「her/世界でひとつの彼女」を観る。
人間の想像力を信じた脚本と演出に感動。忘れがたい余韻あり。
ユニークなオリジナルストーリーを生み出し続ける映像作家、スパイク・ジョーンズ。
彼の待望の新作は、妻と別れて傷心の男が、サマンサというOSに出会って恋に落ちる話だ。
主人公の職業が、手紙の代筆ライターというのが面白い。
依頼人の人生を想像して、言葉として相手に想いを届ける仕事だ。
言葉を自在に操る男が、実体のない言葉だけのOSに恋をするというプロットの巧さ。
「恋は社会で受容された狂気」
恋は時に幻想で、時に盲目。
SF世界を通して描かれる恋模様はどれも普遍的であるとともに、
恋愛というものの、本質を鋭く着いたような洞察力にドキっとする。
恋をして世界の色が輝き出す瞬間を、近未来の美しい風景で切り取っていく。
多用される清々しいパステルオレンジカラーが本作の色そのものだ。
主人公演じたホアキン・フェニックスはこれまでにない表情を魅せる。
「好演」という言葉がしっくりくるホアキンを初めて見た。
スパイク・ジョーンズが描く世界の住人として、見事にハマっている。
話題となっているサマンサの声を演じたスカーレット・ヨハンソン。
セクシーな声に、知性とユーモアがのっていて魅力的。凄い説得力だ。
主人公に恋するOSという他に、自身の感情の進化にときめく姿も印象的。
あと、主人公が熱中するゲームに出てくるキャラクターが可愛くて非常に良い。
「さすがスパイク・ジョーンズのセンス」と唸ること多し。
終わりに向かう展開については、自分の理解不足でややわかりにくいが、
観れば観るほど、味わいが変化していく面白い映画だと思った。
【75点】