ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/04/28 御名残四月大歌舞伎(6)「実録先代萩」千穐楽

2010-04-29 23:58:26 | 観劇

いよいよ千穐楽で第三部を観て歌舞伎座本興行観劇の最後となる。冒頭の写真は、観劇前に歌舞伎座正面を右の方から撮影したもの。11月の顔見世狂言のみに掲げられる青い櫓が4月まで残されたのもさよなら公演の特別な扱い。さらに通常、千穐楽の終演時には垂れ幕が下げられてしまっているが、今回だけは撮影者が多いだけにしっかり残されていた。

【実録先代萩(じつろくせんだいはぎ)】
以下、公式サイトよりあらすじと今回の配役をほぼ引用。
奥州伊達家では、お家乗っ取りを企む江戸家老の原田甲斐一味が、幼い藩主の亀千代(千之助)の命を狙っているため、伊達の一門、伊達安芸が一味の反逆をくいとめようと闘っている。安芸の娘である乳人浅岡(芝翫)も父と心を合わせ、忠臣松前鉄之助(橋之助)とともに亀千代を日夜守護している。
ある日、御殿に籠りきりの亀千代を、局の沢田(芝雀)、錦木(萬次郎)、呉竹(扇雀)、松島(孝太郎)らが慰めるところ、家老片倉小十郎(幸四郎)が、甲斐一味の連判状を持参して出府。一味の悪事の証拠が手に入って喜ぶ浅岡に、小十郎は国元から連れてきた子をお目見得させたいと申し出る。この子こそ、離れ離れに暮らしてきた浅岡の実子の千代松(宜生)。わが子に会いたさにちぢに乱れる浅岡は、それでも主君への奉公が第一と会わずに帰そうとする。ところが亀千代の命で召し出された千代松。浅岡はお家の危機を語り、お家安泰となった時には親子と名乗ろうと話すと、千代松もそれを受け入れる。

この「実録先代萩」は芝翫のための演目のようだ。祖父の五世歌右衛門の頃は人気狂言だったらしい。芝翫は1958年の東横ホール、1997年のこんぴら歌舞伎、そして歌舞伎座の最後を飾るという。成駒屋三代のうち、福助の方の孫の児太郎が片倉小十郎の来訪を告げる腰元梅香で出て、橋之助、宜生の父子ともども揃う。
原作は黙阿弥の明治期の作品で「伽羅先代萩」を実録で書替えた狂言。「仮名手本忠臣蔵」と「元禄忠臣蔵」との違いのように、徳川幕府の規制がなくなったので大名家のお家騒動も伊達藩という実名を出して芝居にしてもよくなったわけだ。これまでの上演台本に今回手を入れているとのこと。
「伽羅~」と同様に浅岡も政岡同様に黒地に雪持ちの笹の衣裳。しかし「伽羅~」と違って実の子は死なず、お家のために乳人となった母親が子が別れて暮らすというになるという〝子別れ物〟になっている。重の井も重なるが、お家騒動が治まれば一緒に暮らせる希望があるのが明るいので全く泣かなくてすむ。
さらに黙阿弥のお遊び気分があふれているのか、先行作品のいい場面や台詞をどんどん盛り込んでいるようで、観ながら、「この台詞、別の狂言から持ってきているな」「これも何かで聞いたな」と思い当たる面白さがあった。こうやって先行作品を踏まえて次々に新作狂言を出していったのだろうなぁというイメージが湧くという、予期していなかった楽しみを感じてしまった。そういうパロディものだと思ってみれば十分楽しめる。

さらに千之助と宜生の千代ちゃんズが仲良くなって力を合わせて乳人の心を動かす芝居が立派で、芝翫の芝居をさらってくれている。千代松がけなげではあるけれど我慢できずに泣いてしまう子役の泣きの芝居が繰り返されたり、若君の亀千代が賢く乳人から一本とったりすると客席が湧く。芝翫が立女形として立派な芝居をするというよりは、存在感を歌舞伎座最後の日に刻んでくださればそれで十分である。

と思っていたら、前日まで芝翫休演で福助が代演していたというのを幕間でさちぎくさんからお聞きして初めて知った次第。やはり一ヶ月の長丁場をつとめるのは大変になってこられているようだ。
まさに、歌舞伎座建替えの3年の間に代替わりがすすむと予想しているのだが、今月に芝翫・富十郎の舞台をしっかり見せてもらえたことは貴重だなぁとあらためてかみしめる。

25分の幕間はロビーは混みすぎだったので川端龍子の「青獅子」の下でさちぎくさんとおしゃべり。売店でアイスを買った時に助六キャラの看板が可愛かったのもしっかりチェック。いよいよ最後の演目「助六」へ。

4/24御名残四月大歌舞伎(1)「御名残木挽闇爭」
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