心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

奈良~古い町並みを歩く

2018-04-19 20:10:39 | 歩く

 きょうは久しぶりに春らしい日和になりました。市内の画材屋さんに自転車でひとっ走り。シャドーグリーンとサップグリーンの水彩絵具を買い求めました。いろいろな草花が生き生きとするこの季節、身の回りに描きたいものが溢れています。
 そんな4月の半ば、日本遺産に認定されたばかりの奈良県は橿原市の八木町と今井町を訪ねました。今回は24名の方々にご参加をいただきました。ボランティアガイドさんのご案内で、まずは近鉄大和八木駅にほど近い橿原市複合施設「ミグランス」(市役所とホテルの一体運営)上層階の展望室から市内の全貌を眺め、大和三山といわれる耳成山、香具山、畝傍山などの位置を確かめました。
 八木町の歴史は古く、大阪から伊勢に通じる横大路(伊勢街道)と、京都・山城から平城京を経て吉野・紀伊に通じる下ツ道が交差する「八木札の辻」を中心に形成されました。江戸時代にはお伊勢参りや大峰山への参詣巡礼などで賑わったようで、「西国名所図会」にも「八木札街」として描かれています。当時の面影はありませんが、その絵に描かれた旅籠屋を覗き、その周辺の町並みを歩きました。
 八木町から歩いて20分ほどのところに今井町があります。戦国時代、一向宗の門徒が御坊(称念寺)を開いた寺内町として形成され、自衛上武力を養い壕をめぐらした中世の町です。反信長の旗を立て城塞都市の形態を整えて抵抗したこともありましたが、明智光秀を介して降伏し事なきを得たのだとか。その後は自治権も認められ、都市としての体制を整えていきました。
 今井町は、綿花栽培などで富を蓄え、両替商が栄える裕福な町になりました。夜な夜な大名たちがお忍びでやってきてはお金を無心したことがあったようです。東西600m、南北310m。周囲には環濠土居を築いた戸数1100軒、人口約4000人。南大和最大の商業都市だったとのこと。
  現在、今井町一帯は重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。お土産店が立ち並ぶわけではなく、古いモノと新しいモノが共存し、ふだんの生活が営まれていました。床屋さんまで町並みに馴染んでいます。無電柱化の工事が進行中で、町をあげて古い町並みの保存に取り組んでいらっしゃるようでした。
 豊田家、今西家、高木家など古い日本家屋も内部を見学(有料)させていただきました。慶安3年(1650年)築の今西家におじゃますると、土間の高い天井には大きな太い梁が三本横たわっています。家人の説明によれば、カマドの煤が長い年月をかけて梁の強度をより強くしているのだとか。ただ、昭和に入って解体修理をしたときに3本のうち1本を新調したそうですが、その一本だけが阪神淡路大震災のときにひびが入ってしまいました。木材の乾燥の仕方がお粗末だったこと、煤に塗れることがなかったことなどが原因のようでした。やはり古いモノ、古いコトには、それ相応の意味があるということなんでしょう。
 御堂筋と呼ばれる細い町並みを歩きながら、ふと一昨年訪ねたドイツはローテンブルグの町を思い出しました。中世期には城壁内に約5500人が暮らし手工業の商業都市として栄えた町です。.......「石と煉瓦」と「木と漆喰」の違い、「教会」と「お寺」の違い、「城壁」と「環濠」の違いはあっても、中世の都市形成に共通するものを感じたのは私だけでしょうか。
  ネットで導入講義を受講できるMOOCS(Massive Open Online Courses)で「都市史研究の最前線~大阪を中心に」(大阪市立大学)をお勉強した直後だったので、いっそう興味深いものになりました。
 という次第で、今回も何かと気づきの多い街歩きとなりました。.........さあて、そろそろ頭の中を南イタリアに切り替えることにいたしましょう。江戸時代から古代・中世の南イタリアにタイムスリップです。.........次回のブログ更新は5月の初旬になる予定です。


付録:おもしろいお店を発見!「上品・美人お断り」
 週の初め、伸び伸びになっていた清荒神さん(宝塚市)にお参りに行ってきました。火の神、台所の神と言われる荒神さんです。大阪駅で阪急電車に乗り換えるのですが、その前にお昼を食べて行こうと、大阪駅構内のLUCUA地下2階のバルチカに寄ってみると、なにやら20名ほどが並んでいるお店がありました。名づけて「海鮮が安いだけの店”魚屋スタンドふじ子」。お昼の人気メニューは数量限定の「すぐに売り切れ 幻のランチ」。お値段は、魚屋のやせ我慢価格の1000円とあります。楽しそうなお店なので20分ほど並んで入りました。量と味とも申し分のないランチでした(笑)。
 お勘定をすませてお店を出たところで妙な看板に目が留まりました。いわく「上品・美人お断り」「お連れ様と確認してください」「当店は自分らしく あほらしく 気軽に楽しむお店です。あまりに品が溢れてる方は 審査あり」「店員は目が悪いため自己判断でお願いします」。これをやりすぎとみるか、大阪ならではの笑い(ウィット)とみるか、人それぞれですが、女性客に大うけだったのは、やはり大阪だから???
 SNSの力でしょうか。平日のお昼時、店内は上層階に買い物にやってきた上品・美人の方々で溢れていました。やはり大阪です(笑)。この日の予定販売数は、私たちの5人ほど後ろの方で終了しました。

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"風の画家" 中島潔の世界に魅せられて

2018-04-12 22:43:26 | Weblog

 今週のカレッジは珍しく生物の授業でした。午前中は植物の多様性について学問的なお話しを聴き、午後からは顕微鏡を使って春の花の雄蕊や雌蕊、花粉などを観察しました。なんだか小学生に戻ったような気分。子どもの頃に一度は見たはずなのに、顕微鏡を覗いて見える神秘的な世界に新鮮な驚きを感じたシニア学生たちでした。
 そんなわけで花を見つめる心になんとなく変化が.....。庭に咲くチューリップやライラックの花を摘んでは小さな瓶に挿して愛おしく眺めながら水彩画の練習です。そしてきょうの水彩画教室では、新キャベツと新玉ねぎを画材にお絵描きでした。 そんなカレッジの帰りに、天保山にある大阪文化館で開催中の「中島潔展~”今”を生きる そして伝えたいこと」を覗いてきました。副題には「京都六道珍皇寺“心音図”奉納記念」と記されています。
 中島潔さんといえば、月刊雑誌「NHKラジオ深夜便」の表紙を飾る画家です。”風の画家”と呼ばれ、郷愁を誘う童画が私の心にほのかな灯をともします。中島さんの作品には、16年前の春にも、三越大阪店で開催された「中島潔が描く金子みすゞ」展でお目にかかったことがありました。(下の写真はそのときのパンフレットから)
 会場には、「故郷の情景より」「襖絵の筆あと」「空の向こうに」「連作”心音図”」「小さな世界」「新しい風(春の風、夏の風、秋の風、冬の風)」のテーマごとに130作品が展示されていました。ケント紙に水彩で描かれた作品のひとつひとつに静かに向かい合っていると、心の奥底にしまい込んでいたものがぼんやりと浮かんできます。子どもの頃の風景が蘇ります。(下の写真はショップで買った絵葉書)
 今回の展覧会では、中島さんが京都六道珍皇寺所蔵の「熊野観心十界図」と出会い、地獄絵という新しいテーマに向き合った作品も登場します。おぞましい地獄絵。.....仏事のたびに飾られた地獄絵の掛け軸を、子どもの頃恐る恐る見たことがあります。母から、嘘をついたら閻魔さまに舌を抜かれるよ、悪いことをしたら地獄に落ちて熱湯の中に放り込まれるよ、だから嘘をついたり悪いことはしてはいけないよ、と。
 そういえば、最近の子どもたちはこんな経験はしませんね。バーチャルな世界で殴り合いのゲームに興じることに違和感を持たない。それが常態化して、平気で親殺しや子殺しをする。そんな記事が後を絶ちません。大人の世界だって、昨今の政治の劣化には目に余るものがあります。非合理のなかに潜む真実。何か大切なものを失いつつあるような気がいたします。
 そういえば、生物の先生がおっしゃっていました。(私の受け止め方に誤解があるのかもしれませんが)昆虫の世界でいう「共生」とは、騙し騙されあう中でほど良く種が維持されているのだと。「共生」「多様性」という格好いい言葉の現実を突きつけられたような気がしました。でも、分かったような、分かっていないような........。少しお勉強してみたいと思っています。

 今月の「ラジオ深夜便」の表紙絵は「蜂と子犬」でした。その本の中に、作家・佐伯泰英さんのエッセイ「シチリア島の時の流れは」に目がとまりました。シラクーサ、パレルモ。そして映画の「ゴッドファーザー」「ニュー・シネマ・パラダイス」に、マッシモ劇場......。
 実はそのシチリアに、今月の下旬に出かけてきます。職を辞して以後、毎年一回、シニア夫婦で思い入れのある海外へ出かけています。一昨年はドイツ、オーストリア。昨年はカナダ、アメリカへ。そして今年は南イタリア、シチリア島に決めました。健康寿命が続く限り続けるつもりですが、これも終活の一環なのかもしれませんね(笑)。
 イタリアには20年ほど前に、ナポリ以北の主要都市を回ったことがあります。イタリアに魅せられて、その後、塩野七生さんの「ローマ人の物語」全43巻(新潮文庫)ほか諸作品をむさぼり読みました。今回の再訪にあたり、その中の「ハンニバル戦記(上)(中)(下)」を再読しました。ポエニ戦役といえば、キリスト教誕生以前の、2200年も前のお話しです。タイムスリップし過ぎの感なきにしもあらずですが、塩野さんの小気味よいイタリア古代史をおさらいしました。さあて、どんな旅になりますかどうか。
 そうそう、5月に予定している「歩き遍路」企画も、おおよその目途がつきました。今回は、大阪から高速バスで室戸に直行。そこから高知市内に向かう2泊3日の行程になります。25番札所・津照寺から何カ寺巡ることができるか否か、もう少し精査中ですが、とりあえず今日、26番札所・金剛頂寺界隈と27番札所・神峯寺界隈のふたつの民宿の予約を済ませました。室戸までの高速バスの切符も確保しました。あとは高知駅から大阪に帰る高速バスの予約を近日中に終えれば、とりあえず準備完了です。.......それにしても、あっちに行ったりこっちに行ったり。なんとまあ、呑気なシニアであることか(笑)。

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孫君たちと南紀白浜にパンダを見に行く

2018-04-05 23:24:39 | 旅行

 ここ1カ月、カレッジの授業は歴史・古典・近代文学と続きました。通い始めて1年半。学位をいただいたり、あるいは資格を取得するなどといった目的があるわけではないのですが、これまで摘まみ食いしてきたものを、ある程度体系的に整理し直すことができたという意味で、楽しいお勉強でした。このコースもあと半年で修了します。その後はどのプログラムを選択しようかと現在思案中。そうそう、来週からは別途「古典文学」講座も始まります。

 さて、ここ大阪ではこの1週間、ほんとうに暖かい日が続きました。桜も葉桜に変わり、庭のアケビの蔓先には花が咲き、花壇ではチューリプが満開。樹々もいっせいに芽吹きました。地上のすべてが生きていることを実感する、そんな今日この頃です。
 この時期は小学5年生になる孫長男君の春休みでもあります。塾の春季講習がひと段落したことから、急きょ、南紀白浜のアドベンチャーワールド行きを思いつきました。お母さん(長女)は仕事を休み、孫次男君は幼稚園を休んでの1泊2日の旅行とあいなりました。この日の孫君たちのお目当ては、もちろんパンダです。そしてサファリワールドです。
 東京・上野ではシャンシャン人気で大騒ぎのようですが、こちらはたくさんのパンダがごく自然に屋外・屋内の飼育施設で暮らしています。広大なサファリワールドはもちろん、動物たちの飼育環境は、都会地の動物園とは比べものにならないほど充実しています。さんさんと降り注ぐ春の陽のもと、パンダだけでなく、たくさんの動物たちが気持ち良さそうに日向ぼっこをしたり、お昼寝をしたりしていました。
 お昼寝姿のパンダさん、そのあどけない姿が人の心を惹き付けます。多くの繁殖実績をあげている理由がわかるような気がします。檻の中に閉じ込めるのではなく、極力自然に近い環境の中で育てようという運営会社の思いが伝わってきます。
 この日は、白浜温泉に一泊して、翌日は若干の観光見物をしたあと大阪に戻りましたが、孫長男君とのお付き合いはこれだけではありません。きょうは須磨海づり公園に行ってきました。釣果は芳しくなかったものの、2人でいろんなお話しをしながら、のんびりと釣りを楽しんできました。俄か釣り人の話は、取り逃がした魚のサイズがだんだん大きくなっていきます(笑)。
 という次第で、この時間になって、どっと疲れが出てきました。歳ですねえ。孫疲れなんでしょう。ブログ更新を早々に終えて眠ることにいたしましょう。今夜もお付き合いをありがとうございました。お疲れ様でした。

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