風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

紅葉を巡る4県の旅 2-1

2017-12-08 | 近畿(京都・滋賀)
1日目からの続きです。 

● 朝のお勤め

11月24日。お寺の朝課(ちょうか)に参加するべく、朝5時半に起き、6:15にロビーに集合しました。
参加メンバーは、ご夫婦一組、息子とご両親、私たち親子、女性一名の計8名。
みんなで南禅会館から南禅寺に歩いていきます。
まだ外は暗く、頭も覚めないままで、ボーっとしています。

明るくなっていないうちから、私たちのほかにも南禅寺にやって来た人たちがいました。
みんな三脚を担いでいます。
早朝の美しさを撮りにやってきたカメラマンたちのようです。
芸術作品を取るって、大変なんだわ。



南禅寺方丈の入り口で、袈裟姿のご年配の僧侶が出迎えてくれました。
(画像に見える人影です)
きりりとしたお顔つき。禅寺なので、お寺全体が凛とした空気に包まれており、私語などできない雰囲気です。
眠気はどこかに飛んでいきました。
僧侶は、私たちの前に立って冷たい伽藍を歩きながら、ガラガラと木の扉を開け放っていきます。
寒い外気が入ってきてますます寒くなりますが、緊張しているのであまり皮膚感覚はありません。

● 国宝の清涼殿で

僧侶がすいと入ったのは、国宝の清涼殿。
一般参拝者は決して入ることはできませんが、どうやらここで朝課が行われるようです。
わー、すごい体験。ますます緊張して足を踏み入れました。

僧侶が拝礼をしているところに、若手の僧侶二人が登場しました。
一人は木魚、一人は鏧子(けいす)を鳴らし始めます。
そして3人で声を合わせてお経を読み始めました。
最初は般若心経。
これなら私もわかりますが、まれに聞くハイスピード。
はじめは一緒に唱えていましたが、緊張している頭は普段以上に反応が悪く、すぐについていけなくなりました。

あっという間に唱え終わり、続けてほかのお経を次々に読んでいきます。
木魚と鏧子を鳴らしながら、間近で朗々と唱えられるお経は迫力がありました。

読経が終わると、今度は一人一人が仏像の前に立ち、お焼香をすることになりました。
お葬式のとき以外にする機会は、なかなかありません。

その後、清涼殿から出て廊下を戻り、入り口の仏像の前でまたもや読経。
そうして朝課が終了しました。

● 静かな時間

早朝のお寺のお勤めを終えると、ぴんと背筋が伸びるような気持ちになりました。
普段は混んでいますが、まだ誰もいない、南禅寺の茶室。



お寺の外に出ると、もう日が登っており、先ほどよりもずいぶん辺りが見えるようになっていました。



南禅寺が開くのはまだ1時間以上先の話。
まだ観光客のきていない、静かな敷地内を散策しました。



紅葉がきれい。
人が多いと、なかなか自然に目がいかなくなってしまうので、今のうちに眺めておきます。



いつも混んでいる南禅寺も、朝は空いています。



早朝カメラマンは、さっきよりも増えています。
時間は7時前、まだ人が少なく、写真を撮るにはいい時間です。
それでも、身体が冷え切ってしまったので、宿にもどって暖まりました。



● 五観の偈

朝餉の時間です。
お箸袋には「食事五観文(しょくじごかんもん)」が書かれていました。
禅宗で食事の前に唱えられる文句で、五観の偈(ごかんのげ)ともいいます。

一つには、功の多少を計り、彼の来処を量る。
     (すべてのものに感謝してこの食事をいただきます。)
二つには、己が徳行の全欠をはかつて供に応ず。
     (自分の日々の行いを反省してこの食事をいただきます。)
三つには、心を防ぎ、過貪等を離るるを宗とす。
     (欲張ったり残したりしないでこの食事をいただきます。)
四つには、正に良薬を事とするは形枯を療ぜんが為なり。
     (身体と心の健康のためにこの食事をいただきます。)
五つには、道業を成せんが為に、将にこの食をうくべし。
     (みんなが幸せになるためにこの食事をいただきます。)
合掌。



箸袋の裏には、「食後のことば」も書かれていました。
尊き恵み今すでに受く 此の力を持って普く衆
生のために尽くさん ごちそうさまでした
                大本山 南禅寺

この言葉を唱えると、丁寧に食事ができた気がします。
ほかの宿泊客と一緒に食事をしていると、一人のお坊さんがやってきて、隣のテーブルのおばさまグループに「どのくらい滞在するんですか」と問いかけました。
「一週間」と聞いて、私は内心(わー、長いのね)と驚きます。
僧侶の覚えめでたい、南禅寺派の信徒の方々なんでしょう。



食後、支度をして8時過ぎにチェックアウト。
さっそく動き出します。

● 大政奉還150周年

まずは地下鉄で、二条城へ向かいました。
絵になる、というか絵のような景色。



8:45の開城(でいいの?)直後でしたが、もう大勢の人たちがいました。
修学旅行生のグループもいます。こんなに早くお城にいるなんて、熱心だわ。



今年は1867年の大政奉還から150周年になるそうです。
江戸幕府が終わってから150年たったんですね~。



源頼朝が鎌倉に幕府を開いてから約680年間続いた日本の武家政権が終焉した大きな歴史の分岐点。
当時は激動の舞台でしたが、今ではすっかり落ち着いた城内に入ります。



外国人ファミリーと一緒に登城。
突き抜けるような青空に、お城がよく映えていました。



広いお城内には金屏風の贅沢な部屋がいくつもありましたが、風通しのいい木造日本建築の中にいると、やはり寒々としてきます。
ここにお勤めしている人は、防寒対策を万全にしないと大変そう。

● 3つの庭園

敷地内には、二の丸庭園、明治時代の本丸庭園、昭和期に作られた清流園の3つの庭園があります。



すみずみまで手入れが行き届いた広い庭園は、どこを眺めても美しい景色に出会えます。



陽の光を受けて、紅葉もキラキラまぶしく輝きます。



まあ、ここは日本版バッキンガム宮殿やチュイルリー宮殿の庭園ですからね。
そう考えると、豪華で非日常的な空間に納得です。



じっくり見学しながら、城内をぐるっと一周しました。

● 若沖の錦市場

お城を出て、四条に移動し、錦市場へと向かいました。
将軍が政を司ったやんごとなき世界から、一気に庶民の胃袋を支える賑やかな世界へ。
たどり着いた時には、ちょうど10時になっていました。



入口には大きく、伊藤若沖の描いた鶏の絵がかかっています。
若沖の実家は、この市場にあった八百屋でしたが、気がつけば長い通りのあちこちに彼の絵の幕が飾られて、市場全体が若沖推しになっていました。



京漬物といったら西利。
千枚漬け用の聖護院株が並べられていました。

● ハモの串焼き

まずは魚力 (うおりき) に行き、母の念願のハモの照り焼きをいただきました。
店頭に並ぶ串を、炭火で焼き直してくれます。



ハモ(鱧)ってなかなか関東では食べる機会がありません。初夏以外では、ほぼ皆無です。
でもここでは、一年中食べることができます。



一串500円と、お値段はそれなりですが、珍しさもあってか売れ行き好調。
お店の人とハモの会話をして、お吸い物もいただきました。

● 丹波の焼き栗

次に、これまた母お待ちかねの丹波の焼き栗のお店へ。
昨日、東福寺前の道で何軒もの店が焼き栗を売っているのを横目で見てこらえてきただけに、今回はネコならぬ母まっしぐら。



ここの栗はすごいです。たっぷり。
収穫の秋ですねえ。



ちょっとおまけしてもらい、あとでお茶しながらいただきました。



大きくてホクホクした甘さが嬉しいところ。
東京でも買えればいいのになあ。

● 蛸薬師はどこ

ハモと丹波の栗をゲットしたことで、母の錦市場ミッションはクリア。
一番端の錦天満宮まで来たところで、まだ蛸薬師に行ったことがないと思い出しました。
「すぐ近くのはずだから、お参りしよう」

ここかなと思って入ったお寺には、どうもタコがありません。
あれー、ここでいいのかしら?
お寺の由緒が書いていないため、よくわかりません。
蛸薬師というのは通称であって、本当のお寺の名前は別にあると思うし。
母は「きっとここよ」と言いますが、どうも気になっていると、ちょうどお寺の隣の建物のドアが開きました。
そこから出てきたのは、白粉顔の女性。
スナックのママかしらと思いながら聞いてみたら、「ここじゃありませんよ」と教えてもらいました。
よかった~。確認しなければ、勘違いしたまま別のお寺を参拝して帰るところだったわ。

教えてもらった道を行き、正しい蛸薬師を参拝しました。
木製ながら今にも動きそうにリアルな撫でタコを、せっせとさすってきました。

● 愛の祇園巽橋

それから錦市場を離れて、鴨川にかかる四条大橋を渡りました。
風が冷たいのに、今でも大勢の人たちが川辺にいます。
「鴨川等間隔の法則」は、この日も遵守されていました。



この辺りは祇園。
公園の雨よけも、京風の和傘デザインです。



たどり着いたのは、これまた母のリクエストによる祇園巽橋(たつみばし)。
時代劇によく登場する橋ですが、ちょっとわかりづらい場所にありますからね。



ちょうど紅葉が色づいて、絵になる季節です。
ここにも着物姿の人たちがたくさん。



橋の上から眺める白川。清流です。


ここは、着物姿の人ばかりでなく、ウエディングフォトの一大撮影スポット。
辺りを見渡すと、あちこちに和装姿のカップルと撮影隊がおり、めいめいがスペースを保ちながら、熱心に撮影を行っています。
相手のフィールドに踏み込まず、自分の陣地も譲らないという絶妙なバランスを保ちながら、皆さん少しずつ場所を変えて移動し続けている、華麗なる戦国群雄割拠状態。
 私「フ、フォトジェニックだわ~」
 母「イ、インスタ映えするね~」
お互いに、使い慣れない言葉を言ってみたくなったりして。

その2に続きます。



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