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ホームランド シーズン4 【感想】

2015-12-05 08:00:00 | 海外ドラマ


もう年の瀬ということで、今年もいろいろと観てきた海外ドラマもそろそろ総括といった段階だったが、ここに来て一気にまくってきた。

期待せず後回しにしていた「ホームランド」のシーズン4が異常に面白かったのだ。

TSUTAYAの準新作100円レンタルで、全12話分(DVD計6枚)をイッキに借りて小まめに観る予定だったが、あまりにも熱中したため、週末を使ってイッキ見してしまった。寝不足。。。

シーズン1~3で、本作の主人公ともいえたブロディがいなくなったことで「ホームランド」は完結したと勝手に思っていた。なので、そこから再スタートを切るシーズン4には全く期待していなかったのだが、見事に裏切られた。
ドラマとしての完成度は、前シーズンのほうが上かもしれないが、それを補って余りある引力と疾走感。「手に汗握る」という感覚をこれほどまでに強烈に覚えたのは久しくないことだ。個人的な好みでいうとシーズン1~3よりも、このシーズン4のほうが好きかもしれない。シリーズ史上、最もハードな仕上がりだ。そして、自分の好きなクインが大活躍してくれて大満足。

第4シーズンでは、イスラマバードの支局長になったキャリー率いるCIAと、パキスタンにいるテロリストたちとの壮絶な戦いを描く。本シーズンは「スパイ」ドラマというよりは、文字通り「戦争」ドラマに近い。戦争に慈悲はない。憎しみによる報復の連鎖がこのドラマでしっかり描きこまれている。

CIAはドローンを飛ばして、管制室からボタンひとつで爆撃してテロリストもろともその一帯を廃墟にする。民間人が巻き添えになっても「テロリストが悪い」と言い放つキャリーだ。テロリストを仕留めたはずだったのだが、この爆撃が新たな戦いの幕開けとなってしまう。元支局長の謎のリークと市民による襲撃事故から、国家レベルでの巨大な陰謀が明らかになり、物語のスケールは一気に膨らむ。脅威にも見方にもなりうるSNSの情報力など時代性を捉えながら、CIA、テロリスト、パキスタン国家、パキスタン市民という4つ巴の攻防が繰り広げられるのだ。

シーズンの前半は、テロリスト「ハッカニ」を探し出す諜報活動が描かれ、キャリーの「骨抜き」活動など、スローテンポな動きだが(そうでもないか。)、中盤以降、元CIA長官であったソールの誘拐から一気にギアチェンジしてスピードアップする。ハッカニの首をとるか、ソールの命を救うのか、全く予断を許さない駆け引きが続く。お爺さんであるソールがあそこまで身体的ダメージを食らう、受難のシーズンになるとは夢にも思わずビックリ。当然ながら、アメリカはソールの命を守ることを選択するわけだが、元CIAとしてのソールのプライドが葛藤となり、力強いドラマに転じる。ソールの一件が済んだと思いきや、テロリストたちの本来の目的が明かされ、このシリーズかつてない戦いが始まる。それはCIAの主要キャラクターが全員、戦火に投げ込まれるようなもの。そして悲劇が生まれてしまう。観ているこっちも悲嘆に暮れるほどの衝撃。テロリストへの憎悪が高まる。

で、本シーズンのベストエピソードはその後を描く、第11話の「執念」だ。
テロリストに負け、パキスタンとの国交断絶とともに、パキスタンからの国外退去を命じられるが、生き残ったクインがそれを拒否する。目的はシンプルで「復讐」である。CIAのルールから離れ、キャリーの制止すらも暴力で撥ね退け、勝てるはずのない戦いに自らの命を投じて、たったひとりでハッカニ殺害に挑む。「よくぞ決意した、クイン!!男の中の男だ!!!」とアツくなる。が、冷静に考えると、クインがとった行動が成功したとしても、それがまた新たな報復の連鎖に繋がるわけであり、手放して喜んでよい話でもない。これ以上の惨劇を生み出さないためにおとなしく帰国しようと呼び掛ける、キャリーの決断が正しいと考えるべきかもしれないのだ。そう感じさせる余白が本作にはあり、製作陣はおそらく織り込み済みなのだろう。それでも、感情による一線を越えてしまうのが人間であり、そこにドラマが生まれると賭けているのだ。そして、クインの殺し屋としての実力が発揮される。結末は意外なもので、とてもシビアだ。これが現実なのか、と。

最終話となる12話がまたよい。パキスタンという敵地で壮絶な戦いをくぐりぬけ、アメリカに帰国した、キャリー、ソール、クイン、CIA長官の4名が、穏やかな夜に酒を酌み交わす。このシーズンを通して初めて笑顔が見えた気がする。何とも感慨深いシーンだった。

アメリカ大使の夫が大使館に出入りし過ぎで、大使も夫に内情を話し過ぎだったり、キャリーがあまりにも母性がない点など、ツッコミどころも結構多いシーズンであったが、これまでのシーズンにあった、家族ドラマやラブロマンスを削ぎ落し、テロリストの攻防に集中させた結果、テンションの緩まないスリリングで重厚なドラマに仕上がった。キャリー演じるクレア・デインズは勿論のこと、すべてのキャストの熱演が目立ったシーズンでもあり、個々の人物描写に強い説得力を与えた。キャリーが骨抜きにする童貞少年が「ライフオブパイ」の主人公だったり、元支局長役が最近ドラマ・映画に活躍が目覚ましいコーリー・ストールだったり、目を引くキャスティングも印象的だった。キャリーとクインの関係は個人的にはビジネスパートナーのままが良かったかなー。

次のシーズン5は、また全く別のエピソードになるらしく、ドイツを舞台にCIAを引退したキャリーが描かれるとのこと。ホームランドへの信頼度を継続するなか、日本でのリリースを心待ちにする。

【85点】

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