの壁には先祖の功績がレーザーで掘り込んであり、廷臣たちのために長く低い椅子が両側に置かれています。
 宮殿内の誰もが自分が貴族の血筋であると主張できるため、王の廷臣や顧問は家柄ではなく、知識と見識があるかどうかで選ばれています。

学究者の塔 Scholar's Tower
 ドリナックスは全くの偶然に高水準のテクノロジーを維持できました。最高の研究者と惑星の科学全集の複製品は、アスランの攻撃のほんの少し前に宮殿に移されていました。もちろんその後200年は人口が少ないこともあって、学者たちは新たな発見はできませんでしたが、それでも彼らは古の知識を守っています。
 塔はこの星域での最高の研究機関でもあります。学生はここで学ぶために星を渡ってやって来ます。そして彼らの学費は王国の収入源の一つでもあります。

ラシャンドのバザール Rachando's Bazaar
 王の次に浮遊宮殿で力を持つのは、貴族の血を引かない数少ない人物です。ベオウルフ級自由貿易商船「インビシブル・ハンド」で、5年前に浮遊宮殿にやって来た商人ラシャンドは、ハイテク小物や芸術品や遺物を外世界に売って、必要不可欠な物品を輸入しています。
 王はラシャンドに宝を売ることを惜しんではいますが、背に腹は代えられません。ラシャンドが取引をするたびに、ドリナックスの脆い未来は守られ、代わりにかつての栄光が減らされるのです。

宇宙港 Starport
 アスランはドリナックスの元々の宇宙港を破壊しましたが、残された国王私有の宇宙港はほぼAクラスと言えるものです。造船所こそありませんが、船の修理をすることはでき、乗組員と船のためのとてつもなく豪華な設備を備えています。

アンダリンス Underlinth
 アンダリンス(※UnderとLabyrinthの合成語のような気がします)は浮遊宮殿を支える、接続通路や排水管や抜け穴からなる複雑で巨大なプラットフォームです。そこは諜報員や密輸業者(とその共謀者)が用いる、宮殿の影の部分です。

重力地下牢 Gravity Dungeons
 地下牢はプラットフォームの下側にあります。巨大な反重力発生機が宮殿を地面から上に浮き上がらせる力は、その内部に高重力区画を作り上げています。重力地下牢の中で囚人は、3倍以上の重力下に置かれます。反重力発生機により近い場所ではより激しく、最も深い場所では骨を砕くほどの20Gにまで達します。


◆焦土の世界ドリナックス Drinax 2223 A33645C-F 高技・非工 G Na
 浮遊宮殿の下は、不毛の大地です。
 アスランは宇宙空間から惑星に多くの隕石を落としました。塵の雲は空を覆い、そして惑星全体を長期間冬としました。主要な人口密集地はプラズマ火器と生物兵器で破壊され、数百万人が侵略者の爪にたおれました。
 200年が過ぎ、惑星はゆっくりと回復しています。植物の芽吹きが隕石衝突の傷跡を覆い、旧時代の灰の中から新しい森が成長しています。千年後には、惑星は以前のような活力を取り戻すでしょう。
 しかし、アスランの生物兵器の胞子がいまだに都市の廃墟で眠っているので、地表は人間の活動にとって決して安全とは言い切れません。

◆ヴェスペクサーズ Vespexers
 ヴェスペクサーズ(夕暮の部族)は、ドリナックスの地表に住んでいる人類の部族です。ほとんどは生存者の子孫で、残りは浮遊宮殿からの亡命者です。
 ヴェスペクサーズは、主に狩りをして集団生活をしていますが、安全な谷間に農場も持っています。彼らは自身をドリナックスの危険から保護するために、浮遊宮殿の職人によって作られる環境防護スーツを着ています。浮遊宮殿は彼らと、防護服や他の製品を、食料や原料と交換しています。
 ヴェスペクサーズは厳密にはドリナックス王の臣民ですが、部族以外の法には従いません。


◆隷属世界アシム Asim 2123 B867564-6 農業・肥沃・非工 G Na
 アシムは人口50万人の、TL6の非工業世界です。惑星は学問的に非常に地球に似ていて、ほぼ同一の質量、よく似た気温と大気組成、類似の陸海比率を持ちますが、アシムには肥沃な世界らしい活気が欠けています。
 惑星表面は圧倒的に茶色をしています。この星の葉緑素成分は茶色がかっているので、アシムでは茶色の土から茶色の平原と茶色の森が成長します。
 アシムの旧政府は「財団(Foundation)」と呼ばれていて、都市の長老と賢人によって集会が行われていました。かつて財団は、技術基盤も鉱物の蓄えもない人里離れたアシムが、千年計画で帝国を支配するほどになるという(酷評ものの)計画があると主張していました。200年もの間、アシムの民は財団の壮大な(だけの)設計図を実現させるために精を出して働きました。そして、こんな賢人たちに政権を任せること自体が詐欺であったことに、決して思い至りませんでした。

 20年前、ドリナックスの水耕栽培ハウスが壊滅的な被害を被り、収穫が失われました。
 オレブ王は飢餓を避けるために、アシムの農民から食料を分けてもらおうと数隻の小さな宇宙船を送りましたが、アシムの財団が協力を拒否したことで、王は力ずくで惑星を奪うよう、怒って命令しました。
 アシム人はドリナックス軍の数千倍多かったのですが、彼らは技術面で完全に劣っていました。ライフルとロケット砲では、プラズマライフルとフュージョンガンにはかないませんでした。
 現在、アシムはドリナックス唯一の隷属的な世界です。農民は財団に十分の一税(tithe)を払っていた代わりに、毎年一回ドリナックスから訪れる穀物輸送船に十分の一税を支払っています。


◆スター・ガード Star Guard
 ワックス卿(Lord Wrax)に率いられているドリナックス王国の宇宙海軍は、かつてのシンダル帝国のものと同じ名を持っています。
 しかし、現代のスター・ガードは技術的優位はあるもののわずかな艦船しかなく、それも400トン以下のものばかりで、さらにジャンプドライブを持っているのは100トン偵察艦のみです。


(ちなみに星系名になった「作家たち」ですが、イアン・M・バンクスチャールズ・ストロスアイザック・アシモフジェリー・パーネルフィリップ・ホセ・ファーマーフレデリック・ポールアーサー・C・クラークだと思います。トーポルとブルーは関係無いようです)
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宙域散歩(番外編) SuSAG

2012-05-16 | Traveller
 トラベラーの第三帝国の設定を読んでいると、至る所で目にするSuSAGの文字。その活動は良く言って怪しげ、普通ならどう見ても悪役、といった感じなのですが(笑)、幸いにしてこの会社に関してはその実態を示す資料が豊富でしたので、今回はちょっと脇道にそれて帝国屈指のメガコーポレーションの解説をしたいと思います。
 情報は『プレイヤー向け』の概要と、『レフリー向け』の解説に分けました。プレイヤー向けにはライブラリ・データ等で一般に知られていることを書きましたが、レフリー向けではネタバレを含む情報も含まれていますので、読む際は注意してください。
 まあ公然の秘密、ってやつかもしれませんが(笑)。


【プレイヤー向け情報】
 帝国のメガコーポレーションであるシュナーマン・ウント・ゾーンAG(Schunamann und Sohn AG)ことSuSAGは、化学、製薬、遺伝子工学など幅広い分野で活動しています。中でも抗老化薬(Anagathics)の主要なメーカーです。一方で、生物化学兵器事業の安全性の評判が悪いため、危険な製造工場や実験ステーションを僻地や無人小惑星に建設しているにもかかわらず、多くの地域であまり好かれていません。工場への抗議活動が広がる一方、その製品は非常に貴重であるため、会社は帝国正規軍と同等のTL12~14の装備や訓練を施した保安部隊を持っています。
 SuSAGは、帝国暦252年に創立者グスタフ・シュナーマン(Gustav Schunamann)が、自ら編み出した超能力ドラッグの精製工程の特許料を使い、破綻したシレア系企業を継承する形で設立されました(そのため、古風なAG(※ドイツ語で株式会社を意味するAktiengesellschaftの略)という名前を使い続けています)。800年代の超能力弾圧と、超能力ドラッグの違法宣言により、帝国内でそれらの製造に従事する全ての工場は閉鎖され、SuSAGはひどく損害を受けましたが、幸いにも、その他の分野の活動で会社を立て直すことができました。
 SuSAGには、後進世界で医療行為を装って危険な無認可薬の人体実験を行なっている疑惑がかけられていますが、確固たる証拠はありません。

株式保有比率:シュナーマン家 52%、帝国皇室 2.5%、オルタレ・エ・シェ 9%、他企業 23.5%、自社保有 7%、その他 6%


【レフリー向け情報】
◆歴史
 有限責任帝国勅許会社(Limited liability Imperial Charter)シュナーマン・ウント・ゾーンAGは、帝国暦252年に生物化学工学教授グスタフ・シュナーマンと、彼の息子(ゾーン)である医学博士ラインハルトによって設立されました。
 その数年前、父シュナーマンは個人の研究を進めるために帝国大学の職を辞し、やがてその研究の成果は超能力ドラッグの製法に関する画期的新技術の発見につながりました。シュナーマンはその製法の特許を取得し、いくつかの製造会社に認可を与えました。
 貯まった特許料を使い、シュナーマン父子はシレアの破綻した医薬会社をシュナーマン・ウント・ゾーンAGと名前を変えて買い取りました。その後まもなく、シュナーマンはより新しい効率的な薬品製法を発表し、そして新会社SuSAGは競争相手よりも早く薬品を市場に投入することができました。
 しかし初期の会社は嵐の只中にありました。帝国大学は、シュナーマンの製法は大学在任中に開発されたものだとして、SuSAGを告訴しました。他の会社も同様に多数の訴訟を起こしました。
 SuSAGはこれらの攻撃に対してうまく身を守りました。ところが最初の2世紀の間のこれらの出来事が、会社やシュナーマン家に被害妄想的な思想を染み込ませました。今では薄くなったとはいえ、現在でもSuSAGのいくつかの活動にはそういった要素が見受けられることがあります。
 創立者グスタフは生粋の研究者であり、彼は社に対して莫大な資金を調査研究に注ぎ込む方針を確立させました。これは今でも持続しているSuSAGの特徴で、SuSAGの良く整備された研究所は、帝国内の最高の知性を多く惹きつけています。
 研究に重きを置いたグスタフの方針は、会社に多数の新製品と製造プロセスをもたらしました。そしてそれは会社の成長の強い基盤となりました。発見は医薬品の分野に留まらなかったため、後に会社は医薬品の関連分野(化学や遺伝子工学)に投資を分散し始めました。一方で黎明期に植え付けられた被害妄想は、SuSAGがそれらの発見を他の企業に売ったりライセンスを与えることを妨げました。当時SuSAGにはその発見を製品にするための資金が乏しかったものの、他の企業に利益を与えることを嫌ったので、多くの新発見は長い間ファイルの中にしまわれたままでした。
 超能力ドラッグ分野におけるSuSAGの優位は、帝国暦800~826年における超能力弾圧においてひどく会社を痛めつけました。全ての超能力ドラッグの製造販売は違法であると宣言され、帝国内の全ての製造工場が廃業に追い込まれ、そして全ての在庫が押収されました。この時までにSuSAGは経営をかなり多角化してはいましたが、弾圧は会社をひどく傾けさせました。
 莫大な損失は、他のメガコーポレーションから緊急融資を受けるほどで、大きな負債を抱えることになりました。その代償として、SuSAG株は他の会社に譲り渡され始めました。その時まで、シュナーマン家はSuSAG株の75%を所持していました。この強制売却は家にもかなりの損失を引き起こし、結局この株の一部は後に返還されましたが、今でもかなりの株が、オルタレ・エ・シェ(9%)やGSbAG(5%)やスターンメタル・ホライズン(3%)などによって持たれています。
 この売却劇によって会社に対するシュナーマン家の偏執的な影響は薄まり、結果として取締役会の構成に変化が生じたことが、SuSAGにとっては有益となりました。超能力弾圧による損失から回復するために数十年かかりましたが、SuSAGはゆっくりと安定した成長を再び始めました。そして徐々に新しい市場に拡大していきました。合成化学や工業薬品、そして最も論議を呼ぶ、帝国軍の生物化学兵器分野に。
 SuSAGは抗老化薬(アナガシックス)研究においていくつかの大きな功績を残しており、帝国での最大のアナガシックス製造会社です。さらに、帝国外に置かれた(子会社網によって経営される)いくつかの工場で、今も超能力ドラッグの製造を続けています(そしていくらかは帝国内に不法に還流していますが、SuSAG自体は関与していません)。会社はその品質と純度に割増価格を付けています。
 これらの発展を通して、SuSAGは多数の子会社への影響力を「購入」することを方針としました。それは時には、SuSAGが新しい地域や分野に進出する際に、既存の企業を買収することでより安く済ませることができました。また、SuSAGがその名前と関連付けられたくない活動を行うために、会社を買収することもあります。例えば、超能力ドラッグを製造する帝国外企業は、持株会社やダミー企業による長くて複雑な繋がりを経て所有されています。
 主要な子会社は取締役会の管理下に置かれ、より小さい会社は部門の執行役員(vice-president)や地域事業部長(regional general manager, RGM)の管理下にあります。

◆組織
 SuSAGは他の有限責任帝国企業(LIC)と同じように組織されています。つまり取締役会(board of directors)、代表取締役(president)、そして執行役員がいます。
 それぞれの執行役員は、会社の7つの部門の1つに対して責任を持ちます。執行役員には直接の指揮系統下にない主任秘書(executive assistant)がつき、執行役員の下には地域ごとの事業部長が多数います。
 「地域」の大きさは、コア宙域のように人口過密であれば数星系ごと、人口がまばらであれば星域単位、と変動します。注意すべきなのは、部門ごとに地域の境界が完全に同一ではないことです。辺境地域ではいくつかの部門の地域事業部長が同一人物であるかもしれません。人口密集地域には同一部門に何人かの地域事業部長がいて、お互いに相談しあっているかもしれませんし、ただ単に自身の活動に与えられた権限を持っているだけかもしれません。
 SuSAGのそれぞれの部門はほとんど互いに直接競合しないので、このシステムは部門間の争いには繋がりませんでした。しかし、子会社間はしばしば食い違いを起こしています。時として他のSuSAG子会社との通商戦争に発展することもありますが、本社に見つけられるとすぐに終わります。

 企業内の保安業務は、多くのメガコーポレーションは独立の警備会社に(最も重要な部分以外は)下請けに出しますが、SuSAGは自らのセキュリティの全てを扱う、異常に大きくて十分すぎる装備を持つ、社独自の保安部隊を所持しています。
 これには多くの理由があります。SuSAGの製品の多くは小さくて、とても貴重で、闇市場で簡単に売りさばくことができます。また、しばしばSuSAGの製造工場や研究施設はライバル企業による産業スパイの標的となります。さらにSuSAGの(元々安全性の評価があまり高くない)生物化学兵器施設は、反生物化学兵器活動家や、兵器を盗もうとしているテロリストの攻撃の対象となります。
 会社に対する不信に何にでも組み合わさってしまうこれらの要因により、SuSAGの厳重すぎるセキュリティ体制の説明がつきます。
 大部分の保安部隊は、色々な地域事業部長の直接指揮下で、彼らが割り当てられた地域だけで任務に就いています。しかし取締役会は、特定の「敏感な」地域にある非常に重要な施設に割り当てるために、トラブルシューターとしていくつかの傭兵部隊を用意しています。また、SuSAG(もしくは関連子会社)の名前が出ないことを望む活動のために、傭兵部隊を利用することがあります。
 企業ポリシーとして、傭兵は地域事業部長に雇われることになっていますが、通常、複数の仲介人(大抵はSuSAGの保安要員)を通して契約が結ばれます。

◆7つの事業部門
・医薬品事業部 Pharmaceuticals Division
 この部門は様々な病気の処置と予防のための治療薬や、外科用の薬(麻酔薬や筋弛緩剤)、他にも抗老化薬、獣医学用薬品、園芸用薬品などを製造し、販売しています。

・医療製品事業部 Medical and Surgical Products Division
 この部門は非製薬分野の医療製品(診察装置や外科手術器具・消耗品、義手義足といった補装具など)を製造し、販売しています。

・工業薬品事業部 Industrial Chemicals Division
 この部門は、製造工程において他の会社で使われる化学物質を製造します。いくつかの子会社は高純度の化学製品を提供しています。

・遺伝子改良事業部 Geneering Division
 この部門は、特定産業や農業分野のために遺伝子改良生物を製造しています。

・生物化学兵器事業部 CBW Division
 この部門は帝国軍と同盟国のためだけに、生物化学兵器と防護装備を製造しています。全ての工場が孤立した、居住に適さない世界にあるという事実にもかかわらず、この部門は安全性に非常に悪い評判がつきまとっています。

・研究部 Research Division
 この部門は製造に従事しておらず、常に新製品の研究や、古い製品の新しい製法について模索し続けています。

・帝国外事業部 Extra-imperial Division
 この部門は帝国外における全てのSuSAGの(子会社も含む)活動を担当しています。
 例えば超能力ドラッグの製造のように、彼らの活動は大抵帝国内では違法となるものです。そして帝国外での任務に割り当てられるSuSAGの保安チームは、一般的な地方政府軍と同程度の重装備が施されます。また彼らは(超能力ドラッグ工場のように)とても価値のある施設の保護のために、社有の宇宙船をしばしば貸与されます。

◆社の目標と方針
 SuSAGの主な目的は、金を儲け、他のメガコーポレーションよりも高い地位を得て、現在の市場のコントロールを維持し、古い製品の新しい市場を開拓し、(驚くべきことは何もない)新製品を市場に出すことです。
 SuSAGにはその悪いイメージを改善したいという強い願望があり、そのために毎年広告宣伝費を十億クレジット単位で投入しています。
 非常に貴重な(もしくは危険な)製品を製造するSuSAGの施設は、可能な限り遠隔地か過疎地に置くようにしています。これは事故の際の犠牲者を最小にし、工場や製品の保護を容易にするための措置です。超能力ドラッグ工場はとりわけ攻撃を受けやすく、製品が闇市場で高値で取引されることもあり、会社の保安部隊が最高レベルの防衛体制で守っています。生物化学兵器工場は通常帝国軍によって守られていますが、社の保安部隊も重装備で警備しています。

◆中央政府との関係
 帝国政府には、企業に課税して彼らの力を若干ながら抑える能力がありますが、SuSAGの力は、特定の地域ではおそらく帝国と等しいでしょう。しかし政府への敵対はビジネスにとっては良くありません。安定した恒星間政府、つまり帝国政府が実権を握っていることがSuSAG自身の最大の利益である、と彼らは主張しています。
 これらの理由から、SuSAGは決して帝国政府に敵対せず、その没落のために働くことはありません。ただしこれは、必ずしもSuSAGの各事業部門が法律を犯さないことを意味しませんが、帝国外での帝国の利益に反する活動は自制しています。

◆地方政府との関係
 帝国法によって、企業は進出先の地方政府の法に従うことを要求されます。全般的な傾向として、SuSAGは合法的な惑星政府にあからさまには反抗しないことを好みます。
 通常メガコーポレーションには、自社を大部分の規制から除外するように地方政府を「説得」するに十分な(隠れた)影響力があります。しかし大部分の他のメガコーポレーションと異なり、ほとんどの世界はSuSAGの直接の影響下にはありません。なぜなら、SuSAGに対する良いイメージを一般大衆に広めようとする企業方針があるからです(巨大企業による世界の支配は、たいてい市民の怒りを買います。そしてSuSAGに対してはかつて反乱にまで至ったことがあるのです)。
 その一方でSuSAGは、帝国政府や子会社を経由して、いくつかの世界の密かな政治的及び経済的支配を維持しています。

◆スピンワード・マーチ宙域における活動
 スピンワード・マーチ宙域へのSuSAGの進出は、帝国暦427年のモーラの化学施設の買収から始まりました。拡大は素早く進行し、600年頃には、全ての事業部門がマーチに展開しています。
 生物化学兵器(と防御装備)の膨大な在庫は、第三次辺境戦争の開戦とともに帝国政府に売却されました(実際には使用されませんでした)。そして休戦後には、生物化学兵器工場がドロロー星系(ルーニオン星域)に建設されました。
 他にSuSAGはライラナー(ライラナー星域)、フォーニス(モーラ星域)、トリン(トリンズ・ヴェール星域)に重要な施設を持っています。またSuSAGの子会社は大部分の星系に施設を構え、SuSAGの各事業部門は、マーチのタイプAかBの宇宙港に事業所を構えています。
 ゾダーン領の星系では、SuSAGは事業所も子会社も持っていません。しかし若干の取引は第四次辺境戦争の前になされました。
 帝国外事業部は、大規模な超能力ドラッグ製造施設をターサス(268地域星域)に、超能力ドラッグ以外の製造施設をザマイン(ダリアン星域)、コレース(268地域星域)に持っています。
 特に268地域星域は、自分たちにとって重要な地域であると考えています。


【参考文献】
・Traveller LBB9: Library Data (Mongoose Publishing)
・GURPS Traveller: Behind the Claw (Steve Jackson Games)
・Signs & Portents #85 (Mongoose Publishing)
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宙域散歩(1.6) 268地域星域(詳細編2)

2012-05-09 | Traveller
ジュディス Judice 1337 E9B2000-8 低人・非工・非水 G Cs 研究基地η
 この星の環境は既知宙域内でも最も過酷なものの一つです。地表は想像を絶するほどの不毛な荒れ地で、気体の硝酸からなる腐食性大気が岩や砂を焦がします。「降雨量」は少ないものの、それは文字通りの酸性雨で、硝酸の「海」に流れこむ前に大地にぎざぎざのクレバスや渓谷を刻み込みます。重力は標準的で、平均気温は33度となっています。
 居住に向かないジュディスはあらゆる政府、企業、個人が1100年代まで所有権を主張しませんでしたが、最近になって硝酸海の地獄のような環境下で原初的な、しかしとても丈夫な生命体が発見され、異星生物学者たちの興味を惹きつけました。
 1103年に帝国はこの興味深い生物の調査のために、研究基地エータをこの惑星で最大の海の沖合に建設しました。
(※研究基地がTL8で稼働しているとは考えにくいので、研究員が外部からの輸入に頼らず確保できる生活水準がこの程度、という意味なのでしょう)

トレサロン Trexalon 1339 B361851-C 高技・富裕 G Na
 トレサロンは赤色矮星を周回するガスジャイアントの衛星です。水界は乏しく、南極の氷冠の下で地熱に温められて見つかるぐらいです。当然ながらこの衛星の動物は丈夫なバクテリア程度で、植物も苔類だけが地表で何とか生き残っています。その環境の過酷さゆえに、502年に帝国偵察局がこの星に鉱石や水晶の豊かな鉱脈を見つけなければ、入植は進まなかったかもしれません。
 探査が終わってから20年を待たずして6つの鉱業会社が衛星全土を所有し、200年後には5000万人が地下やドーム都市に住むようになっていました。鉱業会社たちは585年にトレサロン技術共同体(Trexalon Technical Consortium)を共同出資で結成し、当初はトレサロンの統一政府として統治していましたが、数十年後には7都市の富裕層にそれぞれの都市の内政権を売却しました。その後のTTCは独立都市群を束ね、星系内全ての宇宙港を管理し、恒星間取引や外交を統括して、トレサロンにはなくてはならない組織となりました。
 各都市の内政権を得た富裕層はやがて世襲の特権階級として君臨するようになりましたが、TTCから十分な利益分配を得ている都市群は、市民階級に対して無税で様々な公共サービス(医療、教育、運輸、水や空気の供給など)を与えることができています。トレサロン社会が全体的に保守的で変化を好まないこともあり、一般市民は都市政府やTTCに対しての従属関係に満足しています。
 トレサロン経済は鉱物精錬や耐久消費財製造による好景気に沸いています。ハイテク商品や(農世界連合から)多くの農産物は輸入しなくてはなりませんが、それ以外の分野ではトレサロンは自給が可能です。労働人口の4分の3はTTCに雇用され、大規模な鉱山や工業団地で働いています。
 各都市と防衛契約を結んでいるTTCは、星系外の軍事的脅威から自星を守るために惑星防衛艦を地元で建造したり、ソード・ワールズ製の巡洋艦の購入もしています。
 自分たちの拡張主義的野心の最大の障害が、268地域星域に影響力を広げつつある帝国だと考えているTTCは、反帝国的な外交政策を展開しています。TTCはソード・ワールズ連合と緊密な経済面や軍事面での連携を深め、帝国への嫌悪を共有しています。当然の結果として親帝国派のコレース(1237)に対しては、星域の主導権を巡って激しく敵対して「冷戦」状態にあります。
 帝国の施設や船を攻撃すれば強大な帝国軍の介入を招くことはTTCもわかっており、反帝国活動は控えめに行われています。しかし、TTCが親帝国世界での反乱や様々な問題などの裏で糸を引いている、コレース行きの船を特殊部隊が襲撃するために星域各地に秘密基地を建設している、などという噂は常にあります。さらに、星域内で海賊船が急増している背後にTTCがいるとも疑われています。噂によればトレサロンでは、帝国やコレースの船を襲う海賊船に対して、略奪品の売却、燃料や必需品の補給、新しい乗員の確保、修理施設の利用の面で便宜を図っているというのです。確かにアウトリム・ヴォイド方面から流入する海賊にとって、この星系は重要な補給拠点となりうる位置にあるのは事実ですが、今のところこれらの噂は立証されていません。
(※悪名高いマクレラン・ファクターズ社は、帝国企業でありながらこのトレサロンに「前線基地」を持っているので、TTCと共同歩調を取っている可能性はあります)

モトモス Motmos 1340 B68468B-5 N 低技・農業・肥沃・非工・富裕 Cs
 農業が盛んなモトモスは、スピンワード・マーチ宙域の端に位置する星系です。主星は冷たい赤色星ですが、赤色矮星の伴星の存在によって温暖な気候が維持されています。モトモスには小さな海や湖の連なり、そびえ立つ山脈、青々とした谷、色鮮やかな砂漠など、美しい自然が豊富です。
 帝国偵察局によってモトモス星系全体の探査が完了したのが502年のことで、その14年後には入植が始まりました。モーラ星域から来た400人強の最初の入植者たちは、「基本に戻る」ことを理念とした『分離主義者(Separatists)』と呼ばれた人々でした。彼らの哲学は自然保護を重んじ、知的生命は「大地の上で」自給自足で生きるべきで、科学技術も必要最低限にすべきと考えていました。そして彼らは、入植地で自給自足の農業集落を築き、意図的にTL5で技術開発を停止させました。厳しい環境保護法を施行し、実質的に全ての武器所持を禁止し、新たな移民の受け入れも控えました。
 現在の700万人の住民の大半は最初の入植者の子孫です。そのほとんどは主要大陸に点在する小さな農業集落に住み、唯一の大都市である首都キンニパック市(Kinnipac)には13万人が居住しています。宇宙港はそのすぐ近くに外世界資本によって建設され、運営されています。
 地元経済は農業を中心とし、268地域星域全域に穀物、果物、根菜類といった多種多様な食品を輸出しています。赤道地方の海や湖の沿岸部では耕作や牧畜が盛んで、険しい山の多い温帯の内陸部からは優れた材木が産出されます。産業発展に役立つ様々な鉱物資源も豊富ですが、住民は採掘を意識的に避けています。さらに分離主義の考えに合わせて、長距離通信は電話か電報であり、輸送手段は電気推進の地上車や列車、蒸気帆船や片手で数えられるほどのプロペラ飛行機に限られています。
 モトモス政府は、技能と分離主義哲学の試験に合格した官僚たちに導かれています。分離主義を保つために、政府は日常生活のあらゆる面で厳しく住民を管理します。環境破壊を防ぐ目的で技術開発を禁止し、人口増加を抑え、農産物の品質管理基準を満たさせるために、官僚機構は膨大な量の規制を厳密に、そして杓子定規にかけています。このため、小さな集落でさえも管理と法執行のために大量の警察官と下級官僚を必要とします。官庁ごとの権限は重複・混乱している面も多く、モトモスの迷宮のような官僚機構を相手にすると退屈で、非常に苛立たされることでしょう。ただし住民は出生時から分離主義の教えを受けているので、これが圧政的であるとは感じていません。
 780年にモトモスとターサス(1138)とターカイン(1434)は農世界連合を結成し、その本部はキンニパック市の外れに置かれました。840年にダリア(1435)が食糧問題の解決のためにターカインの征服を試みた教訓から、人口や技術力で潜在的侵略者に劣る農世界連合は農産物を「武器」として用いるようになりました。連合は加盟星系が侵略を受けた際には、侵略星系に対して食料輸出を全て停止するようにしたのです。
 しかし960年にターカインが海賊幇助を理由に帝国の介入を受け、風向きが変わったことを感じたモトモスは帝国の庇護下に入ることを決めました。963年に公式に帝国属領となり、その4年後には帝国海軍基地が建設されました。基地はキンニパック地上宇宙港に隣接し、軌道上には大規模な修理補給施設、衛星や他惑星には小規模ながら訓練施設や弾薬庫や早期警戒ステーションが築かれています。ただ、モトモスの住民自体は平和主義に傾倒しているため、いかなる種類の星系軍も存在しません。
(※ちなみに農世界連合が使用する大型貨物船は、マクレラン・ファクターズ社から提供を受けたものです)

ノクトコル Noctocol 1433 E7A5747-6 非水 G Na
 いつ何のために自分たちがこのノクトコルにやってきたか、住民の誰もわかりません。しかし調査の結果、彼らの起源は-1987年にこの星に不時着した第二帝国の探査船コーンメイラ(Connemara)の乗組員の子孫ではないかと考えられています。漂流者たちは誰にも発見されることなく(※実際にはダリアン人やソード・ワールズ人による星系探査がなされていたのですが、惑星ノクトコルには興味を持たれませんでした)、遭難から2500年経った501年にようやく帝国偵察局の探査で「救援が来た」のです。
 その間彼らは過酷な環境に適応した特徴的な社会を形成していました。TL6まで退行した住民は、異種大気を逃れるために地下に退き、第二帝国期のソロマニ様式の都市を建設し、活発な火山活動で生じる地熱から電力を得ていました。大気に充満した塵により無線通信やレーザー通信は不可能なため、その代わりに有線電話を埋設しました。TL6ではノクトコルの大気圏内を飛行できる航空機は造れないので、地下都市間を結んでいるのは最高時速160kmの電気鉄道です。その環境から孤立主義的になった彼らは都市ごとに独自の風習や言語を発達させたため、他都市からの訪問客すら外世界人のようです。なお大半の住民は極端に訛った古いリム方言の銀河公用語を話しますが、現在の公用語と共通する部分は25%程度しかありません。
 ノクトコルの住民は、水耕農業と鉱業と大気や大洋からの資源抽出で自給自足経済を営んています。これで十分人口を支えてはいますが生活水準は低く、外世界の商品を買う余裕はありません。そもそも孤立主義的思考から宇宙港が建設されず、恒星間通商路から外れているせいもありますが。ノクトコルを訪れた多くの宇宙船は、伴星軌道上に2つあるガスジャイアントで燃料補給だけをして去っていきます。
 惑星政府は議会制民主主義です。住民はそれぞれの都市人口に比例して定められた数の議員を選挙で選び、一院制の議会を構成します。脆い地下都市に住む関係上、法の執行は必然的に厳しくなるのですが、個人の権利は可能な限り尊重されます。ただし銃の個人所有は公安上の理由から禁止されています。

ターカイン Tarkine 1434 C466662-7 S 農業・非工・富裕 A Cs 帝国の傀儡政権
 ターカインは香辛料や家畜の生産で有名な、農世界連合に加盟している農業世界です。
 標準的な大気、温暖な気候、豊富な水、さらには壮大な熱帯雨林や息を呑むようなジャングルに覆われた谷間など、低重力で育まれた驚くほど繊細で多彩な動植物の生態系が織りなす、268地域の中でも最も美しいと言われる惑星です。慢性的な政治や治安の問題にも関わらず、ダイビングやサファリ体験、プロペラ機による空中観光ツアーを楽しむ観光客が多数やってきています。ただし観光客は、壊れやすいターカインの生態系を守るために、宇宙港の境界線外ではまず(厄介な)除染を行うことが求められます。
 840年にターカインや連合の農業生産力を手に入れようとしたダリア(1435)が、ターカインに侵略を行って政権を奪いました。長く悲惨な戦争の末に、この時は2つの強大な消費者世界(コレース(1237)とフォリン(1533))の干渉によりダリア軍は引き上げました。
 960年には、当時のターカイン政府が(主にソード・ワールズ系の)海賊船に人員や技術や燃料を供給する見返りに、略奪した物品の分け前を受け取っていたことが発覚し(この闇資金は国庫や政治家の懐を豊かにしていました)、帝国当局は特殊部隊を派遣して海賊船を破壊し、政権を交代させ、監視目的でこの地に偵察局基地を建設しました。
 現在、帝国の属領となることを良しとしない住民の継続的な蜂起や、ターカイン独立同盟(Independence on Tarkine Alliance, IoTA)による帝国の観光客や偵察局基地を狙ったテロ活動により、トラベラー協会は世界をアンバーゾーンに指定しています。

ダリア Dallia 1435 B8B5883-9 非水 Cs
 遥か昔の、いつ頃建設されたか不明の地下都市にダリアの全住民は住んでいます。太古種族の専門家は、この都市に用いられた技術は太古種族のものとは異なると主張しています。住民は危険な地表で化学物質を採取し、売却して利益を得ています。
 ここの住民は自分一人で、生命維持装置と水抽出装置を維持することができます。ガス弁が弱まっただけで数千人の死を意味するこの惑星では、住民は安全に関することから頭が離れることは出来ませんが、他の点ではそこまで厳格ではない社会です。しかし親帝国(そして親コレース)の政府に不満を持つ少数派は、帝国への抵抗活動を活発にしています。
 ダリアの腐食性大気により、惑星表面に宇宙船が着陸するのは安全ではありません。したがって、ダリアを訪れた全ての船はヘブンズゲート軌道宇宙港(Heaven's Gate Highport)に入港します。静止軌道上のこの軌道宇宙港は、長さ6.5キロメートルの円筒体を中心にして2本の巨大なリングが合わさって構成され、800万人がここで生活しています。
 ダリアは食糧問題の解決のために、かつて農世界連合の乗っ取りを行おうとしました。その時は失敗に終わりましたが、今もまだ連合世界への侵略を狙っているという噂があります。

タロス Talos 1436 E333532-9 非工・貧困 Na
 メイン上の重要な位置にあるこの星を所有するタロス家は、自分たちの今の生活様式を維持できる程度の商取引で満足しているので世界の発展は望んでおらず、宇宙港の拡張にも難色を示しています。しかし、ガスジャイアントのないこの星系を訪れた宇宙船が海で燃料補給することに対しては、自分たちの贅沢のために法外な税を課しています。
レフリー情報:このタロスが最初に記録に現れるのは-147年のソード・ワールズ人探検隊のものです。それによれば、軌道上にあった青銅色をした未知の形状の宇宙船から威嚇射撃を受けたとのことです。同様の記録はダリアン人による帝国暦0年頃のものの中にもありますが、帝国偵察局が151年に探査に訪れた際にはそのような宇宙船は存在していませんでした。その船が再び現れたのは708年になってからで、通報を受けて到着した帝国海軍とソード・ワールズ軍が共に追跡したものの、10~12Gという途方も無い加速度で星系外に逃走されました。少なくとも自動化されていると思われるその未知の古代船はそれ以来400年間現れておらず、帝国もアンバーゾーン指定を1008年に解除しています。

ドーンワールド Dawnworld 1531 E885000-0 肥沃・未開 G Na
 ドーンワールドはその名の通り、海で単細胞生物が動き始めた若い世界です。大陸はむき出しで、火山性であり、空には軌道上のガスジャイアントが緑色に輝く姿を日夜見せています。ドーンワールドはテラよりは少し乾燥していて、少し大気が濃いですが、それを除けばスピンワード・マーチ宙域では最も「地球的な」世界の一つです。
 -982年にダリアン人がこの地に植民し、ダン・ダリアン(Dand Daryene, 新しい家)と名付けました。しかし、惑星の生物学的に未確認の理由により、ここで生まれた全ての男性の生殖能力が失われていることが発見され、入植地は-941年に放棄されました。ダリアン人科学者は原因の究明を行いましたが、-924年のダリアン主星の大災害により、入植地についての全ての情報は失われました(※恒星フレアの爆発で人口の8割が死亡し、電磁波によって周辺星系の電子機器の多くが破壊されました)。
 その後、-154年にサクノス(スピンワード・マーチ宙域 1325)がこの地をホディング(Hoding)と名付けて植民地化しましたが、彼らも問題に気づいて-118年に世界を捨てました。サクノスは問題を調査するために科学者を派遣する予定でしたが、第一次反逆戦争(※-104年から-88年まで争われたサクノスとグラムの戦い)の勃発で頓挫しました。
 288年にはこれらの失敗を知らなかった帝国の理想主義者の集団によって再々入植されましたが、やはり312年には放棄されました。
 481年、グヴァードン宙域から来たヴァルグル亡命者の集団は、無人の惑星だったこの地を見つけ、今までと同様に無人だった理由を知らなかったため、この地に落ち着きました。そして506年に、研究者が全ての事実をようやくまとめ、ヴァルグルはシュピレール(同 1927)に移住しました。
 610年に帝国が268地域星域を制定すると、ドーンワールドは帝国の保護下に置かれました。問題が解決されるまで、種族に関係なく移民は禁止されます。一方で、世界への訪問は人体に何ら被害を与えないように見えるため、禁止はされませんでした。
 600年頃から現在まで、この謎を解くいくつかの試みが帝国とソード・ワールズの科学者によってなされました。しかし、ソード・ワールズ連合のこの世界への領有権主張に絡む政治的圧力などによって、全て失敗に終わりました。

エリサベス Elixabeth 1532 B426467-8 N 非工 G Cs フォリン領
 0.3Gという低重力に、汚れた薄い大気、平均気温マイナス2度の寒冷気候と、エリサベスは快適な世界ではありません。しかし、広大な土地、波打つ海、自生の植物や動物の存在は、過密で永久凍土のフォリン(1533)から見ればまるで「楽園」でした。
 973年にフォリンの支配者となったチョーニ・ノーレップ(Chorni Norep)は、その2年後にこの星への入植事業を開始しました。彼女はエリサベスを本星産業の資源調達先にすると同時に、大勢の政敵を目の前から「消し去る」ために利用しました。2000人の入植者のほとんどはフォリンの反体制派で、面従腹背の姿勢をその後15年間続けていました。
 989年、ノーレップはフォリンの余剰人口をエリサベスに移住させる計画を発表しました。それに対し、エリサベスの住民は自分たちの「楽園」が何百万もの貧困層移民の「ゴミ捨て場」にされることに憤慨し、ついに決起しました。移民の受け入れを円滑にするために、当時Eクラスだった宇宙港を拡張するようノーレップは命じましたが、住民は非暴力的に非服従の姿勢で応えました。自らの支配体制を揺るがす恐れを感じたフォリン本星からは治安部隊が派遣され、抗議集会への武力行使も許可されました。結果、数百人が死亡する流血の惨事となり、それ以降表立った抗議活動こそ粉砕されたものの、住民はサボタージュや小規模のゲリラ戦で抵抗を続けました。そしてフォリン軍による一斉検挙で、一時はエリサベスの成人のほぼ半数が軍の臨時営倉に収監される(※人口が少ないので、これまで刑務所が建設されていませんでした)という事態にまで至りました。急造された営倉では衛生状態が悪化し、相当数の収容者が病気に罹って死に始めました。
 この状況はスピンワード・マーチ宙域中に報道され、親ソード・ワールズ政策を展開していたノーレップを排除する口実を得た帝国は、介入姿勢を採るようになりました。990年中頃、帝国はフォリン政府に対し、反乱勢力との和平交渉に応じなければ「人道上の理由で」軍事介入をすると警告しました。その後に調印された和平協定では、植民星がフォリンから独立しない代わりに移民管理を含む内政自治権を得て、フォリン議会に人口比よりも多く代議員を送り込める、とされました。そして全ての勢力が協定を確実に順守するように植民星は帝国属領となりました。
 エオス軌道宇宙港(Eos Highport)はエリサベスの少ない人口に対して過大な軌道港ではありますが、帝国はこの星域内で哨戒活動をする海軍艦船のための修理施設を必要としており、海軍基地や帝国機関の出張所を併設する形で、第四次辺境戦争停戦後から1100年にかけて帝国からの莫大な助成金を受けて建設されました。
(※海軍基地同士をジャンプ-6で結ぶ「海軍連絡網(Naval Couriers)」の運用面でも、エリサベス基地はファイブ・シスターズ星域方面とグリッスン星域方面を繋ぐ重要な位置にあります)

フォリン Forine 1533 D3129B8-A 工業・高人・非農・氷結 Na
 工業が盛んなフォリン星系には、主要惑星フォリンとその軌道に16億人、ドラガン・ベルト(Dragan Belt)と呼ばれる小惑星帯に計30億人、2ヶ所のトロヤ点に計13億人が居住しています。惑星フォリンは希薄な大気を持つ小さな極寒の世界で(平均気温は-146度)、自生の生命体はありません。地表はまるで一つの巨大ドームで密閉されているように見えますが、近づいていくと、住居や工場がとても高密度に整然と配置されていることがわかります。
 フォリン経済は輸出用の安い電子機器生産に特化しています。それらを恒星間市場に売却して得た利益を得られるのは住民の少数で、多くの住民は相対的に貧困状態にあります。持てる者は農世界連合から輸入された自然食品を口にできますが、持たざる者は政府から配給された無料ではあるが味気ない人造加工食品を食べるしかなく、「配給食は住民の死体から作られている」という悪趣味な冗談がしばしば囁かれます。
 フォリンの宇宙港は本来はAクラスなのですが、拡張工事に携わった建設労働者のストライキが暴動に発展し、宇宙港施設が広範囲に破壊された1104年以降はDクラス相当と判定されています。そして交通量の多さに対して受け入れられる規模が小さいため、管制の渋滞は慢性化してしまっています。
 1081年、抗老化薬で若さを保っていたチョーニ・ノーレップの独裁体制が暗殺により崩壊すると、現地警察に該当する「剣匠団(Sword Masters)」は、混乱するフォリンを治めるべく政治への不干渉の慣例を捨てて治安回復に乗り出しました。そして団の代表者である師範(Sword Lord)を中心とする政治体制に変わりました。剣と決闘による法執行という古めかしい体裁ではありますが、彼らは政治的権利のない住民たちのために公共サービスを維持しています。剣の評議会(Council of Swords)による「剣政体制」は帝国との友好路線を採りましたが、ソード・ワールズとの政治的緊張から帝国加盟は実現していません。

マータクター Mertactor 1537 B262732-B S Im 星域首都
 帝国領の最辺境に位置するマータクターは268地域星域の形式上の首都であり、マータクター侯爵(ことグリッスン公アヴァラヤ)の所領です。同時にこの星はグリッスン星域方面から続くXボート網の終端であり、グリッスン星域とファイブ・シスターズ星域を結ぶメイン上の商取引における重要な世界です。268地域星域の玄関口である非常に効率的なBタイプ宇宙港には旅客船が頻繁に入港し、宙域中の批評家をうならせる美食の数々を楽しむことができます。
 恒星の可住圏内にある主要惑星は、直径3100kmと小さいながらも0.82Gの表面重力を持ちます。この矛盾は、惑星マータクターが既知宙域内でも極めて珍しい高密度で金属や重元素が集まって形成されているからです。惑星表面の7割ほどは「ドリスク(drisk)」と呼ばれている岩だらけの荒涼地帯で、森林の成長や入植者の拡張を妨げています。ちなみに、マータクターにおける1現地日は約14標準時間です。
 惑星の強い重力は人類の呼吸に適した標準大気を確保してくれると同時に、厄介な「ドリスク嵐」も引き起こします。ドリスク嵐とは突然に荒れ狂う強風のことで、ドリスク地帯の岩や小石を竜巻が巻き上げて周辺に文字通り岩の雨を降らすのです。ただし奇妙なことにこの嵐のほとんどはドリスク地帯で発生し、惑星内に点在するわずかな海と沿岸地域(合計で地表の2割程度)やその周辺の森林地帯は通常安全です。この危険な嵐さえなければ、マータクターは大量の金属や鉱物資源から莫大な富を得られていたでしょう。
 3100万人弱のマータクターの住民(その約1割は950年頃に帝国に雇われたアスラン傭兵の子孫です)は沿岸や湖畔地域に小さな町を作って居住しています。恒星間の政治課題は永続寡頭政体であるマータクター評議会(Mertactan Council)がグリッスン(スピンワード・マーチ宙域 2036)の貴族に上申する形でなされますが、内政面は主に家族間の討議や習慣に任されています。マータクターにおける「法律」はわずかで、他の星と比べれば退屈に見える文化を作り上げていますが、外世界人が住民の「家族法」に抵触して怒らせてしまうのはよくあることです。旅行者はここではなるべく文化的かつ保守的に振る舞うべきです。
(※マータクターの名の由来は、第二帝国の崩壊期にグシェメグ宙域の銀河核方向星域を荒らし回った海賊ヴィルヘルム・マータクターから、という非公式設定が存在します。また、この星系の人口倍率は「6」なので、残る3000万人は他惑星や小惑星帯に分散して住んでいると思われます)

タルチェク Talchek 1631 C7B1462-5 低技・非工・非水 A G Cs フォリン領
 タルチェクは平均気温が31度と高く、弗素と弗化水素酸から成る腐食性大気と、酸の海による居住向きではない世界です。それでも、価値ある化学合成物が大気から容易に抽出できることから、ダリアン人が-1000年頃に入植していました。その後入植地は放棄されて、彼らによって建設されたガス精製所は現在史跡として保存されています。現在全ての住民は、地上港も兼ねた密閉構造物に住んでいます。
 ずっと無人だったこの星が再び入植されたのは、975年のことでした。フォリン(1533)の独裁者チョーニ・ノーレップは、資源獲得と反体制派住民の流刑を兼ねてこの星に人々を送り込みました。同様に入植されたエリサベス(1532)で989年に動乱が発生すると、タルチェクの住民もそれに呼応して抑圧からの解放を非暴力で訴えました。フォリン軍の武力弾圧によって数百人の死者を出すなど騒乱は拡大していきましたが、990年に帝国の介入によって、独立は断念する代わりに内政自治権を獲得することができました。
 和平合意によって帝国属領となって以後、ノーレップの暗殺によるフォリン本星の混乱をも利用して、タルチェクは自治を徐々に拡大して独立同然の現在の地位を確立しました。タルチェクからの化学製品や銅の輸入が自星経済に不可欠であるフォリンは、それを黙認するしかなかったのです。
 十数年前に改築・改称されたバスティオン軌道宇宙港(Bastion Highport)は、その名の通り要塞のように外殻や武装や防御衛星に取り囲まれ、メインを旅する船の安全な避難所となっています。実はタルチェクの3つの衛星は海賊が隠れ家としていて、港を保持するために傭兵部隊や帝国海兵隊大隊が駐留しています。
 この世界は、大気の危険性や海賊の存在を理由にアンバーゾーンに指定されています。

ミラグロ Milagro 1632 E21178A-7 非農・氷結 Na
 古代ソロマニの言葉で「奇跡」というその名に反するかのように、低重力で希薄大気で、わずかな水界も平均気温-25度で凍りついているこの星の環境は過酷そのものです。
 700年代中期からここにはフォリン(1533)の流刑植民地が築かれ、犯罪者や政治犯のみが居住していました。990年にフォリンの植民地であるエリサベス(1532)とタルチェク(1631)で騒乱が起き、両星が自治権を拡大して帝国属領となった後、992年からフォリンはこのミラグロに棄民を始めました。惑星環境がとても厳しいのは周知の事実だったため、「入植者」たちは銃を向けられて「移民船」に乗せられました。
 ドームや地下の都市に押し込められた人々の2割は、飢餓や病気などで数年以内に死亡しました。それでも何百万人もの望まれない移民団が到着し続けたので、ミラグロの人口は増え続けました。フォリン軍の統治者は武器の個人所有を禁止した上で情け容赦無く弾圧を繰り返しましたが、反乱や食料を巡る騒動は日常茶飯事でした。
 1070年代後半には、ミラグロはフォリンの人的資源面でも財政面でも制御できなくなっていました。さらに、ミラグロの民衆の悲痛な声が帝国との外交関係を悪化させたため、1079年にフォリン政府は帝国に住民を押し付けるようにしてミラグロの領有を放棄しました。食料供給と法秩序が突如として失われたため、混乱に陥ったミラグロでは推計430万人が死亡しました。
 帝国当局は緊急援助を行い、秩序の回復に動きました。新政府は、帝国からの財政融資と助言に支えられた、試験によって選抜された官僚機構が担うようになりました。戒厳令は解除されましたが、些細なことでも無秩序状態に陥りかねない懸念から法執行は全面的に厳しいままです。当然新体制は人気がありませんが、大多数の住民は(フォリン支配の間にはそもそも無かった)個人の権利よりも秩序の維持が今は優先されるべきと妥協しています。帝国は準備ができ次第自由選挙を実施すると広報していますが、その機が熟すまでにはまだ数十年かかる見込みです。
 現在のTL7では9000万人のミラグロの住民を支えることはできず、帝国の援助なしに生き延びることはできません。多くの住民は、帝国の技術支援を受けた有機廃棄物の再生品や炭素小惑星で採取されたチョンプ(CHONP, 炭素・水素・酸素・窒素・亜燐酸の略)から作られた、食欲をそそらない合成食品を口にしています。
 帝国は過剰人口の解消こそが問題解決の近道と認識していますが、ミラグロの評判の悪さから大規模移民の受け入れ先はいまだに見つけられていません。むしろ、ミラグロからの逃亡を妨げるために、損傷と修繕不足のためにEクラス相当に低下している宇宙港機能の回復を帝国当局がわざと先延ばしにしている、とすら思われています。
 また、ミラグロの技術水準の向上も問題解決の糸口と考えられていますが、先進技術の急速な導入は社会的混乱をもたらすとの配慮で、慎重になされています。まず教育制度を劇的に改革し、先進技術を操る次世代の育成を進めてから、その後、1130年を目処にTL9まで進歩させる目標が立てられています。帝国当局がTL8への到達を認定するまではTL8以上の輸入品は禁止され、やがてTL9に到達した際には全ての規制は解除される見込みです。ただし、食料供給や健康維持など基本的人権に関わる分野の技術は例外とされています。
 一方で惑星経済はLSP社から提供される仕事に依存しています。現在、LSPの様々な生産プラントで労働人口の31%が従事しているのです。なぜLSPがそれだけの投資をミラグロに行っているか誰も知りません。しかし多くの人々は、それが帝国の法律を避けるためであろうと推測しています。

パガトン Pagaton 1634 C769873-4 低技・富裕 G Na
 パガトンは、様々な国々が自国をただ維持するだけで、戦争や大国化に関心がない古き良き低TL世界です。第三帝国初期のパガトンには、モーラ(スピンワード・マーチ宙域 3124)やトリン(同 3235)、デネブ宙域などから様々な集団が入植してきました。その頃の惑星は緑に溢れていて、それぞれの集団は別々の島に住み、あまり相互に干渉し合いませんでした。
 しかし600年頃から惑星は氷河期に入り始めました。スピンワード・メインの端という位置関係から交易は元々盛んではなく、さらに氷河期からの生き残りのために世界の資源の多くが振り向けられたので輸出も衰え、訪れる貿易商人はさらに減りました。その悪循環を繰り返すうちに、TL4まで技術水準は低下しました。
 この状況を打開すべく、パガトン史唯一の「共同の」惑星事業として(軌道上なのでどの国も直接利益を得られない)宇宙港建設が進められて、38国全てがこの計画に資金を供出しました。しかし主要輸出品が魚介類や毛皮という状態では外世界の関心を惹きつけることはできず、外貨を獲得しての大規模な再建には結び付いていません。
 人口はおよそ9億人ですが、居住に適した狭い地域の島々の人口密度はかなり高くなっています。そして食用の植物や海洋生物は、過酷な環境の赤道地帯のみに自生しています。

ビンジス Binges 1635 A800231-A 真空・低人・非工 Na
 ビンジスは大気も水もない岩だけの星と長らく思われていましたが、800年代初めにグリッスン(スピンワード・マーチ宙域 2036)の有名な投機家ミサリンコ・コリル(Mysalynko Ko'ril)の出資による探査で、この星にランサナムとズーカイ結晶(※両方ともジャンプドライブの製造に必要な鉱石)を含む著しく多様な鉱脈が発見されました。
 コリルはグリッスンの投資家たちから資金を集めてエクストラクト社(XTRACT Corporation)を設立し、812年にはBタイプ宇宙港建設計画のためにグリッスン第一銀行(Glisten First Bank)から莫大な額を借り入れました。鉱業の専門家ではない彼は、採掘権を外部に売却した上で、鉱石によって得られた利益を宇宙港によって「上前をはねる」ことで、長期的な収益を得ようと考えたのです。株式市場の期待感は、多額の借入金にもかかわらず同社の株価を連日押し上げました。
 宇宙港建設は814年に始まり、818年に完了しました。その間に広範囲な地質調査が行われ、819年には有望な鉱脈がそれぞれ競売にかけられました。古参から新参まで様々な鉱業会社がビンジスの富を争い、百億クレジット規模の資金が飛び交いました。
 翌年から始まった採掘活動によって、821年には大量の鉱石を産出し始めました。ところが、全ての鉱脈がエクストラクト社が広報していたよりも遥かに小さな規模だったことが判明したのです。怒り狂った債権者は本社に押しかけましたが、コリルや役員たちは何処へと「長期休暇」に出発した後でした。更に悪いことに、社の口座の監査によって宇宙港を担保にいくつかのソード・ワールズ系金融機関からも借り入れを行っていたことが判明し、エクストラクト社の負債は推定で500億クレジットにも達していました。
 結局、役員は全て捕らえられたものの、コリル本人は捕まることはなく、取り戻されたのはわずかな金額だけでした。何千人もの債権者は一部でも損失を取り戻そうと、数十年に及ぶ法的闘争を開始しました。グリッスン第一銀行は宇宙港の差し押さえをしようとしましたが、帝国当局は当時ソード・ワールズに対して宥和政策を採っていたため、最終的に宇宙港を含めて星系の所有権がグリッスン第一銀行に移ったのは850年になってからでした。その頃には中小企業は破産し、大企業も債権回収を諦め、星系には何も残っていませんでした。
 そして銀行は、苦労して得たビンジスがジャンプ-1航路の袋小路に位置し、輸出する鉱石がない今、実際には何の利益も産まないことを思い知らされました。少数の管理要員を置いて宇宙港を保全しつつ売却先を探す懸命な努力が続けられましたが、結局875年には宇宙港機能の維持を断念しました。
 荒廃していた宇宙港にようやく買い手が付いたのは1053年のことです。コレース資本のドロイン系企業であるニルクアズート社(Nirkuazh't)は、宇宙港を1000トン級の造船能力を備えたAタイプ港に一新して1057年に再開港させました。ドロイン美学と運用経費の削減を兼ねた内装は美しくもいささか窮屈ではありますが、新宇宙港はスピンワード・メインを旅するドロイン商人に好まれ、やがて他の種族にもその良さが広まっていきました。
 訪問客による犯罪行為に対処する法的根拠を得るため、ニルクアズート社は1058年に星系「政府」を設置しました。市民権は会社の株主に限定されましたが、同社の株式は非公開であるため、実質的に特権階級となっています。また社会体制は同時に、ドロイン流の身分制も模しています。なお、宇宙港の改築に携わった大部分の労働者はドロインであり、今でも700人の住民の3分の2を占めています。
 帝国外世界という地位に加えて少ない税と法規制は、自由貿易商人(特にいかがわしい者)にとってこの星は『便宜置籍』先とするのに非常に魅力的でした。そしてビンジス政府は船舶登録料や関連税から安定した収入を受け取っています。
(※Aタイプ宇宙港で人口700人はかなり少ないように見えます。例えば、マータクターでは軌道宇宙港だけで約15000人(交代要員込みの数なので一度に働くのは3000人)、地上港も含めると約28000人が雇用されているようです。ただしビンジスのWTN値は補正込みで4(マータクターは6)で、WTN値の1差で貿易量や旅客数が1桁変わりますから、マータクターの100分の1規模と仮定しても300人程度で賄える勘定になります。そうだとするとかなり閑散としていそうなのは否めませんが(計算上、1日に自由貿易商船が1隻来るか来ないか程度?)。レフリーの判断次第ですが、もう少し賑わっているようにするためには、「700人は市民権を持つ登録住民で、宇宙港には臨時雇いが多数勤めている」と解釈した方が良さそうです)

ミル・ファルクス Mille Falcs 1637 B9A2469-C NS 高技・非工・非水 G Im 軍政
 この星は268地域星域方面の帝国軍の拠点であり、星系は軍の戒厳令下に置かれています。宇宙港は軍艦の製造や修理をするためにあります。


【ライブラリ・データ】
バラッカイ・テクナム Baraccai Technum
 バラッカイ・テクナム社はトリン(スピンワード・マーチ宙域 3235)に本社を置く、宙域のリムワード方面に大きく商圏を広げている企業です。同社の主な事業は、工業生産およびその輸送、そして貨物の仲介です。さらに同社は、帝国外世界への「通商探査」のためにいくつかの派遣団と、彼らが乗り込むための3隻のリヴァイアサン級巡洋商船を保有しています。
 同社のスピンワード方面や帝国外での活動の統括はグリッスン(同 2036)の支社が担い、前線基地はパクス・ルーリン星域(トロージャン・リーチ宙域 C)の帝国領内各地に置かれています。
 現在同社はマクレラン・ファクターズ社とエジルン星域(同 B)を巡って競争を繰り広げており、その激しさは武力衝突寸前とまで言われています。

マクレラン・ファクターズ McClellan Factors
 本社をマータクター(スピンワード・マーチ宙域 1537)に置くマクレラン・ファクターズ社は、マクレラン貿易(McClellan Trading,LIC)の268地域星域やトロージャン・リーチ宙域方面における通商部門子会社です。そしてMF社の傘下企業は帝国内外に数多く存在します。
 同社は帝国内ではあくまで合法的に活動していますが、国境外では違法事業にも手を染める危険な綱渡りをしています。バラッカイ・テクナム社との長期に渡る通商戦争に敗れて268地域星域に「押し込められた」格好にはなりましたが、268地域星域ではいくつかの世界に確固たる市場を確保し、BT社による挑戦を撥ね除けています。
 同社は「前線基地」をトレサロン(同 1339)に持ち、エジルン星域(トロージャン・リーチ宙域 B)も商圏としています。

LSP Ling-Standerd Products
 帝国のメガコーポレーションの一つであるLSPは、創業当初は鉱業会社でしたが、その後は電子機器、地上および航空車両、宇宙船、ドライブやパワープラント、コンピュータやそのソフトウェア、ロボット、小火器、消費財、金融、保険などにも進出しています。特にハイテク機器や電子機器の分野では優秀な製品群で知られており、同社の鉱山や製造施設は、帝国内外を問わず様々な世界に存在します。
 LSPはそのきわどい商法でも知られていて、進出先の住民と揉め事を起こしがちではありますが、私設部隊を持たないので警備などには傭兵部隊を用いています。
 ちなみに、創業者一族のリーン家(Ling family)は既に経営からは手を引いて株式配当を受け取るのみですが、帝国各地の星域公爵家に名を連ねる名門貴族です。
株式保有比率:皇族 8%、オルタレ・エ・シェ 26%、GSbAG 23%、貴族 8%、マードック・ホールディングス 8%、その他 27%


(※人気の高い星域ゆえに、非公式設定同士どころか商業出版物の設定もあちこちで衝突を起こしています。今回は商業出版物に記載された設定を優先して紹介し、非公式設定を各所に盛り込んで肉付けする形を採っています。公式設定ではなく、あくまで私の独自解釈と受け取っていただければ幸いです)


【参考文献】
・Adventure 4: Leviathan (Game Designers' Workshop)
・Adventure 10: Safari Ship (Game Designers' Workshop)
・Double Adventure 6: Divine Intervention (Game Designers' Workshop)
・Book 7: Marchant Prince (Game Designers' Workshop)
・Supplement 3: The Spinward Marches (Game Designers' Workshop)
・Supplement 8: Library Data (A-M) (Game Designers' Workshop)
・Supplement 11: Library Data (N-Z) (Game Designers' Workshop)
・Journal of the Travellers' Aid Society #12,#18,#19 (Game Designers' Workshop)
・Beltstrike (Game Designers' Workshop)
・Tarsus (Game Designers' Workshop)
・The Spinward Marches Campaign (Game Designers' Workshop)
・Rebellion Sourcebook (Game Designers' Workshop)
・GURPS Traveller: Behind the Claw (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: First In (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Nobles (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Star Mercs (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Starports (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Sword Worlds (Steve Jackson Games)
・Third Imperium: The Spinward Marches (Mongoose Publishing)
・Third Imperium: Starports (Mongoose Publishing)
・Living Adventure 2: Spinward Fenderbender (Mongoose Publishing)
・Marches Adventure 1: High and Dry (Mongoose Publishing)
・Sign & Portents #80 (Mongoose Publishing)
・Snuff, Pipes and Wargames (Tony Barr)
・Mustered Out on Mertactor (Nick Pendrell)
・Savage Space (Lord Misha)
・Loukoum On Line
・Traveller Wiki
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宙域散歩(1.5) 268地域星域(詳細編1)

2012-05-09 | Traveller

 268地域星域は、帝国の268番目の星域として帝国暦610年に星図に書き加えられました(ちなみに同時に制定されたのが、隣接する267地域こと後のファイブ・シスターズ星域です)。「268地域」というのはあくまで(XXX-XXXの番号が付けられている星系のように)仮の名前で、この地域の多くの星系が帝国に加盟した頃には新たな星域名が付けられることでしょう。
 この地域は辺境探査の初期から、スピンワード・メインを通じたグリッスン星域方面の帝国領とのジャンプ-1宇宙船による貿易のための唯一のルートでした。やがてそのルートに沿うように、いくつかの重要な世界が発展していきました。そして941年には、皇帝マーガレット二世によってこの地域への植民・開発が許可され、今では様々な人々や資本が帝国から流れ込んできています。
 この星域のほとんどの世界は帝国に加盟していませんが、その中のいくつかの星系は属領として帝国の影響下にあります。名目上の星域首都はマータクターに置かれ、この地域に進出した企業などの拠点となっていますが、810年から帝国領となった2星系の統治自体はグリッスン(スピンワード・マーチ宙域 2036)から行われています。
 星域への将来的な帝国領の拡大と、その新秩序の中で星域首都の地位を占めたいと願うコレースに対し、トレサロンは帝国の拡大を阻止したいと考え、両者の敵意は「冷戦」の域に突入しています。自己の影響力を増して相手の影響力を削ぐべく、通常は宣伝工作や経済活動や法廷闘争で戦われていますが、時には政治的陰謀や工作員による暗闘も繰り広げられています。強大な帝国の後ろ盾があるコレースは反面、採る戦術に公正さが求められますし、トレサロンも帝国の介入を招くような暴挙は避けねばなりません。いずれにせよ直接の軍事行動は無意味であり、論外なのです。
 帝国企業は268地域で活発に活動しています。中でもこの星域を商圏に持つマクレラン・ファクターズ社(McClellan Factors)は、地元の非帝国企業との提携や法的にきわどい営業戦略で、積極的にバラッカイ・テクナム社(Baraccai Technum)との競争(という名の戦い)に没頭しています。両社は星域内での「冷戦」の間隙を縫うように、様々な戦術を駆使して通商戦争を戦っています。
 帝国属領星系の警備のため、隣接するグリッスン星域やファイブ・シスターズ星域から分艦隊が派遣されています(正式にはこれらはグリッスン艦隊所属ですが、独立して運用されています)。帝国第214艦隊(グリッスン艦隊)が星域のトレイリング方面を、第208艦隊(ファイブ・シスターズ艦隊)はスピンワード方面を担当し、これらの艦隊は古い巡視艇や護衛艦を旧式の駆逐艦がサポートする形で編成されています。
 星域の主な星々はスピンワード・メインに属し、ジャンプ-2の宇宙船で全ての星系に行くことができます。なお、高人口星系コレースを含む繋がりをコレース・アーム(Collace Arm)(※ドーンワールドからモトモスやインチンまでと、それに接続しているグリッスン星域やファイブ・シスターズ星域の数星系を含みます)、ボウマン星系を含む星団をボウマン・アーム(Bowman Arm)(※ソード・ワールズ星域のエノスは含まれますが、帝国領のフラマリオンやカラドボルグ伯領3星系は含まれません)と呼ばれることもあります(残るマータクター、ミル・ファルクス、パガトン、ビンジスの4星系はグリッスン・アーム(Glisten Arm)に属します)。また星域内の星のない空間を大コレース裂溝、小コレース裂溝と呼び表す人もいますが、あくまで俗称です。

 286地域星域には32の星系があり、総人口は106億人です。最も人口が多いのはフォリンの59億人で、最もテクノロジーレベルが高いのはコレースの13です。


アステルティン Asteltine 0931 B7A7402-A 非工・非水 Na
 非常に暑い気候と濃厚な異種大気を持つ惑星アステルティンや小惑星群は、鉱物を豊富に含んでいます。住民は全て、最高品質の鉱石を継続的に供給する宇宙鉱夫か地上の鉱夫です。好ましい住環境よりもとにかく(一時的な)職を求めてこの星にやってきた大部分の住民は帝国出身ですが、少数のダリアン人やソード・ワールズ人やアスランもいるため、種族間の軋轢は若干ながら存在します。
 この星系内で宇宙港に近付く船は、宇宙港管理局(port authority)に依頼料を支払った上で、傭兵である2隻の護衛艦のうちの1隻で護送される決まりとなっています。また、長らくアステルティンの鉱業や加工業は個人経営や小規模企業が無秩序に乱立して営まれていましたが、スピンワード・メインを行く物流が増えてきた今、より大きな企業やメガコーポレーションが進出してくるのではないかと噂されています。 
(※良質な宇宙港がありながら星系政府のないアステルティンは、「海賊天国」となる素地が十分にあります)

インチン Inchin 0938 D12035C-A 砂漠・低人・非工・貧困 G Na
 268地域星域には入植に不向きな星系も多いのですが、その多くは価値ある資源が豊富か、偶然に入植されたかです。しかしインチンは、天然資源が欠けているのに意図的に入植された悪環境星系です。
 インチンは低重力で水界がなく、極薄で汚れた大気の灼熱惑星です。平野は硫黄分を含む黄色の砂や岩に覆われ、砂漠惑星特有の自然美もありません。そんなインチンへの入植を試みたのは、イアール・ロウリ(Iarl Rowri)というコレース(1237)の大富豪の御曹司でした。
 ロウリはAPI社(※アヴァスタンを参照)がアヴァスタン(1037)に宇宙港を建設して利益を得た実話に触発され、自身の莫大な資産でAタイプ宇宙港を建設しようと決めました。コレース・アームで唯一となるAタイプ宇宙港が完成すれば、すぐに星域内の宇宙船修理ビジネスを支配できると考えたのです。その事業構想自体は良かったのですが、実際の内容はひどいものでした。
 ロウリの最初の過ちは、このインチンを建設場所に選んだことでした。彼は酸素や窒素の混合大気を濾過し、水の欠如を2本の小惑星帯から氷塊を運んで補うつもりでしたが、これらが想定よりも遥かに高く付いたのです。
 しかし最大の過ちは、ロウリ自身でした。彼は最初からこの計画をビジネスの視点で行っていなかったのです。彼は自分が「インチン男爵」であると宣言し、「封土」の中心地に豪華な宮殿や都市を建設させたのです。無人星系を開拓することで爵位を宣言する、というのは古い慣例にはありますが、普通は「インチン男爵」の称号が恒星間国家で認められることはありません。しかし帝国とコレース政府は戦略上の理由から「インチン政府」と男爵位を公認しています。
 1086年に着工された時から、ロウリの気まぐれで資金投下の優先順位が絶えず変えられたため、都市や宇宙港の建設は開始と中断を繰り返し、首尾一貫した開発は不可能となりました。3年計画の予定が11年にも長引き、結局資金不足により建設が一旦中断されました。
 精神的に不安定となったロウリ「男爵」は、その頃からインチン星系内に資金問題を一挙に解決するような豊かな鉱脈を見つければいいのではないか、という考えに取り憑かれました。1098年には星系内全域の探査を始め、惑星や衛星で試掘が繰り返されましたが、現在まで大発見はなされていません。また真実かどうかは不明ですが、API社が競争相手である自分を排除しようと、インチンの労働者の不安を煽るべく工作員を送り込んでいるとも訴えています。
 約8000人の労働者は自分たちの雇用者を内心で馬鹿にしながら、作りかけの都市や宇宙港が荒廃するのを防ぐためだけの作業に従事しています。労働環境が良くないため、骨組みの宮殿の主は労働者に高い賃金を提示しつつも、3年間はインチンから離れないという契約書へのサインを強要しています。また、小規模ながら重装備の「男爵警護隊(Baronial Guard)」は労働者の不満が反乱に広がらないように兆候の段階から抑え込み、「API工作員」とされる容疑者を厳しく摘発しています。あらゆる武器類の所持は禁止されましたが、労働者たちは即興でナイフや剣や槍を作ることができます。
 ちなみに最近、インチンは隣接するミューエイ帝国(Mewey Empire)に対して技術提供の引き換えに食料供給を受ける貿易協定を締結しました。
 ミューエイ帝国はミューエイ(スピンワード・マーチ宙域 0838)を本星、オキケイト(同 0837)を植民地としている、群小種族ミューエイの支配する小国家です。雑食動物から進化した彼らは短く綺麗な毛皮に覆われた二足歩行種族で、平和と商取引を好みます。しかし帝国への同化は拒んでおり、むしろ(ジャンプドライブの提供を受けた)アスランとの結び付きを強めています(※ただし宇宙港建設は帝国系企業が受注したので、別に反帝国・反人類というわけでもないようです)。

シンガー Singer 0940 D553774-6 貧困 G Na
 シンガーは0.6Gの低重力とわずかな水界と薄い大気からなる貧しい世界です。水の不足により自生の植物相は発育を阻害されて草や低木ぐらいしかなく、生物も最大で30キログラム程度しかありません。
 つまりシンガーは植民には適していないのですが、562年に植民船がミスジャンプしてきたことからこの星の開拓がやむなく始まりました。入植者たちは、北から南まで惑星の3分の2の距離に達する最大の淡水湖である「鎌状海(Sickle Sea)」の沿岸に、散らばるようにして住み着きました。湖の西岸では農業や水産業が栄え、500年に渡ってシンガーの人口を支えてきました。
 しかし急速な人口増加に加え、工業化で貴重な水資源が汚染され、草原地帯での牧畜がかえって砂漠化を進行させたため、もはや惑星の全人口を養うだけの食料供給が得られなくなってしまいました。そして人々は十数もの国家に分かれ、水や漁場や農地を巡って争いを始めました。
 1102年のクレーラ国(Crella)とマルミ・コルマ国(Malmi Kolma)の列強同士の対立は、数国を巻き込んだ世界大戦に進展しました。現時点で200万人が犠牲となりましたが、戦争は終わる兆候を見せていません。そして、戦争に参加していないもう一つの列強国であるトニール国(T'neel)の動向が、戦争の行方を大きく左右すると見られています。
 フィルド宇宙港(Fird Starport)は外世界の投資家によって979年にCクラスの能力を備えてクレーラ領内に建設されましたが、頻繁な空襲や艦砲射撃により現在はDクラス程度の機能に低下しています。宇宙港にはなかなか宇宙船が訪れませんが、訪れた際には武器や食料や水を降ろして、裕福な避難民を運んでいきます。
 Eクラスの着陸地点は惑星全ての国家で見つかるかもしれませんが、クレーラ国は宇宙港以外のあらゆる土地への着陸は敵対行為であると宣言しています。一方でマルミ・コルマ国は、海賊船もしくは傭兵艦の借り入れを検討していると噂されています。
 シンガーに対しては、世界大戦の激化を理由としてアンバーゾーン指定が今後なされる予定です。旅行者は現地で大量の現金や貴重品を持ち歩いていると、戦争継続のためと称して没収される恐れがあります。また、汚染された水を飲まないよう十分注意してください。
(※GURPS版の1120年設定によると、「世界大戦の結果」、(1102年にはマルミ・コルマ陣営に属していた)アグリール国が北半球にある宇宙港を押さえて新大国として台頭し、一方で没落した旧列強同士が連携して「第三次大戦」の火種が燃え上がろうとしていますが、1120年にはアンバーゾーンであるこの星が1117年時点でアンバーゾーン指定されている公式設定はないため、1117年以降に「第二次大戦」が起きてアンバーゾーンが再指定された、と解釈可能です(1120年では停戦間もないため解除されていない)。よって、1102年から数年間戦われたであろう大戦はこの星で「初の」世界大戦と思われます)

567-908 567-908 1031 E532000-0 貧困・未開 Na
 帝国の第一期探査(First Survey)では発見されず、第二期探査でかろうじて星図に書き加えられたこの星の地形は、惑星の半分を覆う砂漠と、一つの大きな海とそれを囲むサバンナ、そして巨大山脈に分けられます。惑星の薄い大気と予測できない火山活動は入植地や企業の進出先としての魅力を損なわせ、いまだにこの星がただの番号で呼ばれている理由となっています。
 無人の粗末な「宇宙港」は、飲料水と燃料を確保するために赤道上の小さな川のほとりにあります。そしてほとんどの訪問者は、燃料補給を済ませる以外に長く滞在することはまずありません。
 この星系は、スピンワード・マーチの中でも最も価値のない星であると思われています。
(※1105年当時のこの星系に対する認識はこの程度だと思います。星系の詳細およびその後の展開については『Adventure 10: Safari Ship』『Planetary Survey 2: Denuli』を参照してください。また、1105年頃に「数名の偵察局員と傭兵が「宇宙港」に詰めていた」とする資料もありますが、少なくとも1110年時点で無人であることは間違いありません。『メガトラベラー』の1117年設定で「3人」が居住していることになっているので、そこから逆算で起こされた設定の可能性があります)

アヴァスタン Avastan 1037 C433520-A 非工・貧困 G Na
 アヴァスタンは薄い大気で水界の少ない、小さく貧相な惑星で、268地域星域の中でも入植が後回しにされていた星系の一つです。しかしここはファイブ・シスターズ星域とグリッスン星域を結ぶジャンプ-1航路上で重要な位置を占めています。
 1000年代の初め、投機目的でこの地にCタイプ軌道宇宙港を建設すべく、アヴァスタン宙港開発社(Avastan Portways,Inc.)がコレース(1237)で設立されました。コレース・アームでは少なかった、修理施設を備えた新宇宙港はたちまち自由貿易商人などの人気を集め、彼らの投資は早くも成果を上げました。その一方で地表は文字通り寒々とした無人の地で、宙港街すらありませんでした。
 API社は惑星自体の所有権を主張してはいましたが、大した資源のない惑星開発に投資したところで利益は見込めなさそうなため、入植には消極的でした。しかし、不法居住者の小集団がアヴァスタンに集まり始めた際には、同社は彼らの追放を思い留まりました。惑星を開拓する気のない我が社に彼らを追い出す大義はなく、それに自分たちの資金を使わずに開発が進んだ結果、宇宙港の利益が増えるのならそれで良いのではないか、と。
 かくして1024年にAPI社はアヴァスタンの所有権主張を取り下げ、新たな移住規制を行わないことを条件にして土地を不法居住者たちに譲り渡しました。この情報が広まると、コレースの開拓魂を持った人々だけでなく、268地域星域の圧制的もしくは硬直的な政治体制の星系の反体制派住民が入植者としてやって来ました。
 70万人の住民の多くは、1027年に建設されたアヴァスタン地上港(Avastan Downport)の周辺に住んでいます。そこで彼らは、API社運営の宇宙港に売却するための小規模農業や燃料抽出、港内でのサービス業に従事しています。一方、その他の住民は惑星のあちこちに小さな自給自足集落を建設しています。
 アヴァスタンの人々は自治と(無制限の武器所有を含む)自由を好み、外部からの干渉はわずかでも看過できません。司法機関も存在しないので、治安は地元の自警団(posses)が維持しています。裁判や立法は、全ての成人が参加する公開の「町会」の投票で決定されます。稀に惑星全体に影響を与える決定をしなければならない際には、全ての成人が惑星全体を結ぶ衛星通信網による投票行動で、直接的に政治に関与します。
 ただしアヴァスタンは決して無秩序ではありません。旅行客は、街中で公然と武器を持ち運ぶのが無礼とされていることを意外に思うでしょう。
 宇宙港当局は書類と積み荷の整合性の確認にあまり熱心ではありません。よって、海賊や密輸業者はアヴァスタンが自分たちの「商売」に向いた星であると認識しています。そして驚くことでもないですが、アヴァスタンの宇宙港はその荒々しさと乱暴さで有名です。API社の警備課は軽歩兵師団と同等の装備はしていますが、会社の資産を守ることのみ注力しています。そのため大規模な騒乱に発展でもしない限り、少々の不当行為では抑止には乗り出してきません。
 星域内の「冷戦」の影響で、トレサロン(1339)は海賊活動を助長するAPI社の共犯としてコレースを糾弾しました。コレース政府はAPI社の企業登録を取り消す対応をしましたが、すぐさま「アヴァスタン政府」が新しく同等のものを同社に与えました。トレサロンの狙いは、960年に帝国がターカイン(1434)に対して行った介入行動との差異を訴えて親帝国派のコレースに打撃を与えようとしたものですが、帝国の公式見解はアヴァスタンは海賊を「支援した」のではなく「見抜けていないだけ」としています。しかし真の理由は親帝国であるコレースへの外交的配慮であるのは言うまでもありません。

クァイ・チン Kwai Ching 1040 C503758-A 真空・非農・氷結 Na
 星系の第2惑星であるクァイ・チンは、非常に遅い自転速度(公転が181.7標準日に対して自転が21.5標準日)と大きな地軸の傾き(43度)が見られる奇妙な惑星です。おそらく10億年前の大規模な小惑星衝突によって大気が剥ぎ取られるとともに、その風変わりな回転をするようになったのだろう、と科学者は考えています。
 クァイ・チンの政治は、7人で構成される「統治理事会(Board of Directors)」で立法と司法の両面を執り行っています。理事は終身制で、欠員が出た場合には残る全理事の承認を経て後継者が指名されます。理事はたいていクァイ・チン大学の工学や経済学の学士号を得ており、理事の中でも最高位の者が国家元首とみなされます。
 行政当局は、一般市民の投票で選ばれた任期4現地年(≒2標準年)の主幹(Senior Manager)の下に置かれています。ただし有権者は40歳以上かつ、保安記録に何も注記が無い者に限られます。
 もう一つの機関は秘密警察である「監督局(Wardens)」です。名目上は理事会直属の組織ですが、実際は独自に活動しています。監督局は治安を維持し、市民を監視し、認可外の経済活動が行われないようにしています。
 この星の3000万人の住民はいくつかの大都市に集まって住んでいますが、それらは地表深くにか、渓谷の間に「屋根をかけて」居住施設化して造られています。
 クァイ・チンは500年頃に、コレース(1237)の反体制派によって入植されました。彼らは自由市場経済が人々から人間性を奪っていると考え、合理的な経済活動と社会計画をこの星にもたらすために統治理事会を立ち上げました。この体制は800年頃に産業用の宝石鉱脈が大規模に発見されるまで、驚くほどうまく機能していました。
 鉱脈の発見とともに帝国やソード・ワールズから富を求めて移民が押し寄せた結果、理事会の立てた計画経済は崩壊し、政権維持のために弾圧的な政策を取らざるを得なくなりました。それ以来ずっと、この星では社会不安の増大と監督局による弾圧が繰り返されてきました。
 その一方でクァイ・チンは、星域内の様々な対立構造の中で巧妙に中立であり続けました。宇宙港はコレースにもトレサロン(1339)にも開放され、農世界連合(※ターサスを参照)との貿易も保っています。惑星経済は鉱業に集中していますが、電子産業や鉱業機械も主要産業となっています。また近年では、隣接するシンガー星系向けに反重力車両などの兵器も輸出しています。クァイ・チンは後進世界ではありますが、星系に豊富にある鉱物資源や氷塊の存在は、やがてこの星が急速な発展を遂げるであろうと感じさせます。
(※余談ですが、星系名がT5 Second Surveyにて「Kuai Qing」に変更されたため、おそらく星系名の意味は「快晴」だと思われます)

ファルドー Faldor 1131 E5936A7-2 低技・非工 Na
 ファルドーはオターリ(Otarri)という両生類の群小種族の故郷です。鱗のある皮膚、(人類には不気味な)大きな目など、外見がとても魚のように見えることから、人類は彼らを「肺魚」(lung fish)とも呼びます。彼らは沼地に産業化以前の原始的な、女王を中心とした社会を築いています。最高権力者こそ常に女王に限られますが、オターリ社会は非常に男女平等的です。
 工業力がなく、商業航路からも外れた後進世界であるファルドーは、濃い大気中に胞子が漂っているので呼吸するにはフィルタ・マスクが必要です。気候は温暖ですが、極地の氷冠が成長を続けていて氷河期入りの兆候が見られます。さらに海面の後退により、惑星の大部分を占める陸地の乾燥化も進んでいて、このまま推移すれば、生息に湿潤が必要であるオターリは絶滅に向かってしまうと危惧されています。
 1042年まではオターリがどう文明を築いていくか帝国の異星生物学者が研究する目的のため、進入禁止星系に指定されていました。指定が解除されて帝国の商人がやってくるようにはなりましたが、新しい技術の取り込みに関してはよそ者への不信感から最小限でした(ただし一部の富めるオターリは、ハイテク製品をエノス(スピンワード・マーチ宙域 1130)経由でソード・ワールズから輸入しています)。彼らの文明は自力で銃器を開発できる水準に到達はしていますが、まだまだ不安定であり、時折爆発してしまうような代物です。

ボウマン Bowman 1132 D000300-9 S 小惑・低人・非工 G Cs
 小惑星星系であるボウマンは、主星から3000万~1億8000万kmの軌道(※軌道番号0~3)を覆う、これまで発見された中で最大級の分厚い小惑星リングを持っています(あまりの広さのために小惑星帯の本数に関する議論が行われたほどですが、現在は1本であると考えられています)。さらに、主星から2億5400万km離れた軌道(※軌道番号4)をガスジャイアントであるボウマン・プライム(Bowman Prime)が周り、プライムの周囲を衛星が2つ(とリングが1本)回っています。ギャリソン宇宙港(と粗末な偵察局基地)はプライムの内側の方の衛星アルファに建設され、もう片方の衛星イプシロンには1093年に発見された約2000年前のダリアン人前哨基地跡があります。また、主星とガスジャイアントのトロヤ点には、小規模ながらも宇宙鉱夫のために燃料補給や娯楽の施設が建設され、第二次辺境戦争後に帝国に戦いを挑んだソード・ワールズのデニソフ艦隊の残骸が今も漂っています。
 ボウマンには政府や法律に類するものはありません(110条の「掟」のようなものはあります。またギャリソン宇宙港およびギャリソン市内は帝国偵察局が独自の法を執行しています)。8500人の住民は、それぞれが独立宇宙鉱夫か小規模会社の鉱夫かその家族であり、小惑星帯に点在して住んでいます(ちなみに衛星アルファには3100人(内、ギャリソン市に2100人)、小惑星帯中心部のケーニヒズ・ロック(Koenig's Rock, デニソフ艦隊を打ち破った帝国のケーニヒ提督にちなんで付けられました)と呼ばれる直径600mの小惑星には800人が生活しています)。彼らは小惑星の採掘や探査活動で生計を立てていますが、それとは別に約3000人の「会社の人間」がボウマンには居ます。
 彼らは高給で雇われた(元独立鉱夫の)LSP社の人間で、社が買い取った小惑星軌道で武装小艇と傭兵の保安要員に守られながら採掘活動を行い、宇宙港近くのLSPの2つの宇宙ステーションまでマスドライバーで鉱石を射出し、そこで延べ棒に加工しています(地元との契約上、地元住民が採掘した鉱石の加工もここで請け負います)。また第3のLSP基地がプライムのリング上に置かれ、リングの氷塊から化学物質や酸素や水素を抽出しています。
 地元住民は、LSPが大きな施設を星系内に建設して、我が物顔で活動していることに不快感を抱いています。
 第二次辺境戦争(615年~620年)の後、帝国が当時のソード・ワールズ領11星系を占拠したことを受け、ナルシル(スピンワード・マーチ宙域 0927)のデニソフ提督(Admiral Denisov)は621年、艦隊を率いて帝国への抗戦を開始しました。同年、ナルシルでの戦いで敗北したデニソフ提督は残存艦艇をまとめてボウマンに逃げ延び、そこを拠点に各地で巧妙な通商破壊戦を続けました。しかし遂に628年にマータクター(1537)でケーニヒ中将(Vice-Admiral Koenig)率いる帝国艦隊に破れ、ボウマンの小惑星帯まで追撃を受けてデニソフ艦隊は降伏しました。この時以来姿を消したデニソフ提督の不屈の精神は、今でもソード・ワールズ海軍に受け継がれています。

スクァーリア Squallia 1133 C438679-9 非工 Na
 スクァーリアは、人口危機を迎えたフォーニス(スピンワード・マーチ宙域 3025)から453年に入植されました。その頃から入植者たちは意見の違いからゆっくりと分裂していき、やがて小国分裂世界となりました。現在では32国のうち6国が親帝国路線を掲げていますが、多くの国は中立の立場を採っています。なお、300万人の住民のうち200万人が惑星の五大都市国家に住んでいます。
 帝国偵察局はこの星系をTL9と記載していますが、全ての国がTL9というわけではなく、大体の国はTL7~8程度です。低い生産力のために輸出は盛んではありませんが、それでも星域の労働者のための手頃な予備部品や中TL装備の供給元となっています。ボウマンからは船が頻繁に訪れ、金属鉱石を装備や食料と交換しています。
 近頃、都市国家ダサス(Dasas)から約200キロメートル離れた場所にある、数十年前の紛争で放棄された鉱山街に数百人のイハテイ(土地を持たないアスラン集団)が住み着き始めました。ダサス周辺の都市国家の住民は、この「不法占拠者」たちが呼び水となって大勢のアスランがこの星に押し寄せるのではないかと心配し、ダサス政府は傭兵を呼んでイハテイを追い払おうと検討しています。

ターサス Tarsus 1138 B584620-A 農業・肥沃・非工 G Cs
 ターサスは濃い呼吸可能な大気に恵まれた星系です。水界は、2つの海(北方の「風の海(Sea of Winds)」と南方の「大極洋(Great Polar Ocean)」)などで惑星表面の42%を占めています。惑星ターサスの公転周期は91.25標準日で、自転周期は73標準時間です。ここでは1現地年が30現地日となる暦が使われています。
 ターサスは農業世界で、大部分の人は耕作や牧場経営で生計を立てています。中でもターサス産のノブル(nobble)の肉は代表的な輸出品です(※ノブルは長い尾で体を守る体重400kgほどの半家畜化されたがっしりとした草食動物です。ノブルからは肉の他に高品質の革が取れます)。
 ターサスには450年代に、約2万人の「亡命者」がフォーニスから移り住みました。よく組織された植民地は技術後退することなく、502年にはフォーニスからの独立を達成しました。
 人口は何世紀にも渡って確実に増えていきました。また他の世界からの移民によっても時々補われました。625年には、ソード・ワールズ軍のティソーン第3反重力化連隊(Tizonian 3rd Lift Regiment)とその家族が、第二次辺境戦争時にヴィリス(スピンワード・マーチ宙域 1119)にて犯した戦争犯罪の告発によって追われ、ターサスにやってきました。彼らの子孫はやがてターサス社会に溶け込んでいきました。780年には、隣接するパヴァビッド(1238)に宗教独裁政権が誕生し、流れてきた難民たちがターサスに落ち着きました。また、800年代には帝国内の超能力弾圧を逃れた人々が到着しています。彼らの子孫の存在により、ターサスはスピンワード・マーチの多くの世界で見られる超能力への恐れをほとんど持っていません。
 ターサスはモトモス(1340)とターカイン(1434)と共に農世界連合(Ag Worlds Combine)を780年に結成しました。連合はコレースやフォリンといった高人口世界における破滅的な価格競争の連鎖を避けるために、ゆるやかなカルテルとして運営されています。また、268地域星域の農業に適さない惑星に食料を供給もしています。
 帝国系メガコーポレーションのSuSAG社は、この地で860年から大きな研究施設と工場を運営しています。この工場が何を生産しているのかは、厳重な警備がなされていて不明です。
(※1110年にある「発見」があり、ターサス史が大きく書き換えられるのですが、このことについては伏せました…といっても、マングース版『The Spinward Marches』ではなぜか1105年当時では知られていなかったはずの「発見」について言及されてしまっています)

ウォルストン Walston 1232 C544338-8 S 低人・肥沃・非工 G Cs
 ボウマン・アームで人気の立ち寄り先であるウォルストン星系は、この星を最初に訪れた帝国の探査船の船長の名から付けられたアルビン星(Albin's Star)の周囲を、5つの惑星と2つのガスジャイアント(インシヴ(Insive)とグリーニッシュ(Greenish))が回っています。小惑星帯はありませんが、ガスジャイアントのトロヤ点には彗星や小惑星の集まりが見られます。
 惑星ウォルストン自体はアルビン星の最内周軌道の可住圏内に存在します。薄い大気によって気温は非常に変化しやすくて乾燥していますし、低標高地域での呼吸にはフィルタ・マスクが必要です。可住圏の外端に位置する関係で日中でさえさほど暖かくはなく、夜間は惑星上の全地域が凍結するほど気温が急落します。地表の半分近くは水界ではありますが、それは液体の状態とは限りません。極点付近ではかなりの深度まで凍結しており、赤道付近でも氷山が見られます。水分が凍結して蒸発しないので、雨量は少ない傾向があります。ウォルストンは衛星を持たないため潮流は弱いのですが、深海で熱せられた水が暖流を形成していくつかの地域を住みやすくしています。
 住民は、最大大陸であるウォルストン=メイン(Walston-Main)の東海岸沖に浮かぶセツルメント島(Settlement Island)に集中して居住しています。この島はかなり大きく、南北に約200km、東西に350kmほどあります。島自体は南端にある巨大な死火山であるサルバリイ山(Mount Salbarii)とその周辺の丘陵地域を除けば、標高は高くありません。島の周辺を流れる暖流によって海は多種多彩な生命に富んでおり、雨量も平均的です。サルバリイ山が吸収した雨は2つの美しい湖に貯められてから、北に向けて川を流れていきます。この川は島の内部に惑星内で最も居住に向いた地域を作るだけでなく、入植地間の交通路としても用いられています。ここでは主に、水産養殖と農業を中心とした自給自足経済が営まれています。
 帝国は第四次辺境戦争後の1084年に、帝国に忠誠を誓ったヴァルグルに(多くの議論の後)帝国属領の低人口世界であるこのウォルストンに「新しい家」として土地を提供しました。今では人口の90%がヴァルグルとなっていますが、政府は第二帝国時代から住む人類の特権階級によって支配されており、ヴァルグルは二級市民扱いされています。帝国偵察局はこのことが反乱の発生に繋がるのではないかと懸念しています。

フレクソス Flexos 1233 E5A1422-6 非工・非水 Na
 フレクソスは広大な砂漠、異種大気、低人口、質の低い宇宙港と悪条件が揃った典型的な後進世界で、ターカインからボウマンにかけてのジャンプ-2通商路からも外れています。しかし惑星の海や植物は未知の可能性を秘め、絶滅した原住知的種族の遺跡は宙域中の異星生物学者や観光客の注目を集めています。
 この星の植物相は主に多肉植物ですが、湿気や光や土の成分次第で非常に異なる形に変化するため、その種類は膨大な数です。この興味深い特徴は入植者の間に「植物愛好会」を作らせ、首都や郊外での社交場のような役割をしています。しかしこの植物愛好会の人気の一部には、多くの植物が向精神作用物質を含んでいるから、というのもあります。この中毒性は大した事が無い上に商取引でも利益を得られるため、政府は愛好会を黙認していましたが、中には(抗老化薬や超能力ドラッグを含む)医学的用途に向いた成分を含むものもあり、政府は帝国やダリアン連合の研究者を雇い入れて研究を進めています。
 フレクソスの62000人の住民のうち、9割はダリアン人、残る1割は(ダリアン社会に同化していた)アスランのアーリュクーティスタオクーテ氏族(Arlyukhtistaokhte clan)です。彼らのほとんどはフテヤローア地方(Htyarloa)の農地に住み、残りの者はアスランを中心として惑星の防衛力の中核を担っています。フレクソスはダリアン連合の公式の植民地ではありませんが、地元では製造できない核融合発電所や中古の宇宙船の形で非公式に援助を受けています。
 治安レベルは低いのですが、エネルギー武器の所持は常設軍に限られています。そして全ての市民は予備役兵でもあり、良く訓練された上で小銃を所持しています。住民は時折起こる海賊の襲撃に備えるだけでなく、持ち回り制で警察の役割もしています。一方で外世界からの訪問客に対しては、市街地でのあらゆる武器所持は禁止され、郊外でも軽火器が許されるぐらいです。
 フレクソス軍はアスランを主体として1000人ほどから成ります。密輸業者から買い付けたTL10~12の装備で立派に武装されていて、中古の反重力戦車や輸送用エアラフトも保有しています。彼らは住民から信頼されており、高い士気を保っています。近年ではアスランに率いられる(人類と混成の)私掠船団と契約して、老朽化した惑星防衛艦による惑星防衛や、ぼろぼろのガゼル級護衛艦によるダリアン連合方面への輸送護衛任務にあたらせてもいます。
レフリー情報:フレクソスの現在の最高指導者であるゾス・ニャデレモンド(Zos Nyaderemond)は、最初期の入植者から続く家系の末裔です。カリスマ的指導者である彼は実利を重んじ、入植地の発展のためにダリアン連合と帝国、そしてTTC(※トレサロンを参照)の全てに対して機嫌を取る政策を慎重に進めました。帝国海軍に有用な情報を流す一方で、TTCからは資金や機材を受け取って星系内に秘密宇宙港を建設することを黙認するなどしています。

コレース Collace 1237 B628943-D S 工業・高技・高人 G Cs
 おそらく268地域で最も重要な非帝国世界であるコレースは、低コストでハイテク製品を製造している高人口世界です。直径約1万キロで表面重力0.91Gの惑星コレースの大気はとても薄くて汚染されており、呼吸にはフィルタ処理されたマスクを必要とします。平均気温もマイナス9度しかないため、与圧居住施設区画である「ハブ」の外に出る際には寒冷地/紫外線対応の装備が必須です。コレースの大量の水界はいくつかの湖の底や、夏期の赤道沿いで溶けた氷河が曲がりくねった川や小さな浅い海を作り上げる以外には、主に凍結しています。なお、コレースの1現地日は約20標準時間です。
 およそ10億人の住民(ほぼ全てが人類)がコレースに居住していて、二大派閥に分かれた議会制民主主義政府に統治されています。多数派のコレース人民党(People of Collace)は帝国への正式加盟を強く推進しており、高人口世界のコレースを将来の星域首都に位置付けようとしています。実際、人民党政権はグリッスンを通じて帝国に加盟申請を行いましたが、申請は現在保留されています。その理由は、反帝国の姿勢を採ってソード・ワールズの支援を受けているトレサロン(1339)を過度に刺激しないためですが、これにより両星は「冷戦」に突入しています。
 人民党は星系のハイテク産業を帝国加盟によってさらに発展させようと考えています。一方、少数派であるコレース右派同盟(Right of Collace Coalition)は自星の経済力が貪欲で非情な恒星間経済に飲み込まれてしまうことを警戒し、デモ行進などで抗議活動を繰り返していましたが、徐々にそれが過激化していったため、大多数である人民党支持派住民の悩みの種になっています。
 コレースの治安レベルは比較的低いですが、空気や環境の特性から幾分厳しい規制も敷かれています。船の着陸は宇宙港に限定され、強力な武装は港周辺では封印しなくてはなりません。個人用の防具に関する規制は特にありませんが、武器に関しては密閉された居住区への影響を最小限にするために白兵戦武器の所持のみに限定されています(ただし港周辺では小銃が公然と持ち歩かれているのが実情ですが)。与圧区画内での戦闘行為は通常1~3週間程度の投獄となる罪ですが、銃器を使用した場合にはそれが5~15週間と重くなります。なお旅行者は、貧困層が多く住む居住区では犯罪に十分注意してください。
 Bタイプの軌道港と地上港は共に、グリッスン星域方面からの貿易や旅客需要の増大に伴って拡張工事が(たびたび遅れてはいますが)続けられています。帝国加盟を目指すコレース政府の要望により、帝国偵察局は星系内惑星やその衛星に訓練施設や補給庫や早期警戒ステーションを構えて、それらを惑星コレースの衛星カークトン(Kirkton)にある基地で統括し、同時に宇宙港や星系軍の管制網の後援もしています。これらの基地の存在は少数の反動的な政治集団にとっては、自分たちの首根を帝国が踏みつけに来たように映っていますが、とはいえ大多数のコレースの人々は、帝国からやってくるあらゆる報道、有名人、美術、文化、そして特に貿易を切望しています。

パヴァビッド Pavabid 1238 C6678D8-6 肥沃 A G Na
 パヴァビッドは平均的な重力、温暖な気候、豊富な水を持ち、潜在的には豊かな世界ですが、この星系は780年から星神教会(Church of Stellar Divinity)の一派によって支配されており、経済発展や技術開発は大きく遅れています。異端パヴァビッド派の教義によれば、他の全ての星の神は悪であり、唯一の善神(パヴァビッドの恒星)が預言者として「星の子」(Son of the Star)を遣わした、と主張しています。教会は日常のささいな振る舞いも厳しく教義で定めています。
 そんな柔軟性のない停滞した世界に住む7億人の住民は、TL6の技術を維持していますが、情報が制限されているので外世界人への知識がありません(旅行者は「悪の星」から来ているのです)。
 「星の子」が統治を行っている空中教会は、民衆は神の手によって空に引き上げられているのだと信じています。が、実際はグリッスン製の反重力技術によるものです。
 外世界人との貿易のために面積4平方キロの貿易飛び地が設けられています。ここは「汚染」を防ぐために広大な荒野に囲まれていてパヴァビッドの住民たちからは切り離されており、教会に忠実な聖職者が常駐し、教会の突撃兵(church shock troops)によって守られています。飛び地内の治安レベルは8であり、飛び地の中でさえ多くの規則に抵触することは容易です。さらに飛び地の外の社会はレベル9ないし10に分類されるため、トラベラー協会はパヴァビッドをアンバーゾーンに指定しています。
 パヴァビッドはコレース(1237)とトレサロン(1339)の「冷戦」の舞台にもなっています。プラチナとイリジウムの鉱脈が(それらの採掘技術を持たない)パヴァビッドに発見されて以来、両者は鉱物の採掘権を確保するために「星の子」の支持を得るべく争っていました。しかし現在まで、外世界の鉱夫がやってくることでパヴァビッドの純粋な神政社会を取り返しのつかぬほどに汚染してしまう恐れのために、「星の子」は両者の申し出を拒絶しています。
 星神教会の基本的な理念は、全ての恒星が神(並外れた力の精神的存在)であるということです。人が恒星を崇拝し、良き人生を送り、教会の教えに従うなら、その魂は死の際に恒星に引き入れられ、神と一つとなるとしています。教会は帝国内では、信者としての義務がほとんどなく、政府とも争わないので、人気があります。
 なお教会はパヴァビッド派を公式に異端であると宣言し、批難しています。

ダトリリアン Datrillian 1331 E227633-8 非工 G Na
 ボウマン・アームにおけるジャンプ-1宇宙船のための玄関口にあたるダトリリアンは、公転周期約50標準日のガス惑星ラーン(Ran)の最外周衛星です。極地でこそ年中氷が見られますが、赤道の昼間(自転周期は約13標準時間)の気温は25度あり、地軸の傾きが少ないため季節の変化は乏しいです。しかしラーンの影に入る2週間の「冬季」には激しい嵐が吹き付け、その時の気温は赤道でも-135度に達します。ダトリリアンの7割は極地を除いて液体の水で覆われていますが、海上には氷山が多い上に潮汐力で海が荒れることも多く、水上船舶の航行は危険を伴います。
 人口840万人のうち、770万人が赤道沿岸部にあるドーム部と地下部から成るヴィンターガルド市(Wintergard)に、残りの住民は沿岸や内陸にある重要な資源採掘地に10万人規模の小さなドーム都市を建設して住んでいます。ほとんどの住民は暗黒時代や帝国拡張初期に入植したソロマニ人やヴィラニ人の血を引いていますが、少数の支配階級は300年ほど前にグラム(スピンワード・マーチ宙域 1223)からやって来た亡命者の子孫(つまりソード・ワールズ人)で固められています。彼らは技術的優勢でこの世界の支配権を手に入れ、その後は賢明な統治を続けました。
 ダトリリアンは封建君主制で、王族に生涯の忠誠と奉仕を誓う見返りに、住宅や教育や健康管理といった公共サービスが提供されます。この社会構造は安全で安定しているため住民には受け入れられていますが、変化を好まない自給自足型社会はえてして変化をもたらす余所者を嫌うものであり、ここも例外ではありません。ダトリリアンは今後の投資や開発が見込まれる世界ですが、特に支配階級は世界の安定を揺るがしかねないという理由から反対を続けています。
 この世界では政権へ不平を唱えると収監されます(主に政治的理由ではなく、王族が惑星産業を独占支配している事への不満です)。金持ちなら金で解決することも可能ですが、有罪判決を受けると片道ロケットで打ち上げられて惑星レギン(Regin)に送り込まれます。公式にはレギンは「植民地」とされていますが、数百人の政治犯や刑法犯しかいないこの惑星は事実上の刑務所です。
 現時点で宇宙港は非常に初歩的ですが、軌道防衛施設の改修が続いています。これは旧式のPADミサイル(Planetary Aerospace Defense missiles)から、帝国傭兵部隊の払い下げ品である軌道迎撃機(orbital interceptors)への更新を目的とし、軌道上での通関検査を今後実施するためのものと見られています。最近、王はラーンの荒れ狂う大気圏内での燃料補給を「安全確保のために」禁じ、地上宇宙港で相場の倍額の非精製燃料を購入させています(※しかしラーンでの燃料補給が非常に危険なのは事実です)。
(※グラムでは788年に第一次辺境戦争敗戦をきっかけとした政変が発生しているので、この星の支配階級はこの時の亡命者である可能性が高そうです)

ニルトン Nirton 1332 X600000-0 真空・未開 R G Na
 ニルトンは空気も水もない「死の世界」ですが、500年代前半の帝国偵察局の探査によって、広範囲に放射性物質や重金属の鉱脈が発見されました。第二次辺境戦争後、ソード・ワールズ連合にこれらの資源を与えないため、621年に帝国当局はニルトンを戦略的鉱物保護地(strategic mineral reserve)と宣言し、進入禁止星系に指定しました。さらに、帝国がニルトンの領有を主張せず、268地域星域全ての独立星系や帝国属領星系に等しく鉱物資源を共有すると約束したため、この指定は全ての世界で守られています。
 ニルトンにやってきた宇宙船は、ニルトン以外の唯一の惑星であるガスジャイアントで燃料補給するかもしれません。しかし、ニルトンまたはその衛星テデハン(Tedehan)に着陸することは、懲役刑と宇宙船の没収の罰を受ける罪であることを星系外周のビーコン衛星は絶えず警告しています。
 ニルトン星系唯一の住民は、テデハンにある小さな帝国海軍監視所です。この施設はテデハンに近づく船に対して、明らかに発砲できる能力を備えていますが、実際に発砲された記録はありません(帝国海軍が発砲記録の公表を差し控えている可能性はあります)。また、頻繁に帝国軍の巡洋艦やガゼル級護衛艦が惑星ニルトンやテデハンの周囲でパトロールを行っています。


その2に続きます
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