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ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 【感想】

2016-12-03 09:00:00 | 映画


想定外の面白さ。個人的にはハリポタシリーズの序盤よりもこっちが好き。
惜しみない魔法合戦が嬉しく、魔法動物にスポットを当てたのがファンタジーをより濃厚にさせた。大人が主人公である本作はドラマを違和感なく効かせることに成功。主人公と魔法動物たちとの絆、そして魔法使いと人間の絆にホロリ。不覚にも泣かされるとは思わなんだ。主人公含め、登場キャラクターが個性的かつ魅力的なのもポイント高し。ラストカットが秀逸で、爽やかな余韻を残す。スリルとロマンスとドラマが詰まった冒険活劇。ハリポタの魅力を、鮮やかに継承した新シリーズの幕開けに拍手。

ニューヨークに訪れた魔法動物学者の青年が、バックに入れた魔法動物を逃がしてしまい、町中で大騒動を起こすという話。。。というのは予告編でイメージできた内容であり、あまり興味を持てず鑑賞に臨んだものの、まさかの面白さだった。

舞台は1920年代のアメリカ。ハリポタでは現代のロンドンが舞台であったため、物語の背景がまったく異なる。ニューヨークでも、表の「人間界」と、裏の「魔法界」があって、描かれる舞台は人間界が中心となる。人間社会のなかでも、魔法使いの存在が広く認知されているが、別の人種として扱われており、融和か対立かで揺れ動く危険な状態にある。Xメンのミュータントほど、あからさまに虐げられる存在ではないが、似た世界観が存在していてとても興味深い。

主人公のニュートは世界各地を旅して、魔法動物を研究、保護している学者の青年だ。ホグワーツ魔法学校を卒業して久しく、魔法を意のままに操っている。彼だけでなく、登場する魔法使いたちは皆、成人であり、魔法に振り回されることなく、魔法をツールとして使いこんでいる。魔法という奇跡の所業が当たり前に存在する状況が、展開をスピーディに回していく。困ったときの魔法頼みが、羨望と相まって気持ち良い。ハリポタの最終章が特に好きだったのはこの点が大きかった。魔法の杖が欲しくなる。

魔法が肯定される世界で躍動するのは、多くの魔法動物たちである。ハリポタシリーズでは、空飛ぶワシ「グリフィン」など、一部しか出てこなかったが、なるほど、いろんな種類の魔法動物がいたという設定が自然と受け入れられる。主人公は小さなバックケースのなかに、大きな保護施設を抱えており、その意外性と描かれる施設の壮大さ、多くの魔法動物たちとの触れ合いは、未知のテーマパークのようであり、ワクワクする。

ニュートがひょんなことから行動を共にすることになる、人間のジェイコブが小太りでナイスなキャラクターだ。冴えない小市民であるが、真面目で動物を思いやることのできる性格の良さはニュートと波長が合う。魔法使いと人間の組み合わせは次々とユーモアを発生させる。逃げた動物たちを追いかけるニュートとジェイコブのアクションがコミカルかつスリリングで中盤までの見せ場である。ハリポタにはなかったパターンが新鮮であり、ドラマパートの重要な要素として最後まで観る側を引きつけていく。

ジェイコブだけでなく、他の脇役たちも魅力的だ。ニュートを逮捕した縁で彼の仲間となる女性魔法刑事のティナと、ティナの妹であり、ちょいエロで可愛いクイニーの存在だ。ニュート含めた3人が操る魔法が個性的に描かれているのも大きい。なかでも「料理が得意♪」というクイニーの魔法が楽しくて印象的だ。ハリポタの新章という話題作だけに、もっとビックネームをキャスティングできたと思うが、ジェイコブ、ティナ、クイニーの3人を、色の付いていない俳優に演じさせたのが吉と出た。演じた、ダン・フォグラー、キャサリン・ウォーターストン、アリソン・スドルが魔法世界の住人として存在感を示す好演だ。調べてみたら、キャサリン・ウォーターストンって「インヒアレント・ヴァイス」に出てたお姉さんじゃないか、わからないものだ。

後半以降、暗躍する謎のモンスターを巡ってサスペンス色が一気に強まり、シリアスモードに突入する。そこでキーマンとなる謎の青年を演じたエズラ・ミラーのもみあげ刈り込みカットが著しく、笑いを誘う。あの独特な顔立ちが狂気を表現するのにとても似合っている。残念なのは、出現するモンスターの無機質感。もう少し、形を持たせたほうが良かったと思われる。あと、ラストに姿を現す某有名俳優に驚いた。彼が登場したことに驚いたのではなく、すっかり太って劣化した姿に驚いたのだ。ミステリアスな役なんだから、もっとシャープに体を仕上げてもらわないと。。。

主人公ニュート演じたのは、今やオスカー俳優となったエディ・レッドメイン。人見知りだが良心の人という設定が、非常に良く似合っている。CGで出来た魔法動物たちと、強い友情を感じさせるのは彼の演技力によるところが大きい。彼が守り、彼が信じた魔法動物たちに救われる展開が堪らなくツボである。痛快かつグッときてしまった。また、ジェイコブとの友情物語にもすっかり感情移入する。避けることのできない忘却の「雨」のシーンで「君のことが好きだ」というニュートの言葉に「その気持ちわかるよ~」と頷いてしまう。クイニーによる「傘」の魔法や、最後にジェイコブに与えたプレゼントも素敵。ジェイコブのショットで決めたラストが素晴らしく、前作「ターザン」でコケた、監督デヴィッド・イェーツは本作で名誉挽回となった。

本シリーズは5作の続編になるとのこと。もう本作だけで十分なフィニッシュだったので、続編のイメージがつかない。ニュートはそのまま登場するとして、ジェイコブ、ティナ、クイニーの3人がまったくいなくなるのは避けてほしいところだ。

【75点】