ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/09/16 文楽「仮名手本忠臣蔵」第二部(五・六段目)の感想

2006-10-13 23:58:14 | 観劇
第一部と第二部の間はロビーでyukariさんとしゃべっていた。いつもはない(と思うのだが)大きな液晶のディスプレイが目に入った。《塩谷判官切腹の段》が緊張感を保つために途中入場ができないように「通さん場」になっているので、遅れてきた方のために用意されているのだろう。写真はロビーにあった「通さん場」の説明の看板。
さて、第二部のうち五段目と六段目の感想。
【五段目】
《山崎街道出合いの段/二つ玉の段》
勘平はおかるの実家に身を寄せ、狩人になっている。雨が強く降る中、蓑笠姿で登場。その雨で火縄銃の火が消えてしまう。そこに提灯を持った男が通りがかるので火を貸してくれるように頼む。しかし男は山賊だと思い込み断る。勘平は間違われるのも無理は無いと言って鉄砲を男に渡し、あなたが火をつけて私に渡してくださいと頼む。本当に火が貸してほしいだけという姿を見せる。だから「鉄砲渡しの場」ともいう。近づいて顔を見合わせると二人は顔見知り。男は千崎弥五郎。勘平は仇討ちに加わらせてくれるよう大石への口添えを頼む。千崎はそれを否定し亡君の石碑を立てる計画があるだけだと突っぱねる。勘平は事情を推量し、とにかく金は用立てる何とかとりなして欲しいと頼む。千崎は了解。二人は分かれ舞台から消える。
《二つ玉の段》
おかるの父与市兵衛が同じ街道に現れる。後から男が追いかけてきて金を貸してくれという。男は山賊に落ちぶれ果てた斧九太夫の息子・定九郎。与市兵衛はおかる
を京の一文字屋に身売りして前金五十両を手に入れ、急いで家に帰るところ。断るがついに定九郎に刺し殺され、谷底にけりこまれる。
そこに猪が走ってきて、続けて鉄砲の音。定九郎に命中しその場で絶命。獲物を追ってきた勘平が仕留めた猪をまさぐって人と気づき、薬はないかと懐中をさぐると大金の入った財布に気づく。思案の末にその財布を横領。千崎に届けに行ってしまう。二つ玉とは火薬を倍にして威力も二倍にした鉄砲のこと。
【六段目】
《身売りの段》
勘平のためにおかるの身売りを決めた親子3人。与市兵衛の帰りを待つ母娘。そこに一文字屋才兵衛がおかるを引き取りにきた。そこに勘平が戻って身売りの話をきくが、その必要はなくなったという。才兵衛は証文を見せてせかすが、その時に自分が今着ている着物の布と同じ布でつくった財布を貸したのだと言う。勘平はその柄が昨晩横領した財布と同じであることに気づき、舅殺しをしてしまったのではないかと思い込む。勘平は朝方に与市兵衛と会ったと嘘をつく。それに安心しておかるは籠に乗る。これが勘平との今生の別れとも知らずに五年の年季奉公に出ていくのだった。
《早野勘平腹切の段》
狩人仲間が谷底で見つけた与市兵衛の亡骸を運んできた。勘平の不審な様子に母は勘平を責め始める。そこにさらに大星から不忠者の金は受け取れぬとの言伝をもって千崎と原郷右衛門が現れる。母は婿が夫を殺してしまったと言い立て、三人に追い詰められて殺意はなかったと身の潔白を示すために勘平は切腹をはかる。猪と思って打った鉄砲で舅が死んでしまったという今際の際の申し立てに千崎らは亡骸をあらためて刀傷を確認。早まった切腹ではあったが忠義心を受け止めた二人は勘平に連判状を見せて血判を押させる。勘平無念の死で幕。

歌舞伎座十月大歌舞伎昼の部で仁左衛門の五段目・六段目を10/8に幕見。文楽と歌舞伎でずいぶんとあちこちが違うのだということがわかる。
斧定九郎はまさに猪と見まごうばかりのむくつけき大男。歌舞伎の影響からか着ているものはどてらではなかったけれど。文楽と歌舞伎はそれぞれに人気が出るとお互いにいいところは取り入れたりして影響しあい、演出も変わっていくのだという。こういうところは面白いと思う。
その定九郎が与市兵衛の金を殺して奪うところなどは全く違う。文楽の方が話の運びに無理がないし、与市兵衛が追い掛け回されてが殺されるところは無残だし。歌舞伎だとスローモーションになってしまうことが多い殺し場。文楽はテンポを落とさないで手加減なしの迫力で追い詰めて殺す。そんな殺され方をした与市兵衛の哀れさが痛切だった。

一文字屋からおかるを迎えにくるのも文楽では才兵衛という男で、歌舞伎は女将のお才。買った女をわざわざ女将が迎えにくるのはおかしい。まあ女方を使いたかった事情があったんだろうなと思う。
また歌舞伎では母が夫婦の別れを惜しむ時をしばし与えて、おかると勘平はしっかりと抱き合ったりするのだが文楽はここはわりとあっさり。切腹のところまでテンポよくすすめる感じなのかな。

与市兵衛を運んでくる狩人の3番目に玉勢くん(メトロ文楽でイケメンで人気なのを納得した若者)が三人遣いの主遣いとして登場。ツメ人形の一人遣いではない!そうか、さらに若い後輩のお弟子さんたちが左と足を遣っているのだなと思いつく。こうして少しずつ修行の場が与えられるのかと納得。

四段目の判官切腹の場とこの勘平切腹の場と一日のうちに二度も切腹の場面というのはちょっとなかなかきついかもしれない。とにかく忠臣蔵は男のドラマなのかと痛感する。
実は2003年の年末の長時間時代劇ドラマで吉右衛門が大石内蔵助を演ったのでしっかりとビデオで録画した記憶がある。しかし一回も観ていないというのが事実。10時間って覚悟がいるのだ。これは近々観ないといけないかなと覚悟が固まってきた感じがする。
追記
もう一度筋書で確認するとまたまたいろいろと間違い発見。財布の布のところとか歌舞伎の筋とごっちゃになっているところあり。修正しましたm(_ _)m

関連の感想記事はこちらですm(_ _)m
9/16「仮名手本忠臣蔵」第一部
9/16「仮名手本忠臣蔵」第二部(七段目)
9/16「仮名手本忠臣蔵」第三部


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TB&コメント有難うございます (mayaribe)
2006-10-14 14:17:50
私もやっと、書き終わりました…

文楽の記事がどんどん長くなってしまうのは何故なのでしょう(泣)



もっともっと玉勢さんの事ばかり書きたいのに!(あほかい)



という訳で?TBさせて下さいね。

あと、リンクを貼らせていただけますか?

よろしくお願い致します。
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TB&コメントありがとうございました (かしまし娘)
2006-10-16 13:14:42
ぴかちゅう様、まいど!

文楽の与市兵衛って、ピューッて、谷底に突き落とされちゃうし…(泣)

歌舞伎じゃそうは行かないから、最初から草むらに隠れて、エイっと定九郎が蹴るだけ。

私も歌舞伎座行って来ました。「死体を飛ばせ~!」と意味の無い心の叫びをあげてみました(笑)



>忠臣蔵は男のドラマなのかと痛感する

その通りです!

客席はいつもより男性が多いですよ。
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皆様TB、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2006-10-18 00:13:27
★mayaribeさま

歌舞伎座の仁左衛門丈の勘平は千穐楽で予定していたのですが、我慢できずに10/8に幕見してきました。それで文楽と混乱しているのですがまたまた復習する機会にもなり、ますます比較観劇にハマっております。

私も三味線は細棹よりも太棹が好きで文楽に一気にハマッタのです。mayaribeさんのプロフィールイラストのギター姿が素敵です。ロックにはまった若かりし頃を思い出します(私は聞く方専門ですが)。

リンクの件も了解です。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げますm(_ _)m

★かしまし娘さま

歌舞伎でも忠臣蔵は初めてだったので、与市兵衛殺害の場面があまりにもあっさりしていたのをホーっと観てしまいました。死体を投げると労災事故になる恐れが~(笑)

★ツチ子大夫さま

>予想以上に長くなりました.....お二人のボルテージの高さからすると当然でしょうし、私たちの楽しみも増すので大歓迎です(^O^)/
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