風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

ヅカと芦屋と舞鶴へ 4-1(舞鶴)

2017-10-31 | 近畿(兵庫・大阪)
3日目からの続きです。 

● 大阪駅で迷う

最終日。この日は6時に起き・・・たはずが、目覚めたら7時でした。
どうやら前日、アラームをかけるのを忘れてしまったようです。
この日は、舞鶴にある観音巡礼のお寺に行くため、大阪から舞鶴まで日帰りで往復する予定。
行きにくいところにあるお寺ばかりが残っています。

①「7時半になんばOCAT発」のバスに乗る予定だったのですが、どうやっても間に合いません!
次のバスは、②「8:50に梅田発」です。
1時間半近く後になりますが、これで行くことにしました。

ホテルをチェックアウトして、大阪駅へと向かいます。
目的地は阪急三番街バスターミナルですが、あいかわらず土地勘がありません。
フロントの人に「阪急百貨店側です」「ヨドバシカメラがありますよ」と教えてもらいますが、そのどちらもわかりません!

「JR大阪駅の御堂筋口を出て、梅田駅の茶屋町改札口方面に行けばいい」と教えられもピンとこないまま、うろうろしながらなんとか新阪急ホテルを見つけて地下に降りると、高速バス乗り場がありました。
でもいくら探しても、関空行きの乗り場しかありません。
案内の人に聞いてみると「三番街は、そこのホテルを突っ切って右です」と教えてくれました。
ホテルを突っ切っていいの?
おそるおそるホテルの中に入ると、確かに向こう側へ通り抜けられるようになっていました。

● 立て続けにバスを逃す

バスターミナルに着き、カウンターでバスチケットを買おうとしたら「②のバスはもう満席です」と言われました。
えー、2本目にも乗れないなんて!

カウンターから離れて、ちょっと落ち着いて考えてみることにします。
この日が旅の最終日なので、便が遅れても行くしかありません。
次は③「10時半になんば発」。
(舞鶴滞在時間がぐっと少なくなるけれど、プラン的に大丈夫かな?)
(戻ってくる便を遅らせようかな?)
(梅田からなんばには、どうやったら行けるのかしら?)
いろいろ考え、プランを練り直してから、再びカウンターに行くと、
「③10時半発の便も、もういっぱいです」と言われました。

えー、まさか!? 舞鶴って、そんなに人気あるのね…。
梅田発は1日2本しかなく、次の便は17:10発。それは無理...。

7時、8:50、そして10時半発の便に、3本続けて振られて、トリプルショックに固まります。
ここまでくると“そなたは舞鶴に行ってはならぬ”という運命の力が働いているのかと思えてきます。

● 4度目の正直

フリーズしている私に、受付の人が「三宮なら、10時発の便が取れますよ」と教えてくれました。
「えっ、三宮?」「はい」
神戸じゃないですか!今いるのは大阪ですよ。
「ここから、どのくらいかかりますか?」
「阪急で一本やし、バスターミナルは駅前なので、30分あれば着きますよ」

そうなんだ~。三宮発は全く考えていませんでした。
大阪となんばでさえ、移動にてんやわんやの私ですが、大阪の人にとっては神戸は「すぐそこ」レベルなんですね~。
距離感覚の違いを実感。
そこで、④「10時に三宮発」のバスを予約し、神戸へと向かいました。

● バスに乗るため電車移動

バスターミナルで悩んでいたら、結構時間がたっており、次の快速は9時20分発、神戸三宮に9:48着です。
バスは10時には出発します。うーん、大丈夫かしら。
無事に乗れることを祈るしかありません。

駅には見知らぬ電車が停まっていました。



平日だからか、車内はガラガラです。



やっぱり阪急は好き。
つやつやのマルーン色の車体はもとより、ピカピカのホームも気に入っています。
関東にも路線が延びないかしら~。



● 三宮駅でも迷う

芦屋を越えて、初日に訪れた三宮に着きました。
電車を降りると、朝からうだるような暑さです。
駅構内の待合場所にはミストが降り注いでいましたが、ここで涼んでいる時間はありません!



何も考えずに降りたら、はるか遠くの西口から出てしまいました。
反対側から出ればよかったのに、今いる場所がどこかわからず、キョロキョロ。
迷いながら中央口側に出るまでに、5分ほどロスしてしまいました。

ここはそごう。1日目に探した場所です。



地図では、駅前のミントビルにバスターミナルがあるのこと。
(きっと地下だろう)と降りてみましたが、あるのはおしゃれなショッピングモールのみ。
あれ、バスターミナルはどこ?
発車の時間が刻々と迫っています。さすがにあせって走り出します。

市営バスの発着所に行って「ここは近隣だけだよ」と教えてもらい、戻って探して、ようやく奥にバスターミナルを発見。
案内所に飛び込み、電光掲示板の停車番号を確認します。
ラッキーなことに、乗るバスはすぐ目の前に停まっていました。
乗り込んだときは9:58。席を探して荷台に荷物を乗せ、着席するとほぼ同時に、バスは発車しました。
なんとかセーフ。初心者にはハイレベルな、ギリギリの危ない綱渡りだったわ~。

大阪・神戸~舞鶴線は、3列でゆとりある贅沢なバス。
乗客数が少なく、すぐに満席になる理由がわかりました。
この便も、空席はあと数席のみでした。

謎の負の力が働いて、乗れないんじゃないかと思ったバスに、4度目の正直でようやく乗れました。
よかった~。

● 舞鶴の軍港

動悸が収まり、緊張が解けたら、安心して寝落ちしたらしく、気がついた時にはバスはもう舞鶴まで来ていました。
バスの外にはものものしい軍艦が見えます。
わー、そういえば舞鶴って、優美な名前に似合わず軍港なんでしたっけ。

赤レンガ倉庫も立ち並んでいます。
赤レンガと言えば、横浜や札幌、小樽が有名ですが、そのどれよりも数が多くて保存状態もいい感じ。





● 東舞鶴でレンタサイクル

終点の東舞鶴駅前には、ちょうど正午に着きました。
快適な車内から外に出ると、日差しがまぶしく日射は刺すように照りつてきます。
まずは駅にある観光案内所へ。



「松尾寺に自転車で行きたいんですが、どのくらいかかるでしょうか?」と聞くと、
「自転車で…?」と、絶句されました。
「かなり遠いですよ。10キロくらいありますから」と言われて
「えっ…」今度は私が絶句します。
「ここからだと、皆さん車以外ではどうやって行かれていますか?」と聞くと、「バスですね」との答え。
でも、バスが連れて行ってくれるのは山の麓まで。
しかも、3,4時間に1本しかありません。
ちょうど12時5分発のバスが駅前に停まっていますが、それに乗ると帰りはオール徒歩になります。
どっちもきついわ。う~ん。
悩んでいるうちに、バスは行ってしまいました。

ということで、もう自転車でし行く方法はなくなりました。
レンタサイクルで、いざ出発。
暑さにすぐに音を上げそうになりますが、そうは言っていられません。

観光案内所で、地図をもらいそびれたことに気が付きました。
そのうち近隣地図があるかなと思いましたがありません。
人に聞くと「逆ですよ」と言われて、(ありゃりゃ)と方向転換。
まずは、松尾寺駅を目指します。
駅はあっても、電車は昼の時間に通らず、無人駅なのでレンタルサイクル店もありません。

そこで隣の東舞鶴駅からの出発になりましたが、誰に聞いても「遠いよー?」と言われます。
だってほかに方法がないからー。
レンタカーも考えましたが、一人で運転する自信と勇気がなくて、アナログ路線で行くことに。

● ひたすら走る

丹後街道をひたすら走ります。
行けども行けども、駅はありません。
車道沿いですが、店もほとんどありません。



途中、舞鶴高専への標識がありました。
おお、ロボコンによく出場している学生たちは、この辺りで勉学に励んでいるのね。
研究に精が出そうな環境です。

ほかに「逆さ杉」という手描きの標識があり、(逆さ杉?なんだろう?)と思いました。
あとで調べたところ、普通のまっすぐの杉とは違う、広がった変わった形の杉だそうです。→逆さ杉の紹介

松尾寺までの石碑がありました。道は間違っていないようです。



お店もなく、ただひたすら緑と道路が続くだけなので、自分がどれだけ進んだのか、よくわかりません。
バス停を数えながら進んでいくと、ようやく松尾寺のサインが見えました。



どこかで時報が鳴ります。1時です。
自転車を借りてから1時間近く、乗り続けていることになります。
まだ先は長いです。これは大変だわ。

さらに進んでいくと、バス通りからそれてお寺へ向かう道がありました。
ここからは3kmの山道コース。少しでも自転車で進んでおきたいところですが、ギアチェンジも何もついていない自転車なので、登り坂が続くと脚が動かなくなり、早々にギブアップ。
道端の草むらに自転車を停めて、そこからは歩いて登ることにしました。

● 歩きで山登り

しかし、この時点ですでにかなり消耗しています。
自転車よりも、容赦なく照り注ぐ日差しの強さと蒸し暑さに参っています。
ちょっと休憩を取りたいところですが、そんな場所はなく、予想以上に時間がかかっているため、なるべく早く登りたい気持ち。

ここはずっと舗装が続く車道なので、御無体な傾斜はないはず。
とはいえ上り坂はきつく、さらにカーブが続くため、登っても登っても先が見えません。
どこまできたのか、あとどれだけあるのか、何もわからないと、モチベーションを保つのが大変。

道中の画像がないのは、写真を撮る心の余裕が全くなかったためです。

ひたすら登り続けますが、ゴールが見えないまま、体力だけが失われていきます。
いよいよ気力体力の限界に近づいてきました。
この前の滋賀のお寺でやったように、またもやヒッチハイクをしようかという気持ちになります。
普通は(そんなこととてもできない)と思いますよね。
普通は私もそうですよ。ただ人は限界状態になると、なりふりかまっていられなくなるのです。

● 気力体力の限界

ここはお寺に行く一本道。通りかかるのはきっと同じ巡礼者でしょう。
苦労がわかる者同士、普通の道よりもぐんと頼みやすいです。
「同行二人」ならぬ「同乗二人」。
ところが、車がまったく通りません。
この日は月曜日。平日だからでしょうか。

斜面を道に沿って歩くこともできなくなり、斜め歩きをしながら右に左にふらふらと登って行くと、しばらくして、下から車の音が聞こえてきました。
あっ、車が来るわ!

それでも、土壇場になって車を停める勇気が出ず、ただ突っ立って見送ってしまいました。
残っていた理性が邪魔をしたようです。う~ん。
でも、道の先を見上げても、まだまだ先は見えません。
やっぱり乗せてもらえばよかったかな…。
そう思っていると、再び背後から車の音がしました。
あっ、もう一台来る。
今度も立ち止まって、やってくる車を見ます。
(どうしよう~)とまだ決めかねていると、運転している人とバッチリ目が合いました。
「えっと、なにかな?」と目で語りかけてきます。
いい人そうなので、肚を決め「すみません!」と手を挙げて、停まってもらいました。
(注:これは自己責任です。よいこは自分で判断してね)

● 同乗二人

お願いして、車に乗せてもらいます。
よかった~。
乗せてもらってしばらくは息切れが止まらず、呼吸が落ち着くまではまともに会話ができない状態でした。
思ったよりも体力が消耗していたようです。

「一人でお寺に?歩いて?」と聞かれます。
「どこから歩いてきたの?」これは説明のいる質問です。
「東舞鶴で自転車を借りて、麓からは歩いてきました」
「自転車で麓まで?遠かったでしょう」
「ハイ…」

自力でかなり登ったつもりでいましたが、まだまだ坂は続き、さらに急斜面にさしかかります。
これはあかんかったわ~。乗せてもらって助かったわ~。
乗せてくれたおじさんは「実家がお寺のそばにあって、車を交換しに来たんや」と話してくれました。
「参拝ではないんですか」
「この山には鹿やタヌキがいてな、よう出てくるよ。時々熊もな」

舞鶴といったら港のイメージですが、周りは山また山。
緑深く、自然がいっぱいです。



山は、登るにつれて傾斜が強くなっていき、息詰まるようなせり上がりの果てに、お寺に着きました。
乗せてもらえて、本当に助かりました。
お礼を言って降りようとすると
「これから車を交換するだけだから、帰りも乗せていってあげられるけど?」と言われました。
帰りのことは、まったく考えていませんでした。
「行きも帰りもでは、あまりにご迷惑をおかけすることに…」
「いやいや、どうせ降りるんだし一緒や。今度は軽トラになるけどそれでもよければ」
「では、済みませんが、また乗せていただいてもいいでしょうか?」
「じゃあまたここでね」
神も仏もない、と言いますが、実際にはいると思います。
ありがたい約束をさせてもらい、お寺を参拝しました。

● 西国第二十九番札所 青葉山松尾寺

松尾寺の石段を上がると、仁王門。
仁王門の中には仁王様が・・・いませんでした!写真が飾られていました。
本体はどこかで修復中でしょうか。→関連記事「阿吽」金剛力士立像 解体修理終え2年半ぶり再会



振り返って裏側から見た仁王門



仁王門の先にまた石段。



本堂に着きました。歴史ある古刹です。



ここは33ある西国観音霊場巡礼でただ一つ、馬頭観音がご本尊のお寺。



昔はこんな山の上にまで、馬が通っていたんですね。




実は私、御朱印帳を忘れてしまいました。
朝のドタバタで、ホテルに預けた荷物の方に入れっぱなしで来てしまったんです。
気づいた時からずっとブルー。

住職にいかめしく「紙ではお分けしません」と言われたら、どうしましょう。
お寺は住職ルールで動いており、それに従わなくてはなりません。
またこのお寺まで来なくてはならないの…?



社務所でおそるおそる聞いてみました。
ご住職は耳が遠いようで、「え?」「え?」と何度も尋ねられます。
言いづらいことでしたが、大声で説明すると「じゃあ紙にしますね」と言ってくれました。
ありがとうございます~(涙)



西国霊場を徒歩で巡礼しきった記念碑。
ここの先代住職が成し遂げたそうです。
すごいわ~。この山ひとつも自力で登れなかった私にとって、見習うべき体力です。

● 下りは軽トラで

参拝を済ませ、やってきた軽トラに乗せてもらいました。
運転手はもちろん、先程のおじさんです。
先ほどはゼイゼイと息も絶え絶えでしたが、参拝している間に、世間話ができるくらいまで体力が回復していました。
でも下りは、びっくりするくらいにあっという間。
「あそこに自転車を停めたので…上りも下りも乗せて下さり、本当にどうもありがとうございました」とお礼を言って降りようとすると、おじさんは
「そうだなあ・・・これ、軽トラだから、自転車を荷台に乗せて東舞鶴まで送ってあげるよ」と言ってくれました。

え?
びっくりします。
「いえ、そこまではご迷惑かけられません」と言うと
「自分も東舞鶴に帰るから、大丈夫」とのこと。
「自転車に乗って、東舞鶴駅まで行くんでしょう?よければ乗っていけば?」
なんという、夢のような申し出でしょう。
ありがた~く、乗せていただくことにしました。
「軽トラで良かったね、ハハハ」とおじさん。

● 駅まで軽トラで

自転車に乗り換えて、さすがにここからは自力でがんばろうと思っていましたが、なんというセレンディピティでしょう。
朝、バスに3本乗れなかったのは、このためだったのかとさえ思えてきます。

バス通りに合流しました。辺りには何もありませんが、割と交通量は多い道路。
ここはほとんど福井との県境に近く、敦賀まですぐ。
この辺りには原発が2つあるため、トラックがたくさん通るそうです。

途中、チェーン着脱所があったので、雪は結構降るのか尋ねました。
「以前ほどではないけど、松尾寺の辺りでは40cmくらいは積もる」ということでした。

おじさんは、東舞鶴駅から徒歩3分の場所に住んでいるとのこと。
「東京や横浜にも、仕事でときどき行くよ」とのことです。
水がきれいな舞鶴には、京都や大阪から海水浴をしに来る人が多いんだとか。

「またあらためてきた時には、町を案内してあげる」
こちらが御恩返しをしなくてはいけないのに。最後まで、何から何までありがたい方です。
駅に近づくと、「大門三条」「大門七条」という交差点が目立ちます。
「京都と一緒で、町が碁盤の目になっとるんや」
九条まであるそうです。



舞鶴は東と西があるんですね、と話すと「まとまっていればいいのに、両方に分かれているから、ぼやっとしている」とのこと。
西は城下町、東は軍港と、カラーが違うようです。

駅前まで送ってもらいました。荷台から自転車を下してもらい、散々し尽くしたお礼を言います。
「元気でね~!」
今回の参拝で積んだ私の分の徳が、そっくりあの親切なおじさんに行きますように(。-人-)

その2に続きます。




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