風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

海の向こうの海岸へ(房総)1-2

2017-02-28 | 千葉
その1からの続きです。

● 日本寺アドベンチャー

のこぎり山の山頂からロープウェー乗り場に戻って、そこからお寺に向かいます。
ずいぶんと石段を下りていって、楽ですが、素直に喜べません。
帰りにロープウェーで降りる時に、急な石段を今度は登ることになるから~。あとでヘトヘトになるのが目に見えています。
お寺の入り口にたどり着きましたが、緑が生い茂っているばかりで、まったく建物は見えません。
この広いのこぎり山一帯が日本寺の境内。約10万坪(33万m²)がお寺の敷地だということで、ほとんどが自然の中なんでしょうね。



ここをくぐるとアドベンチャーが待っている予感。
「日本一の磨崖大仏」も「地獄のぞき」も気になります。



● 神々しい百尺観音

渡された地図を見ながら、まずは百尺観音に向かいました。
うっそうと樹木が茂った山の中。お寺の中とは思えないワイルドさでいっぱいです。



岩肌にくっきりと刻まれた観音像。昭和41(1966)年に完成。
その迫力に、呆然と立ち尽くしました。
これはすばらしい磨崖仏。
「これだけでも、見にきた甲斐があるわ~」とベス。



100尺、つまり約30mの高さから、私たちを見下ろす観音様。
岩に刻まれたもので、立体感はないのに、神々しさを感じさせるパワーがあります。
緑生い茂る山の中、ジャングルで発見したような感動があるからでしょうか。
木のベンチに座って、しばし向き合いました。



30代後半の男女7,8人と子ども数名が、観音岩の前に一列に並び、写真撮影に入ります。
カメラマンが「せーの!でジャンプね、ジャンプ!!」と何度も言っていたのに、息が合わずにみんなバラバラに飛んでいたのが、ふぞろいの林檎っぽくておもしろかったです。



ずいぶん上の方から、人の声が降ってきます。みんな、端っこまで身を乗り出しています。
あそこが地獄のぞきかも。落ちてきたらどうしようと思います。



● ドキドキの地獄のぞき

さらに先に進んでいきます。
次に目指すのは、山頂展望台の「地獄のぞき」。
「地獄のぞきってなんだろう?」
「高い突き出した絶壁から、下をのぞく場所ってことかな」



そう言ったら、ベスは震えあがりました。
「ムリムリ~。まかせた!」
ということで、高いところが大好きな煙とナントカな私が、ワクワク地獄のそばまで行ってきましたよ。



吸い込まれそうでドキドキしました。
私が地獄をのぞいている間、ベスは、木のそばの安全な場所から離れませんでした。



いや~、自然って不思議ですね~。どうしてここだけ出っ張っているんでしょうね?
上から横から風にあおられるだけでなく、足の下の方からも風が来て、不思議な感覚を味わいました。
覗いた下は青々とした木々の緑が広がって、きれい。
こんな地獄だったら大歓迎だわ!



● 無数の仏像群

石段を下りていくと、仏像が立ち並ぶ山道になります。
西国観音、百躰観音の辺りに差し掛かりました。
おびただしい数の仏像や羅漢像がありますが、明治時代の排仏毀釈以降は、一気に荒廃が進んだとのことで、首や手が取れてしまっている像も多々ありました。



石段をどんどん下がっていくので楽ですが、不安になります。
だって、結局は再び入口に戻るので、下った分また登らなくてはいけないからです。
上る人とすれ違うと、みんな朦朧としたうつろな顔つきになっていて、見るからに大変そう。
私たちも帰りはこうなるのね~。こわいわ~。

観音像のある辺りを通り抜けたところに、あせかき不動像がありました。
「ならば拭かねば」と思いましたが、石の光り加減で、汗をかいているかどうかはよくわかりませんでした。

● 宇宙人無数?

突然、甚五郎なる人物のお墓がありました。
日光東照宮の眠り猫を手掛けた「左甚五郎」のことかと思ったら、別人の「大野甚五郎」さんでした。
日本寺の大仏や仏像を、27名の弟子と一緒に彫って建立した上総桜井(現木更津市)の名工です。
ここは神亀2(725)年に行基が開山した曹洞宗の寺院ですが、江戸時代の大野甚五郎の活躍から、日本寺の興隆が始まったというわけです。



ここの案内板には、わかりそうでよくわからないフレーズがついています。
不動滝のところでは「茫々たる宇宙人無数」「幾箇の男児が是れ丈夫」と書かれていました。
う~ん、どんな意味なんでしょう。
(宇宙人が無数にいるの?ヒエッ!)と思いましたが、「茫々たる宇宙」で切るのが正しいんでしょうね。

弘法大師護摩窟の前を通り、龍の滝を眺めてから、なおも石段をさがっていくと、大仏前参道に行き当たりました。
石段だらけの日本寺の境内でほぼ唯一と言っていい、ゆるやかなスロープ道です。
ここを通って、いよいよ大仏とお目見えです。



● のこぎり山の大仏様

のこぎり山の日本寺の大仏。初めて見ました。
大きくてどっしりとしています。とても巨大で驚きました。

端正な顔のつくりで、誰かに似ているような親しみやすさがあります。
私は(三浦友和に似ている)と思いましたが、どうかしら?



前に立って向き合うと、不思議な感動がありました。
飛鳥時代、人々は大陸から伝来した大仏の大きさと立派さに敬服して、仏教を信じるようになったといいますが、そんなまほろばの気分です。
百尺観音はたしかにすばらしいものでしたが、大仏はまたそれをしのぐ印象の強さがありました。

境内には、インドから寄贈されたという聖菩提樹が生い茂っています。
感動の大きさにすぐには立ち去りがたく、そばのベンチに座って、しばらく大仏のいる空間を堪能します。
気がつくと、結構な数の人が辺りにいました。
このお寺は、基本、ハードな山道だらけですが、大仏には駐車場からまっすぐ来られる場所なので、年配の人も来やすいようです。

大仏が手に持っているものは、お湯のみ・・・じゃなくて薬壺でしょうか。
そうでした。これは薬師瑠璃光如来でした。
ハハ~、ありがたや~(-人-)

● 大きさ日本一

この日本寺大仏は、像高21m、台座を含むと31m。江戸時代の創建当初は今よりさらに7m大きかったそうです。
大仏といったら、奈良と鎌倉が押しも押されぬトップ2ですが、奈良・東大寺の大仏(盧遮那仏)は、像高15m、台座を含むと18m。
鎌倉・高徳院の大仏(阿弥陀如来坐像)は、像高11m、台座を含むと13m。

とすると、その二つよりも、この日本寺大仏の方がはるかに大きいんですね!
知りませんでした~!(゚〇゚;)



去年末に、牛久大仏を参拝しました。
あちらは立っており、新しいものですが、他の追随を許さない巨大仏。
青銅製大仏立像としては、牛久大仏が日本一で、
座像および石仏としては、のこぎり山の大仏が日本一!
茨城と千葉、やりますね~!神奈川に負けてなーい。
ほかにも高崎大仏とか東京大仏とか鎌ヶ谷大仏(えっ)とか、実は関東は巨大仏の宝庫なのかもしれません。
これまでの自分の認識を新たにしました。

まだ鎌倉を訪れていないというベス。
「知り合いで、鎌倉の大仏を見たことがないっていう人、いないでしょう」
「うん、あなただけかもね~」
「鎌倉の大仏よりも先にこっちを見ちゃった…。鎌倉よりもずっと大きいみたいだし、鎌倉で感動しなかったらどうしよう」
真剣に心配しています。
それはそれ、これはこれ。大丈夫、ちゃんと感動するから!(たぶん)

● ヘトヘト登山

しばらくの間大仏と向き合って、十分満足してから、お寺の入口まで戻ることにしました。
でも、かなり足取りが重くなっています。うーん、ここからの道がつらいのだわ~。
大仏広場まで、かなり下ってきたので、その分山をまた登らなくてはなりません。
さらに、石段を上ったり下りたりしてきたため、かなり足はくたびれています。
しかも、いくら山の中とはいえ、今は真夏。暑さと湿気ですでにぐったりしています。
しかし、とにかくロープウェー乗り場までたどり着かないことには、帰れません。
「無理しないことにして、10回くらい休憩することになっても、ちょっとずつ行こう」



途中、ご年配の方々の団体ツアーとすれ違いました。
「いやー、大変だ、大変だ」と口々に言いながら、手すりにつかまって石段をゆっくり下りてきます。
乗ってきたのはアルピコの観光バス。この前利用したところなので(長野からきた人たちね)と分かります。
房総半島と長野。似ている点は、山がたくさんあるところで、違う点は、海があるところ。
皆さん、海の幸を堪能しに千葉まで来たのかもしれません。

どこまでも続くような上りの石段は本当にきつく、お互い会話をする心の余裕はすでになくなっています。
無言で一歩一歩、ひたすら石段を登って行きました。
これぞ修行!
ようやく、もときたお寺の入口までたどり着きました。
やったあ・・・(喜ぶ元気もない)
でもまだゴールではありません。お寺を出てから、さらに石段を登っていかなくては。
耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、ようやくロープウェイの乗り場にたどり着きました。
あ~、がんばったわー。

● 帰りのロープウェイ

くたくたの私たちをよそに、のんびり岩肌でくつろぐ猫たち。3匹いました。
猫に苦行なんて、「猫に小判」並みに縁がないですね。
猫のいる場所の下に池があり、金魚が泳いでいました。



汗だくで、身体から湯気が立っているようです。
自分が炎を背負った不動明王になった気分。(バチ当たりな…)
乗り口のところで売られているアイスクリームがとっても気になります。
ベスは、ビールにロックオンしていますが、ロープウェイはちょうど発車するところ。
「すぐに出るから、まずは乗って降りよう」と、断腸の思いでお互いがマークしている冷たいものから離れました。



団子も気になりましたよ。ピンクと紫のものは初めて見ました。
さくら味とむらさき芋味ですって。



降りていく時に「あっ」と一瞬周りがざわつきます。
ベスが「虹、虹が見える」と言ったので、目を向けましたが、何も見えません。
「ほら、あそこに赤色が一番目立ってて」
と言われて、しきりに目を凝らしても、全く見えません。
「心のきれいな人にしか見えないのかも・・・」とションボリ。
「すぐに消えちゃったから」とフォローしてもらいました。

● ご当地ソフトクリーム

下に降りると、暑さがよりきつくなった気がします。あ、暑い・・・。
荷物をロッカーから取り出して、再び金谷港へ。
ソフトクリーム店に、猫まっしぐら。
ベスは、ビールへの思いを夜まで封印すると言い、プレミアムピーナッツソフト(左)、私はビワとミルクのミックスソフト(右)にしました。
2人とも、一口食べてから「あ、写真」と思い出したので、先っぽが欠けています。
それだけ暑かったんですよ!
ピーナッツ味を一口もらいました。
濃厚でおいしかった~。さすがは落花生の国、千葉ですね。



「は~、生き返った~」
よぅやくひと心地。
登って歩き回った後で、改めて下から眺めるのこぎり山。
本当にギザギザしています。



● 海沿い電車

英気を養ってから、そろそろ宿へ向かうことにしました。
JR内房線に乗って行きます。



浜金谷駅は、水色ベースの清潔な建物。
駅のところだけ複線ですが、ほかは単線です。人がいなーい。



海岸線沿いを走っていくため、車窓からはキラキラ光る海が見えました。

● 八犬伝の舞台

この日の宿は、岩井海岸沿いにあります。
降りた岩井駅は、赤茶ベースの駅舎でした。



南房総市に入りました。かなり房総半島の先の方に近づいています。
この辺りは富山と書いて「とやま」ではなく「とみさん」と読むそう。
「トミー」と電光板に表示されたコミュニティバスが停まっていました。
(トミーってどこ?)と思ったら、それはバスの愛称でした。



ここは『南総里見八犬伝』の舞台となった辺り。
そういえば南総って、南房総、上総国のことを言いますね。



駅の隣の公園には、伏姫と八房(犬の名前)の像がありました。
この像を作った人は、山下公園の赤い靴の女の子像を手掛けた人だと知って、がぜん親近感がわきます。
この辺りの出身なんだそうです。



駅前を歩くと出店が出ており、各民家の前にはカラフルなペーパーフラワーが飾られています。

途中で、お茶やお菓子を買いに寄ったスーパーでは、オードブルの注文がたくさん入っており、「○○青年会」などと書かれていました。
やっぱり町のお祭りのようです。

● 2組のみの宿

てくてく歩いて、宿に到着。宿の人に挨拶します。
「今日はお祭りですか?」と聞くと「そうなんですよ」で終わってしまい、それ以上のことはわからずじまい。
あとで調べてみたら、どうやらこの辺りの地区のお祭りのようでした。

この民宿は、一日2組のみの受け入れで、2階建て一軒家の1階と2階を貸してもらいます。
一階は赤ちゃんのいるファミリーで、すでに庭には、川崎ナンバーの車が泊まっていました。
私たちは2人で2階の畳12畳部屋を使わせてもらいます。
ゼイタク~。
とにかく暑かったため、荷物を置いてまずは涼みました。

夕食前にお風呂に入ります。
浴室は2つあり、1階と2階で分かれていたので気兼ねなく入れました。
全身の汗を洗い流して、スッキリ、シャッキリ。
元気になったところで、夕ご飯の時間になりました。

● 房総の海の幸

夕食は18時から。まだ外はまぶしいくらいに明るいのに、なんて健康的なんでしょう。
テーブルには海の幸がずらりと並びました。う~ん、どのお皿もおいしそう!
野菜はどれも、家庭菜園で採れた有機もの。味が濃かったです。



「なめろうのたたき」がでてきました。
昼もお寿司を食べています。
(なめろうって、どんな魚なんだろう?)と思ったら、魚の名前ではなく、房総半島沿岸の郷土料理なんだそうです。
「なめろう」を焼くと「さんが焼き」という料理になると、あとで千葉の人に教えてもらいました。食べたことないわあ。



感動的だったのが、あじフライ。
金谷漁港近海では、黄金アジという希少なアジが採れるそうです。
港の近くで長蛇の列ができていたさすけ食堂は、黄金アジフライを食べさせてくれるお店でした。

そこで食べられなかった黄金あじフライが、夕食の席に出てくるなんて。
頂いてみると、揚げたてでサクサク。おいしい!!!
こんなにアジフライを美味しいと思ったことは、ありませんでした。

どれもみんなおいしい海の幸で、女二人で残さず完食。
ごちそうさまでした(-人-)

● オリンピックサッカー決勝戦

食後は部屋にあがり、お茶をしながらのんびり過ごします。
海岸に沈む夕日を見たかったのですが、食後にはもう日は沈んでしまっており、部屋に戻ると外は暗くなっていました。

TVを付けると、ちょうどリオオリンピックのサッカー決勝をやっているところ。
ブラジル対ドイツということで、2002年日韓ワールドカップの決勝と同じカードです。
試合は1-1の同点だったため、そのままPK戦にもつれこみました。
食後のお茶を飲みながら、リラックスしていましたが、PK戦は息を止めながら緊張して見守りました。

結果はブラジルの勝利!2002W杯の時と一緒!割れんばかりの大歓声がテレビから流れてきます。
私も、サッカーをしたような心地よい疲れを感じています。
じゃなくて、このけだるさは日中山登りをしたからでした。

お風呂に入ったし、ご飯も食べたし、布団も敷きました。あとは寝るだけ。
それでもまだ7時です。夜はまだまだこれから。
オリンピック中継を見ながら、2人でカンパイしておしゃべりをして、夜が更けていきました。

2日目に続きます。



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