風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

出流・蕎麦と座禅と鍾乳洞-1

2015-04-12 | 北関東(茨城・栃木・群馬)
○ prologue

4月に入り、暖かい気候に誘われて、ドライブに出かけました。
向かったのは、群馬県の出流山(いずるさん)。



ここはおいしい水が出るところで、手打ち蕎麦が美味しいそうです。
ただ、あまり知名度は高くなく、周りに知っている人はいませんでした。
ここのところずっと天候不順が続き、前日は一日雨でしたが、この日は朝からいい天気。
空は気持ちよく晴れ上がって、ドライブ日和です。



待ち合わせたアコリンは、前日の高尾山登山が雨でキャンセルになったそうで、今日はウキウキしています。
高速も、特に混んでいません。スイスイと進んで、休憩なしに岩槻ICで降りました。

○ じおんといえば

この辺りまで来ると、それほど高い建物もなく、空が広々としています。
岩槻といえば人形の町。「人形と人情の町」とは、うまいわ。



今回はまず、坂東三十三観音第十二番のお寺、慈恩寺に向かいます。
前に、この辺りにある喜多向厄除不動尊(岩槻大師)を訪れたことがあり、地図で見ると、二つのお寺はかなり近くですが、土地勘がないため、どの道を通って行ったのか、もう覚えていません。

慈恩寺というと、どうしてもジオン軍を連想してしまう私。
ガンダムファンじゃないのになぜかしら~。お坊さんにはとても言えません。
あと、はるじおん・ひめじぉおんの花を思い出します。子供の頃は「春女王」「姫女王」だと思っていました。
春ですね。

○ 孫悟空絵馬のわけ

東京ではもう散ってしまった桜が、まだかろうじて残っていました。
山桜でしょうか。またお花見ができて、ちょっと得した感じー。



慈恩寺というのは、三蔵法師(玄奘)ゆかりの長安の大慈恩寺からもらった名だそうです。
このお寺には、三蔵法師の遺骨があるんだとか。

日中戦争の時、土木作業中の日本軍がたまたま三蔵法師の遺骨を発掘し、日本と中国で分骨して安置することとしたそうです。
日本ではこの寺に奉安され、のちに玄奘と関係の深い奈良の薬師寺に分骨したとのこと。
つまり、日本で三蔵法師の遺骨を保管しているお寺は、この2つなんですね。
奈良の薬師寺で、華やかな朱塗りの玄奘三蔵伽藍を拝観したことを思い出しました。



ここの絵馬は、孫悟空。西遊記のワンシーンが描かれています。
孫悟空絵馬を見るのは初めて。三蔵法師つながりでしょう。
立派な開山堂の中には、開山した慈覚大師像が安置されているそうです。



本堂(観音堂)は、残念ながら大改修中で、建物全体が工事のほろと足組にすっぽりと覆われていました。
でも、お参りできるように通路があったため、パイプのトンネルをくぐって中に近づきます。



穏やかな文字の額がかけられていました。



お寺の御詠歌も掲げられていました。
「慈恩寺へ 詣る我が身も たのもしや うかぶ夏島を みるにつけても」



御朱印をいただいた時に、お寺の案内と「十句観音経」もいただきました。
参拝したお寺で、般若心経をいただくことは時々ありますが、十句観音経は初めて。
10フレーズ、42文字でできた、最も短い経典です。

「十句観音経」
観世音 南無仏 与仏有因 与仏有縁 仏法僧縁  常楽我浄 朝念観世音 暮念観世音 念々従心起 念々不離心




お寺の外観は幌に隠れて見られませんでしたが、落ち着いた雰囲気の古刹でした。

○ 逆走南下でスタジアム

モスバーガーでモーニングをとって、再び高速に乗ります。
・・・が、道を間違えてしまい、気がついた時にはうっかり逆走していました。
見えてきたのは、さいたまスタジアム。ということは南下中。
いけない、これでは都内に戻ってしまうわ。



高速を降りたところに、日本代表GP、川島永嗣選手の応援板がありました。
彼は何年も前からベルギーに海外移籍していますが、さいたま市出身、つまりこの辺りの人だそうです。



でも私たちが行きたいのは北の方角。さいたまではありません。
車をいったん止め、ナビを入れ直して方向転換し、無事にインターに入れました。
高速道路はやっぱりスイスイ。混んでいません。
前日まで雨が降り続いたので、みんなドライブを予定していなかったのかもしれません。

○ イルカの話

数日前に、茨城の海岸に大量のイルカが打ち上げられたニュースの話になり「大型地震の前触れかな」とおしゃべりします。
「なんとかっていう外国人が、今日地震が起こるって言ってるんだって」と言いながら(我ながらなんてアバウトな情報)と呆れたら、アッコさんは
「ゲイリー・ボーネル?そうでしょう!」と言いました。
そんなに有名人なの~!ゲイリー・カーとゲイリー・オールドマンしか知らないわ。

「ドライブ中に大地震が起こったらどうしよう」と突然不安になった様子の彼女。ゲイリーさん、只者ではない?
ドライバーを動揺させないように「余震が起こってないから、きっと大丈夫だよ」とフォローしました。

アコリンは茨城の海沿い出身。
「あっちでは、イルカを食べることもあるんだよ」と教えてもらいました。
ビックリしました。
イルカを食べることに、ではありません。
「イルカを食べるのって、静岡の海沿いの人だけだと思ってた!」

後で調べてみたら、ほかにも岩手、高知、北陸方面あたりで食べる風習があるそうです。
打ち上げれる場所に住んでいる人なら、味を知ろうと食べてみるのはおかしいことじゃないですね。
私は食べたことがありません。クジラならありますが。

○ お花見ふたたび

イルカの話をしながらどんどん山の方へ向かっていきました。
気が付くと、目の前には山脈が連なっています。
佐野に入りました。つまり栃木に入ったわけです。

栃木インターで、一般道に降ります。
「名前は大きそうなイメージだけど、ここで降りるのは初めて」「私もよー」
そこから出流へと向かいました。

さっきまでは、車の中は暑いくらいでしたが、この辺りから冷気が入ってくるようになり、暖房を付けました。
北に来たからか、山が近づいてきたためか、東京よりも寒くなっています。
岩槻で見たよりもきれいな山桜が、今が旬とばかりに咲いています。

掲示された選挙候補者ポスターの中に、保母さんという名前の人がいました。読みもほぼさん。
「保母さんっていう名字の人がいるよ。初めて見たー」と言うと、
「優しそうな顔だし、議員にならずに保母さんになればいいのにね」と返すあこりん。
いいえ、この人は男性。保母さんにはなれないわ…!

小学校低学年の頃、「僕は婦警さんになりたい!」と言っていた、同じクラスのヨシオカ君のことを思い出しました。
(どうするんだろ)と子供心に心配していましたが、きっと響きが気に入っていただけなんでしょうね。

○ 石灰の採掘所

途中、山を切り崩した土色一色の工場がありました。
石灰工業地帯です。休日だからかひとけがなく、工場も稼働していないため、殺伐としています。
前時代の廃墟のようでありながら、自然がな近未来の光景のようにも見える、不思議な空間。
ウルトラマンや仮面ライダーが、敵と戦っていそうな場所です。
徳川時代から続く、石灰の採掘所だそうです。

全てが石灰をかぶった地域。
ここではたと気が付きました。

○ 栃木の車は

栃木に入ってから、私たちがどうも気になったことがあります。
それは、「のろのろ運転」で「ほこりだらけ」の車が多いということ。
全てがそうだというわけではありませんが、よその場所よりも確率的にかなり多い気がします。
お年寄りだけでなく、若い感じの人もゆっくり運転。どの道でも法定速度をしっかり護っているのでしょうか。
もちろんいいことですが、あまりにゆっくりだと「まさか無免許じゃないよね?」「かなりお年寄り?」「居眠り運転?」と、逆に心配になってきます。

すべての車ではないにせよ、他の場所よりも格段に埃をかぶって白くなっている車が多い印象。
ア「茨城の車はぴかぴかだよ!びっくりよ」
私「車が生活の足で大切だからでは?でもここも同じだよねえ」
あまり気にしない県民性なんでしょうか。
リアウインドのワイパー部分だけ黒くなって、ガラス面が見えるため、アコリンは「あの車、窓ガラスが割れてるの?」と見違えたほどです。
九州なら火山灰かなと思うところですが、ここでは、石灰をかぶっているせいかもしれませんね。
辺りの光景をビックリ眺めていたら、写真を撮るのを忘れていました。

息が詰まるような石灰一色の世界を通り抜けると、鮮やかな自然の色が戻って美しい山桜が咲き乱れ、そうして出流に着きました。
『霧の向こうの不思議な町』を訪れたような感覚です。



ほっとして、写真を何枚も撮りました。石灰より桜を撮りたいですからね。



さよならしたはずの今年の桜たち、ここで再びこんにちは。



4月の休日というのに花見客は全くいません。
無人だっただけに、いっそう秘境感が増しています。



○ 小さな出流町

そうして、豊かな自然に囲まれた出流に到着しました。
ここは人口130人、50世帯ほどのとても小さな町。
知っている人が周りにいないのは、そのせいですね。

公民館の先にあったのは、大型駐車場のあるそば店。
駐車場は大混雑しています。
これまでほとんど人を見なかったのに、突然ここで混むなんて。

停めるスペースがなかったので、先に向かってみます。
すると、蕎麦屋の看板が次々に現れてきました。
さっきのお店は、お寺に続く道の一番手前の場所にあるので、がっちりお客さんを取り込むのでしょう。

○ 五合蕎麦

私たちは、どんどん参道を進んでいき、お寺の仁王門から二番目に近い「福松」に入りました。



メニューはもちろん蕎麦づくし。
「一升そば」というメニューに驚きました。この辺りの名物だそうです。
ええと、一升ってどのくらいだったっけ?
一升瓶の量でしょう。ええ、多くない?
その半分の「五合そば」(2・3人前)があったので、それと天婦羅の盛り合わせを頼みました。



ほどなくしてやってきました、お待ちかねの出流そば。割合は7:3だそうです。
こんな風に盛られてくるんですね~。



お互い初めて見るもののため、興味しんしん。
食べてみると、涼しげな、透明感あふれる味で、柔らかいながらもコシがありました。



天婦羅の盛り合わせも、頼んで正解。特に舞茸がおいしーい!
蕎麦ときのこのマリアージュ。ほかの野菜もしっくり合って、自然からの恵みを感じます。



食べやすくておいしかったですが、なかなかボリュームがあります。
2人でこの量だと、かなりおなかパンパンになり、箸を置いて休みがち。
最後の方は重い箸を必死にあげて、いただきました。

お店の人と少しおしゃべりをしました。
到着時には、ふたりともなんだか耳がキーンとしたので、ここはどれだけ高いところなんだろうと思いましたが、この辺りは標高400mで、思ったよりも高山ではありません。
「窓から、この辺で一番高い三峰山の不動岳(標高600m)が見えるよ」と、窓際まで招いて教えてもらいました。



店内には、滝などの写真のほか、御朱印で埋め尽くされた横長の掛け軸が3枚、額に入って飾られていました。
あれはもしや、百観音巡礼?
まさしくそうでした。大迫力です。

この場所から東京に出るまだけでも、大変なこと。
広範囲に渡る行きづらいお寺を、そこからさらに、全て周り終えたなんて、すごい。
と、巡礼者の情熱に敬服しました。

その2に続きます。



最新の画像もっと見る

post a comment