心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

ツクツクボウシが鳴く頃

2022-08-26 21:03:01 | Weblog

 暑さも峠を越えて朝夕ずいぶんしのぎやすくなってきました。都会地なのに珍しくツクツクボウシが鳴いています。
 最近けっこう雨が降りましたから、疲れ果てた庭の草木も徐々に元気を取り戻しています。この春、一心寺の境内で拾った種から育てたジャカランダの苗木も、元気に夏を乗り越えました。裏庭では、無花果の実が食べ頃を迎え、もぎ立ての実が食卓を賑わせます。
 そんな季節の僅かな変化を感じながら、今週は比較的ゆったりまったりの日々を過ごしました。NPOの仕事も峠を越えたからでしょうか。ここ数日の睡眠時間は8時間前後、そのうえお昼寝までしてご老人そのものです。それでも今日は、久しぶりにフランス文学講座を受講してきました。

 そんなある日、山本能楽堂の「能からみた日本の宗教vol.2」に出かけました。この日の演目は能「三輪」。大和の国(奈良)の三輪山に住む僧侶・玄賓の元に現れた三輪大明神のお話しです。初め、前シテの里女は比較的地味な装束をつけていましたが、後半に場面が変わって三輪明神として再登場するときは十寸髪の面をかぶり、頭には烏帽子、長絹を羽織った巫女の姿に。能舞台というシンプルな空間の中で、お面や装束が生き生きとしていました。
 終わった後のトークショー(山本章弘×釈徹宗×安田登)で面白いお話しがありました。東京からお越しになった能楽師・安田登さんは宝生流の能楽師、かたや山本章弘さんは観世流能楽師。同じお能でも流派によってセリフが微妙に違うのだそうです。だから演者同士の会話が成り立たないことも。う~ん。やっぱりお能は奥が深い。
 この日は、これで終わりではありませんでした。「オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ Osaka Metro コンサート2022」の招待券をもって、急ぎフェスティバルホールに向かいました。7月頃Osaka Metroの吊り広告で見つけた、抽選によるご招待コンサートです。
 オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラってなんだろうと思いつつパンフレットを見ると、なんと1923年(大正12年)に誕生した歴史ある交響吹奏楽団(旧大阪市音楽団)でした。民営化の流れのなかでOsaka Metroとの間でパートナーシップを結び、互いに「大阪を元気にするため」に頑張っているのだと。久しぶりに本格的な吹奏楽を聴いて、ついつい高校生の頃ブラスバンド部に所属していた当時のことを思い出しました。中国地区大会出場めざして暑い暑い夏を過ごしました。
 高校生といえば、夏の終わりの夕暮れどき、哀愁を帯びたツクツクボウシの鳴き声を耳にしながら、机に座ってその後の人生のことを思いめぐらしたことがありました。あれから55年。世の中も私自身も大きく変容を遂げたことになります。

 8月も残りわずか。この夏はNPOの仕事やらなにやらとありましたので、遠出もせず大人しくしていました。秋を前にここいらで気分転換をしてきます。明後日から青森へ2泊3日の小旅行です。温泉宿に連泊して、ツクツクボウシと戯れて来ようと思います。

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72回目の夏を迎えて

2022-08-19 09:46:07 | Weblog

 「草も木も枯れたる野辺にただひとり 松のみ残る弥陀の本願」....。お盆の前に京都知恩院の御影堂にお参りした際、柱に掲げられた言葉に目が留まりました。なんとなく荒んだ風景が気になったので、帰って調べてみると、この歌は浄土宗総本山である知恩院のご詠歌とされていて、平安時代末期、大火や飢餓、大地震が続き、民衆が生活に苦しんだ時代、世情不安定な状況のなかで、法然上人が「南無阿弥陀仏」と念仏を称えれば、老若男女、善悪を問わずみな平等に救われるという専修念仏の教えを説いているとのこと.....。
 今夏、72回目の夏を迎え、お盆を前に菩提寺の総本山である知恩院にお参りをしました。弘法大師空海のことはいろいろ本を読んだりしていますが、法然上人についてほとんど知りません。それでも生まれながらお線香の香りとともに身近な存在でありました。仏さまに手を合わせ先祖代々の方々に思いを馳せる。そんな時間があってもよいかもしれません。
 その日は京都・下鴨納涼古本まつりにでかけました。下鴨神社の境内、糺の森で開かれている日本でも最大規模の古本まつりです。蝉の鳴き声が充満する鬱蒼と茂る森のなか、2時間余りいたでしょうか。世界文化社「古事記」(日本の古典グラフィック版)、日本IBM美術スペシャル記念出版「ジャポニズム」、そして西村貞二著「世界史物語」ビジュアル版(講談社)の三冊を連れて帰りました。歳と共に小さな文字が追えなくなってきたので、ついつい図絵や写真が盛りだくさんの本に手を出してしまいます。
 その帰り道、手水場で手を洗ったらなんと冷たかったことか。京の街の一画でこんなにも冷たい水が湧き出ていることに驚きました。
 ところで最近、NPOの仕事とは別に、今秋予定している大学時代の同窓会の開催準備に追われています。2カ月ほど前に引き継いだ資料を紐解いてみると、セピア色の50数枚の写真があります。半世紀以上も前の青春のひとコマですが、このまま私の手元に置いていては、いずれ散逸してしまいます。無かったことになってしまいます。
 ということで、このお盆休みを利用して写真一枚一枚をスキャナーで読み取りスライドショーを作ってみました。パソコンの画面に古き良き時代の風景が蘇ります。さっそく二三の方々にお見せしたところ、こういうものができるのならと新たに写真が送られてきました。こうして徐々に完成度を増していきます。
 このスライドショーは同窓会で上映します。そして、ご希望の方にはデータを提供することで、一人でも多くの方々の手元に置いていただき、今後の心の糧にしていただければと思っています。

 どうも最近、志向が後ろ向きになっているのが気になります。歳のせい?そろそろお疲れが出てきた?いやいや、まだそんな年代でもありません。先日、イングマール・ベルイマンの映画「野いちご」のお話しをしましたが、一昨日は映画「黄昏」を見ました。ヘンリー・フォンダ父娘共演の1981年の映画で、湖の河畔の山荘を舞台に、老境を迎えた夫婦の絆と、偏屈な父と娘の断絶と和解を細やかに描いたものでした。
 いずれの映画も、山折哲雄対話集「こころの旅」にある河合隼雄さんとの対話「フールな老健者~老年期の心理」に登場する映画です。私自身はそんな年代ではないものの、いろいろ考えさせられることがありました。本や映画や音楽を通じて、人それぞれの人生に寄り添うなかで見えてくる世界が、そこにはあります。
 さあて、暑かった夏もそろそろ終わりを迎えるのでしょうか。気持ちを新たにもう少し踏ん張ってみることにしましょうか。

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高野山夏季大学を受講してきました。

2022-08-11 20:01:19 | Weblog

 大暑を過ぎ立秋を迎えたというのに、本当に暑い日が続きます。大きな入道雲が現れ、夕方には時々雷さまがお怒りになることもある、そんな盛夏に、私は72回目のお誕生日が間近に迫っています。5月に発表された平均寿命は82歳(男性)のようですから、何もなければあと10年は生きながらえることができるのでしょうか。
 そんな暑い都会地を離れて、先日、第96回高野山夏季大学(主催:毎日新聞社・総本山金剛峯寺)に行ってきました。2回目の受講になりますが、この夏季大学は大正10年(1921年)に始まり、途中、日中戦争と第二次世界大戦、そして今般のコロナウイルス感染対策と、過去三度にわたって中止されたものの、開講以来100年を超える市民講座の草分け的な存在です。今回は募集定員をコロナ前の半分400名に抑えての開催となりました。会場の高野山大学松下講堂黎明館には全国から多くのシニア世代の方々がお集まりになっていました。
 和歌山県の高野山に登ってまず気づいたのは、とにかく涼しいことでした。標高900メートルのところにあって、昼間でも27度を超えることはなく、夜になると22度まで下がります。そして清々しい空気感が気に入りました。聖地らしい雰囲気が漂っていて、早朝誰もいない伽藍を気持ちよくお散歩ができました。
 2日目の午後には、高野山霊宝館や総本山金剛峯寺、檀上伽藍界隈をガイドさんの案内で見て回ったり、写経会などのプログラムもあります。その前に、ちょっくら奥の院まで足を伸ばし、遅ればせながら1年半前に結願した歩き遍路の御礼参りをして、納経帳に二度目のお印をいただきました。
 さて、講座の方は、受講生も私とほぼ同世代の方々ですから、皆さん熱心に静かに講演をお聞きになっている姿が印象的でした。私も、講師の方々のお話しに耳を傾けながら改めてこれまで歩んできた人生を振り返ることができたように思います。
 初日は、滋賀県の行政職からオペラ専用のびわ湖ホールの館長に転任されこの春退任された山中隆さんのお話しを興味深くお聴きしましたし、精神科医の名越康文さんからは「空海と心理学」についてお話しをいただきました。
 二日目には、夏井いつきさんから俳句のお話し、古市忠夫さんからは阪神大震災の復興に尽くしたあとプロゴルファーに転身されたお話し、プロデューサーでclubwillbe代表の残間里江子さんからは「人生はまだ見ぬ自分に出会う旅」、女優でUNDP親善大使の紺野美沙子さんからは「今、私たちにできること~「星を見ている」朗読とともに~」をテーマにお話しを伺いました。
 紺野さんには、広島原爆で子を亡くした母の手記をベースにした「星を見ている」を映像を交えて40分ほど朗読いただきましたが胸に迫るものがありました。最後にご紹介された映像監督のご努力で、広島原爆記念日の8月6日に間に合わせることができたとのこと。今後は各地で上演される予定で、YouTubeにもアップされると伺いました。
 そして最終日は、神戸大学教授の中屋敷均さんから「合体する生命~ウイルスと私達~」、高野山大学教授・副学長の松長潤慶さんから「密教 海のシルクロードを渡る」についてお話しを伺いましたが、お二人に共通していたのはウイルスにせよ人間にせよ、不完全な個体同士が繋がることで生きている、他者との関係性のなかで初めて生存が可能となる、そんなお話しだったように思います。旅のお供に読んでいた松長有慶著「空海」(岩波新書)の中にも「自と他の関係」が取り上げられていましたから、妙に納得した次第です。
 こうして、あっと言う間の3日間が過ぎていきました。今回はコロナ対策のため個人参加者の宿坊斡旋はなかったので、ゲストハウストミーさんのお世話になりました。コロナ前は外人さんで大賑わいだったようですが、この時期です。ゆったりした部屋にWi-Fi完備の環境で独り旅を満喫しました。来年も高野山夏季大学の参加しようと思っています。
    さあて今日からお盆休みに入りました。特段に遠出の予定はなし。夕方に横浜の孫娘とLINEのビデオ通話でしばし歓談。明日は、京都の下鴨納涼古本まつりに出かけ、そのあと知恩院にお参りに行く予定です。

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