奥永さつき

日々のできごとをそこはかとなくつづります。

最近読んだ本(2024.4)

2024-04-13 21:19:36 | 社会
ラリー・ラウダン(小草泰、戸田山和久訳)「科学と価値」勁草書房、2009。
概要
Larry Laudan, “Science and Values”, 1984の全訳で「自然主義・合理主義・科学的反実在論の立場から新しいモデルを提唱する、現代科学哲学における必読書!」とのこと。
従来の「事実(理論)」「方法論」「価値論」では、「事実」における不一致(対立する理論)は方法論的に解決され、「方法論」における不一致は価値論的に解決される。しかし「価値論」における不一致は、真偽判定はできない(エイヤー流に言えば感情の問題で、「無意味」である)。このため、クーンの「パラダイム・シフト」というような、科学史に反した主張がなされる。ラウダンは、各層間が「正当化」したり「制約」したり、「調和」するという網状ネットワーク(戸田山さんによれば三項ネットワークが正確)とすることにより科学史を説明できると述べている。
感想
訳者の戸田山さんの解説によれば、ラウダンは「自然主義者・合理主義者・科学的反実在論者」らしい。科学的非実在論者は「直接観測できないもの」を否定する。
戸田山さんによれば「ラウダンは『実在する』という言葉を議論で使うのを嫌って、『電子が存在する』の代わりに『「電子」という語が正真正銘の指示を行っている』という言い方を使っている。」 頑固で、なんとも回りくどい言い方で、先にこの解説を読んでおいた方がよいと後から気づく。
科学的実在論・非実在論の論争は、「観測」の定義にも関係があると思う。電子は「目」に見えないから信じないというかもしれないが、「電位を測ること」は「目」にならないのか?現在の科学者で電子の存在を否定している者はほとんどいないであろう。否定したら仕事にならない。「科学哲学」なんぞ「余計なお世話」だというのが現場の意見なのではないか。