宇宙の歩き方

The Astrogators' Guide to the Charted Space.

宙域散歩(20) テラ

2013-01-26 | Traveller
「帝国の端(スピンワード)から端(リム)まで横断して、私は全ての人類の故郷であるテラに着いた。私は、私自身の『何か』をここで見つけることができると思っていたが……」
アキッダ・ラアギイル「かつて地球と呼ばれた星」
トラベラーズ・ダイジェスト誌 1108年


惑星テラ全図 1ヘクス=667km

テラ Terra 1827 A867A69-F NW 高技・高人・肥沃 G Im 軍政
 テラ星系は歴史的に重要な星系であり、リム方面の紛争の中心地でもあります。暴力事件は散発的に発生はしますが、治安は比較的安定しているため、旅行に向いた星系です。帝国内でもキャピタル(コア宙域 2118)、ヴランド(ヴランド宙域 1717)に次ぐ、(ソロマニ人だけに限らない)人気の観光地で、古びた都市や史跡、本物のソロマニ文化の香り、多彩で豊かな自然、美味と謳われるテラ料理は、多くの旅行者や学者を惹き付けています。
 他の星系では無視されるような惑星までも入植地が造られた、という意味では、テラ星系は珍しい存在です。宇宙探査初期において、入植地は太陽系(当時の呼び方ですが、今でもたまに住民からはこう呼ばれています)の至る所に確立されました。あらゆる惑星と衛星表面は探査され、ガス惑星ジュピターの深部でさえ危険を冒して調査されました。
 ちなみに、恒星ソルや惑星テラの数値を「1」とする単位系は、慣例的に帝国の様々な場所で使われています。


主星ソル:
 スペクトル型:G2V 質量:1.000 半径:1.000 光度:1.000
 構成:惑星9、小惑星帯1、空白軌道1、ガスジャイアント4

惑星構成:
 1マーキュリー   G30046A-E研究所
 2ヴィーナスG8B0168-E
 3テラA867A69-F NW   高人・軍政
60ルナF20076C-FN入植地・研究所
 4マーズF43056A-F軍事基地・入植地
 5小惑星帯F00066B-E入植地
 6ジュピター大型GG
(リング)YR00000-0
イオY210000-0
エウロパH200000-0
15ガニメデF300468-F軍事基地
25カリストY30016A-F研究所
 7サターン大型GG
(リング)YR00000-0
ヤヌスYS00000-0
ミマスYS00000-0
エンケラドスGS00268-F研究所
テティスYS00000-0
ディオーネYS00000-0
レアH10046B-ES
20タイタンY3A0168-E
25ハイペリオンYS00000-0
60イアペトゥスY100000-0
225 フェーベYS00000-0
 8ウラヌス小型GG
(リング)YR00000-0
ミランダYS00000-0
アリエルY100000-0
10ウンブリエルHS00269-E
15ティタニアH100168-E
20オベロンY100000-0
 8.5ネプチューン小型GG
(リング)YR00000-0
15トリトンY210169-E
20ネレイドYS00000-0
 9プルートーF10046C-FN研究所
20カロンYS00000-0

主要惑星テラ:
 軌道半径:1億4960万km(1.00AU) 公転周期:365.25日 衛星:1
 直径:12742km 密度:1.00 質量:1.00 重力:1.00G
 自転周期:23時間56分4秒 自転軸傾斜:23度26分21秒 温室効果:1.10
 地表平均気圧:1.00atm 大気組成:酸素・窒素の混合気体 呼吸可能
 水界度:71%(液体の水) 地表平均気温:15.0度(気象制御あり)
 総人口:195億人(1億人以上都市12、1000万人以上都市200)
  ロサンゼルス市:5億人(パウロ宇宙港/Aタイプ)
  メディナ・アル=キターブ市:1億7000万人(AECO宇宙港/Aタイプ)
  ラグランジュ市:1億人(ラグランジュ宇宙港/Aタイプ)
  ロサンゼルス市・パウロ軌道宇宙港(Aタイプ):2750万人
  AECO軌道宇宙港(Aタイプ):1300万人


テラ Terra(Sol Delta) A867A69-F NW
 かつて「地球」と呼ばれていたテラは、ソロマニ人の母星であり、全ての人類の遺伝子的な故郷です。この地は地球連合、テラ商業共同体(Terran Mercantile Community)、OEU(Old Earth Union, 古き良き地球同盟)、ソル領域、ソロマニ自治区、ソロマニ連合の旧都であり、現在は帝国の軍事支配下に置かれています。ソロマニ・リム戦争による傷跡は、物質的にも精神的にもほぼ修復されました。今ではテラは、TL15の高品質なハイテク製品(特に電子機器)の主要な製造元で、医療などの一部分野ではTL16に到達しています。テラは栄光の都でこそなくなりましたが、次の世紀に向けて新たな役割を模索しています。
 「地球人」が宇宙に旅立ってから3500年が経過し、この惑星の自然は環境の変化や惑星改造によって、かつてとは大きく姿を変えました。サハラ砂漠は広大な農地となり、ロボットが耕作をしています。「人類の支配」時代にカッターラ低地へ新たな内海を造り、ナイル川の流れを変えたことにより、この地域により涼しい湿潤気候がもたらされたのです。-1500年頃には、天災と惑星改造の組み合わせによりシベリアで地中海とほぼ同等の面積が水没し、気候の温暖化も手伝って肥沃な緑地と化しました。宇宙開発前の時代と比べて海面は平均5メートル上昇し、巨大な防潮壁が沿岸部の多くの住民や史跡を保護しています。

 現在南アメリカ、カリブ海、アフリカ南部は、最も都会化され、工業化されています。気候の良いこれらの地域は、暗黒時代に北半球に代わって地上の繁栄の中心となりました。特に南アフリカは星系内で最も賑やかな金融街であり、ヨハネスブルグ市にはテラ証券取引所が置かれています(もっとも株取引の大部分は情報ネットワーク上で行われていますが)。北アフリカの地中海沿岸や西アフリカ沿岸部も大都市化が進み、アフリカ大陸全体で40億人が住んでいます。そして東アルジェリア地方の旧ジェリド塩湖のそば、メディナ・アル=キターブ市にはAECO(African-European Cooperative Organisation, アフリカ=ヨーロッパ協力機構)宇宙港が置かれています。
 50億人の人口を抱える南アメリカ大陸の沿岸部にもほぼ人が住み、都市群が切れて無人の海岸線があるのはティエラ・デル・フエゴ(※大陸最南端の諸島)とアマゾン川の河口ぐらいです。一方で内陸部では人はまばらで、土地の多くは自然保護区に指定されています。テラの首都はリオデジャネイロ市に置かれ、アンデス山脈のチチカカ湖のほとりには帝国総督公邸があります。これは876年にソロマニ連合の事務総長公邸として建設されたものをそのまま利用しています。
 北アメリカ大陸およびカリブ海地域には35億人が住み、その半分以上が旧メキシコやカリブ海に居住しています。かつては後進地域だったカリブ海は、今では惑星で最も人口稠密で繁栄している地方の一つとなりました。ボストン市からトリニダード市までアーコロジー群が連なり、理論上は都市から一歩も出ることなく端から端まで歩いて渡ることができます。この地域は企業活動が惑星上で最も活発で、アーコロジーでは企業家たちが忙しく活動しています。パウロ宇宙港(Paulo Starport)は北アメリカ大陸のロサンゼルス市南東にあり、惑星の交通の3分の2はこの港を通過しています。そして高速交通網は宇宙港からアメリカ大陸の各都市へ接続されています。ちなみに、この港は昔は「フェニックス宇宙港」と呼ばれていましたが、ソロマニ抵抗運動と同じ名前であるのを避けて、1040年に当時の皇帝パウロ3世の名前を採って改称されました(※フェニックスが地名であることを強調するために、フェニックス・メサ宇宙港(Phoenix-Mesa Starport)という呼ばれ方もされるようです)。
 ヨーロッパ地方には歴史保存地区が多く、古代の文化が守られた静かな地域です。テラ大学のキャンパスはこの地域に集中しており、主なものはパリ市、ベルリン市、ストックホルム市にあります。
 アジア地域には、中東からインドにかけて10億人が、東アジアには20億人が住んでいます。ここは歴史的に文化保存の意識が強く、今でも古代の言語や文化をそのまま守っている人もいます。偶然かはわかりませんが、メソポタミア地方とインド地方にはヴィラニ人が多く住んでいます。
 オセアニアはインドネシア、オーストラリア、太平洋の群島を含む広い地域で、30億人が住んでいます。浅瀬には巨大なアーコロジーが建設され、「高さ」1kmの水中都市も多くあります。またドルフィンの群れもこの地域に住んでいます。巨大ケルプ栽培や養殖漁業などでオセアニアはテラの食料庫となっているのと同時に、食料輸出の大部分もここで担っています。軍港として用いられているラグランジュ宇宙港(LaGrange Starport)が近くにある関係で、アリススプリングス市には帝国海軍と偵察局の星系本部が置かれ、砂漠地帯の多くは軍用地として確保されています。なおラグランジュ宇宙港は、オセアニアやアジア方面に向かう民間人も一部利用しています。
 テラ最後の辺境である南極大陸にもシャクルトン市が建設され、拡大が続いています。また空中や軌道上にも、富裕層が住むような豪華な都市があります。
 だいたいどの地域でも、人口が都心部に極端に集中しないように田園地方への人口分散の努力が続けられる一方で、どこに住んでいようともグローバル・データネットと反重力交通網の整備で住民が孤立化しないよう配慮されています。

 この3500年の間、人々の努力も虚しく、テラ文明は均一化していきました。宇宙旅行時代初期に話されていた何千ものの言語のうち、第一言語として生き残ったのはわずか8つだけです。最新の国勢調査では、70%以上の住民が(訛りの強いリム方言の)銀河公用語だけを話し、第二言語としても銀河公用語を解さない住民は約2%のみとなっています。大衆文化はその多様性を歴史の中に追いやり、かつて「民族」と呼ばれていた分類法も今では意味を持ちません。むしろスピンワード・マーチ宙域やアイランド星団(レフト宙域)の方が、前星間技術時代の民族文化に出会えるほどです。
 その一方で古い都市には、自分のルーツを見に来たソロマニ人や、オーセンティストの観光客のための(「食い物にする」とも言う)大きな歴史体験テーマパークが造られていて、「テラでは今も古代のフランス語や日本語やラテン語が話されている」と他星系で誤解されている一因ともなっています。またテラの人々は近代的な巨大アーコロジー都市と歴史的な街の混合体に住んでいますが、そのため観光客の中には、テラ市民が(外世界人には貴重なものに見える)古い建物を平然と住居やオフィスにしている日常的光景にショックを受ける人もいますし、惑星全体がテーマパークであると誤認してテラの一般市民に対して写真のためのポーズを取ることを要求したり、伝統的で風変わりな格好をしていないと文句を言ったりするなど、ちょっとしたトラブルが起こることもあります。

 外世界人や異星人も多くテラに居住しています。ヴェガンはテラの気候と高重力を不快に感じるためほとんど住んでいませんが、ヴィラニ人は言うに及ばず、アスラン商人もどこの大都市にもいますし、ハイヴはオーストラリア大陸東海岸の数十万エーカーの土地を購入するほどテラを気に入っています。ソロマニ党政権下での抑圧の時代でさえ、テラの人口の約8%は混血もしくは非ソロマニ人でした。

 定期的な人口爆発との戦い、第三次恒星間戦争時の核攻撃、前星間技術時代と暗黒時代における生態系の大異変、にもかかわらず、テラは美しく、生態学上も多様な世界のままです。遺伝子工学の発達は、いくつかの絶滅種を復活させ、ミニファントのような新種も創り出しました。以前のソロマニ連合政府はテラに莫大な資金を投じて、南アメリカ・アフリカ・南アジアの熱帯雨林やジャングルを再植林し、広大な自然公園や野生保護区を造り、気象制御システムで丁寧に管理しました。博物館や史跡(ピラミッド、万里の長城、ペンタゴン、TMCタワー(※暗黒時代のテラ商業共同体の施設だと思われます)など)にも修復のために資金が回され、ローマ市やニューヨーク市などの古都は大気汚染から歴史的な街並みを守るために巨大なドームで覆われました。これらの一部はソロマニ人優越思想の「物語」に沿うように歪められましたが、一般的にはテラの全ては敬意をもって扱われました。皮肉なことに、これらの投資の最大の受益者は結果的に帝国市民となりましたが。

 テラの軍政は、帝国から派遣された総督と官僚、そしてそれを支える帝国海兵隊の駐留軍から成ります。地方議会や大陸議会は選挙によって選出され、非軍事の地元官僚が末端の行政を担います。現在の総督は、1103年に赴任した帝国陸軍のスタニスラフ・ガサイ大将(General Stanislav Gasai)が務めています。46歳の彼は、1110年に迫った民政移管への土台作りに苦心しています。
 テラには地方警察はありますが、星系軍は組織されていません。1002年~1005年および1040年代のテラではゲリラ攻撃が頻発しましたが、反帝国組織の多くは駐留軍によって容赦なく壊滅させられ、その結果、1064年にはアンバー・トラベルゾーン指定が解除されました。テラがこのまま平穏無事であれば、1109年末で軍政は終了する予定です。
 圧制的な治安レベル9は、屋外でのあらゆる武器所持が禁止されることを意味します。
 軍政は非常に厳しい交通管制を敷いています。法律によって車両の手動操作は制限されており、車両の保有自体も厳密に管理されています。警察と救急と軍関係を除いた全ての飛行機(大部分は反重力車両)は、地域ごとの遠隔交通管制によって特定の空路(gravway)を通過するように定められています。
 テラにおけるロボットは、シュドゥシャム協定よりも厳しく管理されています。これは、テロ集団「テラの支配(Rule of Terra)」が家令ロボットや配達ロボットを改造して暗殺やテロ攻撃に用いていたことによる措置です。
 税制度は常識的ですが、商業や工業には多くの規制がかけられています。環境法は特に厳しく、土地利用、資源開発、廃棄物処理などあらゆる面で細かく定められています。
 テラ市民には表現、集会、宗教などの基本的自由が規定されていますが、その自由には例外が多く設けられています。例えば、反帝国的な言動や帝国貴族に対する侮辱表現、暴力の扇動やヘイトスピーチは法律違反となりますし、帝国当局は検閲の権利を有しています。ただしその制限下であれば政党活動は自由なため、1050年代から徐々に結成されてきています。有名なものでは親帝国派の「自由党(Freedom Party)」や、環境保護政党の「緑の地球党(Garden Earth Party)」、また帝国と連合の平和的な国交正常化や軍事基地の撤去を訴える穏健派ソロマニ党も存在します(※テラのソロマニ党は1095年に合法化され、穏健派、汎地球派、テラ派など非暴力的な4派閥が別個に活動しています。中でもテラ派は親帝国路線を採る特異な存在です)。

 ソロマニ主義の存在はテラの不安定要因であり続けていますが、ここ数十年でずいぶん落ち着きを取り戻しました。市民の間に軍政に対する敵愾心はなくはないですが、それでもリム戦争以前よりは社会は開放的になり、帝国の進んだ技術は広く利用できるようになり、そこらじゅうにビジネスのチャンスが見えてくるようになりました。大部分のテラの住民は帝国の存在を、厄介だがありがたいものと考えています。

ルナ Luna(Sol Delta-Ay) F20076C-F N
 衛星ルナはテラと同様に軍政下に置かれていますが、立法と治安維持以外の面では地元の官僚機構に権限が与えられています。そしてルナも1109年から11年にかけて議会制民主主義体制に移行する予定になっています。
 ルナはソロマニ人による惑星外活動の最初の目的地となり、後にいくつかの国家が植民地を築き、-2433年に一つの国家として国際連合に加盟しました。地球連合結成前のルナ企業はジャンプドライブの開発に関与し、恒星間戦争時代のルナは地球連合海軍の主要な造船所でした。
 しかし戦争の終結と地球連合の発展解消により、ルナ経済は不況に落ち込みました。ルナの造船所は守られましたが、民需への転換や、工業地域を含めて経済の多角化を強いられました。
 暗黒時代にはテラ星系内のほぼ全ての入植地が放棄されましたが、ルナだけは存続していました。ルナの造船所は再び軍艦の生産に回帰し、TMCの武装商船やOEUの軍艦を製造していました。そしてソロマニ連合建国後にソロマニ党が掲げた「ルナ経済を復活させる」という公約により、クラビウス素粒子研究所(Clavius Particle Research Laboratory)を含む研究施設や、軍施設が建設されました。ソロマニ政権の絶頂期には、ルナにパンステラー社(Panstellar)やSMI社(Solomani Military Industries)などの軍需民需双方の造船企業の本社が置かれました。その一方で、軍需産業が集中し、ソロマニ党にとって最も重要な地域だったにもかかわらず、ルナ市民は伝統的に民主主義を好んでいたので、強権的なソロマニ党はあまり支持されていませんでした。
 ルナ周辺空域では、ソロマニ・リム戦争末期に連合海軍と帝国海軍が激戦を繰り広げましたが、帝国海軍が制空権を確保するとルナの防衛隊は速やかに降伏しました。大気のないルナのドーム都市は軌道爆撃に対して完全に無力で、帝国軍の火力は圧倒的だったのです。
 戦後は、1010年代のソロマニ自由軍(Solomani Freedom Army)によるいくつかのテロ攻撃と、1080年の「ソロマニゲリラの秘密基地デマ」によるパニックを除けば、ここは帝国の手を煩わせることはありませんでした。
 現在のルナ経済は、鉱業、鉱石処理、科学研究を基盤とし、造船業は今では衰退しています。またルナは、テラ市民の伝統的な新婚旅行(honeymoon)先であり、コペルニクスのリゾート複合施設は行楽客たちを満足させています。
 8000万人の住民はドームや地下都市に主に居住し、ルナの三大人口密集地であるコペルニクス市、アルキメデス市、プラトン市は、モノレールや反重力ハイウェイで相互接続されています。
 アルキメデス市はルナで最も古い(※-2510年)入植地であり、鉱業や工業の中心地です。古代の縦坑がルナの地下数キロメートルまで続いています。
 プラトン市にはルナ大学の中央キャンパスがあり、学術や文化の中心地です。同大学は高エネルギー物理学や天文学の分野でテラ星系最高の学府と考えられています。
 コペルニクス市は行政機構の中心地であり、通商や旅行の起点となるコペルニクス地上宇宙港(Cタイプ相当)があります。戦前は連合内で最も繁盛した宇宙港の一つでしたが、戦後はルナの軍需産業の縮小に伴い、ターミナル施設や着陸床や倉庫の3分の2は使われなくなり、犯罪組織や不法占拠者がそこに入り込む要因となりました。1103年の帝国海軍情報部の捜査では、LSP製品の海賊版製造工場がここで発見されました。
 約1割の住民は、虹の入江(Sinus Iridium)やアペニン山脈(Montes Apenninus)の鉱山、ファーサイド電波天文台(radio observatory Farside Station)、クラビウスの帝国研究所、テオフィルスの帝国海軍基地で働き、生活しています。クラビウスは近代的なハイテク工業地帯であり、GSbAGなどが電子機器や反重力製品、真空環境装備などの生産をしています。ここでの最も特徴的な製品は「大気封入フィールド」で、ドームの代わりに重力の網によって気体の流出を防ぐ装置です。さらに帝国海軍とナアシルカは共同で、最高水準の技術を持つクラビウス素粒子研究所を運営しています。旧ソロマニ連合科学技術省(Ministry of Science and Technology)の庁舎も入っていたこの研究所には、リム宙域最大の素粒子ビーム実験施設があり、かつては軍用の中間子ビームの研究が行われていました。現在の研究内容は最高機密扱いですが、反粒子ビームの研究や超高速度重粒子の生成を行っているかもしれません。
 ルナ大学が運営するファーサイド・ステーションは、(やや設備が時代遅れの)科学研究基地です。施設は前身も含めて3400年前から運営され、徐々に拡張されていきました。その巨大な分散構造体は、光や電波による「汚染」を避けるためにテラから見てルナの裏側の数千平方キロメートルを覆っています。ここでは、電波天文学や宇宙論や宇宙線の研究、軍用民間用の受動センサーの開発が行われています。ルナの裏側への開発や訪問は、ファーサイドの活動を邪魔しないために制限されています。
 以前のルナはソロマニ軍の軍事施設だらけで、その一部は帝国軍によって後に接収されました。危難の海(Mare Crisium)にあった海兵隊訓練施設を含め、ほとんどは今では放棄されましたが、テオフィルス・クレーターに300年前に建設された旧連合軍基地は唯一、帝国海軍ルナ基地として忙しく稼働しています。それ以外にソロマニ基地が存在するという噂もありますが、1080年の帝国海軍による徹底捜索で一つも発見されることはありませんでした。

マーキュリー Mercury(Sol Beta) G30046A-E
 一番内側の惑星は、昼は400度、夜は-180度という、太陽系で最大の温度差を持ちます。惑星間文明期のマーキュリーには巨大な太陽電池パネルが建てられ、そこから電力を供給された鉱山施設と、ソーラー帆船に推進力を与えるレーザー発射施設が運用されていました。その頃の主要な入植地は南極点に近いチャオ・メンフー盆地(Chao Meng-Fu crater)に築かれ、クレーターの影にあった氷を採取していました。他にも小さな宇宙港、採掘拠点、最初にこの惑星に降り立った宇宙飛行士の名を付けられたシュキ太陽天文台(Syuki solar observatory)がありました。
 現在では残った太陽電池パネルはわずかで、大部分の古い縦坑は掘り尽くされています。シュキ太陽天文台は天体物理学の学校として運用され、約1万人がここに居住しています。
 マーキュリーには、太古種族が約40万年前にこの惑星を探査したかもしれない考古学的な痕跡が残っています。また、OEUの鉱夫が340年に太古種族の遺跡を発見していた、とする資料を見つけたと研究者が1030年に発表しましたが、この資料の真偽については疑問符が付けられています。

ヴィーナス Venus(Sol Gamma) G8B0168-E
 惑星ヴィーナスは、超高濃度の二酸化炭素大気による不毛な世界です。温室効果により、平均気温は425度、地表気圧は90気圧以上と、地獄のような環境です。古代ソロマニ人は、この環境は自然に出来上がったものと考えていました。ところが-1688年に行われた探検で、太古種族の遺跡が発見されたのです。しかし遺跡は熱と腐食性大気によりひどく風化し、ほとんどの人工的な物品は変わり果てていました。
 学者の間では、太古種族はヴィーナスを惑星改造して人類(またはヴァルグル)の亜種の居住惑星にしようとしていたのではないか、そして最終戦争によって改造が中断された結果このような環境が出来上がってしまったのではないか、という説が唱えられています。
 962年、テラ大学考古学部と連合科学技術省は遺跡の詳細な調査を開始しました。これは惑星改造説の検証のための地質学的データを集めることも目的としていました。ソロマニ・リム戦争によって一旦中断されましたが、調査は帝国偵察局の支援で再開されました。その結果、かつてのヴィーナスが有史以前のテラと同様の環境であった証拠が発見されたのです。
 惑星上には誰も住んでいませんが、テラ大学と偵察局の50名ほどの考古学者などが、軌道ステーションで研究を続けています。ソロマニ人が宇宙に飛び出してから3500年が経過しましたが、この惑星はいまだに部分的にしか探査されていません。

マーズ Mars(Sol Epsilon) F43056A-F
 マーズには、浮き沈みの激しい歴史があります。この惑星にはまず科学的な、後に商業的な入植地が建設されました。これらは恒星間戦争時代の初期に繁栄して2500万人の人口を誇り、-2395年には地球連合に加盟しました。同時に、環境を改善する惑星改造計画も始められました。
 第三次恒星間戦争において、マーズはテラと共にヴィラニ艦隊によって包囲され、爆撃を受けました。-2222年に衛星ダイモスに大きな軍事基地が建設された際に一時的にマーズ経済は潤いましたが、その後は回復することはありませんでした。クーデターによる「人類の支配」の建国によってテラ星系は実権を失い、同時にマーズの重要性も失われたため、基地は-2200年には閉鎖されました。暗黒時代にはマーズ自体も実質的に見捨てられ、人口と工業力を失いました。
 転機が訪れたのは400年のことです。OEUは帝国の技術を手に入れ、中断された惑星改造計画を再開しました。その後、帝国、ソロマニ連合と統治者は移り変わりましたが、計画は続けられました。経済活性化と移住は惑星改造と並行して進められ、連合もダイモスを再び主要な海軍基地として再建しました。帝国軍によるテラ侵攻作戦の際には、ダイモス基地は帝国艦隊に果敢に抵抗しましたが、2週間の戦いの末に「クルミ割り(※小惑星を激突させる)」戦術によって基地はダイモスごと破壊されました。ダイモスの破壊によって生じた軌道上の「リング」の除去には、15年を要しました。
 戦後、マーズは軍政下に置かれましたが、惑星改造計画は帝国植民省が責任を持って民政移管の日まで続けています。元々の大気は非常に薄いものでしたが、将来は薄くても呼吸可能な大気になることでしょう。責任者のキャサリン・"キティ"・フォックス博士によれば、来世紀には本物の雨や雷を見ることができるかもしれないとのことです。
 帝国海兵隊の駐留軍はエリシウム平原(Elysium Plateau)にある旧ソロマニ陸軍基地に置かれ、惑星テラの外で発生する緊急事態に備えています。現在75万人がマーズに居住していますが、その15%が海兵隊員か海兵隊関係者です。

小惑星帯 Planetoid Belt(Sol Zeta) F00066B-E
 鉱業と科学研究のため、約3万個の小惑星からなるこのベルトには宇宙開発の早い時期に入植されました。ここは惑星の重力の影響が少なく、ソロマニ人によるジャンプドライブの開発に大いに貢献しました。
 現在230万人(点在する独立鉱夫10万人を含む)がここに住み、最大の入植地は小惑星ケレスにあります。また、湿潤さえしていれば無重力環境でも生きていけるドルフィンの小さな入植地も、小惑星キューピッドにあります。彼らは美術を探求しており、訪問者は歓迎されます。彼らの美術に興味を示せば、仲間になってここに住まないかと誘われるかもしれません。

ジュピター Jupiter(Sol Eta) Large Gas Giant
 太陽系で最も大きな惑星であるジュピターは、既知宙域内のガスジャイアントの比較基準として長年用いられています。ソロマニ・リム戦争の際には、大気圏上層とリング周辺は帝国艦隊とソロマニ惑星防衛艦による激戦の舞台となりました。ジュピターには多数の衛星がありますが(そのほとんどは小惑星でしかありませんが)、大きな2つの衛星は開発され、現在も有人施設があります。
 ソル星系内最大の衛星であるガニメデは、かつて主要な植民地でした。地球連合末期から第二帝国初期にかけて放棄された地下都市は、その時代を研究している現代の考古学者の興味を惹き続けています。ガニメデにはテラ大学が設置した、ガスジャイアントの研究を専門としているゼウス研究所があります。またケンジントン兵器試験センター(Kennsington Armed Forces Testing Center)は、リム戦争以前から新兵器の実験を行っていましたが、今では、ジュピターなどガスジャイアントの警備を担当する惑星防衛艦の戦隊と海兵隊の分遣隊が駐留するために改装されています。現在ガニメデの人口は3万人で、旅行者に対しては閉ざされています。
 衛星カリストには、ソロマニ連合軍の研究所がその氷の下深くにありました。その後テラ侵攻の際に、帝国海兵隊の特殊部隊による急襲によって無傷で研究所は帝国の手に渡りました。現在研究所は気象学の調査のために使われています。

サターン Saturn(Sol Theta) Large Gas Giant
 ソロマニ・リム宙域の中で最も美しいリングで知られるサターンには、燃料スクープ装置を持つ多くの宇宙船がその光景を眺めるためにわざわざ燃料補給に訪れています。その衛星には、いくつかの研究基地が置かれています。
 氷から成る衛星エンケラドスには、ホイヘンス天体物理学研究所(Huygens Astrophysical Outpost)があり、反物質の封じ込めに関する研究を行っています。研究所への接近は厳しく制限されています。
 衛星レアの地下にはカッシーニ基地があります。この基地は現在偵察局が使用していますが、宇宙港施設は第一次恒星間戦争の時に建設されたものです。ここでは小惑星帯から外側の空域の宇宙船の交通管制を取り仕切っています。
 ソル星系で2番目に大きな衛星であるタイタンには、濃い窒素の大気と液体炭化水素の湖があり、表面気温は-179度です。かつてのタイタンは化学製品の精製に関わる植民地で、農業肥料や生命維持に使われる窒素をルナやマーズや小惑星帯に輸出していました。「地球人」が初めて宇宙空間で戦争を繰り広げたのもこのタイタンをめぐってでした(※-2468年の「タイタン紛争」は、汎アジア連合と多国籍企業の軍同士が衝突したものです)。タイタンの古い窒素採掘ステーションは遥か昔に放棄されましたが、湖でメタンを基礎として進化した細菌を研究している科学的なドーム拠点が1つだけ残されています。どうやらタイタンの生命は自然発生ではなく、暗黒時代に放棄された入植地の「汚染」によるものであるようです。また、考古学者の中にはタイタンに太古種族の活動の痕跡があると考える者もいますが、今のところ何も発見されていません。

ウラヌス Uranus(Sol Iota) Small Gas Giant
 リングと特徴的な地軸の傾きを持つウラヌスは、遥か昔から研究者たちの注目を集め、やがてそれは衛星ティタニアやウンブリエルへの有人無人の小さな研究ステーションの建設を促しました。ここで集められた観測データにより、ウラヌスの謎が解明されていっています。

ネプチューン Neptune(Sol Kappa) Small Gas Giant
 ネプチューンの衛星で現在唯一有人なのがトリトンです。トリトンはルナと同規模の衛星で、非常に薄い大気を持ちます。ルヴェリエ鉱業団地(Leverrier Complex)はかつては重要な拠点でしたが、採掘量は低迷しており、テラの帝国総督は段階的に施設を停止するよう命じました。現在では数十人の技術者が建物の解体のために雇われています。予定では1118年頃に閉鎖は完了する予定です。
 なおウラヌスとネプチューンの衛星には小さな燃料補給ステーションがありますが、訪れる人はめったにいません。

プルートー Pluto(Sol Lambda) F10046C-F N
 古代テラの神話における死者の世界の支配者と同じ名を持つプルートーは、その名にふさわしい死の世界です。そんな寂しい世界に、海軍基地や研究所の関係者が9万人ほど住んでいます。研究所は元々ソロマニ連合軍が設立し、後に帝国海軍が接収しました。その研究目的は知られておらず、周辺1AU(約1億5000万km)以内は立入禁止となっています。帝国当局は立入禁止の理由を一切発表しておらず、噂では太古種族の技術を蓄積して研究を行っているのでは等囁かれています。
 またプルートーには、かつて連合軍の刑務所がありました。


【ライブラリ・データ】
帝国海兵隊テラ駐留軍 Imperial Marine Garrison, Terra

「朕に海兵隊と支点を与えよ、さすれば宇宙を動かしてみせよう」 皇帝ガヴィン

 1002年に帝国海兵隊連隊がラグランジュ宇宙港の穴だらけの駐機場に足を踏み入れ、日輪旗を掲げた時から、テラの占領統治は始まりました。その粘り強さで名高い海兵隊員は、この星における帝国の主権の象徴となりました。
 TL15で武装し、星系内空間全ての制空権を握っている駐留軍は、パウロ、ラグランジュ、AECOの各宇宙港に司令部を置き、テラを三分割して担当しています。総計で28000人になる駐留軍には、帝国海兵隊第2666、第4217、第4545、第5201、第5203連隊(兵力各3500名)が参加し、このうち最初に挙げた3つは103年前のテラ占領に参加した部隊で、駐留軍のシンボルとなっています。他に、惑星のどこへでも展開できる軌道対応部隊(Orbital Response Forces)として、歩兵中隊に加えて第66機甲騎兵連隊(1700名)の中から一個中隊が割かれています。部隊の人員は任期1年で交替となり(もう1年延長することもできます)、ここで1年でも務め上げた兵士は退役まで「テラ占領記章(Terran Occupation Badge)」を礼装の胸に付ける栄誉が与えられます。テラ自体が過ごしやすく楽しい世界ですし、敵国の旧首都の占領部隊にいた、という箔が付くため、テラ駐留軍は人気のある配属先です。また1068年からは、海兵隊員とテラの民間人との結婚も許可されています。
 元々駐留軍は「テラ占領軍(Terran Occupation Force)」という名称でしたが、時の流れとともに刺激的な名前はふさわしくなくなり、現在の「帝国海兵隊テラ駐留軍(IMGT)」に改められました。ただし一般的には単に「海兵隊」と呼ばれています。
 また、名前の変化とともに、部隊の性格も変わっていきました。1050年代になっても、テラは食料や水、電力供給が不足しており、住宅や公共施設の修繕も必要でした。そこで海兵隊の持つ輸送や工学の技能が必要とされたのです。例えば、1048年から1057年にかけて海兵隊第411戦闘工兵旅団はテラに配属され、ネパールの奥地やミシシッピ川水系、ジブラルタル海峡などで活躍し、地域住民から大いに感謝されました。今では災害救助も駐留軍の重要な任務となっています。
 海兵隊員による治安維持活動は頻繁に行われていますが、威圧的にならないように、1083年以降は反重力戦車やバトルドレスを持ち出すようなことはほぼなくなりました。しかし地域の治安状況によっては、つま先から首までを保護する戦闘用迷彩柄クロースを着用する場合もあります。なお、大規模な破壊活動に対しては駐留軍が、小規模の犯罪に対しては地元警察が対応しますが、ソルセックなどのスパイに対しては海兵隊では手に負えないため、海軍情報部が対処しています。
(※しかし28000という兵力はマーズ駐留部隊と比べても少ないですし、テラの設定に陸軍の存在が見え隠れしていますので、IMGT以外に帝国陸軍もかなりの数がテラに展開している可能性は高いと思われます)

ソロマニ自由軍 Solomani Freedom Army
 1002年にテラ星系で結成されたソロマニ系ゲリラであるソロマニ自由軍は、当初は活発に活動していましたが、1020年代には下火となりました。今でも時々ソロマニ自由軍の流れを汲むと自称する武装組織はいくつか出没しますが、恒星間規模に発展することはなく、組織同士での連携も図られていないようです。

テラの支配 Rule of Terra
 ソロマニ・リム宙域で活発に活動しているテロ組織である「テラの支配」は、1068年にソロマニ人の過激派学生によってテラとプロメテウス(ソロマニ・リム宙域 2027)で結成されました。彼らの目的は、武力闘争によって帝国占領下の星系を「解放」することです。戦略としては、テロを頻発させることで帝国がソロマニ系市民に対しての弾圧を強化し、それに憤った民衆の相次ぐ反乱によって帝国がこの地域の支配意欲を減らすだろう、と彼らは考えています。
 組織は恒星間規模ですが、比較的小さい方です。そのため、他のテロ組織が実行した攻撃や、単なる事故でも「テラの支配」が犯行声明を出す場合もあります。彼らは帝国軍部隊、官僚、メガコーポレーション、旅行者、地方政府指導者など、占領統治を支えているとみなしたあらゆる対象を標的とし、爆破、誘拐、ハイジャック、暗殺、情報戦など手段を選びません。1098年にラグランジュ宙港街で起きた、帝国陸軍兵士52名と民間人数名が犠牲となったテロ事件では、ロボットが運転する液体水素運搬トレーラーをハッキングし、ナイトクラブに突入させるという手口が使われました。彼らはこの30年間で700件以上のテロ攻撃に関与し、その多くはテラ、プロメテウス、フェンリス(同 1830)で実行されました。
 一方で帝国当局が彼らの活動に対する予測や対処を向上させた結果、1098年以降は思うようにテロ攻撃が成功しなくなり、1101年には副リーダーのジャック・ボウマン(Jack Bowman)がフェンリス行きの貨物船内で逮捕されました。現在200人以上のメンバー(もしくは共犯者)が、帝国刑務所惑星で長期服役しています。
 「テラの支配」の攻撃は市民の幅広い支持を得られていませんが、少数のソロマニ人はその反帝国武力闘争の姿勢に共感し、新たに組織に加入したり、資金や隠れ家の提供をしたりしています。「テラの支配」はソロマニ党からも支援を受けているように見えますが、実際には連合やソルセックが彼らの背後にいるという証拠はありません。彼らは「我々の崇高な目的に貢献しない者は同胞ではない」として、彼らの活動に否定的なソロマニ主義者ですら攻撃の対象としているのです。


【レフリー情報】
 一般には知られていないことですが、超能力研究所はテラに現存します。超能力弾圧(800年~826年)の際に、勅令によって帝国内65ヵ所の超能力研究所の活動許可は取り消されましたが、後にテラともう1ヵ所の超能力研究所だけは密かに撤回されました。
 ソロマニ連合結成前の833年、テラの超能力研究所は帝国海軍情報部の管轄下に置かれ、それからは密かに連合首都で超能力によるスパイ活動に従事していました。研究所の活動はテラ侵攻の際に中断しましたが、戦後は海軍基地の敷地内に拠点を移し、帝国海兵隊特殊部隊特別戦闘訓練所(Imperial Marine Commando special warfare training facility)や海軍心理戦研究所(Naval Psychological Warfare Institute)に姿を変えています。1040年の「フェニックス計画」の摘発にも、ここの関係者が関与していたと思われます。
 ここの超能力者の大部分は海軍情報部所属ですが、一部は偵察局情報課や海兵隊、帝国司法省に属しています。優秀なテレパシー能力者は防諜任務に割り当てられ、ソロマニ連合のスパイを摘発したり、内通者の疑いがある貴族や高級将校の内偵をしています。



(※帝国暦の西暦への変換は、4521を加えると目安となります。しかし厳密には1496年で1年のずれが生じるので注意してください)
(※テラの人口は、DGP版設定では425億3000万人、GDWのエイリアンモジュールやマングース版設定でも400億人と記されています。しかしこれはGDWのサプリメント10にある「ソル星域で最も人口が多いのはラガシュの210億人」と矛盾します。そこで今回は、HIWG版データやAM6記載の人口倍率1や、GURPS版の195億人(※表では180億ですが文中の数字を合計すると195億になります)設定を採用し、DGP版のその他の設定は独自に帳尻を合わせました)
(※ルナ、マーズの人口設定は元々それぞれ800万、750万となっていましたが、UWPの数値と合わないため、人口設定を誤植とみなしてUWPの方に桁を合わせました)



【参考文献】
・Book 6: Scouts (Game Designers' Workshop)
・Alien Module 6: Solomani (Game Designers' Workshop)
・Game 5 - Invasion: Earth (Game Designers' Workshop)
・Travellers' Digest #13 (Digest Group Publications)
・Aliens Vol.2: Solomani & Aslan (Digest Group Publications)
・GURPS Traveller: Rim of Fire (Steve Jackson Games)
・The Third Imperium: The Solomani Rim (Mongoose Publishing)
・Alien Module 5: Solomani (Mongoose Publishing)
・Integrated Timeline (Donald E. McKinney)
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宙域散歩(19) リム・メイン2 ヴェガ自治区

2013-01-13 | Traveller
 ヴェガ自治区は、エスペランス星域とヴェガ星域に跨って存在します。この両星域には帝国の星域公爵は置かれておらず、自治区領内の管理はムアン・グウィから行われ、それ以外の帝国領の管理は隣接するアルデラミン、コンコード、バナスダンの各星域公爵が分担しています。この地域には物流の大動脈であるリム・メインが横断しており、経済的に急成長を遂げています。また、ヴェガ自治区自体がソロマニ連合に睨みを効かせるためのものであり、この地域は軍事的にも非常に重要な拠点でもあります。帝国はさらにヴェガ星域内に兵站基地(ディーポ)(1911)を構え、不測の事態に備えています。
 ヴェガ自治区内に住んでいるのは大多数が知的種族ヴェガンですが、彼らは高重力を苦手としているため、ベレロフォン、フランダース、マーガンサー、シュルギアスの4星系はほぼ人類のみが居住しています。また、人工重力によってヴェガンの居住を可能にしようとする試みが、シトゥアン・サール(2144)で最近始まりました。
 現在、ヴェガンの最も有名な政治指導者は、守護者トゥフールのエムテャン・サトウィ(Emtyan Satowy)です。彼女は帝国駐在大使の経歴を持ち、種族に関係なく抑圧や収監されることのないジャーナリストの権利を訴える人物としても知られています。また、ヴェガン版トラベラー・ニュースサービスであるVFP通信社(Vegan Free Press)の共同創設者の一人でもあります。
 帝国のヴェガ自治区駐在大使は、アンソニー・カザ男爵(Baron Anthony Kaza)が務めています。彼はアデアー大公の盟友であり、大公が帝国外交使節団に所属していた時代の良き師でもあります。
 暗黒時代に両星域に広まったヴェガン文化は、ソロマニ自治区時代には一旦衰えたものの、ヴェガ自治区制定後には再び盛り返しました。現在ヴェガ自治区に加盟していない星系の中にも自治区への参加を求める動きはありますが、一方で800~900年代に移住してきたソロマニ系住民(の中でもソロマニ党支持者)はそれに反発を強めており、この火種がいつ暴発するか予断を許しません。ソルセックや過激派武装組織による秘密工作も行われているようです。


エスペランス Esperance 1116 A468878-F N 高技・富裕 A G Im
 エスペランスは人類とヴェガンが共に過ごしやすい環境にある世界です。重力はヴェガンが好む軽さですが、大気は人類にとって十分に濃く、そして多くの水があります。
 この星の歴史は-4300年頃のヴィラニ人の入植から始まり、「人類の支配」期には南アメリカ系ソロマニ人がやってきて、現地のヴィラニ人と入り混じりました。暗黒時代にはヴェガンが惑星最大のボリバル大陸のステップ地帯に植民地を築き、593年にエスペランスが第三帝国に加盟した頃には、この星は40国ほどの独立国家に分かれていました。その当時はボリバル大陸の中心部で栄えていた、人口の95%がヴェガンで占められるワオサン国(Waothan)がエスペランスの政治面や技術面でリードしていましたが、やがて祖先のヒスパニック文化を持ち続けた人類諸国にソロマニ主義が浸透していき、人類とヴェガンの間に対立が生じました。
 720年に人類諸国とワオサン国で戦争が起き、敗れたワオサン国のヴェガンはソロマニ人の支配下で二級市民扱いを受けました。ワオサン国はリム戦争後に独立を回復しましたが、新アルゼンチン国(Nueva Argentina)に代表される親ソロマニ政権の人類諸国とは相互の不信感により現在冷戦状態にあり、惑星の主導権を握るべく、絶えずスパイ同士の諜報戦や傭兵を用いた小規模紛争が繰り広げられています。このような危険な情勢により、トラベラー協会は惑星全土をアンバーゾーンに指定しています。また帝国は海軍基地をエスペランスに置き、事態が激化しないよう監視を続けています。
 なお、ワオサン国の統治者トゥフールは、アルデラミン公やソル大公、そして帝国皇帝にエスペランスのヴェガ自治区への加盟を請願していますが、異星人に統治されることを嫌う人類諸国との全面戦争に火をつけかねないため、請願を却下するようソル大公と海軍は共同でストレフォン皇帝に進言しています。
 ちなみにエスペランスには、ソロマニ・リム宙域最大のチョコレート製造企業のドク・ショコラトル社(Doc Xocolatl)の本社があります。創設者がソルセック高官の一族であったこともあってか、かつてはソルセックに操られたゲリラ部隊が化学兵器工場の隠れ蓑としてこの企業を利用し、1007年に帝国海兵隊の特殊部隊が巨大工場に突入するという事件もありましたが、1030年に新体制で復活した同社は、かつての栄光を取り戻しています。同社製品の「箱入りチョコレート・コインセット(boxed Chocolate Coyns)」は、キーラン新大公が就任式典で美味しそうに食していたことから、ソル領域で大ヒット商品となりました。
(※帝国でCoynというと、貨幣(Coin)ではなく、ドロインが通過儀礼として自らの社会階層を定める際に用いる36枚組の占術コインのことを指します。ですからこのチョコレート・コインも、そういったデザインをしているのでしょう)

マシャッドゥン Mashaddun 1117 C994210-D 高技・低人・肥沃・非工 Im
 この星はメガコーポレーションのSuSAGが所有していて、現地の動植物を調査しています。

ボスコーン Boskone 1214 E00016A-E 高技・小惑・低人・非工 G Im リュドミラが領有
 ボスコーン自体は「砂利のベルト(資源や氷が少ない、鉱業的価値のない小惑星帯の意味)」でしかありませんが、この地はアルファノール(0914)~ズィム・ジア・グウィ(1515)間(およびエスペランス星団方面)の通商路で燃料補給に立ち寄る星系として、毎週数百万トンの貨物が行き交う要衝です。
 戦後、帝国の様々な運輸企業は自社の燃料補給ステーションをボスコーン星系外周のガスジャイアントの衛星に建設し、それらはロボットや短期労働者によって運営されました。このルートを利用する巨大貨物船の多くは、ガスジャイアントで燃料スクープができなかったため、ステーション群は円滑な恒星間輸送のためには必要不可欠でした。
 しかし競争が激化すると、ボスコーン星系内での通商戦争は日常的となり、企業部隊同士の戦闘によってステーションは破壊されました。1050年には休戦状態が確立されましたが、緊張は高いままでした。
 1053年、近隣のリュドミラ政府はボスコーンの領有を宣言し、有料で全ての運輸会社に対しての安全を保証すると申し出ました。本来は通行税の徴収は帝国法で禁止されていますが、帝国商務省やメガコーポレーションは例外的にこの提案を受け入れました。これでようやく、ボスコーンは静かで退屈な世界になったのです。
 現在もボスコーンは恒星間交通で賑わっています。毎日何十隻もの巨大貨物船が様々な補給ステーションに立ち寄り、小規模運輸会社の船や自由貿易商船はガスジャイアントで燃料を補給して、星系を横断していきます。星系の大部分は無人ですが、小惑星帯にはこの星系唯一の「住民」であるリュドミラ星系海軍が駐屯し、中立の立場で哨戒任務にあたっています。
 なお、海賊や密輸業者が築いた秘密基地がここにあるという噂が絶えませんが、これまで何も発見されていません。

リュドミラ Ludmilla 1216 A45689D-E 高技 G Im
 リュドミラには少なくない数のヴェガンが居住していて、ヴェガ自治区への加盟問題は長年に渡って緊張の源となっていました。
 1104年に人類優先党(Man First Party)が第一党となって政権を握ると、その名の通りに人類を上とし、ヴェガンを抑圧する政策を採り始めました。人類優先党は人種差別やテロリズムへの直接的な肯定を慎重に避けてはいるものの、反ヴェガ系テロリストへの非難をしないなど、ヴェガンと人類の対立を煽っています。
(※なお新政権の対ヴェガン政策が、ボスコーン星系の「中立」の立場まで放棄するに至るのは1116年になってからです)
 人類優先党は、1067年にエスペランスの政治活動家グスタフ・マーフィー(Gustav Murphy)によって設立されました。この党は好戦的な人類至上主義を掲げ、ヴェガ自治区内の人類世界の帝国への再編入を主張しています。人類優先党はソロマニ党に似たイデオロギー政党ですが、人類優先党が人類であるのならば種族に関係なく党員として受け入れている点は異なり、公式にもソロマニ連合への支持を表明していません。しかし一部党員はソロマニ主義への共感を隠さず、中にはヴェガンへの暴力行為に関与している者もいます。

ヒエロニムス Hieronymus 1316 X530622-6 砂漠・非工・非農・貧困 R G Im
 ヒエロニムスは現在、未発達の文明の保護のために進入禁止星系に指定されています。水界も鉱物資源も無く、惑星自体に価値はありません。

レフリー情報:
 ヒエロニムス星系は、初期の偵察局による探査では完全に無人の世界として記録され、590年頃に帝国がエスペランス星域を設置した後も、訪れる人はほとんどいませんでした。
 しかし756年に、とある商船がヒエロニムスへの緊急着陸を迫られ、その際に原住民の人類と接触したのです。その船のカタンガ船長(Captain Katanga)によると、出会った人々は皆礼儀正しく、友好的でした。彼らは古語や古い発音を含めて大きく訛った奇妙な銀河公用語を話し、見るからにソロマニ人を起源としているようでした。そして驚くべきことに、彼らはテレパシーや念動力といった超能力を公然と使いこなしていました。カタンガ船長は原住民に危害を加えられることなく、船の修理を終えて無事に帰還しました。
 カタンガ船長の遭難は超能力弾圧以前の出来事でしたが、未知の超能力者集団の存在はリュドミラのソロマニ当局を慌てさせました。すぐさま探検隊が送り込まれましたが、原住民の痕跡すら発見することができませんでした。カタンガ船長の報告は旅行者の間で噂話として広まり、ソロマニ政府は以来ずっと星系を進入禁止星系として隔離しました。
 ソロマニ・リム戦争後に帝国がこの星域の支配権を取り戻すと、偵察局はヒエロニムスを再探査しました。すると今度は人類の集落を発見できました。住民に対する密かな調査により、かなりの数の超能力者が本当にいたことが判明しました。帝国当局は惑星の「浄化」を真剣に検討しましたが、最終的に偵察局の主張が通り、ガヴィン皇帝はヒエロニムスを進入禁止星系に指定しました。それ以来偵察局は、外部と集落との「不幸な」接触が行われないように警戒を続けています(そもそもテレパシーが当たり前のこの世界で、住民に感付かれずに接近することは潜入捜査官でも困難ですが)。
 偵察局による長期間の観察により、ヒエロニムスの人々は確かにソロマニ人で、集落は暗黒時代末期ないしはそれ以前から存在していることがわかりました。しかし正確な起源や、独特な文化が形成された理由は今もわかりません。


フランダース Flanders 1517 A755A86-F 高技・高人・肥沃 G Ve
 フランダースはヴェガ自治区の一部ですが、惑星の重力がヴェガンにとって快適ではないため、住民のほとんどは人類です。最初はヴィラニ人世界でしたが、「人類の支配」の間に主に西ヨーロッパ系ソロマニ人が移住した結果、フランダースはソロマニ人世界となりました。
 しかしヴェガンとは長年に渡って友好関係を築いており、現在のヴェガン統治も満足して受け入れています。

ベレロフォン Bellerophon 1519 A88A986-E 海洋・高技・高人 G Ve
 ベレロフォンはヴェガ自治区内で人類が主に居住している海洋世界です。いくつかの島と、干潮時に姿を現す岩礁を除いて、惑星表面は海で覆われています。惑星は過ごしやすい気候を持ち、広大な海は極端な気候を和らげる働きをしていますが、季節性の大嵐(現地語でヤズ・ユギョル)が小型艇や航空機に危険をもたらすこともあります。唯一の大きな衛星アンタイア(Antiea)の影響により潮の干満は非常に激しく、核融合炉が実用化された今でも、入植初期からある時代遅れの潮汐発電施設で住民は電力を補っています。そして海水中には金属成分が豊富です。
 ベレロフォンで最も印象的な海洋生物が「ダガダシ(daghadasi)」です。成熟すると全長2km以上にもなるこの生き物は、まるで動く島です。そしてベレロフォンの特徴的な生態系は、このダガダシを中心にして成り立っています。
 かつてのヴィラニ人は特にこの星系に価値を見出さず、ダガダシを狩って食料にしていただけでした。恒星間戦争時代には地球連合の海軍基地がアンタイアに建設され、その基地に食料や原料を供給するために、ギリシャ系やトルコ系の移民も惑星に定住しました。やがて冒険好きな者はダガダシの群れを追うようになり、遊牧民の社会を形成していきました。他の者は小さな島に都市を築き、段々と海上や海中にも都市が建設されていきました。海軍基地が閉鎖された頃には、ベレロフォンは近隣のヴェガン世界との交易で成功していました。惑星の輸出品は最初は水産物のみでしたが、やがてこの星の生態系を参考にして海水中から金属を抽出する技術が確立され、これらの輸出により大きく栄えたのです。
 暗黒時代の間、この星も衰退を避けられませんでしたが、ヴェガンとの文化的・経済的な結びつきは、先端技術を維持する大きな助けとなりました。ヴェガンの文化多元主義的な考え方の影響を受け、ギリシャ・トルコ系の言語や文化がそのまま守られました。
 第三帝国の台頭と、その後のソロマニ政権支配の間でも、ベレロフォンの日常生活にはほとんど影響がありませんでした。ベレロフォンの住民の大部分は純血のソロマニ人でしたが、過去のヴェガンとの文化的・経済的関係により、ソロマニ主義は根付きませんでした。それどころか、ベレロフォンはソロマニ党内でヴェガンの権利擁護を主張していた「ヴェガ派」の支持者でもありました。そのヴェガ派が権力闘争で敗れると、ベレロフォンはソロマニ連合からほとんど経済支援を受けられなくなり、住民も連合に対して形だけの支持をするようになりました。ソロマニ・リム戦争でも住民のわずかしか連合のために戦いを志願しなかったほどです。戦後、住民はヴェガ自治区への編入を受け入れ、統治機構のトップだけがソロマニ党官僚からヴェガン官僚に入れ替わりました。
 現在の住民は、浅瀬からそびえ立つ高さ2~3kmのパイロン型都市や海中都市に住んでいます。これらの都市に計20億人が居住し、それぞれの都市は自前で工業や食料生産を賄うことができます。惑星の中心地は、ペガサス地上宇宙港から一番近い(といっても375km離れていますが)フォカエア市や、首都コリンシア市などいくつもの超高層パイロン都市が立ち並ぶイサンドロス礁(Isandros Shallows)です。
 それ以外に、1000万人ほどの「海洋遊牧民」が都市部と異なった社会を構成しています。彼らは数千人規模の部族ごとに、核融合炉で動く大きな船、と言うより船上都市に住み、海上を放浪しています。彼らは居住船と同じ大きさのダガダシを、ミサイルとレーザー砲で武装した二人乗りの狩猟船(hunterfoils)の集団で狩っています。しかし遊牧民は、自分たちが生きるのに必要なだけのダガダシを狩るように、狩ったダガダシをなるべく無駄にしないように心がけています。肉はもちろん食べ、脂肪からは燃料と潤滑油を取り出し、繊維質で織物や紙を作り、骨に蓄積された金属分すら集めます。
 恒星間企業のシーハーベスター社は、ダガダシを研究し、生殖前段階の若いダガダシが希少な生化学合成物「PDPT-β」を産出することを最近突き止めました。この物質は癌細胞やウイルスを「一掃する」するような医薬品のために、幅広く応用が期待されています。しかしPDPT-βは現在のところダガダシ以外からは見つかっておらず、人工的な合成手段もありません。
 シーハーベスター社はダガダシを捕獲するために、工場船の小船隊を運営する許可を惑星政府から得ました。しかし近年、シーハーベスター社が許可された捕獲量以上にダガダシを狩り、それが遊牧民社会だけでなくダガダシを含むこの星の生態系にまで危機を及ぼしている、という抗議が遊牧民や外世界の(汎銀河生命友愛協会のような)環境保護活動家の間からなされています。最近では、海洋遊牧民とシーハーベスター社の間の緊張は、両者の激しい対立に繋がっています。シーハーベスター社は疑惑を否定し、問題を遊牧民や外世界人の「テロリスト」の責任だと主張しています。
 ベレロフォンには地方警察以上の軍組織はありません。武器類は都市部では所有できませんが、遊牧民や企業の船にはダガダシを狩るための軍用並の大型武器を保有する免許が発行されています(取得は簡単ではありませんが)。
(※このベレロフォンの詳細な設定は、『Adventure 9: Nomads of the World-Ocean(海洋世界の遊牧民)』を参照してください)
 「ダガダシ(古代テラのトルコ語で「山のような島」)」の名付け親は、エスメレイ・ウズンジャルシリ(Esmeray Uzunjarsili)というトルコ系地球人と言われています。化学者から自由貿易商人となった彼女は、船の故障で2ヶ月間、当時ヴィラニ帝国領だったベレロフォンでの滞在を強いられました。退屈しのぎに現地の生物を調査した彼女は、そのダガダシの体内にアルツハイマー病の特効薬の成分を発見し、後に億万長者となりました。

ムアン・グウィ Muan Gwi 1717 A456A86-F NW 高技・高人 G 自治区首都
 知的種族ヴェガンの母星であり、ヴェガ自治区の首都でもあるムアン・グウィは、410億(人類3億人を含む)もの人口を容れるために非常に都会化されています。地表には荒野は既に無く、海洋を含めて郊外は全て食料生産のために開発され、慎重に気象制御がなされています。
 大多数のヴェガンは、そびえ立つアーコロジー(完全環境都市)に住んでいます。惑星表面の開発の余地がなくなって以後も、反重力で支えられる高さ数キロメートルの超高層タワーや、海上の浮遊都市などがこの2世紀の間に建設されました。
 ムアン・グウィはリム宙域の主要な通商路上にあり、宙域内で最も忙しい宇宙港やXボート中継基地、巨大な(帝国軍とヴェガ軍共同の)海軍基地を誇ります。惑星周辺には5つの巨大軌道宇宙港が等間隔で浮かんでおり、6番目の宇宙港も建設中です。年間1億人の旅行者が宇宙港を利用し、無数の宇宙船(小型船から10万トン級の巨大貨物船まで)が常に出入りしています。また工業生産力も強大で、ヴェガンの産業複合体は優れた製品をリム宙域だけでなく、ソル領域全域、さらにアスラン諸氏族などにも輸出しています。またここには、1020年に設立され、異星文化学の研究で高い評価を得ているヴェガ大学や、有名なVFP通信の本社、さらに太古種族の遺跡も存在します。
 大公キーラン・アデアーは、領域首都をこのムアン・グウィに移転させる計画を練っています。これはリムにおけるヴェガンの重要性を考慮してのことですが、非人類の母星に帝国の行政首都を置いた前例がないため、この計画は人類に対する裏切りであるとソロマニ人やヴィラニ人の活動家の怒りを買い、伝統を重んじる貴族からは(第二帝国以来リム宙域の中心地である)ディンジールのような人類世界に首都を置くべきだと非難されています。
 ソロマニ・リム戦争以後、ヴェガ軍は予算の大部分をここムアン・グウィとムアン・イスラーの星系防衛に注ぎ込んでいます。惑星防衛艦の拡充、埋設中間子砲の設置、アーコロジーへの対核ダンパーや中間子スクリーンの連動防御システムの取り付けなどがなされ、最終的には自治区全世界でこういった防衛体制を築くことを目標としています。この受注の多くは自治区内企業が請け負いましたが、一部(それでも数兆クレジット規模)は帝国企業に流れました。当初はデルガドが落札したものの、1102年にデルガド製の対核ダンパーが品質試験で不合格となり、ムアン・グウィの守護者トゥフールは新たな入札の実施を決めました。デルガド以外に、LSPやインステラアームズはヴェガ系企業と手を組んで応札する構えを見せています。
 ヴェガ軍の防御一辺倒の姿勢は、帝国海軍全体の増強には必ずしも繋がらないため、一部の帝国海軍高官を苛立たせてはいますが、ヴェガ市民の安心感の醸成と領域首都誘致での利点の形成に大きく役立っているのも事実です。

ヴェガ(グウァトゥイ) Vega(Gwathui) 1720 A000786-E 高技・小惑・非農 Ve
 青白いA型恒星であるヴェガは、テラの夜空で5番目に明るい星です。この星系には惑星はなく、塵のディスクや、鉱物の豊富な2本の小惑星帯があるだけです。特に外側の小惑星帯は、炭素や氷の豊富な小惑星から成っています。この星系はヴェガンにはグウァトゥイと呼ばれていて、長らく彼らの鉱物資源の主要な産地でした。
 星系経済は今では多角化されていて、主力産業は造船、鉱業、超密集合金の製造です。2つの小惑星帯には計244基のスペースコロニーがあり、それぞれ数十万人の住民が住んでいます。その中で最大のヴェガン居住区であり、星系首都でもあるのがアズォン・ジー(Adzon Dzi)です。
 かつてのソロマニ政権下では、この星系はソロマニ党が運営する強欲な「ヴェガ工業集団(Vega Industrial Collective)」に支配されていましたが、戦後は一千年以上に渡って小惑星採掘と鉱石処理を担っていた敏腕な商業トゥフールである、ギョ・アシュイ(Gyo Ashui)が星系を管理しています。
 人口の99%はヴェガンですが、わずかながら人類の宇宙鉱夫も星系内で働いています。そのほとんどが渡り労働の帝国人ですが、数千人ほどが頑固にも旧VIC体制に忠実なソロマニ人宇宙鉱夫の子孫です。彼らは星系外縁に浮かぶ荒廃したオリヒメ(Orihime)などのコロニーで生活し、時折訪れる自由貿易商人と取引しています。
 ここでは時々、不審な船が星系外にジャンプしていくのが目撃されていましたが、1104年にヴェガンの惑星防衛艦が、その未確認船がソロマニ連合のインディペンデンス級哨戒艦(Independence-class Solomani patrol cruiser)であることを突き止めました。ギョ・アシュイの治安部隊は、不満を抱いているソロマニ人鉱夫と侵入者の間の結託を恐れ、警戒していますが、ヴェガ海軍はあえて静観しています。
 テラの歴史上の有名な水上艦からその名前が採られた、ソロマニ海軍のSM型インディペンデンス級1000トン哨戒艦(TL13)は、ジャンプ-4と4G加速の性能を持ち、主に国境や主要通商路(時に辺境の低人口世界)の警備、輸送艦の護衛、海賊対策、臨検などに用いられています。武装が全てレーザー砲なのは、地球連合時代から続くソロマニ人の「伝統」です。この船には通常の乗組員や砲手以外に、バトルドレスで武装した兵士を最大2分隊(16名)まで搭乗させることができます。ただし内装は簡素で窮屈なため、この船で赴く長期任務はあまり人気がありません。

ムアン・イスラー Muan Issler 1816 A354A86-F 高技・高人 G Ve
 ムアン・イスラーは「ヴェガン第二の母星」と呼ばれていました。惑星環境は多くの点でムアン・グウィと似ており(低重力・薄い大気・広大な砂漠)、ヴェガンにとって最初の星系外植民地となりました。
 かつてのムアン・イスラーは繁栄したTL10世界でしたが、やがてヴィラニ帝国とヴェガンの戦争が始まりました。ヴィラニ軍はムアン・グウィとムアン・イスラーを何年かけても攻略できず、作戦方針を転換しました。ヴィラニ艦隊は、ムアン・イスラーの鉄壁の防衛網の外から地表へ向けて核ミサイルを一斉射撃したのです。ほとんどのミサイルは防衛艦が防いだものの、ヴィラニ軍の弾薬はそれ以上に膨大でした。攻撃はムアン・イスラー上の全ての文明が消え去るまで続けられ、深度避難所や隔絶した荒地に逃げ延びた数千人を除いて約20億人のヴェガンが死亡しました。
 この残酷な事実はムアン・グウィに伝えられ、次の目標が自分たちであることが明白となりました。40年間ヴィラニ人と戦い続けたヴェガンは、あえなく降伏しました。
 ヴィラニ人の支配下となったヴェガンは、征服されたムアン・イスラーに徐々に移住し、荒廃した生態系を修復し、文明を再建する作業に着手しましたが、恒星間戦争時代にはまだ放射能汚染がひどく、まばらにしか入植はできませんでした。
 ムアン・イスラーの一件は、後にヴェガンが地球連合に加わる理由の一つとなりました(ただし最初は「人類」に対する警戒感はあったようです)。そして「人類の支配」と暗黒時代を通して、ヴェガン政府の主要なプロジェクトはこのムアン・イスラーを栄光の時代へと戻すことでした。そして彼らはやり遂げました。爆撃の傷跡は過去のものとなり、今では爆撃前の人口よりも多い125億人が住み、ヴェガンの工業と商業の騒がしいほどの中心地となりました。
 現在ムアン・イスラーは、首都ムアン・グウィと同様に、帝国で最も強力な防衛力を誇ります。彼らは、決して忘れていないのです。

アステルー・テュイ Asterr Tyui 1917 A666986-F 高技・高人・肥沃 G Ve 研究基地γ
 アステルー・テュイは薄暗い赤色矮星の軌道を周回している昼夜が固定された世界です。惑星の夜側では水分が寒さで凍りつき、昼側は乾燥しきっています。人類の移民は中間帯の湿潤地域に集まる傾向がありますが、ヴェガンにとっては昼側の方が快適でした。
 この星系は-5800年頃にはヴェガンの初期植民地の一つでした。第一帝国の支配下となると、リム・メインの繁盛した中継拠点としてヴィラニ人が入植しました。この世界ではヴェガンとヴィラニ人支配者の関係は緩やかなものでした。その後、地球連合、第二帝国、第三帝国と支配者は代わりましたが、その都度住民は時の支配者に忠誠を誓いました(ソロマニ連合時代には抑圧を受けましたが)。
 アステルー・テュイは、アウシェンヨ(Aushenyo)の存在で有名です。このトゥフールには数百万人が所属し、彼らのほとんどがスコリウム(Scholium)やテラ大学の分校の関係者です。
 一方、帝国はこの地に研究基地ガンマを維持しています。一般的な帝国研究基地と異なり、この研究基地は高人口世界にあり、その研究目的も広く知られています。ガンマ基地の科学者たちは、あらゆる植物や動物、特に人類やヴェガンの遺伝子を詳しく調べています。彼らの目的は遺伝子工学の研究ではなく、遺伝的変異の収集記録にあります。この事業は、帝国内外の人々全ての遺伝子サンプリングを含みます。ここで編纂されたデータベースによって、科学者は種の進化の歴史とその方向性の結論を出すことができます。
 アウシェンヨと研究基地の方向性は一致しているため、両機関は密接な協力関係にあります。ただ、ガンマ基地の事業は時折政治的論争の的となり、不満を持つ者が基地の破壊や任務の妨害を試みていますが、帝国の保安部隊はアウシェンヨ防護隊(Aushenyo protective forces)の支援も受けているため、基地への攻撃はめったに成功していません(一方で、ここの研究者が外世界に出張している際に時々災難に遭っています)。
 アウシェンヨは恒星間戦争時代からの長い歴史を持つトゥフールです。「記憶する者たち」ことアウシェンヨは、全ての知的生命の全ての記録を残すべく、銀河最大の歴史アーカイブを編纂しています。アステルー・テュイにある「アウシェンヨ・スコリウム」は、既知宙域全ての過去15000年間に及ぶ社会経済データや歴史資料の宝庫です。アウシェンヨの研究者(ヴェガンと人類)とは宇宙各地で出会うことができ、彼らは人生の全てをあらゆる事象の記録に捧げています。

マーガンサー Merganser 1919 A942786-F 貧困・高技 Ve
 マーガンサーはあまり居住に適した惑星ではありません。その高重力はヴェガンにとっては心地よくありませんし、薄くてほこりまみれの大気には二酸化炭素と硫黄化合物が多く含まれ、高温で乾燥しています。さらに地殻運動が活発なため、活火山の連山が定期的に灰の雲を吹き上げています。水界はいくつかの内陸海と湖ぐらいしかなく、地表には工業用金属や放射性物質の堆積物が異常に多く見られます。
 当初はディンジール(1222)のソロマニ党と密接な関係のあったマーガンサー鉱業社(Merganser Mining Corporation)によって開発が始まりましたが、ソロマニ・リム戦争後は、MMCの資産はヴェガ自治区への戦後賠償として国有化されました。現在マーガンサーの開発は、守護者トゥフールが直接手掛けています。
 大部分の住民はソロマニ人で、ヴェガ系鉱業会社やサービス産業で働いています。こういった場合種族間の緊張が心配されますが、労働者には高給が支払われているので、両者の関係は円満です。住民の3分の1は定住者で、残りは自治区外の帝国人を含む短期労働者です。彼らは実用優先の家屋に住み、安さと品数だけが魅力の複合型商業施設で買った、大量生産の衣服を身にまとっています。


【ライブラリ・データ】
シュルギアス Shulgiasu 2319 A758986-F 高技・高人・肥沃 G Ve
 シュルギアスには5500年以上に渡る、長く、そして輝ける歴史があります。第一帝国の下、1600年間この星はクシュッギ宙域(当時の名前)の首都であり、宙域で最も人口稠密な世界であり、リムのヴィラニ文化の中心地でした。ソロマニ人の移住は第九次恒星間戦争以後に始まりましたが、ヴィラニ人住民は決して同化されませんでした。ヴィラニの言葉と文化は、今日でもシュルギアスでは主流です。
 暗黒時代の間に、シュルギアスはヴェガン(特に近隣のムアン・クウォイェン(2218))と強い関係を樹立しました。この関係は暗黒時代による衰退を防ぎ、恒星間交易を保つ助けとなりました。-800年頃には、シュルギアスはヴェガン世界と人類世界(ラガシュ(2121)やガネーシャ(2518)やバナスダン(2920)など)の間の重要な仲介役となっていましたが、独自の「小帝国(pocket empire)」の建設には動きませんでした。それでもこの交易関係はリム宙域の再生に大いに役立ちました。
 しかし、ヴェガンとの関係の深さや強いヴィラニ文化によって、シュルギアスはソロマニ統治下では激しい弾圧を受け、第一帝国時代の多くの建造物や遺産が破壊されてしまいました。やがて帝国の下に戻った後、ヴェガンが帝国以上に地方自治に介入しないように見えたことと、ソロマニ支配の苛烈さでかえって非人類による統治をこの星の人々が容易に受け入れられたことから、1036年にシュルギアスはヴェガ自治区に加盟しました。
 ヴェガンからは、シュルギアスの人類市民は一つのトゥフールとみなされます。星系の名目上の統治者はヴェガンの守護者トゥフールですが、実質的には人類の官僚機構が統治しています。この星の重力と気候はヴェガンにとっては不快で、彼らはあまりシュルギアスには長居しません。結果的に人類の自治権はほぼ無制限となり、この星の繁栄を促進しました。
 現在、ソロマニ支配の間に失われたヴィラニ文化を回復する長期事業に、シュルギアスの人々は挑んでいます。歴史的建造物を再建し、伝統芸術を保護するために、公的私的を問わず資金が投じられています。また、ソロマニ政権下で宙域中に散逸した遺物を取り戻すべく、代理人(一部はフリーランスの)が各地に派遣されています。シュルギアスでは少数派のソロマニ系住民でさえ、地元愛に燃えて、もしくは贖罪意識から、この事業に熱心に取り組んでいます。

カリッカム Khalikkam 2418 B610664-C 高技・非工・非農 G Im ガネーシャが領有
 カリッカムは、ソロマニ政権時代にガネーシャから入植された、円熟した植民地です。現在、非暴力的な独立運動が活発に行われており、ガネーシャ政府にとっては不本意ながらも、ゆっくりではありますが交渉は進んでいます。

汎銀河生命友愛協会 Pan-Galactic Friends of Life
 汎銀河生命友愛協会は、ソロマニ・リム宙域の帝国領内で環境保護活動を行っている団体です。彼らの目標は、基金の調達、現地調査、メディアキャンペーン、不買運動や抗議活動を通して、絶滅の危機にある種や脆弱な生態系を守ることです。協会はラガシュで1073年に設立され、当初は環境過激派集団と思われていましたが、1090年代にフィリーン(2807)で絶滅の危機にあった朝鳴き鳥(dawnsinger)の保護活動で大いに尊敬を集め、会員を増やしました。協会は暴力に頼らず、星系政府やメガコーポレーション、さらには帝国に対しても臆することなく直言しています。


【参考文献】
・Supplement 10: The Solomani Rim (Game Designers' Workshop)
・Adventure 9: Nomads of the World-Ocean (Game Designers' Workshop)
・Alien Module 6: Solomani (Game Designers' Workshop)
・GURPS Traveller: Rim of Fire (Steve Jackson Games)
・GURPS Traveller: Interstellar Wars (Steve Jackson Games)
・Traveller: The Solomani Rim (Mongoose Publishing)
・Alien Module 5: Solomani (Mongoose Publishing)
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