奥永さつき

日々のできごとをそこはかとなくつづります。

最近読んだ本(2024.2)_その2

2024-02-19 17:49:57 | 社会
田中一之、「ゲーデルに挑む」、東京大学出版会、2012/4/26
構成

序 ゲーデルと不完全性定理
原論文訳・解説
補遺
ゲーデル (林晋、八杉満利子訳)、「不完全性定理」、岩波文庫、2019/2/15第14刷
構成

第Ⅰ部 翻訳
第Ⅱ部 解説
 1 不完全性定理とは何か?
 2 厳密化、数の発生学、無限集合論1821‐1897
 3 論理主義: 数学再創造とその原理 1884‐1903
 4 ヒルベルト公理論: 数学は完全である 1888‐1904
 5 数学基礎論論争 1904‐1931
 6 不完全性定理のその後
 7 不完全性定理論文の仕組み
 8 論文の構造
 9 あとがき

読み方
1. 林・八杉訳本の第Ⅱ部解説の1~5を読み、背景を知る。この部分は林氏のヒルベルト研究が中心となっている。
2. 林・八杉訳本の第Ⅰ部翻訳を読む。
3. 田中本を読む。
4. 林・八杉訳本の第Ⅱ部解説の6~9を読む。

感想
1. 原論文で使われている論理記号が現在の一般的なものと異なるので、田中本(p. 26)の対照表が役立つ。
2. 原論文は懇切丁寧に書かれているので、追いかけることが不可能というわけではない。ただし、予備知識がないと、議論の進め方の意義を理解することは難しい。
3. 田中本は上段に翻訳、その下に解説の構成をとっていて、論文の真意、意図するところを理解するのに助かる。不完全性定理に関する本はこれが初めてなのだが、田中本は優れものだと感じる。
4. 原始記号、変数などに素数を割り当てて、論理式を「数化」(ゲーデル数)するという発想、しかも弱冠24歳、には驚いた。天才のなせる業ということか。
5. 不完全性定理により数理論理学が発展したのは確かだが、この定理が誤って適用されることもある。田中先生訳のフランセーン「ゲーデルの定理‐利用と誤用の不完全ガイド」がおもしろそうで、いずれ読んでみたい。
6. 結局のところ、
「決定不能な命題は存在するものの、数学者の多くが興味を持つような数体系の構造については、決定不能なものは比較的稀なのかもしれないのである。(中略) いずれにせよ、筆者たちには、数学基礎論に残された大きな問題は、数学の不完全性を声高に叫ぶことではなく、『ゲーデルの不完全性定理にもかかわらず、なぜ現実の数学はこうも完全なのか』という逆説的な経験的事実への問いかけであるように思えてならない。」(林・八杉、p. 274-275)


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