ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

フェルメール ‐ 美術史美術館(3)

2016年05月09日 |  ∟オーストリアの美術館

 ※ オーストリア/ウィーン美術史美術館編 ‐ 中欧美術館絵画名作選(21)

 ウィーン美術史美術館が誇る北方の名画三作品。
 三回目はオランダ絵画黄金期を代表するヨハネス・フェルメール(1632-1675)の 「絵画芸術」。
 ただ、残念だったのは本作、アムステルダムに出張中だったこと。

 この年(08年)の夏、東京で六点を集めた 「<フェルメール展>」が開催、集められた作品の殆どを見ながらも、わざわざ東京まで出かけたカタリナ にしてみれば憤懣やるかたない気持のよう、「こんなこともあるよ」と慰めるが 「なんということ!」と落胆を隠せない。

 で、講釈師、見てきたように嘘をいい・・・じゃないが、足早に回る。

 主題は、ギリシャ神話に登場する九柱(きゅうはしら)の文芸の女神たちの一柱(人)クリオ。
 その典拠は、1644年にオランダ語に翻訳され出版されたチェーザレ・リーバ(1560-1622/イタリア)の 「イコノロギア」とか。

 そこにクリオを、“ 右手にトランペット、左手に書物を持ち月桂冠を被った娘 ” (下:部分)と記されているのだそうだ。

 ちなみに 「イコノロギア」とは、16世紀から17世紀に欧州で発達した特殊な図解入り寓意(詩)画集のことらしい。

 アトリエを描いた風俗画にも取れる本作だが、彼はそこかしこに歴史、過去を象徴する小道具、つまり寓意を散りばめている。

 その寓意とは、クリオをはじめ、シャンデリアの16世紀までオランダを支配したハプスブルグ家の紋章、壁の海洋国オランダの繁栄を示す地図、真実を見せるための開かれた幕などである。

 ところでその寓意のひとつが、ベレー帽を被り背中を見せる長髪の画家、恐らくフェルメールとされている。
 それは 「<娼婦 ‐ 取り持ち女>」(アルテ・マイスター蔵)の画面の左端で、左手にコップを持ちにやりと笑いを浮かべている男の風変わりな衣装に似ているゆえに他ならないようだ。

 そんな豆知識を仕入れ臨んだだけに、ダ・ヴィンチ(1452-1519 )の 「<受胎告知>」(ウフィツィ美術館蔵)やパウル・クレー(1879-1940)の 「<金色の魚>」(ハンブルク市立美術館蔵)など、本来架っているべき場所に小さな不在票が貼ってあったりする時は、カタリナならずともがっかりさせられてしまう。 
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1129

 ※ 「美術史美術館(2) ‐ デューラー」へは、<コチラ>からも入れます。


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